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ぺたっとでなく、ふわっとよりも


湿った空気が雨の到来を告げる。
夢の中で雨音がしていた。
それもいつしか
思い寝の底で消えていた。
目覚めて窓を開けると
静かな雨。
そんな土曜日の朝だった。

時々、抱きしめられたいとか
抱きしめたいとか思ってしまう。
漠然と。

跳ねることを忘れて沁みる雨は
花びらの後ろ姿に別の意味を探らせる。
そういった行為は
もうじゅうぶんではないか、と
思うように。
してもらうことよりしないことを
考えるように。


からだの中に
愛されるために愛した姿が
残されている。
冷たいものは吐き出して
熱いものをひとつだけ持ち歩く。
土曜日の遠すぎる距離も
そのひとつで掬われる。

あの頃の忘れ物。
そんな感じの雨音が響く。
愛されるために愛した姿を
再び背後から抱きたくなるような。
静かな喜びは
やさしい寂しさでもあるかの。

新しい緑を育む雨。
季節の頁が
捲られていく過程。
そして、わたしのこゝろが
見つめているもの。

また、ゆるく
抱くでもなく抱かぬでもなく
初々しげな季節の動きに
ついてゆかなければと思う。


ほどよいつきかたで。



*****



明日は雨が上がるよ。
不安だったら
一緒にいてあげるね。





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