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『たまねぎとはちみつ』 〜おじさんと一緒だったからこの一年たのしかった

こんばんは、ことろです。
今回は『たまねぎとはちみつ』という本を紹介したいと思います。

『たまねぎとはちみつ』は、著・瀧羽麻子(たきわ あさこ)、装画・今日マチ子の児童文学小説です。
「春/夏/秋/冬、そして春」の四章で成り立っており、小学五年生が主人公の出会いと成長の物語です。

主人公は、長谷川千春(はせがわ ちはる)。小学五年生。
至って普通の女の子だが、ハキハキしている友達の紗希とはちがい、少しおっとりしている。
ある日、近所の白猫ミルクの後を追って、とある修理屋のおじさんと出会い仲良くなる。
おじさんのお店に通ううちに、クラスメイトの和田俊太とも交流を深めていく。

和田俊太(わだ しゅんた)。小学五年生。
千春のクラスメイト。友達が多く、足が速い。サッカークラブに通っている。
千春と同じく、とあるきっかけで修理屋のおじさんと仲良くなり、以来お店に入り浸っている。
千春も俊太もお店では話すが、学校では話さない。

修理屋のおじさん。たぶん40〜50代。
髪も眉ももじゃもじゃで、ヒゲも生やしている。いつも半袖Tシャツにビーサンを履き、この前千春が見た映画の中の海賊に似ている。
海外に住んでいたが、仕事に区切りがついて日本に帰ってきた。エンジニアで橋を作っている。
今は修理屋のアルバイトをしており、何でも屋を兼ねている。
千春や俊太に世の中のこと、問題解決の仕方などをさりげなく教えている。

紗希(さき)。
千春の友達。最近は塾に通い、勉強を頑張っている。そのため千春と遊べなくなり、クラスメイトからも付き合いが悪くなったと愚痴られる。
おじさんのお店に通う千春を最初は心配していたものの、大丈夫そうだとわかると何も言わなくなった。
ハキハキしていて勉強もスポーツもできる、優等生。


千春は下校途中、不思議な音を聞きます。
鳥の鳴き声に似ているけれど、ちょっと違う。もう少し低くて、鋭く、くっきりと澄んだ音。はじめて聞いた音なのに、どこか懐かしさが漂います。
その不思議な音をたどっていると、近所で飼われている白猫のミルクと出会いました。本当の名前はわかりません。千春と紗希で勝手につけた名前です。ミルクは赤い首輪をしています。
紗希は塾があるから一緒に帰れないと言いました。これから毎週月曜、水曜、金曜は学校が終わるとまっすぐ塾に向かうそうです。中学受験を専門とする進学塾に通う紗希に対し、いつかはそう言ってくるだろうなと想像していたものの、まさか六年生になる前に言われるとは思ってもいませんでした。
「千春、ひとりで大丈夫?」
そう言われて「大丈夫」と返しましたが、しっかりものの紗希がいなくなって、のんびり屋の千春はちょっと心配です。
ミルクがブロック塀を降り、角を曲がります。
また、あの不思議な音が聞こえた気がしました。
右手に細い道が続いており、その先にミルクがいました。
その道は、道というよりブロック塀の隙間のような道でしたが、一応通れそうです。
千春は迷います。この先へ行くと通学路から外れてしまう。
知らない道は危ないので、学校の行き帰りは指定された通学路を使う決まりになっていました。
ミルクを見ると、まるで手招きするみたいにちょいちょいと前足を振ります。
千春は背後を確認し、誰もいないことを確かめてから、足を踏み入れました。

小道のつきあたりには背の高いフェンスがあり、その向こうには公園がありました。よく見るとフェンスの左右には道が続いており、ミルクがどちらへ進むか気を散らした拍子に、千春は石につまずいてしまいました。前へつんのめり、ふらふらとよろめいて水たまりの縁をかすめ、正面のフェンスに両手をつきます。
ふぅ、と大きく息を吐いたところで、ぎくりとしました。
この前買ってもらったばかりの白いスカートに、泥が跳ねていたのです。
千春は今朝のお母さんとのやりとりを思い出し、このままでは怒られると動揺しました。水で洗えば落ちるかな? ごまかさずに素直に謝った方がいいかな?
すると、「どうしたの?」と知らないおじさんに声をかけられました。
びっくりして飛び上がる千春。
大きくて、髪や眉がもじゃもじゃで口のまわりにびっしりと髭が生えている。まるで、この前見た映画の海賊のようでした。真っ黒に日焼けしているのもそれっぽいです。そして、なぜか、いかつい外見にはそぐわない、赤いギンガムチェックのかわいらしいエプロンをつけています。
逃げなきゃ、と千春は瞬時に思いました。
知らない道で、こんな知らないおじさんと出くわすなんて。
千春が来た道を戻ろうと駆け出そうとしたとき、ミルクがおじさんの足元へ向かいました。千春はまたもぎょっとします。まだ肌寒い季節なのに、ビーチサンダルに半袖Tシャツなんて。ひとりだけ真夏のようです。
「おっ、シロ。ひさしぶり」
おじさんがうれしそうに言い、ミルクを抱き上げてほおずりしました。声も大きいようです。
「きみの猫?」
「いいえ」
おじさんが千春の顔からスカートへ視線を移し、目を見開きます。
「ありゃあ、派手にやったな。早くしみ抜きしないと。ちょっとおいで」
手招きされて、千春はあわてて首を横に振ります。
「遠慮しないで。それ、今ついたばっかりだろ? きれいにとれるよ」
千春はいっそう激しく首を振りました。
「そんなこわい顔しなくても。あやしい者じゃないから」
おじさんがにやっと笑うと、白い歯がのぞきます。わざわざそんなふうに言うところが、かえってあやしい。
今度こそ走り出そうと千春が足に力を込めたとき、だしぬけにおじさんが後ろを振り向きます。
「ほら、そこ」
指差した先には、民家のようにも見えますが小さな看板が立てかけてあり、なんでも修理します、と書かれていました。
「しみ抜きもまあ、修理みたいなもんだよな」
ひとりごとのように、おじさんが言いました。

お店の中は、ひんやりしていました。
ヤエさんというおばあさんがおり、スカートをしみ抜きしている間はいておくズボンを貸してくれました。
「きみ、何年生?」
「五年生です」
「学校の帰り?」
「はい」
話している間も、おじさんの手は休みなく働いています。濡れたスカートを水からひきあげ、戸棚から白い粉の入った瓶を出して中身を振りかけ、歯ブラシのようなものでこすりはじめます。
「うん。とれるな、これは」
「ありがとうございます」
おじさんの手元に見入っていた千春は、ふうっと息を吐きました。助かった。
「この洗剤、万能なんだよ。日本でも売ってくれればいいのにな」
「外国で買ったんですか?」
「うん。向こうで働いていたときに。この洗剤も、しみ抜きのやりかたも、現地の同僚に教わった」
千春は内心おどろきました。外国に住んでいたなんて、すごい。千春は海外旅行にも行ったことがありません。なんだか風変わりなのも、外国暮らしと関係があるのでしょうか。
「よし、こんなもんか」
おじさんはスカートについている泡を念入りにすすぎ、ぎゅっとしぼります。作業台の横についている引き出しをごそごそ探って、ドライヤーを取り出します。
「おれはエンジニアなんだ」
「エンジニア?」
おじさんは橋を設計していたそうです。
「図面ができればおしまいってわけじゃない。工事がはじまったら、ちゃんと設計図どおりにできてるかどうか、現場を確認してまわる。うまく進んでないところや困ってるところがあったら、どうしたらいいかをいっしょに考える」
おじさんは、しばらくドライヤーで乾かして言いました。
「よし、できあがり」
真っ白なスカートをぱんぱんと伸ばします。
泥のしみは跡形もなく消えていました。
「ありがとうございました」
千春はお礼を言って、手早く着替えました。ヤエさんに借りたズボンをたたんで返し、ランドセルを背負ったところで、おじさんに右手をさしのべられました。
「また、いつでもおいで」
千春は息をのみます。
どうして気づかなかったんだろう。お店できれいにしみを取ってもらったのだから、当然お金がいる。いくらだろう。お小遣いで足りなかったらお母さんに出してもらうしかない。せっかく内緒で解決できると思ったのに、甘かった……。
「ん? どうした?」
おじさんは太い眉をけげんそうに寄せています。千春は観念して言いました。
「すみません、今、お金を持っていなくて」
「お金?」
おじさんはますますけげんな顔をしたかと思うと、突然笑いだしました。
「いい、いい。いらないよ」
「でも」
混乱しながら、千春はさしだされたままのおじさんの手を見ます。
「あっ、そうか、これがややこしかったか」
おじさんは、握手をしようと手を出していたのでした。
海外では出会いや別れのあいさつとして握手をするというのを知らないわけではありませんでしたが、実際に手をさしのべられたのは人生ではじめてのことでした。
「ええと、じゃあ、なにかお手伝いとかしましょうか?」
「いいよ、そんな気をつかわなくても」
おじさんはしばし首をかしげてから、ぱちんと手を打ちました。
「それなら、なにか修理したいものがないか、お父さんやお母さんに聞いてみてもらおうか。格安で引き受けるよ」
千春は返事に困りました。
ここでの出来事をどう説明したらいいのだろう。スカートの一件を器用に省いて、上手に話せる自信がありません。そもそも、こんなお店に入ったことすら、お母さんはいい顔をしないはず。
「ああ、でも、せっかくきれいにとれたのに、わざわざ話すことないか」
おじさんにも、千春の気持ちは伝わったようです。
「ま、またいつでも遊びにおいで。ご覧のとおり、ひまだから」
たしかに、この三十分の間、だれもお客さんは来ませんでした。
「じゃあ、あらためて。よろしく」
今度こそ、千春はおじさんと握手をしました。


この日を境に、千春は学校の帰りにおじさんのお店に顔を出すようになりました。
紗希にはおじさんのことを話して少し心配されましたが、お母さんにはまだ気づかれていません。

おじさんはエンジニアなだけでなく発明家でもありました。
修理の仕事をする傍ら、ささやかな発明品も作るおじさん。
そのお手伝い(助手)を千春が務めることもありました。

おじさんは聞き上手でもあったので、千春の学校での話もたくさん聞いてくれました。
最初のうちはお母さんに話すように嬉しかったことを話していたのですが、だんだん悲しかったことや腹が立ったこと、その日に聞いてほしいことなどを話すようになりました。今となっては、胸にわだかまっているささいな不満やちょっとした気がかりを打ち明けることのほうが多いかもしれません。
おじさんは、ことさらになぐさめたり、すばらしい解決策を提案してくれたりするわけではなく、最後まで耳を傾けてくれます。
「まあでも、明日ははちみつの日かもしれないから」
「今日はたまねぎ、明日ははちみつ」
海外赴任中に覚えたアラビア語のことわざだそうです。
こうやって、おじさんはいろんな国のことわざやものの考え方、どうやってそれを解決したらいいか一緒に考えてくれたり、ヒントをくれたりします。
しかし、きみはどう思う? とかならず聞いてきたりもするので、千春も自分で考えて話すくせがついてきました。

夏に近くなると、おじさんのお店にクラスメイトの和田俊太も顔を出すようになりました。彼は自転車をおじさんに直してもらってから、お店に来るようになったそうです。
サッカークラブに入っている俊太は時々しか来ませんでしたが、それでも千春と来るタイミングがかぶることも多々ありました。
そんなとき、千春はおじさんとゆっくりお話ができなくてがっかりします。
修理や発明品の手伝いも、俊太が率先してやりたがるので千春は見ているだけだし、クラスメイトとはいえ学校ではほとんど関わりのない間柄なので話すこともありません。
はじめは俊太が学校で話かけてきたらどうしようとか、友達をお店に連れてきたらどうしようとか考えていましたが、それらは杞憂に終わりました。
また、俊太の家は共働きで放任主義らしく、千春が帰らなければいけない時間になってもまだお店に居座っていることもありました。
「どこでなにしてたかとか、いちいち家で言わないよ」
歳の離れた兄や姉もいるそうで、忙しい彼らは俊太に構う暇がありません。多少帰りが遅くなろうが、おじさんの発明品を持って帰ろうが、特に気づかれないそうです。
「うちの親、放任だからな。自己責任で行動しなさい、っていつも言ってる」


夏休みに入って、千春はおじさんのお店になかなか行けないでいました。
今までは学校の帰りに寄っていけばよかったのですが、今は紗希と遊んだり図書館に行ったりする以外、外に出ないのでおじさんのお店にわざわざ顔を出すことができずにいたのです。
八月になってようやく千春はひとりで外出しました。
学校の花壇の水やり当番にあたっていたのです。ふたりひと組で、千春は紗希といっしょに組んでいました。
お母さんは午後から同窓会に出席することになっていたので、何もなければ紗希と遊ぶことになっていただろうけれど、おじさんのところにずいぶん行ってなかったので、なんだか距離が開いてしまったような気がして、なんとかおじさんのところに行きたいと思っていました。

紗希の誘いを断り、久しぶりにおじさんのお店に顔を出す千春。
俊太がいればたまねぎ、いなければはちみつ。
そう思っていましたが、俊太はいました。なにか大荷物を持っています。
「おっ、ひさしぶりだな。ちょうどよかった。いっしょに行くか?」
ヤエさんのご主人の愛車だというおんぼろの白い軽トラックに荷物を乗せて、どこかへ行こうとしています。
夕方までには帰ってこられるというので、千春も一緒に連れて行ってもらうことにしました。
行き先は海! 水の上を歩く発明品を試すのに、以前プールに行ったらしいのですが監視員の人に止められてあえなく失敗。ならば海だと、穴場の波がほとんど立たない岩場があるのでそこで実験してみようということになったそうです。
砂浜にレジャーシートを広げ、パラソルを立てました。日陰になったシートの上に折りたたみ式のテーブルを出し、立派なクーラーボックスと、ふくらんだコンビニ袋も置きます。
ひときわ巨大なダンボール箱には、海で使う道具が入っていました。空気の入っていない浮き輪に、同じくぺたんこのゴムボート。空気入れ、それから発明品。
俊太がすばやく着替えて、水着になりました。発明品である水かき付きの靴を持ち、はずむように立ち上がります。
「じゃ、行ってくる」
「オオカミの口の中へ!」
俊太が遠くまで行き話し声が聞こえなくなったのを見計らって、千春はおじさんに尋ねました。
「さっきの、どういう意味?」
「イタリア語で、グッドラック、って意味だな。なにかに挑戦する相手に贈る言葉。日本語でいうと、幸運を祈る、かな」
しかし、幸運は訪れませんでした。
「おじさん、助けて!」
おじさんと一緒に岩場へ行くと、どんなにがんばっても前へ進めないとひっくり返って派手な水しぶきをあげる俊太がいました。
とうとう海から上がってきて、砂の上に腹ばいになります。
「そんなに落ちこむなって」
俊太にしては珍しくしょげているようなので、千春もちょっとかわいそうになってきました。
「はじめからうまくいくものなんか、めったにないからな。これから改良すればいい」
俊太がぴょこんと顔を上げました。
「そっか。どう改良する?」
勇んで尋ねます。せっかく同情してあげたのに、立ち直りが早い。
「それは、わからん」
「ええっ」
「まあ、そのうち名案を考えつくかも」
「のんきだなあ、おじさんは。がっかりしないの?」
おじさんは、がっかりするというのが心底意外なようでした。これも貴重な第一歩だとかなんとか言って、俊太に呆れられています。
「大事なのは、失敗してもくじけないこと。最初からとんとん拍子にうまくいっても、おもしろくないだろ。あきらめないで考え続けてれば、いつかひらめく」
うつぶせになっていた俊太がすっくと立ち上がり、おなかについた砂を払いました。
「わかった。おじさん、もう帰ろうぜ。早く帰って改良しよう、これ」
「今日はもういいだろう。せっかく来たんだし、ゆっくりしよう」

三人でパラソルの下に戻ると、おじさんが「コーラでも飲むか?」と聞いてきました。俊太が元気よく「コーラ!」と返事をします。
「おれもビールはがまんだな。運転があるもんなあ」
おじさんがぶつぶつ言って、クーラーボックスを開けます。
「きみは? コーラ、それとも麦茶?」
「麦茶、下さい」
実は千春はコーラを飲んだことがないのでした。あまり体に良くないといって、お母さんが好まないのです。家に置いていないのはもちろん、友達の家にあってもなんとなく敬遠していました。
乾杯した三人はおいしそうにコーラと麦茶を飲みます。
しかし、コーラの味が気になる千春はおじさんのコーラに釘付けでした。
「コーラもちょっと飲むか?」
「おれも、もう一本ちょうだい」
おじさんが新しいコーラを二本出し、栓を抜きます。
受け取った千春は、俊太の飲みっぷりを観察し、おそるおそる瓶を口につけます。千春にとっては瓶から直接飲むのもはじめてのことでした。
「どう?」
おじさんに尋ねられて、千春はとりあえずうなずきました。おいしい、ような気がする。

それからは、海で遊びました。
水着を持ってきていない千春は砂浜できれいな貝殻やつるつるした小石を拾っていました。
俊太は水着なので、浮き輪やボートをひとりじめしています。
俊太がおじさんの後ろからこっそり近づいて水をかけると、おじさんは服が濡れるのも気にしないでざぶざぶ海に入り、俊太と水のかけ合いっこをして遊びました。
千春も誘われましたが、さすがについていけないと、ひとりパラソルに戻ります。


そうやって楽しい日々が過ぎていったのですが、ある日思いがけずお母さんにおじさんと海に行ったことがバレてしまいます。
おとなりのおばさんが同じ日に海に行っていたそうで、千春を見たそうです。
親戚のおじさんか何かだと思ったおばさんは、お母さんに出くわしたときに挨拶がてら話しかけたそうですが、それがもとでお母さんは千春が知らないおじさんと海に遊びに行ったという事実を知り、問いただそうと千春を呼びました。
「誰なの?」
おじさんが誰なのか、千春は一生懸命に説明しました。海で発明品の実験をしていたことからはじまって、スカートのしみ抜きをしてもらったこと、お店の看板をいっしょに作ったこと、そのほかの発明品のことも、全部話しました。
こんなに一気に話すことなんて、今までの千春にはないことでした。夢中で話しているうちにのどがかわいてきたけれど、それでも話し続けました。お母さんに、おじさんがどんなに親切でおもしろくて物知りか、伝わるように。心配することなんか少しもないんだよ、というふうに。
しかし、お母さんには届きませんでした。
何かあってからでは遅いからと、お母さんは千春にもうそのお店に行かないことを約束させます。
有無を言わさないお母さんの口調に、しぶしぶ従うしかない千春。
おじさんに挨拶もできないまま、お店に行くことが叶わなくなってしまいました。

実はそのあと図書館に行ったときにおじさんとばったり出くわし、お母さんにもうお店に行ってはいけないと言われたことを話す機会があったり、クルピという鳥の形をした笛をもらったり、お母さんに直談判したらお母さんもおじさんに会いたいと言い出したり、物語は進んでいきます。

秋は運動会や音楽祭、図工展などもあって、運動会はおじさんや俊太とも交流を深めるイベントがあったりして楽しい時間が流れるのですが、そのあとは忙しくてなかなか会えない日々が続きます。
俊太と千春がおじさんを尾行して、変装してまでおじさんがどこに行こうとしているのか探ったり、それが思わぬ出来事につながっていたりして、今までおじさんにもらってきた思いやものの考え方などを発揮する、恩返しするイベントも発生します。おじさんの身の上の話にもなってくるので、冬はすこしセンチメンタルな感じになります。

最後は一体どうなるのか?
おじさんとはもう会えなくなってしまうのか?
ぜひ、最後まで読んでみてほしいと思います。


長くなってしまいました。
いかがでしたでしょうか?
小学五年生の一年間を描いた物語でしたが、子供向けではありますが大人が読んでも面白い内容になっていました。
すこしおっとりしている主人公でしたが、なんでも話せる大人と出会うことで世界を知り、親の知らないところですこしずつ大人になっていきます。
たしかに怪しい大人にはついていってほしくありませんが、この物語のおじさんだったらいいかもな〜と思ってしまいます。
同級生とも交流があり、心を通わせ何かを一緒に成し遂げようとする経験は、成長には欠かせないものだなと思いました。
正直ラストの展開には面食らいましたが、そういう終わり方もあるのね、と思いました。
ひとときの経験が子供達を大きく成長させてくれる、そういう物語だなと思います。

それでは、また
次の本でお会いしましょう〜!

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