三十路の上海留学1日目 中編~どっかで聞いたなその言葉~
大学に入ろうとしたものの、入口に早速、学生証をかざないと入れないゲート。
近くにいた警備員に「我是留学生,今天到了这里,怎么办?(留学生です、今日来ました、どうすれば…?)」と泣きつく。
なにかしらの中国語を言われたものの聞き取れない。が、バインダーとペンを渡され、「名字,电话号码(名前、電話番号)」と書く場所を示され、記入を済ませると無事学内に入れた。
しかし大変なのはここから。
さあまずは寮に行くぞと意気込んだはいいが、華東師範大学、2キャンパス合わせて207万平方メートルあるらしい。そのうちの、私の通う普陀キャンパスの大きさは正確には分からないけど、半分の100万平方メートルだとしてもまぁ広い。
某夢の国のランドの大きさ約50万平方メートルらしいので、あれの2個分。広すぎる。
入口すぐのところに看板はあるものの、なんの建物がどれでこの建物が何、の状態。
総重量30キロ超えの荷物をガラガラ引摺りながら、ぐるぐる彷徨い(方向音痴なのでほぼ同じ場所。門から二号館は結構近い)、ひとまず目についたのは五号館。行きたいのは二号館。五号館の受付のおば様に「二号館はどこ?」と聞いたら「あれ!」と指を指して教えてもらう。二号館分かりにくい。
ひとまず寮につくも、寮の入口も顔認証のゲートがある。
寮生の交通を著しく妨げながら、寮の警備員に「初めてここへ来た!」と告げて通してもらった。
あらかじめ大学から送られてきたメールの文面を手に、受付に部屋番号を見せると名前を確認され、「对!对对!(そう!そうそう!)」と連呼。
相変わらず中国語はよく聞き取れないので、ほとんどの言葉を受け流していたら「Camera」と英語で言われた。
「go, check」と入口を指差され、顔認証が完了したか確認してこいと言われる。「Okay, Room key」と鍵を渡されて無事入寮した。
入った部屋は、ひとり部屋にしてはかなり広い。ベッド、勉強机、Wi-Fi、収納つき勉強机、めっちゃでかい洋服タンス。テレビがない。
浴槽がなくシャワー、洗面台、トイレ。
トイレは蓋がくっそ汚いし、洗面台は「何年磨いてない?」ってくらい水垢だらけ。濁ってる。
日本にいた頃は「住めりゃいいよね」とほぼ掃除をサボり倒していた私が、中国の寮に入って一番に取り組んだのが鏡磨きと床の雑巾がけだったのは笑える(なんなら翌日、鏡磨くブラシまで買った)。
さて、荷物をおいて一段落。
寮の1階のフロント付近でおば様が布団を売っているので、ふたたびフロントへ。
布団は寮に入る前に大学から「いりますか?」とカタログとともに連絡が来たので注文したけど、部屋に届いていないので、もしやここで受け取りか?と「我已经预定了,是这个吗?(既に予約してます、これですか?)」と質問。
回答のほとんどが聞き取れず、ごちゃごちゃお互いに一方的に話をするだけになる。
最後に女性が「予約したけど、お金払ってない」というような内容を言ったのでようやく合点が行く。
頼んだものを彼女に見せて、「这个!(これ!)」と言うと「それは扱ってない」というようなことを言われる。
なんのための事前アンケやねん笑
希望とは全然違う布団を選び、「現金使えますか?」と聞く。「使えるよ!」と言うので、320元の布団に400元を出すと、彼女は言った。
「細かいのある…?お釣りがない」
それどこぞのタクシー運転手に聞いたな、その言葉。
某タクシー運転手に釣りをチップで渡してしまったので、今後もチップ制をこの上海で一人採用しつづけるのはしんどい。そもそも留学にあたって会社を辞めているので、こちとら日本にローンを抱えた無職という、無敵の人なのだ。
「布団、あとで買いに来る」と言うと、おば様は少し困った顔をしながら、1枚100元札を返してくれて、フロントにバレないように小声で「これでいい」と言ってくれた。
「太谢谢了(ありがとうございます)」以外の、谢谢以外の感謝の言葉を知らないので、「谢谢,太谢谢了」とこちらも小声でお礼をして、布団を受け取った。
布団は無印の製品だった。
布団を敷いて、スーツケースの中身を空っぽにして、部屋に収納する。パジャマを1セット入れ忘れてきたことに気づいた。まあもうなんでもいいか。
シャワーの水圧をそっと確認する。その辺の穏やかな小川よりはましな勢い程度の慎ましやかな水圧だった。
次回は学生登録編!
つづく