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「妄想銀行 (星新一)」 を読みました。読書日記 2/13

すぐに忘れてしまう自分のために読んだ本の内容や感想を軽く残しておこう。

最近読了したのは、星新一の妄想銀行。腰を据えて星新一の作品を読んだことはなかったので、読んでみた。

星新一は小説に知識がない自分でも知ってるくらいの人で「ショートショート」というジャンルを代表する人だ。ショートショートとは短い短編小説のことだと思う。表現が変だ。

「妄想銀行」には星新一のショートショートが32編も収録されている。これ一冊で星新一の魅力が存分に味わえる。 、、と思っていたが星新一は800編以上もショートショートを書いているらしい。だから星新一一口分の魅力しか感じられないかもしれない。しかしそれでも十分だ。星新一一口で一生分の星新一は摂取できる。

感想としては読みやすかった。内容はSF的なものが多く、不思議な話も多いのだが、スラスラと読めてしまう。短い話の中で構成がしっかりしているから読んでいて、止まることがない。それでいて頭にもしっかり内容が残る。さらにオチが落語みたいに綺麗なので読んだ後感心して声が出てしまう。小説を普段読まない人もかなり楽しい読書経験ができると思う。

せっかくなので38編の中から気に入った3編を紹介しようと思う。

「扉」

人生に退屈していた男が不思議な形の鍵を路上で見つけ、その鍵にある扉を見つけようと躍起になるという話。最初は無気力だった男が一つの鍵をきっかけに人生が少し前向きに変わっていく様子が丁寧に描かれている。話の締めが全編通して一番綺麗で心打たれた。「鍵」がある人が羨ましい。自分にも鍵が見つかるといいなと思った。

「黄金の惑星」

宇宙を旅して惑星の地質調査をしている夫婦が救難信号を受信した。その内容は黄金の惑星を発見した、もうダメだ、助けを求むといったもの。すぐさま夫婦は信号を発信した方に向かうと、そこには黄金があちらこちらにあった。どうやら原住民がいるらしいので注意しながら黄金を船に乗せて帰ろうとしたところ、、、。
この例えは不適当かもしれないが、芥川の「鼻」と同じように人間の心理を描いた作品だと思った。星新一の作品には人間を描いたものと発達した科学の行く末を描いたものがある。個人的には「扉」や「黄金の惑星」のような人間を描いた作品が好みだった。これもオチが綺麗。

「妄想銀行」

表題作。あらすじとしては、人の妄想を吸い取り、その妄想を必要としている人に売り渡したり、取りにきた持ち主に返したりする、妄想銀行での不思議な出来事を綴ったもの。
全編の中で一番構成が綺麗だったように感じた。妄想銀行という架空の設備での話なのに読者が置いてけぼりにならないのがすごい。全編を通して唯一?人間や未来を焦点に当てた話ではなく出来事そのものの面白さが焦点になっていたと思う。
一番落語に近いかもしれない。


改めて感想

三島由紀夫だったかが、短編小説はむず過ぎるンゴと言っていたと思う。実際読む側としても短編小説は書くのが難しいんだろうなと思う。短編小説は長編小説みたいに登場人物や舞台の深堀ができない。だから長編小説の要素を最大限削り、物語の骨と薄い肉で面白さを表現しなくてはいけないから。

そんな中で星新一の作品は骨と薄い肉だからこその面白さを実現できていると思う。知らんけど。

それから星新一作品は未来の科学が焦点になっているものばかりだと思っていたが、実際には文学的な作品も多かった。だから純文学的なのを求めている人も大衆文学を求めている人にも星新一の作品は楽しめるはず。

小さいうちからこのような作品を読んでいると本を好きになれるのではないだろうか。他の作品も読んで観たくなった。とN氏は語った。





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