5月に観た映画

年間50本映画を見る計画、そろそろここらで年始の遅れを取り戻したいところ。

15.プロジェクトA2 史上最大の標的

1987年 ジャッキー・チェン主演
ジャッキー・チェンの代表作にしてカンフーアクションの金字塔「プロジェクトA」の続編。

あらすじ

20世紀初頭、清朝末期における香港。前作「プロジェクトA」で手柄を上げた水上警察のドラゴンは西区の新たな所長として任命される。そこには前任のチン所長による犯罪組織と警察の癒着といった組織の腐敗と、打倒清朝を目論む革命運動家たちの陰謀とそれを阻止するため香港に潜入している密使たち。さらには前作の海賊の残党たちもが入り乱れ、ドラゴンに新たなる試練が待ち受ける。

感想

あの時計台落下シーンで有名な「プロジェクトA」という偉大な作品の続編ということでどうしても前作と比較して見られるため影を潜めてしまった感じは否めない。なにより前作のアクションの核を担っていたメインキャスト、サモ・ハン・キンポーとユン・ピョウの存在が一切ないのが残念。どうやらスケジュールの関係で出演できなかったらしいがせっかくの続編というには設定のみが引き継がれているだけで物語としての繋がりは希薄に感じた。

とは言ったものの私はジャッキーやカンフー映画を熱心に見ている訳ではなく、プロジェクトAを見たのも1年くらい前だったので割りと設定は忘れていて、wikiを見返して上記のことを思い返したくらいの状態。
アクションの切れだってバリバリだし、手錠で繋がれたまま戦うコミカルなアクション、女優をも体をはった飛び降りアクションをするなど目を見張るアクションの数々は健在。そしてラストもラストの巨大看板からの駆け下り落下が本作一のスタントだろう。

アクションの凄さという面で偉大すぎる前作から落ちてしまうのはしょうがないが、ストーリーの比重も増えたためアクション分が少なくなったように感じられる。あらすじで説明しているように、本作では複数の勢力が敵味方入り乱れて抗争する物語となっている。そのため中国になる前の清の時代背景がよく分かっていない私にとってとっつきにくさがあったのかもしれない。
代わりにストーリーに比重を置いたからこそ、主人公ドラゴンの熱い正義感や優しさが海賊の残党を改心させ形的に共闘する展開は激アツ。やっぱこういうのいいなーと思わせる勧善懲悪のエンディングは本作だからこそなのではないだろうか。

いつも海外の映画は字幕でみているのだけれども今回はアマプラで字幕が見つからなかったため吹き替え版を視聴した。
言わずもがなジャッキー・チェンの声=石丸博也というのは日本人共通認識だが、改めてジャッキーのコミカルさと声が見事にマッチしてるよなあ。
あと字幕は文字という情報でストーリーを認識する分、声だけで判断しなきゃならない吹き替えだと認識に手間がかかる?それともそう感じるのは普段字幕ばっかりみてる俺だけなのかも。

16.ブレットトレイン

2022年 デヴィッド・リーチ監督 ブラッド・ピット主演

原作は伊坂幸太郎の小説「マリアビートル」、ハリウッドでの映画化にあたって登場人物のほとんどが外国人に置き換わっている。
私のフェイバリット「ダイ・ハード」シリーズの主人公ジョン・マクレーンといえば世界一ついていない男とまで呼ばれる”悪運”の強い男。そんな”悪運”こそアクション映画における最強のスパイスなんではないかと個人的に思っている。

本作はそんな”悪運”に愛されたとある殺し屋が京都行の新幹線にて巻き込まれる大騒動を描く。

そんな悪運+アクションの抜群の組み合わせを手掛けるのは、スタントマン出身で「ジョン・ウィック」「デッドプール2」などの監督デヴィッド・リーチ。アクションのセンスは抜群だし本作の魅力のコミカルさも見事に出している。

本作はまさにジェットコースタームービー。狭い新幹線の中で乗り合わせた登場人物たちの衝突・接点が物語が進むに連れ激しくなりやがて運命に導かれるかの如く京都へ向かう。そんな矢継ぎ早に新幹線内で起きる展開で飽きることなく時間を忘れて楽しめる痛快なアクションだった。

忘れてはならない本作の特徴のひとつ、それは(ハリウッドあるあるでもある)エセニッポン観だ。個人的にはあえて狙ってやっているとすら思えるほど外国が思う歪められた”ニッポン”像がプンプンしている。
一番最初の駅(東京駅だと思う)では半分サイバーパンクが入っているような電灯や風景。静岡あたりでは富士山の直ぐそばを新幹線が通り新幹線の中には東京オリンピック2020のマスコットキャラみたいな着ぐるみがあったり。
もとよりコロナ禍によって日本でのロケが出来なかったというのもあるらしいが、そのニッポン像の突き抜けっぷりも愛おしいくらいこの映画の雰囲気作りに役立っている。

ブラッド・ピットの擦れた役柄も相まって悪運+アクションという最高の組み合わせ。頭を空っぽにしてもいいし、思わせぶりな演出に次の展開はどうなる?っといった予想をしながら見るのも楽しい傑作。

17.富野由悠季の暗号 ~The secret lesson of TOMINO directing in G~

劇場版GのレコンギスタV「死線を超えて」の上映記念の5000枚限定で発売されたBD。
2023年4月WOWOWにてGレコ特集とともにそのレア映像を見ることが出来た。

内容は富野由悠季監督と一緒に仕事をした経験のあるクリエイターたち、出渕裕、大河内一楼、藤野貞義、森邦宏、安田朗、安彦良和、吉田健一らのインタビューを元に富野由悠季ならではの”演出”の秘密について迫るドキュメンタリー。Gレコの特別販売作ながらGレコに関する証言は少なく、ザンボット3やイデオンといった昔のものからいわゆる白富野といった2000年頃の作品群を例にして話は進む。このドキュメンタリーにはほとんどガンダムが引用されていないのだ。もはやファンアイテムなのでそんな語られ尽くしたところはいらないといったところか。
そんな富野由悠季の他に追従を許さないストイックな作品作りの一面とやることはやるという仕事人の一面も垣間見れる貴重な資料であった。最後に映る富野由悠季の姿、まだまだGレコ劇場版の作業に追われているのかどこかせわしなく、カメラに一切目を向けることなくそそくさとスタジオ廊下を歩く背中が印象的だった。まだまだ作品作ってくれ~!

18.レディプレイヤー1

2018年 スティーブン・スピルバーグ監督

VRが大成功した未来の姿?(メタバースの現状を考えると悲しい)

大巨匠スピルバーグが送る手堅いエンターテイメント作。
VR空間という設定をいいことにこれでもかと作中にクロスオーバーされるゲームやアニメ・映画のキャラたち。この要素だけでもこの作品が多くの人に共感できるエンターテイメントに突っ切ったものであることを示唆している。
メッセージ性も直球ど真ん中、いかにもハリウッド的で分かりやすくそれでいて嫌味を感じさせない配慮もある。
なによりスピルバーグを始めとする制作陣、制作費の大きさがそのままVRというなんでもありな世界観の再現を可能にし、映画の主要シーンの迫力あるものにしていて爽快。

本作の魅力はクロスオーバー・オマージュの数々。それらを映像化させるよりも権利をもらうほうが難題だっただろうと思われるほど、あまりに多くの作品のオマージュが現れる。それらはほんの数秒映るものばかりではあるがその細かいネタの一瞬に目を奪われる。そういう意味では懐古的な映画とも受け止められる。
そういう意味では劇中歌も懐古的に感じられる。映画は始まってすぐにVan HalenのJUMPがかかるように劇中歌は80年代に固まっていたように感じられる。(よく調べてないから違うかも)でも一番気になったのが劇中音楽だ。主人公たちが目的のために鍵をゲットする場面が特に顕著だがいかにも古典的な劇中音楽、言ってしまえばインディージョーンズかよと思えるほど古臭さを感じさせるものだ。実際に音楽を手掛けたのは当初インディージョーンズシリーズのジョン・ウィリアムズだったのが降板されバック・トゥ・ザ・フューチャーのアラン・シルヴェストリに変更になっていることから、わざと古臭さを感じさせる懐古的な仕掛けにしていたのではないかと思う。
舞台設定を近未来ながらも文明の進化が途絶えて人々がVRゴーグルをつけて仮想空間に居場所を感じているということも、現代の現実逃避へのメッセージにもつながって見える。

VRという世界観で懐古を豪華CGで再現し、一方で現実にも目を向けようとメッセージを発信する。ありきたりではあるがぐうの音も出ないほど鉄壁なエンターテイメント性というところは流石スピルバーグという感じ。

19.劇場版「SHIROBAKO」

2020年 劇場アニメ P.A.WORKS制作 水島努監督

2014年秋から公開されたTVアニメーション「SHIROBAKO」の4年後を描く続編。
あれだけTVシリーズにてみんなが苦心して協力しあってきた武蔵野アニメーション。その4年後という設定に突きつけられる現実。スタッフも散り散りになって活気の無くなったスタジオのリアリティ感が怖い。
だがそこはみゃーもり、無謀な劇場アニメの案件に対して持ち前の前向きさを取り戻し逆境に挑んでいくことでかつてのスタッフが戻ってくる激アツ展開。様々なクリエイターの人間模様を描く熱いドラマがいいのがSHIROBAKO。遠藤さんにはドン引きだが。

TVシリーズを見たのが何年か前なので細かい話はぼやっとしか覚えていないが、TVシリーズの爽快感である苦心しながら協力しあってやっとの思いで作品を完成させるドラマ感を劇場版の尺できゅっと楽しめる。またそれが、劇場版のSHIROBAKOでは劇場版アニメを制作しているってのも乙である。
またTVシリーズも見返したくなるくらいやっぱりSHIROBAKOの世界だったりキャラクターたちが魅力的だ。
ラストの台詞「生きるってえいえんに俺たたエンドだから」という言葉がまた刺さる。大好きな作品です。

20.レフト・ビハインド(2014)

ニコラス・ケイジ主演の航空機パニック映画!

あらすじ

大学生のクローイは航空旅客機のパイロットで父親のレイフォードの誕生日パーティーのため実家へ飛行機で帰ってきたところだった。しかし母のアイリーンから父が急用でパーティーへ参加できないことを連絡される。そこで空港にて父を待っていたクローイは父と会うもCAと不倫関係にあることを悟る。クローイは母が熱心なキリスト教信者になってしまったから両親の関係性が悪くなった思っており教えを拒んでいた。二人は別れ、レイフォードはロンドン行きの航空機を運転し、クローイは家から弟を連れショッピングモールへ足を運んでいた。
その時突如、全世界で人間が来ていた服を残して忽然と消失する現象が起きる。残された人々はパニックに陥り混乱が広がる中果たしてクローイとレイフォードの運命は、消失した人々は一体どこに行ってしまったのか。

感想(ネタバレ)

B級と振り切ってしまえばなにか光るものがあったのかもしれない、そんな印象。
主に航空機という密室内と地上での大混乱状態の2パートあるのだが、そのどちらも特に演出面が良くなく2パートを行き来するためとっ散らかっている。そしてどこを切り取ってみてもどこかの映画でみたことあるような展開の劣化版が続く。
まだそこらへんはツッコミどころとして笑って流せる部分ではあるのだが、一番の問題は終盤にかけての説教臭さである。そもそも原作があってそれが聖書の終末論的なものを描いた作品であるがゆえなのだが、エンターテイメントととして昇華し切れていない。そこらへんは宗教の勧誘ビデオを見ている気分になった。
説教パートが終わってからの展開も、都合よく繋がたり切れたりする携帯電話や都合よく見つかる不時着の滑走路、そしてちゃっちい飛行機のCGが(ツッコミどころとして)展開を熱くする。
ラスト、不時着し助かった人々が燃え盛る町並みを目の当たりにして、「これがこの世の終わりなのか」「いやこれは始まりに過ぎない」的なことを言うがここは個人的に良かったと思う。
ニコラス・ケイジの汚点映画の一つ。

21.パルプ・フィクション

1994年 クエンティン・タランティーノ監督

マスターピース。
小学生のころ初めてこの映画を視聴し、当時は王道の(スピルバーグといった)アクション系の映画を好んでいた自分としてはよく分かっていないながらもそこから醸し出されるセンスに魅了され大好きな映画の一つとなった。
改めてみたというと誤解があるくらいこの映画だけはちょくちょく見返しているが、大人になった現在見てみると、やっぱり脚本の妙が光る作品だなと思う。”各場面の時系列をバラバラにする”という言葉にしてしまえばなにか単純なものと思ってしまうが、この作品を一つ通しで見た時のこの順番が絶妙でユーモラスであったり哀愁を感じさせる。
パルプ・フィクションはサウンドトラックも印象的。というのも小学生当時この映画を見てからCDレンタルでパルプ・フィクションのサウンドトラックCDを借りて何度も聞いていたほど。ミザルーをはじめとするサーフミュージックが良い。ミザルーにばかり目が行きがちだがエンドロールのサーフライダーはこの後起きるヴィンセントや足を洗う決意をしたジュールスへの哀愁を感じさせる絶妙のナンバーだ。

いわゆる名作と呼ばれるものの感想を書く時、めちゃくちゃ筆が進まない。だって素人がどーのこーの書こうがまるで陳腐でその良さを語るるに足る文章になってないと感じてしまう。それくらい大好きな映画です。


以上です。
感想を書くのに一本につき一時間くらいかけてしまうのですが、時間がもったいないのでもっと簡素に書くことにしようかなと思います。

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