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叱られたことがないと思っていたけれど

私は父に叱られたことがない。

注意されたりはあるけれど、
声を荒げたり、怒鳴られたり
ましてや手を上げられたことがない。

私が様々なことで反抗したり
癇癪を起こして当たっても
まずは私の話を聴いてくれて
一緒に考えてくれる人だった。

と、ずっと思っていたのだけど、
先日私が子どもに怒っているのを見て
父が
「お互い余裕がないと引っ込みつかんくなるからな」と言い、
私は
「まあねぇ。お父さんはいつも余裕を持ってたけど、なかなか難しいね」と答えたら、
なんと父は私を叱りつけて
ゲンコツをゴチンとしたことがあって
それを今も後悔していると言い始めた。

私が言うことを聞かなかった時に
こりゃー!と叱りつけ、ゲンコツを落としたらしい。

そしてその時のことを後悔していると。
ちゃんと余裕を持って対応すれば良かったと。

その時の私がオレンジのジャージを着ていたことも覚えていると。

びっくりした。

私は何ひとつ覚えていない。

怒られるのは祖父からと母からばかりで
父はいつも、まずは私の話を聞いてくれてた記憶しかなかった。

その記憶を持ってここまで生きてきた。
私が何ひとつ覚えていないことを父は覚えていて、その後そうならないようにしてきたのか。

私の記憶にある父の姿は
そんな意思のもと表されていたものだったのか。

その時の情景を40年もたった今でも
まざまざと思い出せるほどの出来事だったのか。

驚いたな。

だが、私はオレンジのジャージを着たことは
人生において一度もない。
それだけは間違った記憶だ、お父さん。

2022年8月に書いた記事より

先日、別の媒体で書いた記事なのだけど、noteにも残しておきたいと思って、そのまま引用という形でこちらにも載せました。

* * *

この記事を書いてから既に半年程が経とうとしているのだけど、私にとってはかなり衝撃的な出来事で、何かにつけて「そうだったのか…」と何回も思い出していた。

この日以降も、私は変わらずイラっとすることがあるのだけど、その度「そういえばお父さん…」と思い出す。
父の姿が頭を過る。
一瞬だけ自分のイラっから離れられる気がする。

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