ご質問にお答えします!『苦労して書いた作品が日の目を見ないのが辛いです』
脚本家志望の方から、こちらのご質問をいただきました。
ご質問ありがとうございます。
「プロの人はどう納得しているのでしょうか?」
とのことですが、プロも人それぞれですので、以下の内容は中川の個人的な考えとしてお読みください。
また、上映、放送に至らない作品に対して、私は常に納得しているわけではないので、「納得できる場合」と「納得できな場合の対処」に分けてお答えします。
【作品が上映、放送に至らないことに対して納得できる場合】
執筆後、時間をおいて原稿を読み直した際に、企画としての弱さや脚本の問題点に改めて気づく場合があります。
必死で書いている最中よりも客観的になるため、新たに見えてくるものがあるのでしょう。
こういう場合は作品が上映、放送に至らなかったことに対して納得が行きますし、「改めて問題点に気づいたことを、次の作品への糧にしよう」と頭と気持ちを切り替えます。
映画もドラマも、撮影をし、編集し、上映、放送に至るまでには、多くのスタッフ、キャストの技術と労力、そして資金が必要です。
書き手には、「自分の原稿には、多大なコストを使ってでも制作する価値があるどうか?」を考える冷静さも大切だと私は思います。
心血を注いで書いていれば当然思い入れは強くなりますが、作品を観る側のみなさんからすれば、書き手がどれだけ苦労したかということなど、知る由もないわけです。
「あんなに頑張って書いた原稿が日の目をを見ないなんて……」という感情は私にもあります。
ですが同時に「”私が頑張ったかどうか”と、”制作に値する作品であるかどうか”は、切り分けて考えなくてはいけない」とも思っています。
またこの投稿をしている2020年5月現在は、コロナ禍で撮影も、完成した作品の公開もままならない状況です。
経済への悪影響も続くでしょうし、その意味でも映画、ドラマの制作に携わる人間は今後、困難に立ち向かっていかなくてはなりません。
コロナ禍に限らず、不可抗力によって作品が上映、放送にまでたどり着けない場合もあります。
このような時も「自分が思い煩ったところで変えられない要素については、考え込まない」と自分に言い聞かせ、気持ちを切り替えていくしかないと思っています。
【作品が上映、放送に至らないことに対して納得できない場合の対処法】
仕事として依頼を受けて執筆した作品が、上映、放送に至らない場合には、さまざまな要因があり得ます。
中には、脚本家の立場から見て理不尽だと感じるケースもあります。
私はSNSで無暗にネガティブなことを発信しないと決めているので詳細は書きませんが、まれに依頼者の対応が不誠実だと感じることもあり、その場合は間違いを繰り返したくないので、同じ人から別の作品の執筆依頼があってもお断りします。
また「一般的な脚本家としての守備範囲を超えて、自ら制作に向けて動く」という決断をした作品もあります。
『すずシネマパラダイス』という作品がこれに当たります。
この作品は脚本執筆後、何年も”塩漬け”のような状態になっていたため、そこから脱却すべく、脚本を基に『小説版すずパラ』を執筆してnoteで公開しました。
現在も映画化に向けてPR活動をしており、作品の舞台であり、私の故郷でもある石川県のメディア(新聞、ラジオ等)で度々紹介してもらっています。
小説版公開までの経緯はこちらの投稿にも書いてあります。
まとめると「どうしても納得が行かない場合は、自分の心を静めることのみで解決しようとするのではなく、具体的な行動を起こす」ということになるかと思います。
【最後に】
質問者さんは「日の目を見なかったシナリオは、第三者からすれば存在しなかったも同じ」「頑張ってそれなりに時間もかけても、何もしなかった人と同じ」と書かれています。
確かに作品は「第三者からすれば存在しなかったも同じ」ではありますが、それを書き上げた人が「何もしなかった人と同じ」だとは、私は思いません。
客観的な評価を避けて独りよがりで書いているのでない限り、書き手は一作品ごとに必ず何かを学び、身に付けているからです。
繰り返しになりますが、自作に対して客観性を持つことはとても重要です。
ですが同時に、自身の「書き手としての成長」にフォーカスすることも大切だと思います。
この二つは矛盾せずに成立しますし、一本か二本書くだけではなく、「書き続けていくため」に必要なことだとも思います。
アマチュアの人の場合はシナリオスクールに通う等して執筆仲間を見つければ、お互いの成長度合いを認識し、伝え合うこともできます。
これも大きな励みになるでしょう。
「見ず知らずの人の客観的な評価」が得られるようになるまでは、身近な人の評価、応援の力を借りることも、執筆を続けていくコツの一つだと思います。
これからもお互いがんばりましょう!
ご質問のある方はこちらからどうぞ。
※シナリオコンクールの規定、審査基準に関してはお答えできませんので、その点はご了承ください。
脚本、小説の有料オンラインコンサルも行っていますので、よろしければ。
これまでに脚本家志望のみなさんからいただいたご質問への回答は、こちらのマガジンにまとめてあります。
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