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♯33 うちのおかあさん
うちのお母さんは、変わっている
そう思っている人は、世の中に割といると思う。実は私もその一人。うちのおかあさん…私の母は言動がおもしろい。おもしろいっていうか「よくそんなこと思いつくな…」と感心することが多いのだ。
私の母は24歳で起業し、65歳までの41年間商売をしていた。23歳のとき、健康上の理由から、主治医に「働くこと」を禁じられた。仕事をすると、命を縮めることになる、と言われたそうだ。
で、起業したらしい。…なんでそうなる? お医者さんの話、聞いてた?? 笑かそうとして言ってるのか??? と勘繰ったけど、本人はいたって真面目。
家族は誰も止めなかったのかと聞いたら、医師に言われたことは誰にも話さなかったらしい。父や祖父母に心配をかけたくなかったのかと思いきや、「小さなことをたいそうに言う先生だ」と思ったからだって(怖)。
…という感じの人間であることをお伝えして、エピソードを紹介したい。
私の母的 しつこい電話の対処法
その電話がはじめてかかってきたのは、秋ごろだった。電話の用件は「おうちにある不用品、回収します」という内容。どうやら相手は、不用品回収の業者だったっぽい。
75歳の誕生日を迎えた頃、母は父と一緒に1年かけて終活をした。だから、不用品はとっくに処分済みで、回収してもらうものがない。近所の人が不用品回収で業者と揉めたと聞いていたこともあり、ていねいに断った。
しかし、相手は引き下がらない。その日はなんとか電話を切ったが、そのあと定期的に電話はかかり、ついには電話を切らせてくれなくなった。
「一度でいいから家に行かせてください」「捨てるものでも高く買い取りますから」と懇願されたが、家に来たら、きっと彼らは帰らないだろうと母は思った。
母 「本当に捨てるようなものでも引き取ってくれますの?」
業者「もちろんです! なんでも高値で買い取らせていただきますから、一度お伺いさせてください」
母「ほんとになんでも引き取ってくれるんやね?」
業者「はい、もちろんです」
母「そしたら、一つ不用なものがありますねん。引き取りに来てください」
業者「ありがとうございます。ちなみにそれはどんなものですか? 車の手配があるので」
母「あのね、不用品は、わ・た・し!!」
業者「……はぁ?」
相手は無言になったあと、電話が切れた。
「マニュアルにこういう場合の対応が書いてなかったんやろな。若造、もうちょっと勉強しぃ」
と思う母だった(恐恐)
私の母的 結婚紹介サービス電話対処法
冬ごろかかってきた電話の相手は、結婚紹介サービスの会社だと名乗った。「お身内の方がよい結婚をできるようサポートします」と、年配とおぼしき女性がていねいに説明してくれたそうだ。
「結婚は本人が決めることだから、私に言われても」と母はやんわり断ったが、相手はやはり引き下がらない。それどころか、なんやかんや話題を変えながら、うちの身内の事情などを聞き出そうとしてきた。
今、うまいこと言って電話を切っても、またかけてくるだろうな。そう思った母は、電話の相手に聞いてみた。
母「本当に誰でも結婚させてくれはりますの?」
業者「はい。弊社は責任を持って、ご縁をおつなぎいたします!」
母「相手を確実に見つけてくれはるんやね? そしたら一人お願いできる?」
業者「ぜひお願いします。失礼ですが、お名前をお年を教えてください」
母「はい。私はヤマダハナコ、もうすぐ80才。もうすぐ独身」
業者「……は?」
母「夫はこないだ83才になりましてん。そうやな、5年生きたらええほうですわ」
業者「……」
相手は無言になったあと、やっぱり電話が切れた。
「修行が足りんわ、小童め」と母は思ったそうだ(怖恐強)。
と、こんな感じで、80歳を超えても、母の頭の回転はすこぶる早い。文句をたらたら言いつつも、元気で過ごしてくれて、子孝行きわまりない母です。
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