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「女ラグ」は「女子ラグビー部」の略ではない

川沿いの道を、ヨイセッ!ヨイセッ!という声と共に、ジャージを着た女子高生の集団が走ってくる。それを見た男子生徒が言う。

「今日の女ラグは外回りか」

彼らの言う「女ラグ」とは、女子ラグビー部のことではなく、わたしたち女子ソフトボール部のことだ。

どうしてこんなに違うのか

ソフトボール部のひとつ上の学年は、なかなか華やかな顔ぶれだった。「ミスF高」と呼ばれた先輩がいた。彼氏のいる先輩もいた。全体的にお洒落で可愛い人達だった。

しかしわたしたちの学年はといえば、皆、肩幅が広く、足は太く、髪はショートヘアだった。私服を着ていると男子と間違えられるので、基本的に制服を着ていた。

けれど、それだけで「女ラグ」と呼ばれたわけではない。

「女ラグ」も誇りに変わる

冬場はボールを使う練習が十分に出来ないので、練習の中心は体力作りになる。学校周りのランニングが終わるとウエイトトレーニングをする。鉄アレイなどを使って筋力トレーニングをするのだ。ここに、わたしたちが「女ラグ」と呼ばれるようになった理由がある。

このウエイトトレーニングをするための空間は、主に男子のラグビー部が使うために用意されていた。そこを、冬の間だけはラグビー部の邪魔にならない時間帯に使わせてもらっていた。そしてわたしたちは実に楽しそうに筋トレをしていた。いや、楽しそうではなくて、楽しかった

それを見ている他のクラブの男子が、わたしたちのことを「女ラグ」と呼びはじめたのが最初だった。

でもわたしは「女ラグ」と呼ばれるのが好きだった。なんだかたくましくていいじゃないかとすら思っていた。もちろん嫌がる友達もいた。「女ラグ」じゃ男子にモテないという理由だ。そう言いながらもみんな霜焼けの手に軍手をはめて、毎日のトレーニングに励んでいた。

「愛と青春の日々」ではある

こんなわたしたちにも片思いする相手がいたりして、意外に青春らしい日々を送っていた。上の学年の人のように男子とつき合うことはないけれど、だいたいが上級生の男子に片思いしていて、今日はあの人を見たとか、廊下ですれ違ったとか、そんなことでいちいち騒いでいた。幼かったわたしたちはそれだけで十分幸せだった。


この「女ラグの片思い」が後々、わたしの人生に影響してくるとは、未だに信じられない思いがするのだけれど、本当のことだ。

というお話についてはまた、独立した文章として書きたいと思う。


【シリーズ:坂道を上ると次も坂道だった】でした。

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