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ご質問にお答えします!『時間軸の入れ替えを表現する方法は?』

脚本家志望の方から、こちらのご質問をいただきました。

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ご質問ありがとうございます。
こちらの投稿等でもお伝えしている通り、あらゆるジャンルの脚本のあらゆるシーンについて「正しい書き方」が定められているわけではありません。
複数名のプロが同じシーンを想定して書いた場合、全員が同じ書き方をするとは限らず、各自が「自分の意図が初見の人にも問題なく伝わるような表記を選ぶ」ということになるでしょう。
……という前提でお答えします。

ご質問から類推すると、質問者さんは以下のような感じで書かれているということですよね?

〇中川のマンション・仕事部屋
  床に転がった中川がもがき苦しんでいる。
  腹には銃創。出血している。
  ドア近くに落ちているピストル。

〇路地裏(6時間前)
  中年の男が、チンピラ風の男に札束を渡してピストルを受け取る。

〇中川のマンション・仕事部屋
  もがいていた中川が事切れる。

「時間逆行・6時間前」という表記に関して言えば、「6時間前」だけでキャスト・スタッフに対して意図は伝わります。(時間逆行という文言は要らないと思います。)

それとは別に気になる点があるのですが、質問者さんは観客に対して、「時間がさかのぼっているということ」が伝わりさえすれば良いのでしょうか?
それとも「3時間前でもなく、5時間前でもなく、”6時間前”であること」を厳密に伝える必要があるのでしょうか?

後者(=6時間という数字に意味がある)だとすると、テロップを出すなり、時計を映して時刻を見せるなり、何らかの表現をしなければ、「6時間前」ということまでは、観客に伝わりません。
脚本家は柱なりト書きなりに「6時間前」と書くことで、「演出サイドで何か方法を考えて『6時間前』と表現してください」と丸投げするのではなく、「どうやって『6時間前』を表現するか?」も考慮し、脚本上に示すべきです。

前者の場合(=厳密に「6時間前」でなくても良く、「数時間前の出来事であること」や「前夜の出来事であること」と伝えたい)ならば、柱やト書きに書き加えるにしても、仮にテロップを出すのだとしても「数時間前」や「前夜」とするのが一般的だと思います。

私は質問者さんの原稿を読んだり、意図を詳しく聞き取った上で回答しているわけではないので、限られた情報だけを基に「この書き方で正しいですか?」というご質問にお答えするのは難しい部分もあります。
ではどうすれば、質問者さんが自分の意図を脚本を通してスムーズにスタッフ・キャスト、観客に伝えられるようになるかと言えば、「人の脚本をたくさん読み、実例を数多く知ること」「自分の脚本を人に読んでもらう機会を増やし、フィードバックを得ること」だと思います。
上述の通り、描こうとしているシーンの「正しい書き方」「標準的な書き方」が存在していないケースもあるので、書き手として「どう表現すれば伝わるかを判断するための感覚」を身につけなくてはならない、ということです。

これからもお互いがんばりましょう!

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