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[詩]「明日には」

明日には・・・ 私は高空を飛ぶ猛禽類になるのだ
分解能の高い精巧な目を駆使して真を見極め
己が命の欲求として急降下
爪は鋭いほど良い
 
明後日には・・・ 私は誰もが敬う修験者になるのだ
体力の限界まで山野を駆けて死に近接し
己が命の昇華として風になる
持物は少ないほど良い
 
三日後には・・・ 私は沈吟する放浪詩人になるのだ
モチーフと対峙しその深奥にある腸までをも抉り出し
己が命の戦慄きとして普遍の言葉を削ぎ放つ
詩は書き込まぬほど良い
 
過去から未来に繋がる因果の紐に
遥か先までの事象が予め刻み込まれていることを知っていても
それが荒唐無稽な願望であるために
そうは成れぬと分かっていても
私は未来の姿や形を少年のように思い描く
 
そして 十年後には・・・
私は自らの内に千の銀河と千の座標系を持った預言者になるのだ
己が命の証として荒み行く世界の一隅に無限の星々を散らし
千の知見から推量した確からしい摂理を黙々と書き表す
 
この宇宙は得れば何かを失い 失えば何かを得るようにできている
よって ただ求めるだけではそれが得られず
打算抜きに負えばそれが得られる
だから 愛は惜しみなく与えるほど良い

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