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猫舌の自覚

昔から冷めたおかずがなぜか好き。実家で母親が夕食に用意した唐揚げや肉だんご、煮物を次の日温めずに食べることがよくあった。
電子レンジがないわけじゃない。普通にある。

鶏の煮物などが冷えて煮こごりのように汁が固まったのも大好きだった。あと、母親がよく作ってくれた鶏レバーの甘辛煮は冷えてるのが美味しいと思っていた。
この鶏レバーは我が家では大人はおつまみ、子供はおやつみたいな感覚で食べていた実家の味だ。

ハンバーグやコロッケ、メンチカツ、生姜焼き。後で食べる時に温めていた記憶がない。
そして味付けが濃いものほど温め直さない率が高かったように思う。

大人になって飲みの席で人に話したら
『えぇえ?!』と驚かれてしまった。
え、そんなに変…??

もし、外食で運ばれてきた料理が冷めてたら。
それは私もがっかりする。お料理の温度もお店の雰囲気も店員さんの接客も全て込みで外食の価値と思う。熱いお料理なら熱々で目の前に出して欲しい。

そして私は熱い料理を食べるとほぼ100%火傷する。
人間は構造的にみんなそうで、それを我慢しながら熱いものを食べていると信じ切っていた。
しかしどうやらそうではないらしい。

世界中の人間が出来立ての料理で火傷をしていない事実に私はおったまげてしまった。
お約束のように火傷をする私は『猫舌』の可能性が濃厚とも同時に知った。2度びっくりな話だ。

『猫舌』は小悪魔あざと系モテ女子の必殺技と思っていたのでまさか自分が『隠れ猫舌』ということに泡吹いて倒れそうになったが、指摘され自覚すると(そうか…猫舌なのか…)と妙に納得もした。火傷したなんて当たり前すぎて誰も口にしないで生きてるのかと思ってたし、私はずっとそうだったので大人になってもなかなか気づけなかった。

世の中の猫舌属性の皆様は、人生のどこで自覚するのだろうか?

私は幼い頃から自覚がないだけで熱いもので傷つきながら生きてきた。それで自然と『危険じゃないもの』を好んだのかもしれない。
わざわざ自分が手にしている爆弾に自分で火をつける気にはならない。これから私の胃袋に入る料理を熱々にしてぶん投げるわけにはいかない。

熱いと味もあんまりわからんよね、と思う部分もある。ベロを守りながら熱々おかず達と戦い、熱々の米を噛み締めて熱々のお味噌汁。ベロに続々とダメージ。つらい。味わう暇もない。

そんな反面、外食はベロ死ほぼ確定だ。
いやじゃあ、ちょっと冷ましてから食べなよ?と思うかもしれないがそれも私には難しい。
目の前に出てきた瞬間が一番美味しいのでしょう!一番美味しいところを逃すのは罪!お腹も空いてるっ!今すぐいただきます!という興奮状態で爆弾を口に運んでしまう。

猫舌をもっと自覚しようと思っても長年火傷しながら食事してきたので料理と向き合うとすっかり頭から抜けてしまう。
上あごの皮がベローンとむけたりするのも厄介だけどどうやって守ればいいのかわからないし大抵食事が終わってから気づくので対策するのが難しい。

本日も立ち寄った喫茶店の海老アボカドドリア&ホットコーヒーのコンビにやられた。ふーふーするのも忘れ自分が猫舌なことも忘れた。
空腹恐るべし。

帰宅後、半額お惣菜の冷めたままのカキフライと白ワインで傷だらけのMY猫舌を慰めた。

ネットの海では『冷めてる食べ物が好き』派を度々お見かけする。そんなあなたはもしや猫舌なのでは?と勝手に思っている。
私の周りには同志がいなくてちょこっとさみしい。猫舌で傷を舐め合ってみたいなどと思ったりしている。


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