ご質問にお答えします!『主人公を困らせる事が大事だと言われますが…』
脚本家志望の方から、こちらのご質問をいただきました。
ご質問ありがとうございます。
主人公を窮地に追いこむことで作品が面白くなると分かっているのに、それがうまくできないとのこと。
おそらくこれは、多くの脚本家志望の人が陥る問題だと思います。
私自身の経験を振り返っても、脚本家を目指して教室に通っていた頃に、
「主人公が生きている世界が優しすぎる」と言われたことがあります。
何度か同じ指摘を受けるうちに私は、なぜ自分が主人公を追いこみきれないのかが分かってきました。
「主人公がひたすら苦しい目に遭い続け、立ち直ることのないまま終わるストーリー」というのは、そうそうないはずです。
作劇のセオリーから考えれば、主人公は困難の後に立ち直ったり勝利したりすることが多く、たとえ敗北するとしても、観客が何らかのカタルシスを得られるように描くことが多いでしょう。
この際、書き手が主人公に与える困難が大きければ大きいほど、それを乗り越える過程を描くことは難しくなります。
観客にとっては、主人公が「こんな状況に追い込まれたら、もう勝ち目なんかないよ」というところから劇的な復活を遂げた方が面白いですが、書き手にとっては、主人公に大きな困難を与えることは、書き手自身が跳び越えなくてはらならいハードルを上げることにもなるわけです。
これが、書き手がつい主人公を甘やかしてしまう原因だと私は考えています。
無意識のうちに書き手は「自分の筆力でも解決の過程を描けそうな困難」を主人公に与えがちで、それが「主人公に甘い」という読み手の感想に繋がるのでしょう。
では、どうすればこの問題を解決できるかといえば、「書き手が勇気を持って自分に課すハードルを上げ、それを跳び越えるための訓練と工夫に努める」ということに尽きると思います。
残念ながら、効率的なコツや、ハックをお答えすることは、私にはできません。
プロもアマチュアも、書き手は皆、この困難に立ち向かわなければなりません。
まずは、問題の解決方法は棚上げして「主人公をいかに追いこむか」だけを考える。
その次に、どうやって主人公が窮地を脱するかを熟考する、という風に、二段階に分けてアイデアを練ってみてはどうでしょうか?
私が通っていたシナリオ教室の先生は、「脚本家というのは、一人の人間の中に、サドとマゾが同居しているようなものだ」と言っていました。
執筆中は、より厳しい課題を自分に与え、その苦しみを喜びと捉えて挑むことのできる人間が、読者・観客の心を掴むことができる、ということなのでしょう。
繰り返しになりますが、書き手は皆、自作の主人公を甘やかしたくなりがちです。
それをしっかりと認識し、何とか抗ってみてください。
これからもお互いがんばりましょう!
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