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ご質問にお答えします!『コンクール入賞はしたのですが…』

脚本家志望の方から、こちらのご質問をいただきました。

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はじめに

ご質問ありがとうございます。
コンクール応募に励んでいる時は、主催者から「応募総数1,500でした」のような発表があったりして、大勢ライバルがいることを認識しやすいですよね。
ですが、めでたく入賞して脚本家予備軍になればなったで、そこにも、それなりの人数の集団ができていて、いわゆる”椅子取りゲーム”に参加しなくてはなりません。
質問者さんは今、その段階にいらっしゃるということですね。

コンクール入賞以外の経路で脚本家予備軍の集団に入る人もいるわけですが(私もそのパターンでした)、一定以上の筆力がある人たちの集まりですので、基本的に団子状態だと認識すべきでしょう。
その団子状態の中に身を置きながら企画提案をしたり、プロットライターを務めたり……という日々を過ごしていた頃、私はよく、
「プロットライターと脚本家の間には、暗くて深い川がある」
と言っていました。

質問者さんは今、「暗くて深い川」を渡ることがとてつもなく難しく感じられていると思います。
かつての私も同じでしたし、「どうすれば川を渡れるのか?」を嫌になるほど考えました。
ですが、”一撃必殺の技”みたいなものは見つからず、「たった一つの突破口によって脚本家になれた」とも思っていません。
抽象的な表現ですが、「じわじわと、だんだんとプロになった」というイメージです。

それでも川を渡る方法を嫌になるほど考えた末に、私なりに導き出した答えはあります。
それを実践し、なんとか脚本家になったわけですが、だからと言ってこの方法が万能とは言えません。
脚本家への道に王道はなく、「誰かの成功例」に再現性はありません。
ですので、あくまで参考として読んでいただき、質問者さんに合った道を模索するための材料のひとつとしてください。

脚本家予備軍だった頃、中川が出した答え

脚本家予備軍の集団から、いかにして抜け出すか?
それを考え抜いた結果、私がたどり着いた答えは、「書き手として、キャラ立ちしなくてはいけない」ということでした。
団子状態の中に埋もれている限り、次のステップには進めないのだと気づいたわけです。
そして、そこから抜け出すには、プロデューサーやディレクターを前にしたときの「言動」も、提示する「原稿」も、”みんな”と似ていてはいけないのだ、と強く意識するようになりました。


心掛けていたこと1)「言動」の面でのキャラ立ち

「みんなとの違い」をアピールするべく、私が最初にしたのは「みんなが何をしているか」を「言動」と「原稿」の両面で観察することでした。
まず、「言動」の面では、プロデューサーやディレクターの前では、とにかく粗相のないよう、細心の注意を払って従順にふるまう人が多いように感じました。
そこで、自分はその逆をやった方がいいのでは?と思ったわけです。

無闇に偉そうにふるまうのは単なる「失礼」ですから論外として、うちあわせの場では極力、自分ならではの切り口による発言をするようにし、自分の感覚で”あり”と思えるところまでは、反論をすることもありました。
もちろん”反論のための反論”は無意味なので、説得力のある反論・提案をすることを自分に課していました。

脚本家予備軍の人は、目の前にいるプロデューサーやディレクターに「気に入られなくては!」と思い過ぎてしまう傾向があると思います。
書き手としての自分の生殺与奪の権を握られているように感じてしまうからなのでしょうが、相手が誰であれ、そこまで怯えていては、かえってコミュニケーションがうまく取れないのではないでしょうか。

そもそも、脚本家予備軍の人たちが真に目指していることは「プロデューサーやディレクターに好かれて、脚本家にならせてもらうこと」ではなく、「プロデューサーやディレクターの評価を得て脚本家となり、自分が面白いと信じる作品で観客を楽しませること」であるはずです。
「脚本家になること」をゴールと考えず、「なった後、どんな作品を書いていきたのか」というところまで見据えて行動していれば、自ずと言動は変わるはずだし、それがキャラ立ちに繋がるんじゃないか?と当時の私は考えていました。


心掛けていたこと2)「原稿」の面でのキャラ立ち

もちろん「言動」を変えるだけでは不十分で、「原稿」が同じ集団にいる人たちの中で埋もれない、”キャラ立ち”したものであることが最重要です。
予備軍だった頃の私は「原稿」という観点でも、みんながどんなものを書きがちなのかを観察しました。
その結果、「プロデューサーやディレクターの発想・好みに寄せることで評価を得ようとする人」が多いと気づきました。
その逆は、「プロデューサーやディレクターが持っていない視点を重視すること」です。

私は、当時から落語や歌舞伎といった古典芸能が好きでした。
また、ドラマ、映画だけでなく演劇も好きで、海外の戯曲も割とよく読んでいました。
そこで、古典芸能や海外の戯曲には興味がなさそうな人に企画提案をする時にこそ、それらから得た知識や発想を盛り込めないだろうか?と考えていました。

まとめ

ここまで書いたことを読み返すと、「必死だな、自分……」と我ながら引きそうになりますが(笑)、今、質問者さんがいる集団の中にも、こんな風にあれこれと策を練っている人がいるかもしれません。
質問者さんの性格や、得意なこと、不得意なこと等と照らし合わせながら、ご自分独自の戦略を練ってみてください。

これからもお互いがんばりましょう!

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