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ご質問にお答えします!『シリーズ物を書く際の情報整理の方法は?』

脚本家志望の方から、こちらのご質問をいただきました。

プロになった後...

ご質問ありがとうございます。

今のところ私はシリーズ物に脚本家として参加したことはないので、プロットライター時代にシリーズ物に関わった際の経験を基にお答えします。
すべてのシリーズ作品に共通の絶対的なルールが存在するわけではありませんが、以下の内容は「一般的にはこうだ」と言って差し支えないと思います。

主要登場人物や世界観等、作品の概要をまとめた資料は渡してもらえました。
十年単位で続くシリーズ物というのも存在しますし、その場合、過去の放送をすべて視聴することは現実的ではなく、それを求められるようなことはありませんでした。

シリーズ物で、且つ一話完結モノの場合、各話の内容をごく簡単にまとめたリストも渡されたと記憶していますが、その資料があったとしても、書き手のアイデアが過去の放送回と似てしまうことは避けきれないでしょう。
その点のチェックは、執筆者が一人で行うわけではなく、原稿をスタッフ間で共有して確認し合います。
過去データとの詳細な照らし合わせを行う担当者がいたり、シリーズの生き字引的な人が過去回との重複をたちどころに発見してくれたりするので、執筆者が必要以上に神経質になることはありません。
(ちなみに、こちらの本によるとアメリカのドラマ『LOST』のスタッフにはレインマン並みの記憶力の持ち主がいて、過去エピソードとの矛盾の洗い出し等を一手に引き受けていたそうです。)

メインスタッフとの打ち合わせはプロット段階から行うのが一般的なので、「苦労してシナリオ初稿を書き上げた後で、『過去にほぼ同じネタを放送している』と指摘され、ゼロベースから書きなおす羽目になる」といったことも、通常は起こりません。

「新キャラを出したり、新しい舞台に移したりすること」については、ケースバイケースでしょう。
シリーズ全体の方針として、「そろそろ新たな展開を作りたい」と考えているタイミングであれば、そのためのアイデアを求められるでしょうし、「主要キャストの降板が決まっている」といった事情があれば、自然と「それならば新キャラクターを……」という方針になるのではないでしょうか。
執筆に着手する前に、この種の「大まかな方針」は知らされるはずなので、それに従うのが一般的だと思います。

映画でもドラマでも、脚本家はプロット→ハコ書き→脚本と書き進めていく過程で、監督やプロデューサーと何度も打ち合わせを繰り返します。
その中で、いろんな意味で原稿が磨かれていくので、「過去の放送回と内容が重複してしまう」といった初歩的なミスは通常起こり得ないと考えていただいて良いです。
「脚本書くのは脚本家の仕事なんだから、あらゆるチェックもリサーチも、一人でやってください」と丸投げされるようなことはないということです。
真っ当な現場であれば、メインスタッフは皆、脚本の重要性を理解していますし、脚本家がより良いホンを書き上げることを要求するばかりではなく、協力もしてくれます。

まとめると、質問者さんが心配されているような問題は、プロの制作現場においては起こらないはずです。
それを懸念するよりも、少しでも早くプロの現場に入ることを目指して筆力を上げることに注力された方が良いと思います。

これからもお互いがんばりましょう!

ご質問のある方はこちらからどうぞ。
※シナリオコンクールの規定、審査基準に関してはお答えできませんので、その点はご了承ください。


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