契約書を読もう!

記事の目的

契約書で最低限チェックしておくべきことを理解する

すぐ読んでわかる簡単なことをチェック

「契約書はちゃんと読め」と言われても、ほとんどの人にとっては「なんだか小難しい言葉がたくさん書いてある。なにを読めっていうことなんだ・・・」と思うでしょう。

家を借りるときの賃貸借契約書、保険を契約するときの保険約款、ネットサービスの利用者登録するときの利用規約、etc・・・世の中には契約書があふれています。

結論的にいうと「難しい部分は専門家(弁護士、法務、消費者庁、NPOなどの相談機関のほかにも、提示してきた相手も含みます)に任せて、簡単な部分だけ押さえましょう」ということになります。
難しいことを早合点してしまうと後から大変なことになります。可能であれば専門家に相談しましょう。
逆に「専門家が見てもわからない事情」はあなたがチェックしなければなりません

今回の記事は「契約入門」「法務・契約用語・法的リスク入門」からもう一歩進んだものになります。これらの記事と合わせて読んでいただくと一層理解が深まりますが、今回の記事だけでも役に立つように書いています。

前提:契約書は場面によってまったく違う

契約書にはたくさんの種類があります。

そのため書くべきこと、書き方、フォーマットは大きく違います。
例えば借金の保証契約や、家の賃貸借契約、電気の供給約款、消費者向けの契約•利用規約は法律で書くべきこと・書いてはいけないことが決まっています。

だいたいのイメージとしては「立場が弱い人、知識がない人が契約する場面」はなにかしらの法律で規制が入っていると思ってください。

これらの話はきりがないので、今回の記事ではどの契約書にも書いてあることで、専門知識がなくても読めるものを、5つにしぼって書きます

見るべきポイント5つはだいたい始めと終わりにある

はじめに言っておきますと、素人にとって契約書の見るべきポイントは「始めの方と終わりの方」に集中しています

どの契約書も、だいたいどんな順番で、どんなことを書くか、暗黙のルールがあります。

なので「全部を読まなきゃ!」と思わず、「だいたいこの辺りが重要のはず」とこれらの点を重点的に読みましょう。

①(始めの方)前文〜誰と誰が、なにを契約するか?〜

〇〇(甲)と△△(乙)は、×××に関して以下の通り契約を締結する。

ボリュームにばらつきはありますが、だいたい上のようなことが書いてあります。

形式的な意味で入れている(あまり意味がない)ものもありますが、
・誰と誰が
・なにについて
(・どういう背景で)
契約(=約束)するのかが端的に書かれている
ので押さえましょう。

②(始めの方)サービス内容・目的〜誰がなにをしてくれるか?〜

乙は甲に対し、〇〇を提供する。
乙は甲に対し、〇〇を譲渡する。
甲は乙に対し、〇〇を賃貸する。
甲は乙に対し、〇〇を委託する。

誰が誰になにをしてくれるかが書かれています。この部分の書き方が曖昧だったり、思っていたのと違ったら要注意です。

ネットサービスなどではこの点が複雑になりがちですが、根気よく読む必要があります。
ヤフオク!の利用規約(2020年3月8日時点)を例にすると、

ヤフオク!ガイドラインは、Yahoo! JAPAN利用規約の一部です。 ヤフオク!のご利用に際しては、利用規約第1編基本ガイドラインに加えて、ヤフオク!ガイドラインが適用されます。

Yahoo! JAPAN利用規約を前提として読んでくださいとなっています。この時点で読む量が激増します・・・

1. ヤフオク!とは
ヤフオク! (以下「本サービス」といいます)とは、お客様間の商品の売買や役務の提供(以下、商品と役務を合わせて「商品等」といいます)にかかる取引の機会を提供するサービスです。
3. 当社の提供するシステム
当社は、出品者および入札者に対して、以下の機能を有するシステムを提供します。ただし、各機能には出品または入札ごとにそれぞれ利用可能期間が設定されている場合がありますのでご注意ください。

Yahoo! JAPANは「お客様間(いわゆるCtoC)の「商品等」の取引の機会を提供するサービス」を提供してくれる、となっています。そのシステムは3.の通りです、となっています。

逆にいうと、
・ヤフオク!ではBtoBやBtoC向けのサービスは提供しない
・これ以外のシステムは提供しない
ということになります。

③(始めの方)料金・報酬・対価・委託料〜いくらで?〜

甲は乙に対し、本契約の対価として〇〇円(税抜き)を支払う。
乙は甲に対し、本契約の対価として月額〇〇円(税抜き)を支払う。
乙は本サービスを利用するごとに、〇〇円を負担する。

前項の対価は、〇月○日までに支払う。
前項の対価は、請求月の翌月末日までに支払う。

単純に金額だけでなく、1回払いか、毎月払いか、都度払い(課金)か、いつ支払う必要があるのかを確認する必要があります。

④(始めの方か終わりの方)契約期間〜いつからいつまで契約するか?〜

本契約の契約期間は〇〇年○月○日から〇〇年○月○日までとする。
本契約は〇〇年○月○日から有効になる。
本契約は〇〇年○月○日から1年間有効とする。

携帯の2年縛りなどがイメージしやすいと思います。2年間はサービスを提供するという契約内容で、2年たったらサービスを提供しないということになります。

なお契約する取引が1回限りの売買契約や委託契約では、期間よりも「納期」が重要になります。この場合は「契約期間」は書かれないことがあります。

⑤(終わりの方)契約名義〜誰が責任をとってくれるか?〜

多くの契約書は最後にハンコを押します。

このとき「ハンコを押す人」が契約の責任者です。

会社間の契約では社長、大企業ならば部長級が押すでしょう。

このとき、明かに責任者でなさそうな人や、前文に書いてあったのと明かに関係のない人が押す場合は要注意です。
最悪その契約は不成立になります。

「契約書=読めない」という先入観は捨てよう

以上のポイントは法律の知識が無くても読めるものばかりだったのではないでしょうか。

「契約書は読めない!専門家に丸投げ!」とせず、こういった基本のポイントだけでも最低限チェックしてから相談すると良いです。

逆に専門家は、これらの点は当事者の間で何を約束したのかの事実関係になりますので、わからないのです。

あなたが「商品Aと商品Bを、1年サポート(保証)付きで買う」つもりだったとして、契約書には「商品Aを買う」としか書いてなかったとしても、専門家にはそれ以外の話はわかりません。あなたがこれを言い出さない限り、専門家でもこの点はスルーします。

なので契約するあなたは、最低限これらのチェックをしなければならないのです。

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