42 スカイ・ロード
失敗は許されない。
すでに左エンジンが停止しており、右エンジンだけでは浮力が足りない。中途半端な浮力では、前方にある遮蔽物に突っ込む可能性があった。
「こんなところに開発設計局ってあったんだ……」
そんな場合ではないと知りながら、もしかしたらこれが今生で最後に見る光景かもしれないと思った。茶褐色の大地にぽつんとある砂漠の飛行場が見える。ギアダウンし、スピードを徐々に落とす。予想以上に早くスピードが落ちるのは、右だけで飛んでいるせいだろう。
街は随分遠いところにあるんだなぁと他人事のように思いながら、緊急脱出用のスイッチも確認する。いざというときには使うかもしれない。
着地に失敗しても、タッチアンドゴーは絶望的だろう。この機体は多分修理を受けなければ飛べない。こんなに不安定なままもう一度、空に戻れるとは思えなかった。
それ以上先のことは考えない。その時が来ればきっと一瞬だ。何も考えられないまま終わる。それならば今考える必用はなかった。
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