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これまで公開してきた詩や物語を纏めてみました。
ほら 波の音が聞こえるだろう そこは 夏の海の底 巻貝の奥深く 歪んだ仄暗い部屋の中で 彼は青いキャンバスに青い絵の具で青い絵を描いている 幾重にも塗り重ねられた青のグラデーションは 海なのか 空なのか 彼なのか 誰にも分からない ほら 波の音が聞こえるだろう やがて 秋だよ
少し前まで 「勝ち組」とか「負け組」とかいう言葉が 世の中に氾濫していましたよね でも 最近その言葉を とんと聞かなくなったと思いませんか? 価値観が多様化したからそうなった訳ではなさそうです たぶんですけど この国全体が経済力の面において「大負け」の状態が続き その国の人々は遍く「負け組」になってしまったので その言葉は消えていったのだと思います そもそもですけど 人間の生き方には 勝ちも負けもありません 勝ちと言っているのは 一過性の金を持っているというような意味
病巣から発信されたサインに気付かぬふりをする それは 君の横顔が美しいから それと お寿司を頬張る君の顔が可愛いから 壊死した細胞から送られてきた死を予告する脅迫文は 目を通さずにレーターケースに仕舞い込む 角のない痛みの側面には鋭利な刃が付いていて少し厄介だが 自分が死ぬ時期は私自身がよく知っている 怖れはない 生き物は必ず死ぬものだと観念しているから 悔いもない これまで思いどおりに生きてきて 死ぬまでいつも通りの日常を送るつもりでいる人間が 何を悔いるというのだ や
25cm反射望遠鏡による 夜空に浮かぶ銀河の 電視観望画像です。 是非ご覧ください。
(古代中国・夏王朝初期の伝説を題材とした叙事詩。摂政・后羿の妃・姮娥は、不老不死の霊薬を飲んで、本当に月に昇ってしまったのか?真実や如何に?) 「西王母の霊薬」(上) 時は夏王仲康の御代 河洛の外に出た先王太康の都斟鄩への帰還を阻み夏の政を簒奪して摂政の位に就いた后羿は甚だ野心家であり非常に強欲な性質の持ち主であった その后羿は仲康と気脈を通じる伯封という諸侯を討つためこの夜半に大軍を率いて都に隣接する伯封領へ向けて出陣するという 四年前に太康の弟の仲康を王に擁立したの
これまで公開してきた物語詩をBookにしてみました。 童話風から寓話、歴史物まで幅広です。 どうぞ読んでみてください。
ある国の財務大臣が 自国の通貨安への対応を記者に聞かれて 「為替相場を注視していく」と答えていた 私は噴き出してしまった 為替相場が歳入・歳出に直接的に影響する行政庁が 相場を監視するのは当たり前のことだからだ さらに「注視」とは注意深く見守ることだ 要は何も対応せず行動しないということだ 見ているだけの大臣やその下にいる官僚はたぶんお馬鹿さんなのだ 通貨安の影響が各所に顕在化しているのに 何もしないのなら関係する多くの大臣や官僚は必要がないと思われる たぶん彼等は「注視
海のような 空のような その青は 彼の国の 人里離れた奥山の 森に囲まれた 小さな小さな湖の 午睡の頃の 水面の色なのだという 春まだ浅い おぼろ月のかかる夜半には 彼の湖の水面から 音もなく あまたの微細な 青の胞子が 群れて湧き上がり 渦巻きながらゆっくりゆっくり 月照らす紫紺の空へと向かうのだそうな 風に流され 幾月か 否幾十年 いまこの窓辺に 微細な青の胞子が舞い降りた その青は 海のようであり 空のようでもあり 遠くの山脈のようでもある 例えようのない色合いを
記事の投稿を しばらくしていませんでしたが 詩を書いたりする以外にも 実は私 「こんなこと」もしています 最近は そちらに時間を費やすことが多くて 「note」に投稿できずにいました 各記事の系外銀河や星雲の画像を パラパラと流して見ていただけたらと思います 満天の星空の下で一人 望遠鏡を宇宙の奥深くにある何億光年も離れた美しい星々に向けて その光をCMOSカメラに蓄積し PC画面で視るのはとても感動的です
癌で痩せた父と認知症の母が 食卓で昼ご飯を食べている その傍らで私はもう夕飯を作っている 自分の時間を持てなくなるので 面倒なことは早く済ませるのだ 調理の順番を少し間違えたけど 味は確かだ 作り終えた途端に外はどしゃ降りの雨 それは閉ざされる冬が間近なことの知らせ 或いは薄暗闇の時間が永遠に続くことの何度目かの告知 午後の雨の間にも 累積するエントロピーはさらに降り積もり そのコアは狂気のような分岐を繰り返していく でも それに気付かぬ振りをしていれば 今日一日の増加
日差しが降り注ぐ春の庭先 熊蜂の上手なホバリング 庭の一角にかの熊蜂は一方的に防空識別圏を設定している 何者たりともこの領域を侵すことを許さない 熊蜂の急旋回 不用意に領域を侵した羽虫への威嚇飛行 慌てる羽虫 危ない奴からは逃げるしかない どこから現れたかもう一匹の熊蜂 やがて熊蜂同士の縄張り争い 唸る羽音の重奏 柿の木からイロハモミジのある辺りまでが彼の領域らしいが その領域は今のところ平穏が保たれている それにしても効率の悪そうな羽音だな あのエネルギーを得るには相当
意味のない一日の次に さらに意味のない一日が連なり 密度の低い時間に高密度などうでもよい事柄が 洪水のように流れ込んでくる 立つべき地面は消え失せ 自らをピン止めしておく座標の軸は 既に風で倒壊している 人知れず破綻してしまった そのミクロの場は 正の値しか認められない世界から いつの間にか切り離されるため 元々あったドライなマクロの構造は保たれる ところで 切り離された矮小な負の泡は 過剰に振れた負の値同士を乗算して ローカルな時間と値を得て 別の次元を浮遊している
滅びの国の 無明の人々よ 何故に食らう 無智なる人々は 来る日も来る日も浅はかに消費を重ね 満ち足りぬ心が 恥であるべき欲望の暴走を臆面もなく肯定してしまうため ディスカウント店と風俗店のみが 盛況を極める タレントと世襲政治家が 低投票率で華々しく首長や国会議員に当選し 更には妬みに起因したスキャンダルにより 不寛容の冷笑の中で生贄として打ち捨てられる 誰も 日々の積み重ねの先にあるものを追求することなどなく 時間さえも浪費して 死んでいく ナショナリズムは サッカ
その色は 幼い頃に私の目に焼き付けられた空の色なのか それとも私の奥底で生成された感性としての空の色なのか はたまた私のDNAに連綿と刻まれてきた記憶としての空の色なのか わからない しかし時々夢に出てくるあの空の色 それは 洗われた水色であり 深い青を内包している そしてほんの僅か古色にくすんでいる
====================== 数年前の作です。悪しからず。 ====================== テレビではお笑い芸人とおバカタレントと呼ばれる者たちを起用した ワンパターンと言える番組が無限ループのように連日連夜にわたり放送されている 芸人たちが勝手にトークやギャグで番組を進行していってくれるので制作側の手間が省けるからである でも テレビ局側の人間は「これは拙い」と感じていないのだろうか? 家族全員が茶の間のテレビに釘付けの時代はもう数十年も前に
「それはどこにある?」 ここにはない しかし そこにはあるかもしれない だが そこに行く術はない 「さすれば ここにいてどう生きていく?」 ただただ 現状を受け入れて沈思黙考 いや それの模倣品に頼る いや ここをそこにしてしまえばいい 「ここはそこには成り得なず それを得ることなどできない。」 どう考えても諦めるしかないようだ ・・・はて 諦めたら急に身が軽くなった 待て 諦めることでここをそこにしてしまうことができるかもしれない 「それに気付いたのか?」 い