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今 ここ でできることを…

一昨日、久しぶりに入院している夫と窓越し面会をしてきた。
前回は全く反応がなくて、悲しくて悲しくて、帰ってきてからひとりぽろぽろ涙をこぼしてしまったので。今回は、覚悟の上、出かけた。
デイルームにベッドごと連れてきてもらい、私は窓から様子を見る。
トントン、窓をたたいてみてもこちらを向かない。
「奥様来てますよ」
看護師さんが、私の方を指さしてくれたけれど、夫の眼はどこを見ているのやら…。
少し横の窓を開けてくださったので、
「聞こえる? 来たよ」
と声をかけたら、んっという表情になり、こちらを向いた。
確かに、しばらく目が合っていたし、目が合ったと同時に、まるで「あっ」というかのように口を開けた。
私のことをどう認識しているのかわからないし、
ただ聞いたことのある声がしたと思っただけかもしれないし…。
夫に世界がどう見えているのか、いまだわからない。
しっかり認識できているとは思えないし、すぐに視線は定まらなくなってしまうし。
それでも、ほんのひとときでも確かに通じ合ったという感触を得られたような気がして、なんだか胸にぽっと温かいものが。前回とはまた違う意味での涙。切なさは消えないけれど…。

相変わらず感染者が減らない状況の中では、いつ面会が再開されるのか目処も立たない。
年内の再開は難しいかも…とおっしゃっていた看護師さんも。

耳元で話しかけたいし、手を握りたいし…。
以前のように、素人なりではあってもリハビリを続けることで、できるだけ拘縮を防ぎたいし、少しでも機能を回復させたいし…。ただ寝かされているだけでなく、楽しさや心地よさを感じられるように工夫したいし。
そんなことは、私の自己満足に過ぎないのかもしれないけれど。
夫にとってなにが最適なのか、答えは出ないから…。
それにしても、こんなささやかな願いさえ叶わない日々がやってくるとは。

夫の隣のベッドに入院している方の奥様(70歳)と、時々LINEでやりとりをしていて。
先日、
心の中の穴が益々大きくなっていくような毎日です
と。

痛いほどわかる。全く同じだから。
夫が倒れ、回復不可能と言われたときに空いた穴は、いつでも胸の奥にあって。こうして会えない状況の中ではさらに存在感を増して…。

それでも、心をその穴に占領されてしまうわけにはいかないから。
私なりに歩き続けているし。それなりに、日々の暮らしを楽しんでもいる。

いつになったら、また通常モードに戻れるのか全くわからない。今までのような暮らしに戻れるのだろうか…。
今は、この時期だからこそできることをしていこう…。そして、少しだけ先のことを考えよう。
そんなことを改めて思い、自分で自分を励ましたりしている昨日今日…。

人の心は、深くて、そして不思議なほど浅いのだと思います。 きっと、その浅さで、人は生きてゆけるのでしょう。
(星野道夫)

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