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ご質問にお答えします!『視野を広げるにはどんなことが効果的?』

脚本家志望の方(多分)から、こちらのご質問をいただきました。

ご質問ありがとうございます。

視野を広げるのに効果的なのは、「多数派の意見や、声が大きい人の考えを鵜呑みにしないこと」だと私は思います。

……といっても、あらゆる場面でひたすら”逆張り”の意見を述べたり、”反対のための反対”のような発言をし続けているわけではありません。
ただ、頭の中で何を考えるかは私の自由ですし、口に出しさえしなければ、無闇に軋轢や衝突を招くようなこともありません。
そこで、自分以外全員が同じ意見を言っているようなときや、声が大きい人の発言が「当然正しいこと」のように扱われている場面では、頭の中で「本当にそうかな?」と考えることを習慣にしています。

考えてみた結果、違和感があったら、「なんとなく違う気がする」では済ませずに、「どこが、どう納得できないのか?」を頭の中で言語化し、自分なりの代案も考えてみます。
(反対意見を言っても差し支えない場面や、闊達な意見交換を求められる場であれば、考えるだけでなく発言もします。)

これを習慣づけていると、物事の見方や考え方が固定化せず、角度や視点を変えながら考える癖がついていく、つまりは視野が広がることに繋がるのではないかと思います。

実例を一つ挙げておきます。
私が”脚本家予備軍”だった頃のことです。
当時の私は商業作品の制作に、プロットライターとして関わってはいましたが、脚本を書いた経験はありませんでした。
この時期の私のクレジットは「脚本協力」で、脚本は誰が書くかといえば、私よりずっと実績と筆力のある方々です。
当時は、「どうすればこの状況を脱して、プロットだけでなく脚本も書けるようになるのか?」と、頭から煙が出るぐらい考えていました。

あれこれ頭を悩ませた結果、私は「当分の間、人前で謙遜することを一切止めよう」と決めました。
そのきっかけは、脚本家を目指す人の大半が、プロデューサーや監督の前では「これでもか」というほど、謙虚な態度を貫いていると気づいたことでした。
脚本家を目指している以上はみんな、プロデューサーや監督に自分の筆力を認めてもらいたいはずです。
にもかかわらず、「私なんて大したことないんです」という姿勢をかたくなに崩さない人ばかりなのはどうしてだろう?と不思議に思いました。

その理由を周りに尋ねて歩いたわけではありませんが、私も同じ立場にいたのですから、心の内を想像することは難しくはありませんでした。
多くの人が、判で押したように謙遜しまくる理由は、おそらく二つ。
一つ目は「一般に、謙遜は美徳とされているから」。
謙遜しておかないと「偉そうな驕ったヤツ」と見なされそうですし、逆に謙遜さえしておけば、とりあえずは「いい人っぽい雰囲気」が出せそうですよね。
そして、みんなが謙遜をする理由の二つ目は、「プロデューサーや監督が、自分に対して抱く期待感を下げておきたいから」だと私は思いました。
「私なんて大したもんじゃないです」と言っておかないと怖い、ということです。
「ジャッジされる側」としては、自然な感情だと思います。
「後でガッカリされたくないから、なるべく期待値を下げておきたい」ということですね。

つまるところ、謙遜というのは一般に美徳とされており、”良い人そうな行為”であるけれど、実は、「傷つきたくない」という気持ちから、いわゆる”自己都合”で行われていることもあるな……と思ったわけです。
これに気づくと、私のなかに新たな疑問がわいてきました。
「認められてステップアップしたいと切望している人間が、相手の期待値下げなんかやってる場合なのか?」という疑問です。
そして、「いやいや、そんなことしても意味ないよ。フツーに期待されて、その期待値を超えていけなきゃ、ステップアップとかありえないでしょ」と思うに至り、「だったら私は謙遜しない」と決めました。

習慣化しなければ、このルールを守り切れないと思ったので、その後は何年も、「(プロデューサーや監督の前に限らず)人前では謙遜をしない」というルールを自分に課していました。
そんな私のことを「偉そうなヤツだな」と感じた人もいたと思うのですが、あくまで私の目的は、「謙遜を止めることで、脚本家にステップアップする確率を上げること」でしたし、その後、プロットライターどまりの状況を抜け出して、脚本家としてクレジットされるようになったので、結果としては良い判断だったと思っています。

質問者さんが脚本家志望なのだとして、何も私は「プロデューサーの前で謙遜してはだめです」と言いたいわけではないです。
「多数派の考えや行動に疑問を持つことで、視野が広がること」の実例として、このエピソードをお伝えしています。
この時の私は、大多数の人の行動に疑問を抱いたことをきっかけに、「謙遜とは、良い人そうに見える行為だけれど、案外、自分勝手な理由で行われる場合もある」という新たな視点を持ったわけです。

「視野を広げる」という言葉にはいろんな捉え方があると思いますが、私は、物事を見る角度や視点が固定してしまわないように、日頃こんな風に考えをめぐらせることを習慣にしています。


これからもお互いがんばりましょう!

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