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ご質問にお答えします!『恵まれた環境を捨てて脚本家を目指せるか不安です』

脚本家志望の方から、こちらのご質問をいただきました。

初めまして。い...

ご質問ありがとうございます。

ご自身でも「時期尚早」とお書きになっている通り、悩み始めるのがかなり早すぎると思います。
ただし、質問者さんが「働き始めて一か月足らず」だから早すぎるのではありません。
「これから本格的に脚本を書く勉強を始めようとしている」という段階で、悩むのはあまりにも早すぎる、ということです。

まずは本格的な勉強に取りかかり、それを継続してみましょう。
そして、何らかの「脚本家になるための糸口」をつかみましょう。
「糸口」とは、シナリオコンクールに入賞するなり最終選考に残るなりする、プロットライターとしてでも実際に制作される作品に携わる、といったことです。
悩み始めるのは、その後からで充分です。

学び始めていないうちはイメージしにくいと思うのですが、筆力をつけるのも、脚本家となるための糸口をつかむのも、並大抵のことではありません。
「脚本を学ぶ」といっても、「医師を目指して医学部に入る」「法曹界に入るために法学部で学ぶ」というような決まった道があるわけではなく、プロの脚本家にアドバイスを受けたとしても、「その人にとってはその方法が適切だった」ということでしかなく、再現性はありません。
そんな現実に直面しながら、今、この瞬間も、多くの脚本家志望のみなさんが試行錯誤し、切磋琢磨しています。

質問者さんが必死でがんばってみた結果、「何の糸口もつかめず、会社を辞めるかどうかを悩む余地すらなかった」という結果もあり得ます。
質問者さんが天賦の才に恵まれていて、書き始めるや否やその才能を見いだされ、あっという間に人気脚本家になるという可能性もあるわけですが、「これから本格的に勉強し始めようとしている」という状態のままでは、先がどうなるのかは皆目見当もつきません。
ともかく「話は、本格的に脚本を書いてみてから」です。

「会社員生活を経て脚本家になった人は、どんなタイミングで仕事を辞めることが多いのか?」というご質問については、「何らかの糸口がつかめて、脚本家としてやっていけそうだと思えた時」という人が多いのではないでしょうか。
私も会社を辞める決断をした時点で、「原稿を書いてお金を稼ぐ」という経験はすでにありました。
それでも退職直後は思ったほど稼げず、貯えを切り崩していた時期もあります。
ですので質問者さんのように現在のお勤め先で高収入を得られる方には、貯められるうちにお金を貯めておくことをお勧めしたいです。
「〇年修業すれば、必ず食べられるようになる」といった保証はどこにもない世界です。
少しでも多く貯えがある方が、退職の決心もつきやすいのではないでしょうか。

あわせて「私からは絶対にお勧めしないこと」もお伝えしておきます。
働きながら本格的に脚本を学び始めると、まだ何の糸口もつかめないうちに、
「とにかく会社を辞めて時間を作り、脚本の勉強に集中した方がいいのでは?」
と考える人がいるのですが、私の経験上、この選択をして良い結果になった人は見たことがありません。
「脚本に集中するために会社を辞めたはずなのに一向に執筆が進まず、そうこうするうちに貯えが尽きて会社勤めに戻る」というのが、よくあるパターンです。
そのため、個人的には「『時間がないから書けない』という人は、時間ができても書かない」と思っています。
脚本家は心身共にタフでなくてはならない仕事なので、「会社勤めをしながらでも書き続けられるかどうか?」は、この仕事に向いているかどうかを測る材料のひとつになる、と私は考えています。

……と、少々厳しいことを書きましたが、この程度で怯えている場合ではありません。
繰り返しになりますが、心身共にタフでないと出来ない仕事です。
そして同時に、自分が綴った言葉が人の心にどう響くのかを推し量る繊細さも必要です。
そんな仕事に質問者さんが向いているかどうかは、とにかく書き始め、そして書き続けてみない限りわかりません。

「脚本家を目指すために恵まれた環境を捨てられそうかどうか、不安で仕方がない」とのことですが、その不安にとらわれているのは、おそらく「まだ書いていないから」です。
書くことに必死になり、夢中になれば、そんな不安はすぐに消えるでしょう。
書いてみた結果、「自分には向いてないな」と思う可能性もありますが、それならばそれで、今の会社のお仕事に邁進されれば良いので、悩みは消えますよね。

長々と書きましたが、まとめると、
「質問者さんが脚本家になれるかどうかのカギとなるのは、『ご自身が決断できるかどうか』よりも、『ドラマ制作、映画制作の世界が、質問者さんを脚本家として必要とするかどうか』である」
ということです。
その答えを知るために、とにかく書き始めましょう。

ご質問のある方はこちらからどうぞ。
※シナリオコンクールの規定、審査基準に関してはお答えできませんので、その点はご了承ください。


脚本、小説の有料オンラインコンサルも行っていますので、よろしければ。


これまでに脚本家志望のみなさんからいただいたご質問への回答は、こちらのマガジンにまとめてあります。

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