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天使たちとの共同戦線(六章、天使の力)

ビランチ「戻りました。世話を掛けましたね。ヌーラ。」

ヌーラ「いえいえ。困っている時はお互い様です。」

ビランチ「ではヌーラは休んでもらっても構いません。」

ヌーラ「いえわたしはオッソと代わります。その方が潜入の為にもいいでしょう。」

ビランチ「・・・ではお言葉に甘えさせて頂きます。フォルテが戻るまで代わりをお願いします。」

ヌーラ「了解です。(オッソ聞こえますか?私です。ヌーラです。)」

オッソ「(ん?何かあったの?)」

ヌーラ「(いえ事態は落ち着いています。それよりビランチが戻ったのでオッソの代わりはわたしが引き継ぎます。)」

オッソ「(あら?もういいの?まぁその方が潜入に集中出来るからわたしはいいけど。とりあえず了解したわ。)」

ヌーラ「(どうもです。)はいオッソからの引き継ぎ終わりました。」

ビランチ「ありがとうございます。ヌーラ。」

フォルテ「戻ったよ。」

?「あら、話をすればお早いわね。」

フォルテ「一大事だからね。悪いがヌーラ。これから僕は下界に降りるからもう少し代わりを頼むよ。」

ヌーラ「はい。いってらっしゃい。」

フォルテ「世話を掛けるね。」


〜〜〜〜〜


高校を卒業した俺は大学を受験するも見事に全落ちし飛び込みで専門学校に入学した。

入学した専門学校で俺を待っていたのは小学校から高校まで受けた虐待とは違う苦労だった。

この頃の俺は漸く精神的に落ち着いた頃であった。

しかし固定観念が強すぎた。

俺は小学校から高校卒業に至るまで周囲に関心を持たなかったせいか社会生活においてどのようにして周囲と上手くバランスを取って生きていくか・・・つまり社交性が欠如していた。

それに加えてこの年になって周囲と上手くやっていくことを教わるのは自分自身の小さいプライドが許さなかった。

つまり俺は高校を卒業して漸く初めて人生のプラスでもマイナスでもない(虐待を入れれば確実にマイナスだが。)スタートラインに立つことが出来たのだ。

虐待が一先ず落ち着き漸く父親と渡り合えるだけの実力も持ち始めた。

しかしこの時の俺の置かれていた状況は一先ず虐待から抜けだせただけの状況だった。

家庭内のパワーバランスは母、俺、妹、クソ(父)の順になりこの頃からクソは今まで俺たち家族にしてきたことが次々と返ってきていた。

家の物や母の金を盗むようになりそのことで母や妹から毎日「死ね。」とことあるごとに言われ続け夜な夜な神に「神様どうか殺してください。」と書くまでに悪化していた。

今まで家族にしていた仕打ちが全て返って来ているように見えた。

最初はクソに対して怒りも湧いていた俺だが徐々に哀れに見え興味すら無くなっていた。

復讐した当初は「やっと死んだか。」

と病院のベッドで言ってやろうと思っていたが次第にそんなことを考える時間も勿体ないと思うようになった。

俺は専門学校に入学した頃やっと自分の人生を歩めるようになったのだ。

人に従って生きるだけではない己自身の意思に従う人生を。

親殺しの十字架を背負って。

しかしここからが大変だった。

なんせ周囲の人間と全く違う世界観で生きてきた俺にとって社会に馴染むのは難しすぎた。

虐待経験というのは(乗り越えた)当事者からしたらもう過去のことであり難なく話せるのだが、聞いている方からすると涙が止まらないそうで逆に当事者の俺が気を使う羽目になった。

しかし大学でも専門でも友達を作るには自分の話をしなくてはいけない。

「そうすると俺の場合バカ真面目に話すと親を殺す為に剣道を極め心理学を極めて結果親を廃人にした・・・と言うのか?いやいや‼こんなこと話せば確実に初っ端から誰も近寄らなくなる・・・もう何から手をつければ・・・あ!そうだ‼確か天使にまやかしを使うセイがいたな・・・!堕天使だけど笑。あのまやかしで上手く俺の異質な部分を隠せないかな・・・そうして隠した上で出来るだけ普通に過ごせば・・・。」

いやダメだ。

「まず第一にセイが力を貸してくれるのを当てにしてる時点で安定性に欠けるし普通って何が普通なのか分からない!しょうがない・・・また心理学に頼るか・・・。」

俺は心理学の力を使い俺自身が集団に溶け込めるように心理誘導をしようと考えた。

またその時にクソの時みたいに道を外さないよう誘導していい場合のルールを設けた。


心理誘導の掟

人道・道徳に反することはしない

相手の立場や感情を考えること

むやみやたらに誘導しないこと

基本的に自衛の目的のみに使用すること

第四項において命に関わる場合は例外とする


この五つだ。

対策を立てることで専門学校での生活を保つことにした。

そうして自分の人生を歩み始めたある日また新たな天使が現れた。


フォルテ「君がミィディアだね?僕はフォルテだ。よろしく。」

ミィディア「フォルテ?よ、よろしく・・・汗。」

フォルテ「突然なんだけど君は天使の事について誰かに話したりしたかい?」

ミィディア「は、話してないよ汗。話しても頭がおかしい奴だと思われるだけだし。それより聞きたいことがあるんだけど・・・いいかな?」

フォルテ「・・・何が聞きたいんだい?」

ミィディア「天使の力ってさ・・・使っちゃダメなのかな?」

フォルテ「君が・・・ってことかい?」

ミィディア「・・・そう。」

フォルテ「使ってダメなことはないよ。君の場合は最初の使い方が人を貶めるという天使の意思に反する使い方をしたから罰が科されたけど基本は君が君の成長の為に使うのであれば問題ないし相手に使うのも助ける目的であれば構わない。」

ミィディア「・・・じゃあさ、天使の力を俺の力の一部として考えてもいい?」

フォルテ「ん?どういうことだい?」

ミィディア「例えばさ、イタコって知ってる?」

フォルテ「あぁ霊を体に憑依させるアレか。知ってるよ。」

ミィディア「それを天使で出来たら・・・って思ってるんだけど、ダメかな?」

フォルテ「ふっ・・・面白いこと考えるね。別に僕たち側は問題ないな。だけど・・・分かってるのかい?僕たちの力を使うのがどういう意味を持つのか。」

ミィディア「・・・どういう意味を持つのか・・・って?」

フォルテ「君はやっと自分の人生を歩み始めたんだろ?僕たちの力を君の力として使用するのは構わない。だけどね、シェンスからも聞いたと思うけど僕たちの声は何れ聞こえなくなる。だからあまり僕たちの力を当てにして生きているとまたどこかでつまずくよ。」

ミィディア「・・・それはいずれは自分の力で自分の人生を歩まなくちゃいけないのは頭では分かってる。だけど暫く〝自分〟が作られるまでは力を貸してくれないか?」

フォルテ「・・・笑。悪魔と契約した人間の話はいくつも聞いてきたけど天使と契約をする人間は初めてだな。いいよ。序に天界の全天使たちにも今の話を伝えておいてあげるよ。他の天使とは初めて会った時にでも契約するといい。」

ミィディア「‼、伝えておくって・・・フォルテってもしかして熾天使?」

フォルテ「ああそうだよ。ビランチの次に力がある。」

ミィディア「No.2ってこと?」

フォルテ「人間界でいうとそんなところだね。」

ミィディア「・・・凄いな。あとこんなことフォルテに聞くべきじゃないのは分かってるんだけど・・・セイとかの力も使い方を考えれば使っていいのかな?」

フォルテ「・・・あいつらの力は考えて使うなら構わないよ。あいつらは天界の行いを背いて堕天使になったが問題なのは行いを背いた力の使い方であって使うこと自体に問題はない。堕天使の力を君が人を助けるためだったり全体的調和の為に使うのであれば問題はない。」

ミィディア「そっか・・・分かった‼」

フォルテ「でも一つ注意がある。」

ミィディア「注意って?」

フォルテ「それは、僕たちが下界で使える力の最大出力に限界がある・・・ってことだ。」

ミィディア「限界?」

フォルテ「ああ。君たち人間の体には僕たちの力は負荷が大き過ぎるんだよ。」

ミィディア「あ!それセイが言ってた。」

フォルテ「セイが?」

ミィディア「うん。セイは〝鉄の容器にマグマを注ぐようなもの〟って言ってた。」

フォルテ「認めたくはないけど良い例えだな。」

ミィディア「・・・どういうことなの?」

フォルテ「天使が使うことを想定している力だから人間の体で使うのは想定されてないんだ。だから天使の力を使い続けるのは命を削る行為なんだ。使うなら時間制限とかを設けたほうがいいかもね。」

ミィディア「なるほど・・・。」

フォルテ「実はね、下界で一番力を使えないのは僕たち熾天使なんだよ。」

ミィディア「え⁉何で?」

フォルテ「下界で活動する天使たちに合わせて天使自身の力が及ぶ範囲を下界を作る時に決めてしまったからだ。」

ミィディア「何で決める必要があったの?」

フォルテ「天使が人間に干渉し過ぎるのを防ぐ為だ。」

ミィディア「あー・・・天使が干渉し過ぎて人間が自分の力で生きることが出来なくなったら本末転倒だからってことか。」

フォルテ「その通りだ。天使が人間に貸せる力の最大出力が人を介してその天使自身の四割だ。と言ってもそんな奴は今までいなかったけどね。」

ミィディア「・・・四割出せたらどれくらい凄いことが出来るんだ?」

フォルテ「・・・ちょっと想像がつかないね。ソロモンでも二割が限界だったから。まあでも二割出せたら剣術や武術なんかの達人の域は簡単に上回る力を出せるだろうね。達人が赤子に感じるくらいかな。」

ミィディア「二割でそんなに⁉」

フォルテ「でも体の負荷は相当なものだ。」

ミィディア「まぁそうかもしれないけど・・・他にはどんなことが出来る?」

フォルテ「君、シェンスは知ってるね?シェンスに力を貸して貰えば天才でも思いつかない発想を湯水のように出せるしフェアなら会話で苦労することもないだろう。あいつは言葉を司る天使だからね。あとはセイだがあいつは天使じゃないがまやかしの力を持ってる。君の視界に入る者たち全員にまやかしをかけることも可能だろう。」

ミィディア「まじか・・・。」

フォルテ「まぁ力を使うのは自由だが使い方を誤れば罪が追加されるからね。そこは肝に銘じておくといい。」

ミィディア「・・・お、おう。」

フォルテ「それじゃ、僕は上に戻るからね。」

ミィディア「分かった。ありがとうフォルテ。」

フォルテ「礼には及ばないよ。」

そういうとフォルテは消えていった。

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