14 スカイ・ロード
「すまないが、今はまだ貴殿は私の部下ではないし、かわいそうだね、辛そうだねと同情して憐れむつもりもない。同情して欲しかったのかね?」
痛みを感じていないふりをして、さらなる挑発を続ける。カイザーはそのままエンバリーの手を掴んで振り払った。
「違う!」
「ではいつまでそうして自分の殻に閉じこもっているつもりだ」
冷やかに言い放つ。カイザーに振り払われた腕は骨にひびが入ったのかもしれないと思うほどに痛みを発していた。少なくとも、掴まれた場所の内出血だけは免れないだろう。
それでもエンバリーは冷やかに見つめる。カイザーの内面の辛さを理解しながらも。
カイザーの胸の内を吐き出させることで、現実と向き合わせることができると信じていたので。
「私には……空しかない……飛べない自分など……」
カイザーは自らの拳を握りしめ、それを睨んだ。
「それは自惚れか? それとも自慢か? 言っておくが中佐。空軍に入れば誰もがパイロットになれるわけじゃない。空を渇望し飛びたいと願っても、最初からその場所へ立ち入ることすら許されない人間など腐るほどいる。いや、空軍の半分以上が空を飛ぶことが最初から許されていない人間ばかりだ。飛べない人間に用はない? ないなら最初から私がここに足を運ぶはずもないだろう!」
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