ご質問にお答えします!『シナリオコンクールの受賞作について』
脚本家志望の方から、こちらのご質問がありました。
一読して、「お答えするのが難しいご質問だな」と思いました。
質問者さんのシナリオ歴や、具体的にどんな作品に対して「出だしが地味極まっていたり会話がつまらなかったり……」と思われたのかという、回答のカギになる情報が何もないからです。
また私は、ご質問を募るにあたり「シナリオコンクールの規定、審査基準に関するご質問は受付けていない」と書き添えています。
今回のご質問は「審査基準に関するご質問」に当たるように思うので、「お答えできません」ということにしようかとも思いました。
ですが同時に、ご質問の文面に対して違和感があり、「質問者さんが脚本家を目指されているのならば、早いうちに認識を変えた方がよいのでは?」と感じる点があるため、今回は「ご質問へのストレートな回答」ではなく、「中川からのおせっかい気味のアドバイス」をお答えします。
その点をご了承の上、以下の内容をお読みいただければと思います。
コンクール受賞作に対して「これが本当に受賞レベルの作品なのか?」と疑問に思われることがあるとのこと。
あらゆる作品に対して、誰もが、どんな感想を持つかは自由ですので、質問者さんがそう感じられたことを否定するつもりはありません。
ですが、それらの作品が、多くの応募作の中から審査員によって選ばれたことも事実です。
コンクール毎に、審査の方針に違いはあるのでしょうが、大きな責任を負って審査を行っている方々と、脚本家志望ではあるけれど、まだそれほど執筆歴がない質問者さん(と、文面から勝手に推測しています。違っていたらすみません)の、どちらのジャッジが信頼できそうか?と問われるのならば、私の答えは「審査員のみなさんでしょうね」ということになります。
ですので、ご自身でもお書きになっている通り、「読解力不足」の可能性があると思います。
脚本は小説と違って、「たとえ決定稿であっても、作品としての完成品ではない」という宿命を背負っています。
映像ができあがって初めて作品が完成するのであって、脚本はその土台です。
従って脚本家は「この原稿に、演技や演出という要素が重なって映画やドラマとして完成するのだ」という前提で執筆をします。
そのため、脚本は「読むことにも技術が必要だ」と、よく言われます。
読みながら、どのような映画やドラマになりそうなのかを読み解く力が要るからです。
この点から考えても、質問者さんの「読む技術」が足りないために、受賞作の魅力を掴み取れていないという可能性はあると思います。
また、質問者さんが一部の受賞作を「これが本当に受賞レベルの作品なのか?」と感じるのは、「好みの問題」である可能性もあります。
コンクール受賞作に限ったことではなく、「空前のヒット作」の映画やドラマであっても「私はハマれない」という人は必ず存在しますし、誰かが「人生のベスト1だ!」と言い切る作品を、他の誰かがつまらないと感じるようなことは、いくらでもあります。
これらのことを踏まえれば、質問者さんが一部のコンクール受賞作を「これが本当に受賞レベルの作品なのか?」と感じたからと言って、「コンクールはこの程度のレベルでも受賞できるものなのだ」と軽く見るようなことは、早計だと私は思います。
そのように決めつけてしまうよりも、「自分の読解力不足では?」「自分の好みには合わないが、これを高く評価する人もいるということなのだ」と受け止める方が、脚本家を目指す人のスタンスとしては適切なのではないでしょうか。
「オススメの受賞作を挙げてほしい」とも書かれていますが、私はこの部分に違和感を覚えました。
何となく、「大学受験をするために、志望校の赤本を読んで受験対策をしようとしている人」のような印象を受けたからです。(これも私の推測です。間違っていたらすみません。)
シナリオコンクールに応募することと、大学を受験したり資格試験を受けたりすることは、根本的に意味が違います。
シナリオコンクールは、大学受験や一般的な資格試験と違って、「決められた正解をきちんと導き出せる人」が求められているわけではないはずです。
ストーリーづくりにおいては、「誰かが決めた唯一の正解」も、「絶対的な評価基準」も存在しておらず、その前提で「あなたのクリエイティビティを存分に発揮してみせてください」というのが主催者側の思いなのではないでしょうか?
主催者が「これまでにない、斬新なものが読みたい」という趣旨の発信をしている場合もありますよね。
その点から考えても、「過去問で受験対策」の類のことは、大学受験や資格試験の場合の程には、役立たないのでは?というのが、私の考えです。
もちろん、人の作品を読むことで学びとれることはたくさんあります。
ですが、もし質問者さんが「過去のコンクール受賞作を読み込めば、受賞のための傾向と対策が効率よく掴み取れる」とお考えになっているのだとすれば、私からは「もっと幅広く、古今東西、さまざまなジャンルの作品に触れて、学んでいくこと」「まずはご自身の作品を書くことを継続し、その上で人の作品も読んだり視聴したりして、本質的な筆力を付けていくこと」の方をお勧めしたいです。
長々と書いてきましたが、質問者さんが、まだあまり執筆歴がないのだとすると、ピンとこないかもしれません。
そうであれば、「ご自身の手で、ご自身の作品を書く」という経験を重ねてから、もう一度読んでみていただけると嬉しいです。
これからもお互いがんばりましょう!
脚本、小説の有料オンラインコンサルも行っていますので、よろしければ。
ご質問のある方はこちらからどうぞ。
※シナリオコンクールの規定、審査基準に関してはお答えできませんので、その点はご了承ください。
これまでに脚本家志望のみなさんからいただいたご質問への回答は、こちらのマガジンにまとめてあります。
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