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日々の問題は些細な油断から生まれる(『韓非子』喩老篇)

今回取り上げるのは『韓非子』喩老篇からの言葉。

千丈の隄は、螻蟻の穴を以て潰え、百尺の室は、突隙の烟を以て焚く
(読み:センジョウのツツミは、ロウギのアナをモッてツイえ、ヒャクシャクのシツは、トツゲキのケムリをモッてヤく)

『韓非子』喩老篇

千丈もある高い堤防も、アリなどの小さな虫の穴によって決壊したりするし、百尺もある高い家も、かまどの小さな隙間からの火によって全焼したりもする、という意味。

つまり、どんな大きな問題も必ず小さな油断から発生する、ということですね。


私は結構腰が重いタイプで、ちょっと面倒そうな雑務があると、ついつい先延ばしにしがちです。

仕事であれば気合いを入れて頑張ることもできるのですが、プライベートに関するもの、例えば「市役所に行く」とかになると「来週でも大丈夫だよね!」と思ってしまうのです。

しかし、この考え方は一つ間違うと、より大きな問題につながってしまいます。

市役所に行くのを先延ばしにしていたら、提出期限間近で体調を崩したり、前日になって必要な書類が足りないことに気づいたり、当日になって天気が大荒れになったり。

「先週のうちに行っておけば良かった……」

と後悔することもしばしば。

自分自身のことであれば、最悪の場合でも自分が苦労するだけで済むのですが、仕事や家族の場合だと大変です。

1週間前に気づいていればすぐに対応できたミスが、いつのまにか手がつけられないほど大きくなっていたり、早めに受診しておけば軽傷で済んだはずの怪我が、放置したことで悪化してしまったり。

まさしく「後悔先に立たず」ですね。

どんな問題も、必ず小さな油断から発生するもの。

老子も以下のように述べています。

天下の大事は必ず細より作こる
(読み:テンカのダイジはカナラずサイよりオこる)

『老子』六十三章

この世の大きな問題は、必ず小さな問題から起こるものだ、という意味。

日常のちょっとした油断やミスが、大きな問題につながっていくのです。

私も仕事やプライベートで思い当たる節が多いので、気をつけたいと思います。


それでは、どうすれば大きな問題になることを回避できるのでしょうか?

老子は以下の2つをポイントに挙げています。

小を大とし、少を多とす
(読み:ショウをダイとし、ショウをタとす)

『老子』六十三章

小さなものは大きなもののように、少ないものは多いもののように捉えなさい、ということ。

難きを其の易きに図り、大を其の細に為す
(読み:カタきをソのヤスきにハカり、ダイをソのサイにナす)

『老子』六十三章

難しい問題は簡単なうちに検討し、大きい問題は小さなうちに対処しなさい、とのこと。

私たちは、問題が小さかったり少なかったりすると、思わず油断して後回しにしたり、対応が雑になったりします。

しかし、問題とはそういう日常のちょっとした油断から生まれるのです。

これを回避するためには、問題の芽が小さいうちに対応するのが一番。

つまり、何事も早めの対応が吉、ということですね。

私も早め早めの対応を心がけていきたいと思います。

千丈の隄は、螻蟻の穴を以て潰え、百尺の室は、突隙の烟を以て焚く
(読み:センジョウのツツミは、ロウギのアナをモッてツイえ、ヒャクシャクのシツは、トツゲキのケムリをモッてヤく)

『韓非子』喩老篇

どんな大きな問題も必ず小さな油断から発生する、という言葉と『老子』の言葉をご紹介しました。

ところで、冒頭では『韓非子』の言葉を取り上げたのに『老子』の言葉が多いなぁ、と感じた方もいらっしゃるかもしれません。

それもそのはず。

実は『韓非子』喩老篇とは、韓非子が『老子』について解説した章なのです。

『韓非子』の思想は、『老子』の道に関する思想からも大きな影響を受けています。

そのため、わざわざ本の中で『老子』についての自分の見解を述べているのですね。

中国古典は互いに様々な影響を与えながら発展してきた、という良い例だと思います。

それでは今回はここまで。

また次の記事でお会いしましょう👋


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