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重要なときこそ平常心を忘れずに。焦ってもいいことはないのだから(陳師道「答無咎画苑」)

今回取り上げるのは陳師道の漢詩からの言葉。

能事促迫する莫れ、快手粗疎多し
(読み:ノウジソクハクするナカれ、カイシュソソオオし)

陳師道「答無咎画苑」

物事に取り組む際には、焦って急かしてはならない。
手早くやろうとすると雑な間違いが多くなってしまうから、という意味。

つまり、大事な物事に取り組むときこそ、一旦落ち着いて慎重に対処しなさい、ということですね。


陳師道(ちんしどう、1053-1102年)は北宋時代の詩人・政治家です。

かの有名な蘇軾の教えを受けた秀才で、蘇門六君子の一人とされています。

詩の才能に恵まれていたものの、一首作るのに割と苦労するタイプだったそうで、詩を作るときは家の中にこもってプチカンヅメ状態にしていたみたいです。

しかも、お布団をかぶりながら詩作にふけるので、陳師道の家人たちもちょっと困っていたとか。

ですが、彼の生み出した作品は、どれも技巧の優れた作品と評価されています。

それだけ苦心した甲斐があったということでしょう。

今回は、そんな陳師道の漢詩です。


大事な物事に取り組むとき、人は大なり小なり緊張してしまうもの。

そして、緊張すると無意識のうちに焦ってしまい、いつのまにか作業のテンポも早くなって、普段はしないような小さなミスをしてしまうことがあります。

陳師道も、焦って漢詩を作った際、微妙な作品を生み出してしまったことがあるのかもしれません。

実は、この句の前に以下のような言葉があります。

卒行には好歩なし、事忙しければ書を草せず
(読み:ソッコウにはコウホなし、コトイソガしければショをソウせず)

陳師道「答無咎画苑」

慌てて行くと良いことはない、忙しいと書を書くこともできない、という意味。

急がず慌てず、じっくりと考えをまとめないと良い詩は書けないということでしょう。

「能事促迫する莫れ、快手粗疎多し」という言葉には、彼自身の実体験も含まれているのだと思います。

「急いては事を仕損じる」とも言いますし、重要な物事に取り組むときこそ平常心を忘れずに、落ち着いて作業ができるように心がけていきたいですね。

能事促迫する莫れ、快手粗疎多し
(読み:ノウジソクハクするナカれ、カイシュソソオオし)

陳師道「答無咎画苑」

大事な物事に取り組むときこそ、一旦落ち着いて慎重に対処しなさい、という漢詩の言葉をご紹介しました。

漢詩の一文一文は短いものですが、その短い言葉の中には多くの思いや学びが詰まっています。

最近は漢詩を扱った初心者向けの書籍も数多く出版されていますので、書店で見かけた際にはぜひ一度お手に取ってみてほしいです。

読んでみると結構面白いですし、声に出して音読してみるのも良いですね。

漢詩特有のリズム感が心地よいと思います。


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