口先だけの人ではなく、発言に行動が伴う人に、私はなりたい(『論語』憲問篇)
今回取り上げるのは『論語』憲問篇からの言葉。
立派な人間は、自分の発言が自身の行いよりも大げさになることを恥じるものである、という意味。
孔子の言葉です。
つまり、口先だけ立派な人ではなく、発言に行動が伴う人になりなさい、ということですね。
孔子は、発言内容よりも実際の行動を重視していました。
なぜなら、発言だけ立派でも、行動が伴わなければ意味がないからです。
孔子が生きた時代は、戦争や裏切り、下剋上が当たり前の時代でした。
そんな中、孔子が理想としていたのは仁のある世界。
相手を思いやり、家族を大切にし、人々がお互いを尊重して生活できるような世の中です。
そのためには、自分や周囲の人間を良い方向に変えていく力が必要となります。
では、自分や周囲の人間に良い影響を与える人はどのような人なのでしょうか?
それは、自ら行動する人です。
孔子は以下のように語っています。
まず主張したいことを実行し、そのあとで主張する、という意味。
孔子が君子のあり方について述べた言葉です。
何かを発言するのであれば、まずは自分自身で実際にやってみて、それから発言しなさい、ということですね。
他にも、孔子は以下のような言葉を残しています。
立派な人は発言するのは苦手であっても、行動することは素早くありたいと願う、という意味。
この言葉については、以下の記事でも取り上げましたね。
このように、孔子は発言が立派な人よりも、実際に行動できる人の方を高く評価していたのです。
実は、孔子がそう考えるようになった一因は、皮肉にも自身の弟子にありました。
孔子の弟子に、発言自体はすごく立派な宰予(さいよ)という弟子がいたのですが、実はサボりの常習犯で、ある日、こっそり昼寝していたところを孔子に見つかってしまいます。
孔子は激怒し、「もう口先だけの言葉は信じない。発言を聞いたら、実際にその通りに行動するかよく観察する」と誓ったのでした。
会社でのプロジェクト業務を例にすると、部下が「スケジュール問題ありません!」と自信たっぷりに言っていたのに、実は裏でサボっていてめちゃくちゃスケジュールが遅延していた、みたいな感じでしょうか。
弟子の発言を信頼していた孔子としては、相当ショックだったのでしょう。
この事件もあり、孔子は「実際に行動すること」を強く意識するようになったようです。
「言うは易く行うは難し」とも言いますが、発言だけで終わるのではなく、きちんと自分の発言に見合った行動ができるようにしていきたいですね。
余談ですが、この「言うは易く行うは難し」という言葉は、漢代の『塩鉄論』という古典が由来です。
「口が達者な人に、必ずしも人徳があるわけではないのはなぜか?」という問いに対する回答となっています。
いくら口達者でも、行動が伴わなければ周囲からは評価されない、というのは、2000年前から同じだったのですね。
ちなみに『塩鉄論』は、塩・鉄・酒などの専売制に関して行われた会議の討論の様子を記した書物になります。
会議の議事録や要旨みたいなものですね。
現代でも、上場企業の一部は株主総会での質疑応答の様子を資料で公開していますが、それに近いイメージです。
上の画像のようなイメージですね。
というわけで、『塩鉄論』は、当時の政治家や官僚たちの議論の様子が分かる貴重な資料となっています。
立派な人間は、自分の発言が自身の行いよりも大げさになることを恥じるものである、という言葉をご紹介しました。
自身の発言を超えるように行動するのはなかなか難しいと思いますので、まずは「行動してから発言する」ということを意識してみると良いかもしれません。
イチローや大谷選手などの一流のスポーツ選手は、自身の普段の練習姿勢や過ごし方などを通じて、自然と周囲の良い手本になっていると聞きます。
私も彼らを見習って、言葉ではなく行動で周囲の模範となれるように頑張っていきたいものです。
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