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ご質問にお答えします!『自作が既存の作品に似てしまいます』

脚本家志望の方から、こちらのご質問をいただきました。

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ご質問ありがとうございます。

お気持ちはよく分かります。
おそらく、脚本を学んでいる人の”あるある”のひとつではないでしょうか。
noteで公開中の自作小説『すずシネマパラダイス』には、「映画監督志望の主人公が、斬新なアイデアを盛り込んだつもりでプロットを書いていたが、実は自分の憧れの作品のマネでしかなかったと気づいて愕然…」というシーンがあり、これは私が脚本を書き始めて間もない頃の経験を基に書きました。

設定や展開が既存の(特に有名な)作品にあまりにも似ていると、読者・観客はそのことばかりに気を取られて質問者さんの脚本を純粋に楽しむことができないでしょう。
だからと言って、「キャラクターも、ストーリー展開も何もかも、既存作品のどれにも似ていないものを書かなくては!」とまで考えると、手も足も出なくなるでしょうね。
そもそも、「既存作品」のすべてを把握することは誰にもできないですし。

では、どう対処するか?
私からおすすめしたいのは、「〇〇(既存の作品)に似ている!」と気づいた時点で、その原稿を捨てるのではなく、「〇〇と似ている部分があるのは認めるとして、違いはどこなのか? 自分の作品にしかない面白さは何なのか?」を掘り下げていくことです。
既存作品と似ている点だけにフォーカスするのではなく、差別化のポイントを明確にして書き進めてみる、ということですね。

2020年10月現在、「本作の主人公は、大手銀行の型破りなバンカーです!」と言われれば、読者・観客の多くは「半沢直樹?」と思うことでしょう。
だからといって、これから永遠に、大手銀行が舞台の勧善懲悪モノを書いてはいけないわけでもありません。
「大手銀行が舞台の勧善懲悪モノ」という括りで考えれば、半沢以外にも数多くの作品が存在するのでしょうが、「今、自分が書こうとしている作品にしかない魅力、something newは何なのか?」という切り口で発想をふくらませていくこともできるはずです。

……というわけで、「〇〇と似ているからダメ!」と言って、書きかけた作品を次々に放り出すようなことはしない方が良いと思います。
先日、こんなツイートを見かけました。

創作を志す人は皆、胸に刻むべき言葉だと思います。

また質問者さんは、「陥りがちな事態」の一例として、「展開もありがちでベタ」(と気づいて、筆が止まる)と書かれています。
これについては「無闇にベタを軽んじない方がいい」と、お伝えしたいです。
”ベタ”は一般にネガティブな意味で使われますが、”型”と言い換えることもできると私は考えています。

噺家の故・立川談志は、弟子にこのように教えていたそうです。
「型から入れ。型があるからこその型破り」
「型ができてない者が芝居をすると型なしになる。メチャクチャだ。型がしっかりした奴がオリジナリティを押し出せば型破りになれる」

質問者さんの執筆歴がどれぐらいなのか分かりませんが、仮にそれほど長くないならば、型通りに、ベタに書くことも、そう簡単ではないだろうと思います。
基本をしっかりと学び、身に付けたからといって、斬新な発想ができなくなるわけではありません。
むしろ基礎を学んだ人の方が、斬新な発想を作品にうまく盛りこめる、と私は考えています。

これからもお互いがんばりましょう!

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