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小さく失敗することの価値

お正月休みの何が楽しいって、「ぼんやり考える時間」をたっぷり取れることだと思うんですよ。
「考える」ということ自体は、日々必要に迫られてやっていますが、
「原稿の締切りまであと〇時間。××のアイデアを是が非でもひねり出さなくては‼」
みたいな感じで、どうにも緊迫感があふれてしまう。
でもこの数日は、
「そういえば去年聞いたあの話、めちゃくちゃ面白かったなぁ」
と、ぼんやり振り返ったり、
「今年はあの人の真似をして、私もこういうことを試そうかなぁ」
とぼんやり考えたりを繰り返しています。
そのなかで、ぼんやりと気づいたんですが「小さく失敗すること」ってすごく大事だと思うんです。

私は去年から、講演をさせてもらう機会が増えていまして、脚本家志望のみなさんが対象の時はガッツリと脚本術についてお話しますが、そうでない場合は「脚本家のテクニックを応用した、一般的な文章術」をしゃべったりもします。
この「一般的な文章術」の講演の前の打ち合わせで、ちょっとコミュニケーションがうまく行かない瞬間があったんですね。
その打ち合わせの席で、主催者側の男性から、
「中川さんは、主にどんな作品を書かれてるんですか?」
と質問されたんです。
私は”なんでも屋さん”的にいろんなジャンルの物を書いていますが、今のところ代表的な作品というと、「10~20代の女性がターゲットのラブストーリー」なので、その通りにお答えしました。
すると、相手の男性(60代)の顔に困惑の色が……。
考えてみれば、無理もないことなんです。
「10~20代の女性向けラブストーリーを書いてるってことは、講演会でも”胸キュン文章術”みたいなのを語るってこと??」
と彼は不安に思われたわけです。

私は、講演会に来られるのは40代前後の方々が中心だと予想していましたし、”胸キュン文章術”を語るつもりはなく、汎用的な文章術をお話するつもりでした。
ですが、主催者の男性のリアクションから、
「講演当日も、最初に私の作品歴を紹介すると、こういう不安が広がる可能性があるんだな」
と気づくことができました。
この点、自力では絶対予想できなかったと思います。

脚本を書く際は、ラブストーリーであれミステリーであれヒューマンドラマであれ、共通する「汎用的なテクニック」が存在します。
私の中では、これは「当然の事実」なんですが、脚本家以外の人にとっては常識でもなんでもないんですよね。
だから講演の冒頭で、そのことをお伝えしておいた方がいい。
ということで、講演当日も、
「私の最近の作品は、”胸キュン”的なものが多いけれど、このジャンルにも、そうでないジャンルにも共通する脚本家のテクニックというのが存在していて、今日はそれをみなさんの日常に活かしていただくコツをお話します」
とお伝えしました。

つまりは、”起こり得るつまづき”を事前の打ち合わせの場で発見できたということ。
「小さく失敗することには価値がある」という言い方もできると思います。
そうなると、「たとえ小さなことでも失敗したくない!」と思い過ぎると、学ぶ機会を失うことに繋がると思うんです。
「あいつ、スベってんな。サムいな」
と思われたくないというのは誰にでもある感情ですし、当然私にもあります。
でも今年は、スベってるとかサムいとか言われてなんぼ、ぐらいの気持ちで行ってもいいんじゃない?
……なんてことを、ぼんやり考えつつお正月休みを満喫しております。

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