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生成AIと考えることばのみかた④:その言葉はどう組み合わさっている?

かたちからみることば

小麦粉、砂糖、卵、バターといった材料があれば、クッキーやパンケーキ、フィナンシェなど様々なものが作れます。同じ材料でも、作り方や組み合わせ方を変えることで、完成する料理は全く異なるものになります。

言葉にも、これは当てはまります。単語という"材料"をどのように組み合わせるかによって、物語にもなれば、詩にもなり、論文にもなるかもしれません。

このように、発話や文が、どのような要素からなり、組み合わさってできているかという観点から言葉にアプローチする見方、ことばの構造 (structure)の見方を、本記事では見てみます。

組み合わせると、どうなるの?

ことばを、構造という観点から見るときには、ある表現がどの要素を組み合わせて作られているか、という観点から言葉をみます。特に、システミック理論では、構造を「有機的構成」として捉える点が特徴的です。

 有機的構成とは、それぞれの構成要素が全体に対して特有の機能を担っているという考え方です。例えば、人体を構成する頭や胴体は、人体という全体があってはじめてその機能や性質が決まります。言語においても、節を構成する句や語は、節という全体があってはじめてその機能や性質が決まります。

 例えば、「浅い皿」「浅い考え」という表現の構造について、考えてみましょう。どちらの表現でも、構成要素の一つとして「浅い」という表現が利用されています。

構造を有機的構成として捉える!

「浅い皿」で、「浅い」は深さが足りないことという意味で使用されています。一方で、「浅い考え」では、知識、理解、経験などが十分でないという意味で使用されています。当たり前のように思えますが、同じ"材料"「浅い」が使われていますが、どんな材料(「皿」「考え」)と組み合わされるかによって、その意味が変わってきます。

 このように、ある要素の役割や意味は、他の要素との組み合わせによって決まってくるので、システミック理論では、言葉の構造を見るときに、有機的構成を見るのが大事だと言っています。

組み合わせをどう表現する?

システミック理論では、構造は「階層」(rank)という原理に基づいて整理します。ざっくり説明すると、花は、めしべ、おしべ、はなびら、がくからできているなど、何は何の一部なのかを考えて、整理するということです。ちょっと難しく表現すると、階層とはある構成要素とある構成要素の間に存在する「is a part of」(XはYの一部)という関係を捉えることとも言えます。

階層を使った構造の表し方

例として、階層という考え方を使って、「カプチーノよりフラットホワイトが好き」という文の構造を見てみましょう。この文は、事実、意見や情報を伝えることを主な目的としたもの(「陳述文」と言います)で、「カプチーノより」「フラットホワイトが」「好き」の3つの句から成り立っていると考えられます。ここで、「カプチーノよりフラットホワイトが」が一つの句じゃないの?と思う方もいらっしゃるかもしれませんが、ここでは、「フラットホワイトがカプチーノより好き」と場所を変えて表現できることから、3つの句としています。さらに、「カプチーノより」は、「カプチーノ」と「より」という2つの語から構成されています。このように、言葉の構造は、階層という考え方を用いて整理します。

システムと構造の関係は?

最後に、前の記事で説明した「システム」という考え方と構造が、システミック理論では、どのように関連づけられているのか、見てみましょう。

おさらいになりますが、システミック理論で「システム」とは、言語における選択肢のネットワークを指します。もう少し分かりやすく言うと、「ある文脈で、どんな言葉の選択肢があるか?」「選んだ言葉によって、どんな意味が生じるか?」これらを体系的に捉えたものがシステムです。

システミック理論では、構造という概念を、システムの選択肢(feature)がどのような構成要素を持って表現されるのかを定義するために使います。この構造的な定義付けによって、システムと構造の次元がひとつのシステムネットワークとして表現されます。少し大雑把なものですが、以下の例で考えてみましょう(本当はこんなに単純じゃなく、もっと多くの選択肢があるのですが…)。

システムと構造の関係

何か発話しようと思ったときに、その機能の選択肢として、仮に、陳述文と疑問文という2つがあるとしましょう(実は他にもありますが、説明の簡略化のため2つのみ記載)。仮に、陳述文を最初に選んだとして、その具体例として、一例として「食器片付ける」という発話があるとします。

 この文を、疑問文に変えたいとしたら、どうするでしょうか。一つの手段として、疑問詞「か」を加えるという方法があります。文の構造に「か」を加えることで、「食器片付けるか」と、疑問文に変えることができます。

 このように、言葉の選択肢と構造を一緒に関連づけて、システミック理論では、システムと構造の関係性を捉えます。

まとめ

本記事では、システミック理論における構造 (structure)という概念、構造を整理するために利用される原理である階層 (rank)、システムと構造の関係性について説明しました。

 構造のという言葉の見方は、言語を「構成」として捉え、ある表現がどのような要素から成り立っているかを分析する際に重要な観点となります。また、構造とシステムの次元は相互に関連しており、この関係性を示すことがシステミック理論での基本となっています。

 これらの概念を理解することで、言語の構造とシステムの関係をより深く理解することができます。


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