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創作、エッセイ、思考

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自作した小説、エッセイ、詩っぽい何かをまとめています。引用文は架空の作者と本です。
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#小説

「ビルの屋上へ行ったら、私は死んでしまうのか試してみたいのです。私の幸せから奪われた一本の鍵によって、屋上への扉は開けられてしまった。幸せは酸化して辛さへと錆びている。人はビルから墜ちて死ぬのではありません。求める幸せと現実の辛さの落差によって死ぬのです」

小鳥遊ひよの
4か月前
7

「あの人は絵に描いた餅のようなやさしい人ですね」
「それ褒めてないから。嘘吐きってこと?」
「餅だけに嘘もつき立て、つき放題ってやつです」
「あなたの性格の方が餅より粘りがあるわね」
「そこはお気餅表明ってことで」

小鳥遊ひよの
4か月前
4

『孤独な荷物の謎』

「お届け物です」 私はアパートの玄関へ出ると、そこには誰もいなかった。外を眺めても去って…

小鳥遊ひよの
4か月前
3

『優しさと金は返らない』(会話劇)

「ぼくはさ、優しさと金って、返ってくると思うのが間違いなんじゃないかって思うんだよね」 …

小鳥遊ひよの
5か月前
5

「常識なんだからって何の理由にもなっていないのよ。常識がなぜ選ばれているのか、そこにどんな意図があるのかが大事なの。『常識なんだから』で説明した気になっている人は、常識を疑ったことなんてないのでしょうね。それが呪いだとも気づかずに今日も唱えている」
九十九もずく『日常に棲む呪い』

小鳥遊ひよの
6か月前
3

「あなたの五感を奪う文章が書きたいの。見た瞬間に本へ落ちてしまうような──。それは読むという段階を踏まない。それは物語の中で、あなたの人生として経験される。気づいているかしら、あなたはもうここに居るということに──」

九十九もずく『感覚を掬う』

小鳥遊ひよの
7か月前
3

「無償の愛を与えなければ、子どもの自尊心は育たない。だが、毒になる親たちが与えるのは『生前からの有償契約』なのだ。『育ててやった恩と金』を子どもに請求する行為は、親ではなく取立人と呼ぶ方がふさわしいだろう。」 雨外 真『反家庭的ディストピア』

「家族が牢獄で、私は囚人だったと知ったのは大人になってからでした。彼らのために生まれ、彼らを生かすために生産されたのです。彼らにとって、私に自尊心など必要なかったのです。むしろ邪魔でした。囚人に人格など必要ないでしょう?」
雨外 真『反家庭的ディストピア』

小鳥遊ひよの
7か月前
3

「すべてのものには引力がある。
地球に引かれるのと同じように、人同士も引かれ合っている。
その人と人とを繋ぐ引力が弱まって消えた時、人の心は支えを失う。
人は地に落ちて死ぬのではない。
切り離された人は空へと吸い込まれて、誰の目からも消えるのだ」

栗花落つゆる『花は空に落ちる』

小鳥遊ひよの
7か月前
4

「たとえあなたのことを誰もが裏切ったとしても、死だけはあなたを裏切らない。約束を果たす日が必ず来るの。」

栗花落つゆる『世界で一番遠い約束の話』

小鳥遊ひよの
7か月前
5

「責任を果たした者は、言い訳なんかしないのよね。『これだけしてやった』とかよく言うけれど、責任を果たしたアリバイのためにあなたを利用する人間ほど無責任な存在はない。責任は自分が自分とする約束なのだから。」

九十九もずく『責任の不在証明』

小鳥遊ひよの
7か月前
4

「正義の反対って何だと思う?」
「そりゃあ、悪じゃないですか?」
「違うわ」
「違うの?」
「正義の反対は──正義よ。正義が反対の正義を“悪”と思っているだけ」
「うわあ、邪悪っすね」

九十九もずく『戦争と悪魔』

小鳥遊ひよの
8か月前
3

ぼくの部屋は宇宙のかなた

「今日も読書日和だね」 部屋の窓から外を眺めると、見渡す限りの星空が広がっていた。どの時…

小鳥遊ひよの
10か月前
7

イイコノハラワタ 2(星くずの屋上)

「立派な望遠鏡ね。って、いきなり話しかけたのは悪かったけど、そんなに驚かなくてもいいじゃない。都会でも星が見えそうな澄んだ空だわ。ビルの屋上ってさ、ちょっとドキドキしない?冒険してる感じがするっていうかさ。わかんないかなあ。まあ、いいけど。 ところでさ、見えないモノを見ようとして望遠鏡を覗き込んだって歌詞があるじゃない? 天体観測なら素敵な趣味だけどさ。人の生活や心を覗いたらまずいと思うよね。でも、人間ってそういうの大好物なんだよね。人間の本性ってやつ? 遠くに浮