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[物語詩][寓話]「魔法の冊子」

A君は ○○処理の手順書を休みを返上して書き上げた
課長は彼を賞賛した
B君は ○○の取扱規定を残業に次ぐ残業で完成させた
課長は彼を褒め讃えた

いつの間にか
会社の書棚はマニュアルだらけになった

そして
魔法の冊子 いわゆるマニュアルは
社長から社員まで会社中の人間をマニュアル依存症にしてしまった
顧客に対してはマニュアルに書いてある以上の対応を決してしないし
マニュアルに書いてあること以外は誰もしない
いつしか
マニュアルに書いていないことについては誰も考えることがなくなり
「マニュアルに書いていなかったので、やりませんでした。」
と言うのがまかり通るようになった
そうした中で マニュアルは追記に次ぐ追記でさらに厚みを増していった

やがて
魔法の冊子は
複雑とされた業務を単純労務に変えるという手品を会社の内外に披露して見せた
社長は歓喜した
なぜなら 単純労務と見做されたそれらの業務に係る人件費を低く抑えられるのだから
外部からの称賛の声は止まず
社長は正社員をどんどん非正規労働者に置き換えていった
そして魔法の冊子を作ったA君もB君も非正規労働者として働くことになった

その後 会社の業績は一時的にアップしたが
程なくその会社は倒産し 今はもうない

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