見出し画像

クラブの価値

これは僕が昔から考えていたことであり、自粛期間中にいっそう深く考えたことです。

All or Nothingという、マンチェスターシティーというサッカークラブの大躍進の舞台裏に密着したドキュメンタリー番組がそのきっかけです。

Amazon Primeで見ることができるこの番組では、監督と選手との関わり方、選手同士の関係、そして、クラブとファンの関係が描かれていました。
監督がどのように選手とコミュニケーションをとるか、選手同士のどのような関係が好ましいのか、クラブとファンが互いに与える影響とはなんなのか。
学ぶことはたくさんあります。

海外では日本よりもファンが熱狂的である理由について考えたことが引き金になったのかもしれませんが、僕は特に、クラブとファンの関係に注目しました。

クラブが社会に与えるものはなんなのか。
社会がクラブに与えるものはなんなのか。
何が相互に影響するきっかけとなるのか。

そして

なんのためにクラブが存在するのか

スポーツに関わる全ての問題はここに帰結すると感じています。
そもそも、人間が生命を維持していくためにはスポーツは必要ありません
衣食住に関わるもの以外は全て贅沢品です。
しかし、今日エッセンシャルワーカーと呼ばれるような方々が全て衣食住に関わっているわけではありません。ですが、彼らが人間の生活を豊かにするためには欠かせないということは明白です。
目に見える形で、実際にサービスや物品を伴って人々の生活を支えています。

では、スポーツはどうでしょうか?
チケットを買って観戦しても腹が満ちるわけでもなければ、病気が治るわけでもありません。

にも関わらず、世界には多くのスポーツクラブが存在し、それらを支えるファンが存在します。

ファンは一体何をスポーツクラブから得ているのでしょうか。

何かしらのメリットがあるからこそチケットを買ったり、グッズを買ったりしてクラブを応援するわけですが、そのメリットとはなんでしょうか。
これはすなわちクラブの価値と言い換えることができると思います。

クラブはファンに何を与えることができるのか。
何も与えることができなければクラブに存在価値はありません。
何かを与えることがクラブの存在する大義です。

大義のないクラブはどこまで行っても「自分たちがやりたいことをやっているだけの集団です」

誰にも頼ることなく純粋に競技を楽しむ団体であれば、そうであっても問題はありません。そのあり方を批判するつもりは毛頭ありません。

しかし、プロスポーツクラブでも部活動でも変わらず、何かしらの存在意義があるはずです。

スポーツとはそもそも贅沢であって、誰かの支援なしで行うことはとても難しいと思います。プロスポーツクラブはもちろんのこと、部活動であっても両親やOB,OG、学校など色々な方に支えられています。

そうした支援に対してクラブはどのように恩返ししていくのか?
勝利は必ずしも恩返しではありません。その勝利に大義がなければ。

僕は「興奮」「感動」「勇気」がクラブが与えられる影響だと考えています。


興奮

試合で観客を興奮させるものはなんでしょうか?

僕はビッグプレーや接戦からの勝利などの「対戦相手依存」のものであると考えています。
相手との実力差が大きければ興奮を生むことは難しいです。
自分たちが大勝しても大敗してもそれほど大きな興奮には繋がりません。
しかし、感動勇気は自分たち次第で生み出すことが可能です。


感動

感動を生むものはたくさんあります。
「相手依存」のものであれば、ジャイアントキリングなどがあると思います。
弱いチームが強いチームに勝った。その事実だけで感動は生むことができます。

しかし、ジャイアントキリングの効果を最大化する、もしくは勝利できなくても感動を与えられるような仕掛けは存在します。

例えば、

・災害にあった地元の復興のために戦うチーム。
・長い歴史と伝統のあるチーム。
・下部リーグから昇格して結果は出せていないが奮戦しているチーム。

ただのチームよりも、こうしたバックグラウンドがわかるチームの方が魅力があるように感じませんか?
例えちょっとした情報であってもストーリーやバックグラウンドが見えるようなチームには親近感が湧きます。そしてその親近感はクラブを応援する理由にもなり得ますし、感動を生む材料になります。

普通に競技をしているだけではこうしたバックグラウンドは自分たちが思っているほどは伝わらない可能性があります。
だからこそ、SNSなどによるクラブの活動や歴史に関する情報発信が重要なのです。
そうした活動をしているチームは成績に関係なく一定の価値を社会に提供することができるでしょう。


勇気

これは完全に自分たちの行動次第で生み出すことができる価値です。
例えばラグビーを初めて見た人でも

・何度でも立ち上がってタックルに向かっていく
・こぼれ球に対して躊躇なくセービングに行く
・タックルされても歯を食いしばって前進する
・80分間誰よりもハードワークする

というような「本気」のプレーは伝わります。
泥臭いかもしれませんが、本気でやらなければ勇気は与えられないでしょう。
観客は選手の本気のプレーを見て勇気をもらいます。

例えその本気が結果に結びつかずとも、見ている人には確実に伝わります。


クラブの価値を高めることの影響

ここまでの文章でクラブの価値はファンに対する恩返しであることはわかっていただけたと思います。

しかし、クラブの価値が高まると、クラブ内でも良い影響があります。

まず、色々な選手の間で人気が出て、リクルートが簡単になるでしょう。
人気の無いチームは選手獲得も大変です。

そして、チームへの帰属意識プライドが芽生えます。
僕はこれが大きな影響であると考えています。
人気クラブの一員であるということはステータスです。それと同時に、クラブの名に恥じないような選手になりたいと考えるようになるでしょう。
背筋が少し伸びるような感覚です。
誰かに見られていると言う意識は人間心理に大きな影響があるということです。

こうした影響はチームの規律アップ、ひいてはチームビルディングにも繋がります。
そして、そこが徹底されているチームは言わずもがな強くなります。
また、ファンからの声援も力になるでしょう。

つまり、クラブの価値を高めることは、クラブの強化につながり、それはまたクラブの価値を高めることになるというサイクルが存在するということです。

このようなサイクルを認識すれば、この記事がプロアマ問わないものであることが理解していただけると思いますが、果たして最後まで読み切る方はいるのでしょうか...?笑

コーチ、アナリストとして活動を続けていくための必要経費のサポートをよろしくお願い致します!!