見出し画像

ご質問にお答えします!『プロットライターについて教えてください』

脚本家志望の方から、こちらのご質問をいただきました。

画像1

ご質問ありがとうございます。


【脚本家である以上、”一匹狼”にはなり得ません】

まず、ご質問にお答えするにあたって先にお伝えしておきたいことを書きます。
「海外作品は脚本家として複数名がクレジットされていることが多く、日本の作品は脚本家が一人の場合が多い」という事実から、「海外の脚本家は合議制で、日本では一人の脚本家の思いや考えのみによって脚本がつくられていく」というイメージを持つ方が一定数いらっしゃるのかもしれませんが、私は、脚本家という職業はその特性上、”一匹狼的な存在”にはなり得ないと思っています。

一般に脚本家は、プロット段階から監督、プロデューサーといったメインスタッフと打ち合わせを重ねます。
「より面白くするため」であることはもちろんですが、打ち合わせの場では、撮影スケジュールや予算等との兼ね合いも考慮し、「映像化可能な脚本になっているかどうか」も精査していきます。
その過程で、さまざまな角度から原稿に対するフィードバックを受けることになり、それに対して脚本家からも意見を返し、ディスカッションを繰り返します。

この仕事をしていると、「脚本家と小説家はどこが違うんですか?」と度々訊かれるのですが、大きな違いのひとつは「脚本家は、映画・ドラマを観客のみなさんに届けるという”大きなプロジェクト”のなかで原稿を書く」という点だと思います。
言い換えれば「脚本家が脚本を書くことは、個人的な活動ではない」ということです。
原稿を書いている時間は一人ですが、映画もドラマも「チームでつくりあげる作品」であり、脚本家は、チームの目指すもの、共有しているコンセプトを常に意識することも重要だと私は考えています。

……というわけで、共同脚本であることが海外に比べて少ないからと言って、「日本の脚本家は一匹狼」という感覚はわたしには全くなく、質問者さんの言葉を借りるならば、”チームプレイ”だと感じていますし、”書き直しの文化”も明確に存在しています。

前置きが長くなりましたが、以下、ご質問にお答えしていきます。


【脚本家のクレジットに関して】

多くの作品において脚本家としてクレジットされている人物が一人だからと言って、日本の映画界、ドラマ界で「本当は脚本を書いているのにクレジットされていない人がいる」ということが横行しているわけではありません。
そのケースがゼロではないことも認識しており、件数の多い少ないに関わらず由々しき問題ですが、私が「由々しき問題だ」と感じるのも、「脚本を書いたのにクレジットされないのが当たり前の世界」ではないからです。

日本の作品でも、一つの作品に二人、場合によっては三人の名前が脚本家としてクレジットされていることもありますよね。
複数名で原稿をやり取りしながら書いていたり、事情があって降板した人の後を別の脚本家が引き継いでいたりと、経緯はそれぞれでしょうが、私自身も「複数名クレジットのうちの一人」になった経験がありますし、それほど特殊なこととは感じていません。


【プロットライターのクレジットに関して】

プロットライターがクレジットされるとすれば、一般に「脚本協力」か「プロット協力」だと思います。
「クレジットされるとすれば」ということは、されない場合もあるということです。

「プロットライター」とひと口に言っても、作品に関わるタイミングが2パターンあります。
一つ目は、企画が立ちあがったばかりで、まだ制作が確定していない段階でプロットを書く(=企画書に載せることを前提としてプロットを書く)場合。
二つ目は、制作が決まっている状態でプロットを書く場合で、例えばメインライターの立場にある脚本家が連ドラの第一話脚本を書いているのと並行して、プロットライターは第二話のプロットに着手する、いったケースです。

私の経験を振り返ると、一つ目のパターンでクレジットされたことはありません。
二つ目のパターンならば基本的にクレジットされていたと記憶しています。
ただ、その判断はプロデューサー次第だと思うので、「二つ目のパターンでプロットを書いたけれど、クレジットされなかった」という人もいるだろうと思います。


【プロットライターの原稿料に関して】

プロットライターを務めれば、原稿料は発生します。
……と、断言したいところですが、「必ず」とは言えません。
払わずに済ませようとするクライアントもいます。

私が初めてプロットライターとしての仕事を受けた際も、「フリーのプロデューサー」と名乗る人物から、事前に原稿料の額を提示されたうえで着手したにも関わらず、書き上げた後で「金銭的に苦しく払えない。無い袖はふれない」と言って逃げ回られました。
中にはこういう人もいるのだと早い段階で分かったので、その後は「確実に払ってもらうためのノウハウ」を自分なりに考えて、必要に応じて実行していました。
それをまとめた投稿があるので、もし今後必要になったら参考にしてください。

これからもお互いがんばりましょう!

ご質問のある方はこちらからどうぞ。
※シナリオコンクールの規定、審査基準に関してはお答えできませんので、その点はご了承ください。


脚本、小説の有料オンラインコンサルも行っていますので、よろしければ。


これまでに脚本家志望のみなさんからいただいたご質問への回答は、こちらのマガジンにまとめてあります。

スキ♡ボタンは、noteに会員登録してない方も押せますよ!

#脚本 #シナリオ #エンタメ #質問 #マシュマロ
***********************************
Twitterアカウント @chiezo2222

noteで全文無料公開中の小説『すずシネマパラダイス』は映画化を目指しています。 https://note.mu/kotoritori/n/nff436c3aef64 サポートいただきましたら、映画化に向けての活動費用に遣わせていただきます!