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うまくいかないときこそ、一歩引いてみることが大切になる(『菜根譚』前集三十五)

今回取り上げるのは『菜根譚』前集三十五からの言葉。

行くに去けざる処は、須く一歩を退くの法を知るべし
(読み:イくにイけざるトコロは、スベカラくイッポをシリゾくのホウをシるべし)

『菜根譚』前集三十五

行こうとしているのに行けないときは、まず自分から一歩引いてみるという方法を知らなければならない、という意味。

人生で行き詰まったときの対処法に関するアドバイスです。

つまり、物事が思うように進まないときは、あえて一歩引いてみて、一度落ち着いてから取り組み直しなさい、ということですね。


人生には色々な難所があります。

仕事がキツかったり、人間関係で悩んだり、怪我や病気にかかってしまったり。

頑張ろうとしているのに、なぜかうまくいかずに空回りしてしまうこともあるでしょう。

『菜根譚』の著者である洪自誠も、以下のように述べています。

人情は反復し、世路は崎嶇たり
(読み:ニンジョウはハンプクし、セロはキクたり)

『菜根譚』前集三十五

人の心は移り変わりやすく、世の中はデコボコした山道のように険しいものだ、という意味。

私も本当にそう思います。

今でも人とのコミュニケーションは難しいなと感じますし、自分が一生懸命に頑張っていることほど、なかなかうまくいかないことの方が多いかもしれません。

そして、1つのことに懸命になっていると、余計に「どうしてうまくいかないの!?」と感じて躍起になってしまい、どんどんドツボにハマってしまうのです。


私も一時期、仕事でうまくいかないことが多く、ついには体調を崩してしまったことがあります。

もともと忙しい職場だったのですが、同僚の退職に伴う人手不足や対人関係の問題が重なり、気づいた時にはやることなすことすべてがうまくいかない状態になっていました。

この時点ですでに眩暈や動悸がひどく、日常生活にも支障が出ていたのですが、そのときの私は仕事に懸命になりすぎていて、自分のことが見えていなかったのです。

そして、ある日突然、動けなくなりました。

しばらく休職したものの仕事には復帰できず、周囲にも迷惑をかけながら退職となったのです。

もしもあのとき、早い段階で業務量の調整を相談していたら。

もしもあのとき、もっと早く仕事をやめて転職していたら。

もしもあのとき、「うまくいかないときは一歩引いてみる」ということに気がついていたら。

そう思わずにはいられません。

幸いなことに、あれから定期的な通院と療養を経たことで、今では以前と同じように仕事をすることができています。

ただ、以前よりも体調を崩しやすくなったので、月1回程度の通院は続けている状態です。

「後悔先に立たず」とも言いますが、物事がうまくいかないときは無理をしてはいけませんね……。

そんなわけで、今では「無理をしない」を心がけるようにしています。

何かうまくいかないことがあっても、「菜根譚にも書いてあったし、こんなときこそ一歩後ろに下がってみようかな」と思えるようになりました。

世の中には、前に進むだけでは解決できないこともあると気づくことができたので、これからはもっと余裕を持って生きていこうと思います。

行くに去けざる処は、須く一歩を退くの法を知るべし
(読み:イくにイけざるトコロは、スベカラくイッポをシリゾくのホウをシるべし)

『菜根譚』前集三十五

物事が思うように進まないときは、あえて一歩引いてみて、一度落ち着いてから取り組み直しなさい、という言葉をご紹介しました。

辛かったり、苦しかったり、悩んだりしているときは、一旦その対象から離れて時間と距離を置くことも1つの方法です。

離れてみることで初めて気がつくこともありますし、時間を置くことで自然と解決することもあります。

人生で難問にぶつかったときこそ、「一歩を退くの法」を思い出していただけたら幸いです。


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