ご質問にお答えします!『実在する地名、人名等の作品内での扱い方は?』
脚本家志望の方から、こちらのご質問をいただきました。
ご質問ありがとうございます。
固有名詞の扱い方は、「ルール」「対象への配慮」「作り手の意図」等々が複雑に絡み合う問題だと認識しており、ひと言でいうと「ケースバイケースです」というお返事になります。
例えば、実在する地名を作品内で使用する際に、逐一許可を取る必要はないはずですが、それでも、あえて架空の地名に変更している作品もありますよね。
映画『SR サイタマのラッパー』は、どう見ても埼玉県深谷市が舞台ですが、ストーリー上は「サイタマ県のフクヤ市」なる町ということになっており、これは「配慮」や「意図」があっての判断なのだろうと予想されます。
人名の場合、登場人物のOL同士のセリフとして、
「営業の山田さんって、オーランド・ブルームに似てない?」
「はぁ? どこが?」
と書いたとして、プロデューサーから「オーランド・ブルームの許可がもらえないからダメです」と言われるとは思いませんが、だからと言って、実在する俳優の誰の名前を出しても大丈夫だとも思えません。
日ごろ私がどう対処しているかといえば、まずは「ルール」「対象への配慮」「作り手としての意図」の観点から自分なりの判断をし、それをメインスタッフに共有して必要に応じて可否を話し合ったり、判断を仰いだりします。
質問者さんが想定されているような、「実在する名称のイメージを借りたい」という場合は、表現しようとしているイメージがどんなものなのか、どういうニュアンスでその固有名詞を使おうとしているのかということも、判断材料の一つになり得るでしょうね。
シナリオコンクールの応募作においてどうするのがいいのかは、私にはわかりません。
この件に限らず、シナリオコンクールの規定、審査方法については、コンクール主催者側の人間ではない私からは何もお答えできないです。
その前提で、「仮に、私が審査をするならば……」という個人的な見解をお伝えすると、固有名詞の扱い方は特に重視しないだろうと思います。
この件に限らず、脚本に関連した何らかの”業界ルール”のようなものが存在するとして、シナリオコンクール応募者がそれを知っているかどうかは、その人の本質的な筆力とは関係がないと考えるからです。
「面白いな」と感じる応募作があったとして、セリフに「プカリスエット買ってきて」と書いてあれば問題ないけれど、「ポカリスエット買ってきて」と書いてあるから落とす、といったことは、私ならばしません。
私が審査員なら、作品を通して知りたいのは「応募者の筆力」であって、「デビュー前から業界ルール的なものに精通しているかどうか」ではない、ということです。
仮にその作品が大賞をとって映像化が決まり、放送枠のスポンサーが大塚製薬の競合メーカーだったならば、「プカリスエット買ってきて」と書いてあったとしても、「ポカリを想像させる名前だから変えられないか?」という話になるかもしれません。
でもその種のことは、映像化が決まり、プロデューサーから指摘があった後で考えれば良いことだと思います。
応募の時点では必要以上に悩まず、「固有名詞そのものではなく、もじっておいた方が良いだろうな」と思えばもじっておいて、本質的な「面白さの追求」に時間を使った方が良いのでは?というのが私の個人的見解です。
これからもお互いがんばりましょう!
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※シナリオコンクールの規定、審査基準に関してはお答えできませんので、その点はご了承ください。
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