【短編シナリオ】白いハンカチを作る

心やさしい男の子が幼なじみの女の子のためにハンカチを手作りする話です。

シナリオセンター本科課題「ハンカチ」

タイトル:白いハンカチを作る

【人物】
新井清志(15)高校一年生
大沢幹(15)高校一年生
浜松理沙(15)高校一年生
新井京子(39)看護師・清志の母
二葉タエ子(67)ふたば手芸店店主

○団地・外(朝)

○公園(朝)
学生服を着た新井清志(15)が立
っている。
ジャージを着た大沢幹(15)が走
ってやってくる。
幹「おはよう」
清志「あれ?ジャージ?」
幹「一時間目、体育だから」
歩き出す清志と幹

○道路(朝)
清志と幹が歩いている。
清志「白いハンカチ?」
幹「そう、試合の時に持って行かないといけ
ないんだって」
清志「もう試合するの?高校入学したばっ
 かりだよ。僕たち」
幹「練習試合だって。二年生がメインだけ
ど、一年生にも試合の形式を覚えさせた
いんだって。」
清志「ふうん」
幹「その白いハンカチがさ、なかなかなくて」
清志「先輩とかはどうしてるの?」
幹「お母さんに作ってもらってるみたい」
清志「そっか」
思い詰めた表情の幹の横顔。
清志「僕が母さんに頼もうか?」
幹「え?いいの?」
清志「わかんないけど、たぶん」
幹「ありがとう」
微笑む幹。

○学校・玄関・外
生徒たちが登校している。
歩いている清志と幹。
幹「じゃ」
小さく手を振る幹。
玄関に向かって歩く幹。

○学校・下駄箱
靴を履き替える幹。
   浜松美沙(15)がやってくる。
美沙「おはよ。何、あれ彼氏?」
幹「違うよ。同じ団地に住んでて、小さい頃
から一緒なの。兄姉みたいな感じ」
美沙「だよね、なんかひょろひょろしてて、
幹より細いんじゃない?」
靴を履き替えている清志。
むっとした表情の幹。

○新井家・キッチン
清志がカレーをよそっている。
新井京子(39)はテーブルに座っている。
京子「ハンカチを作りたい?」
清志「うん、母さん作り方知ってる?」
京子「作ったことない。布切って、端縫えば
いいんでしょ」
カレー皿をテーブルに置く清志。
テーブルに座る清志。
カレーを食べ始める清志と京子。
清志「うちってミシンある?」
京子「あると思う?」
にっこりする京子。
京子「あー清志君の作ったカレーはおいしいなあ」
あきれた表情の清志。
京子「商店街に手芸屋さんあるじゃん、そこ
のおばちゃんに聞いてみれば?地図書いてあ
げるよ」
  清志「ありがとう」
京子「なんに使うの?買えばいいのに」
清志「幹ちゃんがレスリングの試合で使うん
だって。あんまりお店に売ってなくて、
お母さんに作ってもらうのが普通みたい」
京子「清志君が幹ちゃんのお母さんみたい」
にやにやする京子。

○商店街・外
   商店街に歩いているひとはまばら。
メモを持ち、あたりをきょろきょろ見
ながら歩く清志。
下手な字と絵で商店街の地図が書かれ
ているメモ。
清志「母さんってなんでこんなに絵が下手な
んだろう」
あきれた表情の清志。

○ふたば手芸店・外
ふたば手芸店の古びた店舗の外観。
ふたば手芸店の看板。
怪訝そうな顔を浮かべる清志。
おそるおそる店内に入る清志。

○ふたば手芸店・中
薄暗く、布や手芸洋品がところ狭しと
置いてある店内。人気はない。
店の奥をのぞく清志。
清志「すみません」
静まりかえった店内。
清志「すみません」
二葉の声「ぼっちゃん」
清志「えっ」
驚いて後ろを振り向く清志。
二葉たえ子(67)が立っている。
二葉「なにかお探し?」
清志「あ、こんにちは・・」
二葉「ああ、新井さんとこの」
清志「はい、あ、新井です。」
お辞儀をする清志。
清志「あの、真っ白いハンカチを作りたくて」
二葉「真っ白じゃないといけないの?」
清志「はい。」
二葉「何に使うの?」
清志「レスリングの試合で」
清志の体をじろじろ見る二葉
二葉「ぼっちゃんがレスリングねえ」
清志「僕じゃなくて、と、友達が・・」
店内をうろうろする二葉。
二葉「はい」
棒状に巻かれた白い布を清志に見せる二葉。
二葉「これでいいでしょ?綿で」
白い布を見る清志。
清志「ありがとうございます」
ハンカチの作り方を清志に教える二葉

○新井家・キッチン
テーブルに座り、縫い物をする清志。
白い布の端を縫い進める手と針。
清志「痛っ」
絆創膏を巻いた指。
白い布の端を縫い進める手と針。
間違って、他の部分も縫い込む清志。
落胆の表情を浮かべる清志。
はさみで糸を切ろうとするが、間違っ
て布を切ってしまう清志。
はさみで切られた作りかけのハンカチ。
テーブルに伏せる清志。
清志の声「どうして作れるなんて思ったん
だろう。どうしてうちにはミシンがない
んだろう。どうして僕はこんなに不器用
なんだろう・・・」
落ち込んだ清志の表情。

○ふたば手芸店・中
店の奥のテーブルを囲み、はさみで切
られた作りかけのハンカチを見つめる
二葉と清志。
二葉「あんたんち、ミシンはないのかい」
清志「母は手芸とかそういうの全然やらない
人で・・」
二葉「ぼっちゃんも苦労するね」
ミシンの使い方を清志に教える二葉。
ミシンでハンカチの端を縫う清志。
その様子を横で見守る二葉。
二葉「上手上手」
出来上がったハンカチを広げる清志。
清志「出来た!」
お茶を飲んでいる二葉と清志
二葉「しかし母子家庭っていうのも大変だね」
清志「幹ちゃんもお母さんは仕事でいつも家
にいなくて、こういうのは頼みにくいって
知ってるから」
二葉「またいつでも遊びにおいで」
清志「ありがとうございました。」
お辞儀をする清志。

○大沢家・玄関
インターホンを押す京子。
    扉を開ける幹。
京子「幹ちゃんこんばんわ」
幹「こんばんわ」
京子「はい、これ」
白いハンカチを幹に渡す京子。
白いハンカチを受け取る幹。
幹「作ってくれてありがとう」
京子「え?作ったのは清志だよ?」
幹「え?」
京子「あ、言っちゃった。私が作ったことに
するんだった。そういえば。清志には黙っ
といてね。」
人差し指を口にあてる京子
京子「なんでレスリングなんかやろうと思
ったの?大変そうじゃん」
幹「強い女になりたくて」
京子「清志のため?」
幹「ええっと」
京子「守ってあげてね。逆だけど」
幹「逆ですね」
微笑む京子と幹。

○体育館・更衣室
ロッカーに荷物を入れている幹。
鞄を開け白いハンカチを取り出す幹。
白いハンカチを見つめ微笑む幹。
白いハンカチ。

おしまい

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