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荀子が大切にした、誰でもできるたった一つの心がけ(『荀子』勧学篇)

今回取り上げるのは『荀子』勧学篇からの言葉。

駑馬も十駕するは、功舎てざるに在り
(読み:ドバもジュウガするは、コウスてざるにアり)

『荀子』勧学篇

足の遅い馬でもはるか遠くまで行けるのは、歩くことを決して諦めないからだ、という意味。

十駕とは、馬に乗って10日かかる行程のこと。

10日というのはあくまで比喩であり、ここでは「例え遅い馬でも、努力すれば遠くの目的地にたどり着くことができる」という意味合いです。

つまり、どんな凡人でも努力することを諦めなければ、いつか大きな成果を達成することができる、ということですね。


過去の記事でも何度か触れましたが、荀子は努力を重視していました。

人間の本質は悪であり、後天的な努力と教育によって矯正されるものだと考えていたからです。

これを性悪説といいます。

世間的に性悪説は「人間の悪意を前提とした考え」のように思われがちですが、実際にはもっとポジティブな考えです、

「今のままではダメだからこそ、これから未来に向かって頑張っていく」

「コツコツと努力を続ければ、1を2に、2を3にして、少しずつ目標に向けて前進することができる」

「天才のように一足跳びに成果は出せないかもしれないけれど、凡人だからこそ、努力すればした分だけの伸び代がある」

そんな前向きな考え方です。

特に、荀子は馬に例えるのが好きなようで、「十駕」という表現は別の箇所でも利用されています。

驥は一日にして千里なるも、駑馬も十駕すれば則ち亦之に及ぶ
(読み:キはイチニチにしてセンリなるも、ドバもジュウガすればスナワちマタコレにオヨぶ)

『荀子』修身篇

優れた馬は1日で千里を走ることができるが、遅い馬でも10日走れば千里先に辿り着くことができる、という意味。

今回ご紹介している言葉と同じような意味合いですね。

似たような例えを何回も述べていることからも、荀子がコツコツ努力することを大事にしていたことが伺えます。


補足として、

冒頭でもご説明しましたが、「十駕」とはあくまで「コツコツ継続すること」の比喩です。

「何がなんでも人より10倍努力しろ!」という体育会系っぽい精神論ではないのでご安心ください。

人生は長距離走のようなものなので、短距離走のように全力全開で駆け抜けようとすると、あっという間に息切れしてしまいます。

ご自分のペースで、日々コツコツと、小さな一歩を歩み続けることが重要です。

駑馬も十駕するは、功舎てざるに在り
(読み:ドバもジュウガするは、コウスてざるにアり)

『荀子』勧学篇

どんな凡人でも努力することを諦めなければ、いつか大きな成果を達成することができる、という意味合いの言葉をご紹介しました。

徐々に春が近づき、これから環境が変わったり、新しいことに挑戦したりする人が増える季節になりますね。

もしかしたら、新しい場所や物事に向き合うとき、ワクワク感とともに、一抹の不安を抱くこともあるかもしれません。

なかなか馴染めなかったり、努力の成果がでなかったりすることもあるでしょう。

ですが、そういうときこそ、コツコツと歩みを続けることが大切です。

どうか『荀子』の言葉が、皆様の支えの一助になりますように。


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