「抜けたら外」の再考察
みなさんこんにちは。
今回は少しミクロな話をしていきたいと思います。
テーマはラグビー経験者なら誰でも一度は言われるであろう、
「抜けたら外!外にパスしろ!」
と言うこのセリフです。
本当に外に行くことが正解なのか?なぜ内側はダメなのか?と言う部分について考えていきます。
抜けたら外に行く理由
タイトルにしておいてなんですが、この項目はサラーっといきます笑
ラインブレイクをした後にDFに来るのは相手のキック処理にあたっていたBK3とSH、バッキングアップのDFです。
基本的にSHとバッキングアップのDFは内から追ってきます。
この時、もともと正面やその外にいたラインのDFは勢いよく前に飛び出てきているので戻るのに多少時間がかかります。
対して、仲間は外の選手がサポートに来てくれるため、ボールを外に運ぶことでDFから遠ざけることが出来ます。以下の図はスクラムからの想定ですが、大まかのイメージとしてこのように選手が移動します。
図から、外にボールを運ぶこと理由は理解できたと思います。
では、一段階進みます。12番がサポートに来た13番にパスをして以下のような形になりました。
(本筋とは関係ないので黄色の四角の外は無視してください)
このシチュエーションで13番が取るべき選択肢はいくつか考えられると思いますが、13は早く14にボールを渡すことが重要です。このシーンでDF11が上がってきて3v2になるシチュエーションを想像してみてください。
上のパターンと下のパターンでかなり難易度が違うことがわかると思います。13がボールを持っている場合は2回パスをしないとボールをスペースに運べませんし、パスした後にDFがダッシュすれば15に追いつく可能性も高いです。
一方、下のように14がボールを持っていればDFは15に向かってダッシュをすると13か14の前にスペースを作ることになるため、様子見をしながら走ることになります。また、1回のパスでスペースにボールを運ぶことが出来ます。
そのため「抜けたら外」ですが、一番外までは回しきらないことは一つの考え方として持つべきだと思います。
抜けたら内?
さて、ここからが僕にとっては本題です。全国の「抜けたら外」論者を敵に回すつもりはありませんが、相手のスピードとの関係上そのままトライにつながらないゲインにおいては内にボールを運ぶべきなのではないかと考えています。
例えば以下の動画のようなシーンです。
このシーンでは大外の選手がラインブレイクした後、内にパスを2回繋いでいます。
結果として、抜かれた南アフリカ(緑)の選手はタッチライン際に無駄に残っていることがわかると思います。
DFというのは基本的に後ろに向かって下がります。というより、このシチュエーションでは早く後ろに下がることが大事なので斜めに走っていては追いつきません。さらに、ラックサイドは一番抑えなければいけない場所なのでこの位置にDFが溜まることになります。
一方ATしているニュージーランド(黒)は全員左サイドにポジショニングしています。
結果として左サイドで大きく数的有利が生まれています。
もしこのシーンでニュージーランドが内にパスを繋いでいなければ、ラックはタッチライン際に出来、DFも左サイドに多く立つことが出来たので、人数はそれほど少なくなっていなかったはずです。
この映像で僕の伝えたいことは伝わったのではないかと思います。
トライを取れないビッグゲインならば、次のフェイズでトライを取ることを考えること。BDの位置という要素で相手のポジショニングをコントロールすることができること。これが僕が、「抜けたら内」というオプションを提示している理由です。
まあ、まずは「抜けたら外」であることには変わりはないのですが笑
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