DFの崩し方
今回は「どのようにDFを崩すのか」ということについて書いていきたいと思います。
この問題について考えるときにはまず、「DFが崩れている」というのはどういう状況なのかを理解しなければなりません。
◇DFが崩れている状態とは◇
一言で表現するならば「物理とルールの制約的にATを止めることができない状態」ではありますが、DFにはサイクルがあるため、そのうちのどの段階が崩れているのかということも考える必要があります。
DFのサイクルの図
セット:文字通り、正しくDFセットをする段階
アップ:面を揃えて前に出てタックルをする段階
BD:ブレイクダウンでファイトする段階(相手の球出しを遅らせる)
これらは相互に関係しているため、どれか一つでも崩れてしまうと次の段階でDFが優位に立つことが難しくなってしまいます。
例えばゲインをされた時(アップ失敗)には、下がりながらBDに参加することはゲートオフサイドのルール上困難なため、球出しを遅らせることが出来ません。結果的に、急いでセットすることが必要になるため、良いアップをすることが難しくなります。
このように一つでもサイクルを乱されるとDFはどんどん不利になっていきます。
AT目線でこれを言い換えると、「ゲインし続ければ有利になっていく」ということです。
◇セットの崩し方◇
「常にゲインできるなら苦労しないよ...そんなに簡単に言わないでくれよ」という声が聞こえてきそうなので、そろそろ本題に入ります。
まずはDFセットをどのように崩すかというところです。
ここに関してはDF側のミスであることがほとんどですが、ATをデザインすることで狙ったフェイズで数的優位(DFセットが崩れた状態)を作ることが出来ます。
数的優位とは「余った」状態のことですので、AT人数>DF人数の場所を作ることができれば、DFセットを崩したということが出来ると思います。
当然のことながら1次攻撃でセットが崩れていることはほとんどありえないので、2次攻撃以降にセットを崩すことを目標にATはセットプレーをデザインする必要があります。
方法はごまんとあるので具体的な説明は割愛しますが、相手のDFよりも早く順目にセット出来れば数的優位は作ることが出来ます。
特にラインアウトや端っこのスクラムからは順目にフェイズを重ねやすいので、数的優位は作りやすくなっています。こうしたシチュエーションではATとDFどちらのFWが早く走り出せるかが重要です。
今紹介したのは順目への移動スピードでセットを崩す方法ですが、もう一つセットを崩す方法があります。
BDを作る位置でセットを崩す方法です。
僕のnoteを読み込んでくださっている方はわかるかもしれませんが、僕はBDの位置という考え方をかなり重視しています。
それは、BDの位置次第で完璧なDFセットが構造的に不可能になるからです。
上図のシチュエーションを考えてみてください。
DF側は正直左右どちらに人数を多めに割いても良いのですが、どちらかのサイドが常に余ることがわかると思います。
これはBDに参加する人数とキック処理のために割かなければならない人数の影響でATが有利になることを示しています。
基本的にDF側のゴール前以外ではこの人数比でゲームが行われるため、グラウンド中央にBDを作ることが出来るかどうかが大きな問題になります。
左右どちらかにBDの位置が偏っているとWTBに回すまでのパス数が均等にならず、DFが容易になってしまいます。
このような形を作ることでDFは前にでてタックルすることが難しくなるため、アップの段階も崩すことが出来ます。
◇アップの崩し方◇
セットの章を読んでいて感じたかもしれませんが、アップを崩せるのは基本的にセットで優位に立っている状況です。
もちろんセットで優位に立っていなくてもアップが崩れることはありますが、個人技やフィジカルなどに依存する部分がかなり大きいです。
戦術的なアップの崩し方をあえて説明するのであれば、人と人の間隔を広く保ちつつ、マークチェンジを起こすことです。
ATのプレーヤーの間隔が近いと、DFもそれに伴って間隔を狭めるため、間を通り抜けてゲインすることが難しくなります。
また、セットが崩れていないということはDFミスも発生しないということなので、AT側がクロスやエキストラランナーを走りこませるプレーや1人のDFに対して2人のATが走り込むようなプレーなどをしなければ、ATはそのフェイズの攻防で負けてしまいます。
それが現在フラットラインだったりダブルライン、トリプルラインといった形で現れています。
◇BDの崩し方◇
これは特に書くことがありません(笑)
常にゲインし続ければBDにプレッシャーをかけられることが無いからです。
あえてBDの中での工夫を少し述べるなら
・倒れてからのアクション
・オフロードパス
・ピック&ゴー
・スイープで相手をしっかり掴む
といった部分を積極的に練習していくことです。
常に良いリサイクルでSHからパスアウトをするのも良いATではありますが、単調になってしまいがちです。
そのせいでDFが慣れて良いセットをしてくるのであれば、近場のATなどを織り交ぜてリズムを掴ませないようにすると良いと思います。
結局は...
さて、色々と書きましたが、結論としては「相手に良いセットをさせない」ことがAT主導で行いやすいDFの崩し方ということになります。
このためには接点の攻防を制し、連続したATで外の空いたスペースにボールを展開することが重要となります。
そうです!「接近、連続、展開」が重要ということです!!大西先生さまさまだということです。
この記事を書いていて、何度もこの言葉がちらつきました。
今も昔もラグビーは「接近、連続、展開」のスポーツなのだなあ。
と実感した月曜の夕暮れでした。おしまい。
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