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セキュリティカードとカニ
ダンナ君の転移性脳腫瘍、(ダンナ君のケースでは)治療法がないとされる硬膜播種を発症し、抗がん剤治療打ち切りを宣言された翌日に退院した後。転がるように悪化していきつつあるように思われた体調がそれから数日後、一転快方に向かった。
もちろん完全に元に戻ったわけではないが、退院直後はQOLを保てるのはあと1週間くらいかな、と覚悟するほどのスピードで悪化していたので、2週目に突入してもこの調子ならまだいける、と一旦は安堵させてもらっている。
病巣が言語野で悪さをするため、再発する度に言語障害が起きているが、呂律にも違和感が出て片言になりつつあった退院直後からすると見違えるように饒舌に喋るようになった。ただ、それでも1日のうちしんどい時間帯は常用単語が急に出てこなくなる。そんな今、体調のバロメーターになっている単語は「セキュリティカード」。
これが言えるか言えないかを体調の目安にしているので、一日に少なくとも100回は呟いていると思う。身体がしんどくてもこれが言えたら頭はまだ大丈夫、と。
実際ついヒトコト前に言えたはずの「セキュリティカード」が次の会話で言えなくなったりする事があり、焦燥感とパニックが伝染してこちらも冷や汗が出る。痙攣発作が起きるのでは、とよぎったりするし。。
ちなみに2回目のガンマナイフ治療前までは、頭がやばいとカ行が出にくくなるのではないかと思ったようで「カニ」シリーズだった。
カッコいいカニ。画期的なカニ。カニのカニ子。
会話の途中でしんどくなると脈絡なく急に「カニ、カニ」が出てくるので、その都度ゾッとしたものだ。。私にとっては恐怖のカニだった。
それはともかく、とりあえず今は『そうは言っても今日にでも急に発作が出てそのままあかんくなるかも』という思いで、ライフワークにしてきた音楽関連の作業を動けるうちにと毎日無理をしながら駆け込みで色々と頑張っている。
本当にすごいな、と思う。
ダンナ君は死を受け入れているが、決して生きる事を諦めてはない。
それにしても悪化していた脳の症状がこれほどまで改善されたので、やはり抗がん剤がまだ思ったよりしっかり仕事をしているように思える。
完全に脳の症状が出て、腫瘍マーカーが爆上がりしたのであの時の先生の判断については納得できるが、退院後にまさかここまで改善されているとは思ってないのではないかと思う。
来週の(予定では最後の)泌尿器の外来で、抗がん剤の継続について相談してみようと思っている。とりあえず明日は脳の造影MRIと脳神経外科の受診。
毎回、診察で寿命が縮むよね。。
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