乳児期に家庭で取り組んでほしいこと
保育園や幼稚園に対してどのようなイメージをお持ちですか。
保育園は「家庭的」、幼稚園は「教育的」そんなイメージが多数なのではないでしょうか。このイメージは間違いではありません。
保育園は厚生労働省が管轄し家庭に代わる保育が目的であり、幼稚園は文部科学省が管轄し教育を受けさせる事が目的となっています。最近では教育と保育を一体的に行う事を目的とした認定こども園も増えてきています。
保育園の理念やクラスの状況によりクラスの運営方針は変わっていきますが保育園は家庭に代わる保育を目的とする中で、子どもの自立を目指しています。保育園に預ける背景として共働きの家庭が多く、家庭ではそんなに子どもに対して自立を促す関わりをする事が難しいといった保護者の悩みを多く聞きます。
しかし、保育園だけでの関わりでは子どもの発達は緩やかになりがちです。例えば、家庭では時間がなく靴を履かせているとします。すると子どもは「靴は履かせてもらえる」といった認識になります。なのに保育園では自分で履くように促される…そういった事が重なると「保育園って嫌なところ」といった印象になって登園渋りが見られたり、保育園で集団から遅れるといった事が生じてきます。もちろん反対の事も考えられます。
家庭での関わりが熱心であっても、保育園は集団生活の場なので一人ひとり大きく違う事をする事は難しい場です。家庭でいくらトイレトレーニングをしても保育園ではみんな紙おむつで過ごしている…散歩などの活動によりトイレトレーニングに制限がかかるなどでなかなか進まないといった事例も多くみられます。
そんなズレを解消し、子どもの自立する力を助長していく事を目的に本記事では保育士が思う乳児期に家庭で取り組んでほしい事をお伝えしていきたいと思います。
※本記事はあくまで目安になりますので実際の担任の先生等と自身の子どもの姿をもとに考えていただければと思います。
*着替え~衣服の着脱をしてみよう!~
①脱ぐ
衣服の着脱は脱ぐところからはじめてみましょう。導入として帰宅後などに靴下を脱ぐのがいいと思います。手先で靴下を脱ぐためには身体のバランスが取れるという事が条件となってきます。はじめから脱ぐ事は難しいため、かかとを外した状態で「ここ引っ張ってごらん」と伝えてみましょう。
靴下が脱げる(取れる)ようになってきたらズボンやTシャツも同様にして行っていきます。お尻の部分だけ下げ、座った状態でズボンを引っ張る練習をしましょう。ズボンが裏返しになっていても気にせず、上手に脱げたらたくさん褒めていきます。Tシャツは袖の先を持ってあげながら腕の抜き方を伝えていきます。首の部分は服によって脱ぎにくいものもあります。子どもは視界が遮られるとパニックになりやすいため首周りにゆとりのあるものを選ぶか、肌着等で練習していきましょう。このような関わりをしていくと次第に大人がサポートしていた部分にも興味を示してくるようになります。その意欲を大切にしながら少しずつステップアップしていきましょう。
②着る
着るという行為は脱ぐ行為の逆の手順からはじめていきます。この場合靴下のかかと入れは難しいものになりますのでズボンの足を出すところやTシャツなどの首を通すところからはじめていきましょう。「せーの」や「いないいないばあ」等といった声掛けをしながら両手で引っ張る部分を伝えていきます。「お手て出てくるかな~」「○○ちゃんどこかな~」等と楽しみながら取り組みましょう。
先ほど触れた通り、かかとやお尻は引っ掛かりやすく両手で丁寧に引っ張る必要があります。大人が少し手伝いながら一緒に引き上げ成功体験を重ねていくといいと思います。そして①と同じように自分で首を通す→手を通す等のように工程を増やしていきます。ズボンは小さめの台を用意し座りながら履ける環境を整えると履きやすくなります。(保育園の環境攻構成を聞いてみるのも良いと思います)
☆お風呂前後の着替えから取り組んでみよう!
”着る”という行動には衣服の前後を見極める力が必要になってきます。子ども自身は一人でできたと思っていても前後が違うとそのまま外出できなかったり、気になってしまい褒める前に「違う違う!」と否定してしまいがちになります。それを防ぐためにもパジャマへの着替えがおすすめです。(パジャマであれば前後が違くてもそんな気になりませんね)
また、”脱ぐ”行為もお風呂前の着替えであればそんなに裏返しで脱いでいても気になりませんね。脱いだ服を入れるカゴを用意しそこに入れてもらうようにすれば次第に整理整頓の力も身に付きます。そして入浴後、子どもから見てそのまま着れるように一つずつパジャマを用意します。(上の服は背中側が上になります)
着替えのたびに子どもに取り組ませるとなかなか進まずそんなに時間が取れなかったり、子ども自身も飽きが生じて意欲が減退してしまいがちですが、一日の中で取り組む時間を決める事でお互いスムーズに取り組めるのではないでしょうか。
図のようなイメージで少しずつアプローチしていくと良いと思います。
*食事~食べさせてもらうから自分で食べるへ~
①楽しい雰囲気の中で食事をしよう
先に子どもの分を作り食べてもらう。そんなご家庭が多く”孤食”が問題となってきている世の中です。理想としては家族で一緒に食事をとる事ですが、仕事をしながら育児をするとなかなか子どもとゆったり食事をするのは難しいかもしれません。
まずはできるところからはじめてみましょう。朝食のメニューを固定しているご家庭も多くいます。メニューが決まっていれば少しは時間に余裕ができますね。それでも朝は忙しい…というのであれば帰ってきての間食やデザートのフルーツだけ等でも同じものを一緒に食べるという時間を作りましょう。「おいしい」という感情を共有することが大切になります。
②食具の使い方を知ろう!
1歳児クラスでは月齢が低くてもスプーンやフォークに移行していけるように練習を始めていきます。食具に対して興味がない子に対して無理やり教える必要はありません。まずは食事と一緒にスプーンを出すようにしましょう。次第に子どもからスプーンに興味を示して持つようになります。そうしたらスプーンにご飯を乗せてあげましょう。子どもが自分ですくいやすいように食材の形態を工夫するのが良いと思います。
保育園では最後に食器に残った食材を集めて欲しいサインとして「あつまれして」と言う事が多いです。乳児期はあくまでも楽しく食べる事が大切です。ある程度食べ進められるようになってきたら「集まれする?」等と声掛けし、綺麗になった食器を見て一緒に(「ピカピカになったね!」等)喜びましょう。そうする事で完食する事の満足感や達成感に繋がります。
食具は上手持ち→(下手持ち→)三点持ちに移行していきます。だいたい2歳児クラスになってから三点持ちの声掛けをはじめ、箸へと繋げていく事が多いです。片方の手は食器に添える事も忘れずに伝えましょう。そして食具を持ち始め上手持ちが安定してきたら利き手にも着目してみましょう。毎回持つ手を変えているようであれば園と相談し利き手を見つけていく必要があります。
③三角食べを意識しよう
ご飯・おかず2種・汁物 保育園のメニューはこういった構成が多いのではないでしょうか。園では野菜のおかずから食べるように勧めたり、ある程度食べ終えてから汁物を出す事が多くあります。小さな子どもにいきなり三角食べを教えてもストレスになり食事が嫌な場になりかねません。また手も小さく自分で食器を動かしながら食べる事も困難です。子どもの食事に対する意欲に合わせながら大人が意識する程度で良いと思います。(最近お肉ばっかり食べてご飯が残りやすいな…等と感じたときには一度見直す等)
*トイレトレーニング
トイレトレーニングの開始は園によります。なので無理に始めようとせず園の方針に合わせる事をお勧めします。その中でもご家庭でできる事があります。それは声掛けです。おむつを変える際、チェックする際に「おしっこ出てるね(出てないね)」と声を掛けましょう。子ども自身が排尿の感覚を知る事がトイレトレーニングの第一歩です。大人が確認する前に「(おしっこ)出てる?」と自分で考えさせる事も良いと思います。自分で出ているかどうかが分かるようになってきたら「出たら教えてね」と段階を上げていきましょう。
おしっこが出たら伝える→おむつを替える この事を子どもが理解できれば十分です。
最後に
本記事では乳児期に保育士目線からご家庭でして欲しい関わり方をお伝えしましたが、意外とできる事が多いと感じる方もいたのではないでしょうか。子どもの成長は早いもので、園での様子に「そんな事ができるんですか!?」と驚かれる方がいます。いつまでも赤ちゃんのようにお世話をしてしまう事が多いんです。子どもが自立していく事は少し寂しい事でもありますが子どもができる事が増えれば日常も楽になる事が増えます。できる事が増える姿を一緒に喜んでいけるといいですね。
そして冒頭でも述べましたが一番大切な事は園の方針やクラスの進め方を理解する事です。関わり方が園と大きくズレてしまうと子どもが混乱したり意欲減退に繋がりかねません。送迎時や連絡帳のやりとり、おたより等を参考にしながら子どもの姿と照らし合わせていきましょう。
園での過ごし方を少しでも理解し子どもの健やかな成長に繋がればと思います。
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