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超条件世界{四章、世界を違えし者}

これは、世界を図らずも分けてしまった者たちの物語・・・。


「さて、じゃ、今回も返納の説得に行く一族を決めるわよ。」

「えーまた決めるんですかー?」

「何か文句でもある?」

「だって、もう何回目ですか?」

「本当だヨー。何回行かなきゃいけないんだヨー。」

「・・・何回言ったら終わりとかそういう問題じゃないからな?これは。」

「フェルトの言う通りだ。これは回数の問題じゃない。」

「そんなこと分かってますよー。」

「じゃ、何で聞いたんだよ?」

「フェルト。ルチーク達はもう自然神付与者たちに振り回されるのはうんざりだと言いたいんですよ。」

「ま、ルチークと陰間ちゃんの言いたいことも分かるけど、こればっかりは決めないとね・・・。」

「ええ。でも早く各一族を説得し、力を返納することが出来れば、それ以降この問題で頭を悩ませることはなくなりますよ?」

「そしたら、決めるしかないナ!」

「で、誰がどこに行くんだい?」

「僕水分一族がいいですー。」

「何故だい?」

「一番怖くないからですー。」

「じゃ、私ハ迦流美だナー。」

「・・・フェルト。お目付け役よろしく!」

「・・・はあ。」

「じゃ、私は夜藝速に行くわ。」

「あら、ビュージュ。珍しいですね。そこを選ぶとは。」

「・・・偶にはハズレ引いとかないと、引きたくない時に意図せず引くことになるからね。」

「成程。恩の先売りですか。」

「そういうこと。」

「じゃ、僕は自動的に志那都だね。」

「・・・今回も上手くいくかは分かりませんが。」

「ああ。各自、説得に行こう。」


~~~~~


「(さて、これから水分の説得に行くみたいだけど、大丈夫かな?)」

「何がですかー?」

「(君、気づいてないようだから言っておくけど、水分一族も君のことはあまりよく思ってないよ?)」

「え!何でですかー?」

「(懲らしめた付与者たちをデチーレと一緒に送っていった時あっただろ?)」

「そういえばありましたねー。」

「(その時、どの一族も例外なく、君たちのことをやり過ぎだと思っていたみたいだからね。)」

「イプノは力を使えないのに、どうして相手の考えていることが分かるんですかー?」

「(これくらいは力なしでも大抵の人間なら分かるよ笑。君が鈍感なだけさ。)」

「そうなんですかねー。」

「(分からないのは君か陰間くらいだろうね。)」

「今、イプノから貶されたことは、僕でも分かりますー。」

「(笑。まあ、十分注意した方がいいよ。これから先は多分悪くなることはあっても良くなることはないだろうから。)」

「それは当然、自然神付与者たちのことですよね?」

「(・・・まあ、自然神付与者もそうだし、他の付与者もそうだ。)」

「・・・そうなんですか?」

「(ああ。)」

「それも、他の人たちは大抵分かっていることなんですかー?」

「(・・・いや。それは、神のみぞ知るところだ。)」


~~~~~


「(ねえ、今回の夜藝速説得。何で自分から立候補したの?)」

「使役者同士で集まった時言ったでしょ?恩の先売りよ。」

「(恩の先売りねぇ・・・。)」

「何?おかしいこと言った?」

「(普通の人間なら、全然おかしくないんだけど、あんたはちょっとねぇ~~~。)」

「どこが引っかかるの?」

「(まず、引っかかるのが、あんたそんなに罪と罰を意識した殊勝な人間だっけ?)」

「これでも信心深いのよ?」

「(・・・他の使役者もいないんだから、もう嘘なんてつかなくてもいいのよ?)」

「・・・まあ、あなたに隠し事は無理か。」

「(そうよ!天使グラント様に隠し事なんて百年早いのよ!)」

「笑。・・・そうねぇ、何で立候補したかだったわよね。」

「(ええ!)」

「それはね、これ以上しくじらないためよ。」

「(・・・どういうこと?)」

「まず、前回の祓火たちを雹聚の力を借りて止めた件あったわよね?」

「(力に任せて、全員を瀕死状態に追い込んだやつね。)」

「そうそれ。私はこの時行ったルチークの作戦は悪手だったと思うわ。」

「(・・・そうかしら?)」

「グラントはルチークが私たち天使の使役者が恨まれないように上手くやったと思ってるんでしょうけど、私から見たら唯一中立の雷を争いの渦に引き込んでしまったと思ったわ。」

「(・・・でも、彼女は言われてやらされただけよ?それで恨む奴なんているの?)」

「天使には分からないでしょうけどね、人間は殆どがそんなに出来た生き物じゃないのよ?“いくら頼まれたからって限度がある。”とか“断ることも出来たはずだ。”とか、最初の理由なんか忘れて他人を責める生き物なの。いくら瀕死に追い込まれたからって“こんなに傷つけられる程私たちは罪深いことをしていたのか。”なんて考える奴は稀。そんなしっかりと出来てたら、そもそも天使や神の力なんて必要ないからね。」

「(・・・成程。じゃあ、ビュージュはそんな人たちの相手をするために率先して立候補したわけね!)」

「・・・まあ、その通りだけど言い方汗。」

「(ごめん汗。)」

「いつか自然神以外でも対立が起こって、返納が無茶苦茶になるのは、何となく肌で感じているから分かるわ。けど、それをなるべく遅らせて時間くらいは稼がないとね。」

「(・・・それは、未来に生きる人間の為?)」

「当然じゃない♪私は天使の使役者なのよ?人間を少しでも幸せな未来に送り届けなきゃ。」


~~~~~


「(・・・おまえが志那都の説得とはな。)」

「何か問題でもあるのかい?」

「(いや、ただ上手くいく未来が見えなくてな。)」

「上手くいかせるさ。無理やりにでもね。」

「(・・・ヴァティーラに行かせた方が良かったんじゃねーか?)」

「彼女は雷の一族の方で動いたばかりだ。・・・フォールは何か僕に不服でもあるのかな?」

「(まあ、無いわけじゃねえな。)」

「何が不服なんだい?言ってみなよ。」

「(まず、人間でありながら同じ人間全てを下に見るかのような態度。)」

「君に実害はないと思うけどね?」

「(・・・ちょっとはある。それにそのような態度は一番交渉には向かない。)」

「けど、向く向かない以前に、力を返そうとしないのは彼らなんだから、彼らが悪いだろ?」

「(今はそういう話をしているんじゃねえ。同じ人間としてその態度はねえだろ?という話をしてんだ。)」

「さっきから同じ人間って言うけど、僕とそれ以外の人間は同じじゃないよ?」

「(何が違うんだ?)」

「生き物としての出来さ。」

「(・・・嘘をつくな。お前の体は普通の人間と何ら変わらない作りのはずだ。何人たりとも例外はない。)」

「体のつくりじゃないよ。もっと内面的なものさ。」

「(天使の使役者の力のことを言っているのか?)」

「それでもないよ。・・・まあ、じきに分かるさ。」


~~~~~


「また、行くのカー。」

「それはこっちのセリフだ。ってか、お前自ら立候補したんじゃないか。」

「だっテ・・・水分の次に怖くなさそうなのガ、迦流美だったんだヨ・・・。」

「(まあ、それはねぇ。)」

「ビランチも分かってくれるカ!」

「(いや、怖くないという点について同意しただけよ。あなたの使役者としてのスタンスを肯定したわけじゃないから。)」

「そんナ・・・。」

「(まあ、そう手厳しいことを言うなビランチ。陰間だってそれなりに頑張っていると俺は思うぞ?)」

「オルゴ・・・!」

「(あなたは、自分の使役者がしっかりしてるからそんなことが言えるのよ!)」

「・・・。」

「(私なんてひどいものよ?最低限の仕事しかしないし、それ以外はあれは嫌だこれは嫌だ言い訳ばっかり!使役されてる天使として恥ずかしいわ!)」

「(おい・・・ビランチ?)」

「(それに、他の使役者が頑張っている時に、一人だけお守りが必要なんて・・・。)」

「あの、ビランチ?」

「(何よ?)」

「もう、その辺にしてやった方が・・・。」

「(・・・え?)」

「うわああぁぁぁ!ひどいゾ!ビランチ!今まで私のことそんな風に見てたのカ!」

「(ご、ごめんね・・・?悪気があって言ったわけじゃないのよ?)」

「({・・・悪気がなくてあれだけ出てくるなら尚更酷いだろ。})」

「ま、まあ、ビランチと陰間はあとでしっかり話し合ってもらうとして、今は迦流美の件だ。」

「(そ、そうだな。何故返納に向かわなかったのか聞くとともに、再度返納の意思を確認しないとな!)」

「(そ、そうね!仲良く四人で確認しに行きましょ?)」

「・・・うっ・・・グスっ・・・。」

「{・・・もうヤダ泣。このメンツ・・・泣。}」


~~~~~


「(説得に向かった彼らは上手くやってくれますかね?)」

「どうでしょうねぇ・・・今回ばかりは読めませんね。」

「(あら、ヴァティーラでも読めないことがあるんですね。)」

「勿論ありますよ。」

「(でも、七日後に力が返納されないことや自然神同士が争うことは読んでいたじゃないですか?)」

「それは色々と予兆や手掛かりのようなものがあったからですよ。」

「(例えばどんな?)」

「返納に関しては、あれだけの付与者がいて足並みを揃えるのが土台無理だと思ったんです。必ずどこかの一族に一人くらいは力を我が物にしたいと考える輩が現れるのは、ある意味人間の世界では常ですから。争いの件に関しても、一度どこかに歪みが生じれば時間が経つにつれて、その歪みが大きくなるのは当然。実際、最初は個人同士のいがみ合い程度だったものが、今では一族同士にまで発展していますし、唯一中立であった雷も最近、良くない噂を聞きます。」

「(良くない噂?)」

「ええ。ルチーク達が不用意に彼らに仲裁の助けを求めたお陰か、他の自然神から敵視されているという情報を得ました。」

「(それは、何処から?)」

「集合会議の後、ビュージュからです。“多分前回の仲裁、ルチークとデチーレしくじってる。”と。」

「(でもそれだけで、雷が敵対視しているって何故分かるの?)」

「チッ、チッ、チッ。フェア。思慮が足りませんねぇ。今までの雷とそれ以外の付与者が置かれている状況を見れば一目瞭然です。まず最初。彼ら付与者はそれほど敵対していませんでした。この時はどの付与者たちも、互いにそれなりの思いやりを持っていたでしょう。しかし、その曖昧で不確かで不安定な関係性はすぐに崩れていきます。最初に崩すのは風。そしてそれに乗っかる火。その両者に対し、不信を持つ土と水。そして我関せずな雷。」

「(・・・どこに雷が敵対される要素があるんです?)」

「それはここからです。恐らく、このまま我関せずでいれば雷は敵対視されることはなかったでしょう。いや、一度や二度の仲裁で終わっていれば平穏に過ごせたでしょう。しかし、前回のルチークとデチーレの協力をした際に、雷は意図せず、自分たち以外の付与者全員に宣戦布告を仕掛けてしまいます。」

「(・・・あ、確かにそうですね!)」

「気づきました?雷は確かに仲裁という大義名分があった。しかし、他の付与者たちからしたら確実に気分は良くないでしょう。」

「(いきなり瀕死状態ですものね。)」

「ええ。しかもあえて曲解をすればこういう見方も出来る。“雷は天使の使役者たちと繋がり、我らを見下した位置にいる。”と。」

「(今まで中立という立場でいたことも、残念なことにその曲解の背を押す材料になってしまいますね。)」

「ええ。偶然とはいえ、良くない方に出来過ぎてしまっています。」

「(・・・そしたら、私たちがこれから説得をすればする程、雷の立場は悪くなりませんか?)」

「・・・場合によっては。」

「(・・・ですよね。)」

「ですから、今まで以上に気を引き締めていかねばなりませんね。・・・動き出した歯車は、暫く止まりそうにありませんから。」

「(そうですね。)」


~~~~~


「水分の皆さーん。お久しぶりですー。」

「お前は・・・。」

「確か、この前流川を運んできた!」

「はい。フェロアルチークですー。今回は力の返納に関して再確認に来ましたー。」

「それって、まだ力の返納の意思はあるかってこと?」

「そうですー。」

「そりゃ、あるけどよ・・・。」

「そうですかー。分かりましたー。」

「あ、ちょっと待て!」

「何ですかー?」

「流川のことで一言言っておくことがある!」

「・・・何でしょう?」

「あれは流石にやり過ぎだ!次、こんなことがあったら俺達も黙ってねえ!以上だ!」

「・・・了解ですー。留湖さんは何かありますー?」

「私も海生と同じです!」

「分かりましたー。じゃ、しっかりと他に使役者たちにも通しておくんで。」

「・・・本当に大丈夫ですかね。」

「本当にな。あの間延びした感じがどうにも引っかかるなぁ・・・。」


~~~~~


「夜藝速の皆さん。お加減は如何かしら?」

「如何も何も、あれからずっと大人しくしてるわよ!」

「・・・で、今度は何の用かしら?言っておくけど、私はこの通りずっと寝てるわよ?」

「それは見れば分かるわ。・・・ほんと、今聞くのは場違いなのは分かっているんだけど・・・あなたたちは力の返納についてどう考えてる?」

「それは、返す意思があるかってこと?」

「そう。」

「・・・私はもう返すわよ。こんな目にもあったしねぇ。」

「・・・他の二人は?」

「・・・私は・・・本当は返す前に色々返してやりたいけど・・・返すわよ。大人しくね。」

「俺は・・・まあ、返すさ。」

「(ちょっと、浄煌の言い方に含みがあるけど・・・)そう。じゃ、火はみんな返す方向で構わないのね?」

「ええ。」

「分かったわ。そしたら、天使にはしっかりとそのように報告させてもらいます。」

「・・・ええ。」

「じゃ、安静にね。・・・それと、他の使役者が迷惑かけたわね。」

「・・・あなたが謝る必要はないわよ。」

「でも、謝っておきたいの。ごめんなさい。それじゃあね。」

「ええ。」


~~~~~


「邪魔するよ。」

「あ、あなた!昇旋と風凪を運んできた時にルチークと一緒にいた!」

「ドゥセッタデチーレだ。天使の使役者だからよく覚えておいてね。」

「・・・。」

「何だい?」

「何しに来たのよ?」

「現時点での力の返納に対する意思を確認しに来た。どうだい?返す気はあるかい?」

「・・・みんなが返すなら、返すわよ。」

「そこに寝ている二人はどうだい?」

「・・・私も皆さんが返すのであれば返します。もう疲れました。」

「君は?」

「・・・俺も右に同じだ。」

「分かった。ならそのように天使に伝えておくよ。」

「・・・ああ。」


~~~~~


「おーい。抑地。いるか?」

「・・・フェルトと陰間じゃないか。何しに来たんだ?」

「何しに来たじゃねえよ。風と争った後にビュージュに言われただろ?“力を返しに行きなさい。”って。」

「・・・あぁ、それで来たのか。」

「そうだよ。」

「で、聞くんだけド、何で返しに行かなかったんダ?」

「・・・ちょっと色々とバタバタとしていてな。忘れてしまった。」

「じゃあ、別に返さないってわけじゃないんだな?」

「ああ。ただ・・・。」

「ただ・・・何ダ?」

「・・・雷の奴らが少しやり過ぎだと思ってな。」

「でも、それハ、ルチーク達に頼まれたから仕方なかったんジャ・・・。」

「にしたってやり過ぎだ。見ろ彼女たちの様子を。」

「・・・こんにちは。」

「・・・疲れた。」

「まだ、寝たきりなのか?」

「ああ。全身に雷のしびれと打撲がある。元に戻るにはもう暫くかかるだろう。」

「・・・そうか。」

「なあ、同じ使役者なんだよな?」

「え?」

「そのルチークとデチーレ。」

「ああ。そうだが・・・。」

「言っといてくれないか?やり過ぎだと。今後注意するようにと。」

「・・・分かったよ。それくらいなら言っておく。」

「頼む。」

「(・・・二人のことで相当気を揉んだようだな。まあ当然か。)」

「じゃ、帰ろうカ。」

「まだだ。最後にそこの二人に聞きたいんだが、前回話を聞いた時から、力の返納についての意思は変わったか?」

「それは・・・返す気になったかと言っているんですよね?」

「そうだ。」

「・・・素直に返しますよ。他の付与者たちも返すのであれば。」

「そうか。封砕は?」

「私も、もうこんな力なくてもいいよ。」

「(・・・色々殊勝になったようだな。)分かった。じゃあ、全員返納ってことで伝えておく。」

「・・・ああ。」

「(・・・抑地、なんか引っかかってるのか?)じゃあ、俺たちはこれで戻るんだが、迦流美一族の方からはなんかあるか?」

「・・・いや、無い。」

「了解だナー。」


~~~~~


「さて、皆さんの成果を聞かせて頂きましょうか。」

「まずは、ルチーク。どうだった?」

「はいー。水分の皆さんは返納の意思はあるようですー。ですがその時に前回の仲裁はやり過ぎだと言われてしまいましたー。」

「・・・やっぱ言われたか。」

「(フェルトも、何となく分かっていたのね。)」

「その件については俺たちも言われた。今後注意してくれと。」

「成程。では今後は相手を瀕死に追い込むような仲裁は皆さん控えてください。」

「了解だナー。」

「(本当はルチークとデチーレに返事をしてほしいんですが・・・。)では次、ビュージュお願い出来ますか?」

「分かった。今回の夜藝速は意外な結果よ。全員返納してもいいって言ってたわ。」

「・・・祓火もかい?」

「ええ。ただ・・・今度は浄煌が引っかかるかも。」

「どう引っかかるんだ?」

「返納の肯定はしてたけど、その言い方にちょっと含みがあったのよね・・・。」

「そうなのカ・・・。」

「考え過ぎじゃないですかー?」

「一応報告よ。念の為。」

「成程ですー。」

「じゃ、次、デチーレお願い出来ます?」

「ああ。まず結果からだが、全員返納に肯定だ。」

「あら、意外。」

「他の付与者が返すなら同じく返すってさ。つまり、今まで率先して和を乱してたのが初めて足並みを揃えようとしている。」

「なんか、初めて希望の光が見えた気がするな・・・。」

「ああ。今は攻撃さえしかけられなければ大人しくしているような感じだった。」

「風と火がここまで協調するのは、嬉しいですね。」

「そうだな。」

「じゃ、最後、フェルトお願い出来ます?」

「ああ。まず結果だが、全員返納の意思はある。」

「・・・良かった。」

「封砕と震子はあの一件でもう色々と懲りたらしい。」

「まあ、そう思うようにやったからね。」

「ただ・・・今度は抑地がちょっと怪しい。」

「・・・あの温和な彼が?」

「何があるんダ?」

「あれ?陰間は一緒に行ったんじゃなかったんでしたっけー?」

「ソ、それハ・・・。」

「まあ、陰間の鈍感は後でいいよ。それより抑地が怪しいっていうのはどういうことだい?」

「はっきりとは分からない。たださっきビュージュが浄煌に引っかかると言ったのと同じようなものだ。一応報告した方がいいと思ってな。」

「・・・成程。分かりました。ではこの件は私から世全視様に報告させて頂きますので、皆さんは各一族に力の返納が出来る日が近づいたことを伝えて下さい。」

「了解。」

「で、誰が誰に伝えに行く?」

「今度は私水分~~。」

「え~~何でですかー!」

「だって、ちょっと危なめの夜藝速には前回いったも~~ん。」

「じゃ、その夜藝速には僕が行くよ。」

「サンキュー♪」

「じゃ、俺は土の方に行くから陰間は雷の方に向かってくれ。」

「エ!今回私一人カ?」

「悪いが今回だけは我慢してくれ。」

「そうね。今回は短期間で多くの付与者に話を通さなきゃいけないから、なるべく分かれて行った方がいいわ。」

「心配しなくても大丈夫ですよ。雷は唯一中立ですから。」

「そうだ。それに今回気になる土の方には前回と同じく俺が行った方がいい。」

「違和感の正体に気づけるかもしれないからですね。」

「ああ。」

「あれ?じゃあ僕って・・・。」

「風だね。」

「・・・マジですか?」

「マジだナ。」

こうして、まずはそれぞれ自然神を中心にこの話を通すこととなった。


~~~~~


「(いや~~やっと返ってくるわね!)」

「やっぱり力が返ってくるのは天使でも嬉しいんだ?」

「(当然よ!なんたって元々私たちの力だからね!)」

「ま、その力のお陰で普通は出来ない経験もいっぱい出来たから私もグラントを使役してからはそれなりに楽しかったわ。」

「(そういってくれると私も使役されたかいがあったってもんよ!)」

「そっか笑。」

「({・・・でも、力の返納がこれで終わるなら、アプリオリ様も別に隠さなくて良かったのにな。})


~~~~~


「世全視様。この度は力の返納の件に大きな動きがあった為、参上致しました。」

「・・・ヴァティーラ。俺に様はつけなくてもいいんだぞ?」

「笑。いえ、一応最初だけはいつもつけようかと思いまして。」

「成程、形式を重んじているんだな。」

「そうです。」

「その様子だといい動きのようだな。」

「ええ。とても。今回参上したのは——。」

「どうした?」

「済みません。今フェアから意識通信が入りまして。失礼。(何ですか?こんな時に。)」

「(大変です!ヴァティーラ!)」

「(何が大変なんですか?)」

「(力の返納どころじゃなくなりました!)」

「(・・・!)それは本当ですか⁉」

「(ええ!今すぐ集合してください!)」


~~~~~


「・・・はァ・・・。」

「(何ため息ついてるのよ。)」

「だって、緊張するんだもン・・・。」

「(これで最後なんだから、シャキッとしなさいな。)」

「そんなこと言ったって・・・ってあれ・・・誰かいるゾ?」

「(・・・本当ね。誰かしら?)」

「・・・あれは天使の使役者に命令されて仕方なかったのよ!」

「だからと言ってあれはやり過ぎだろう!」

「あれでも加減した方よ!」

「じゃあ何故あんなにもケガがひどいんだ!」

「そんなの知らないわよ。当たり所が悪かったんじゃない?」

「雹聚。お前がやったのに何故そんな他人事のように話すんだ!」

「だって、元々関係ないじゃない!私たちは火とも風とも水とも土とも対立してないんだから!寧ろ私が技を使って死ななかっただけ幸いと思いな!」

「・・・俺達自然神付与者は一蓮托生じゃないのか!」

「(ねえ、これ止めた方がいいんじゃないの?)」

「どうやって止めるんだヨ・・・。」

「(そりゃあ、間に入って止めるしかないねぇ・・・。)」

「・・・ビランチ。フェルトに繋いデ。」

「({・・・この子、ヒヨったわね。}はいはい、ちょっと待っててね。)」

「“・・・おい陰間。何の用だ?”」

「“あのね・・・今、雷の方に着いたヨ。”」

「“・・・で?”」

「“そっちは・・・着いたカ?”」

「“何言ってんだ。俺の方はまだ一日半はかかるよ。”」

「“・・・抑地がいるヨ。”」

「“・・・は?”」

「“抑地が雷の家に来てるヨ。”」

「“えっ・・・ちょっと待て、今どういう状況だ⁉”」

「“抑地が雷の家まで直接来て雹聚に文句言ってる。”」

「“・・・マジか。”」

「“あア。マジダ。”」

「“とりあえず、陰間は二人を止めてくれ!俺は今からそっちに向かう!”」

「“間に合うカ?”」

「“力を使えば15分だ!”」

「“了解だナ。”」

「“じゃ、切るぞ。”」

「“あア。”」

「(・・・止めといて、ですって。)」

「止めといテ・・・かァ・・・。」

「それは、危険な時は一蓮托生じゃないわよ!元々はあんたんとこの封砕が昇旋と祓火を煽ってなかったらこんなことにはならなかったわよ!」

「彼女がいつ彼らを煽ったというのだ!」

「始まりの祠の時、岩を落としたでしょ!」

「無理だナァ・・・。」

「(何早々に諦めてるのよ。)」

「いヤ、流石にあのファイヤーの中に飛び込むのは無理だナ・・・。」

「(じゃあ、どうするのよ?)」

「静観だナ!」

「({もう・・・怒。}それって、普通に放置じゃない。)」

「モ、もちろん、力を使ったら流石に止めるヨ!」

「(当然よ。じゃ、いつ使うか分からないからよく見ときなさいな。)」

「はイ・・・。」

「あれはちゃんと彼女自身謝っているだろう!」

「謝って済む問題かしら?普通あんなことされたら怖いのよ!煉聖と嵐花が殺す気なのかって言ったのも、彼女の行動が常軌を逸しているからよ!」

「だからって、今回のこととそれは関係ないだろう!」

「いいや、あるわね。なかったら力の返納もここまで遅れてないわ!」

「・・・雹聚。力の返納遅れたのは彼女のせいだとでもいうのか!」

「実際そうでしょ?ここに至るまでの過程はともかく、原因は彼女でしょ?」

「何だと!」

「おい、二人ともいい加減にしろよ!」

「そうですよ!こんなうちの玄関先で言い争ってみっともないですよ!」

「・・・!」

「今日はもう帰れ。」

「しかし・・・。」

「分かってますよ。こちらだって全面的に正しいとは思ってません。ですが、今回は流石の抑地さんも少し度が過ぎている気がします。」

「・・・。」

「分かったら帰れ。」

「・・・。」

「止まったナ。」

「(もう、結局なにもしなかったわね。)」

「状況は⁉」

「フェルト!」

「今、どうなってる⁉」

「何とカ、口論だけで終わったヨ・・・。」

「良かった・・・。どんな感じだった?」

「あれハ、かなり険悪だったナ。雷はイライラしてたし、抑地は納得いかないまま返された感じダ。」

「そうか・・・まあ、詳しくは次もし集まる時があったら聞かせてくれ。」

「あレ?フェルトはどこか行くのカ?」

「・・・話を通しに行くんだよ・・・。本来飛ばさなくていいところを飛ばしちまったからギリギリになりそうだが、抑地がさっきまでいたってことはあいつも暫く戻ることはないから、後をつければその間に体力も回復するだろ・・・。」

「(・・・本当、ごめんね?フェルト。)」

「本当だ・・・ん?何だ?オルゴ。」

「(・・・さっきフォールから意識通信が来たんだが・・・聞いて驚くなよ。)」

「ああ。どうした?」

「(デチーレが死んだ。)」


~~~~~


~~~数刻前~~~

「・・・そろそろ着くね。」

「(ああ。そうだな。)」

ゴゴゴゴゴゴゴッッ!

「{・・・この炎は。}いるんだろ?出ておいでよ。」

「・・・何しに夜藝速に来る。」

「少し力の返納のことで話があってね。」

「こちらにはない。」

「けど聞いてもらわないと。」

「代わりに別の話がある。」

「何だい?」

「祓火のケガのことだ。何故あそこまでやったんだ。」

「何故って、お灸をすえるためさ。」

「あそこまでする必要があったのか?」

「ああしないと、返すとは言わなかっただろ?」

「いや、あそこまでしなくても返す時はきっと来たはずだ。」

「いいや、来ないね。」

「何故、そう言い切れる?」

「今まで争ってきたからだ。」

「それは今までだろう。これから先のことはまだ分からない。」

「いいや分かるね。行動が変わらなければその先も変わらない。君たちは今までずっと争ってきた。そしてその行動が変わったのは僕たちの仲裁のお陰だ。」

「・・・お前は、傷ついた者たちの姿を見て何も思わないのか。」

「何を思うというんだい?」

「お前には心がないのか?他人が傷つく様を見て何とも思わないのか?」

「・・・何とも思わなくはないよ。」

「なら何故あのような手段をとった?分からなったのか?あのような手段を取れば、どのような結果になるのかを。」

「分かっていたから、やったんだよ。」

「・・・そうか。分かった。もういい。」

「{・・・これは。}」

「夜藝速の弔い。この炎は普通の炎のような効果と共に、心に闇を持つ者を優先し焼き尽くす効果がある。つまり、考えを改めない限りこの炎は永遠にお前を狙い続ける。」

「({・・・おい、もう殊勝になったらどうだ?})」

「{どういうことだい?}」

「({恍けんな。少しは協調に気を遣え。じゃなきゃ冗談なしに死ぬぞ。})」

「{・・・フッ、死ぬ・・・か。}」

「({そうだ。})」

「{フォールは僕のことがまだ分かっていないようだね。}」

「({何だと?})」

「{僕にとってはね。ここで折れるのは、肉体的に死ぬことよりも考えられないことなのさ。だから・・・。}」

「({まさかお前・・・!})」

「・・・グッ・・・。」

「何⁉{・・・自ら火の中に飛び込むとは、何を考えている⁉}」

「・・・しょうがないな。ここの勝ちは譲ってあげるよ。・・・けど、もし次生まれ変わったら、今度は負けないよ。」

「今度も何も、お前はお前以外の何者でもない。現世で負け、もし次来世があったとしても、勝てるかは分からないぞ?」

「勝つさ。勝って、そのまた来世まで勝つ。必ず勝ち越して見せるさ。{・・・もう、立っていられなくなってきたな。}」

「愚かだな・・・そこまで勝ちに執着するとは。だが・・・もう灰だ。」

「・・・————。」

「({・・・チッ、デチーレの馬鹿野郎が・・・!})」


~~~~~


~~~デチーレ死亡の報の少し前~~~

「さて、さっさと報告に行きますかー。」

「(相変わらず呑気だね・・・。)」

「そうですかー?・・・!」

「待ってたわ。」

「僕をですかー?」

「そうよ?」

「何の用でですかー?」

「やっぱり、力を返す前にあなただけは懲らしめないと気が済まなくて♪」

「・・・はあ、勘弁してくださいよー。もしこれであなたが暴れたら、また返納が遅れるじゃないですかー。{・・・戦闘中に何ですか?}」

「({・・・力の返納に関する報告は一旦中断だ。引き返せだとさ。})」

「{何故ですかー?}」

「({・・・デチーレが死んだんだとさ。})」

「{・・・!}」

「({だから、彼女の相手は適当に切り上げて戻るよ。})」

「{了解ですー。}」

「・・・さっきからよそ見して、どこ見てんのよ!」

「どこ見てるってより、どこ意識してんだよ!が正しいですよー?それと{ヒュプノ。}」

「・・・!」

「{今すぐ家に帰れ。今日あったことは全て夢だ。}」

「・・・はい。分かりました。」

「さて、早く戻りましょうか。{テレポート。}」


~~~~~


「ねえ、どういうこと⁉デチーレが死んだって!」

「ビュージュ落ち着け。今天使たちがフォールの声を通信する。」

「(・・・聞こえるか?)」

「・・・ええ、聞こえます。」

「(よし、じゃあ聞いてくれ。まず昨日俺とデチーレは夜藝速一族に説得に行った。そしたら、その家に向かう道中、浄煌に待ち伏せされていた。)」

「私の勘が当たったってことか・・・。」

「(ああ。浄煌は祓火のケガのことで相当こちらを恨んでいた。)」

「でも、浄煌はそんな見境ないことをする人物には見えなかったですけどねー?」

「(その通りだ。あいつはそんなに見境ないことをする奴じゃない。あいつが今回の凶行に走った原因はあいつの態度だ。デチーレは浄煌があそこまでする必要はなかったんじゃないか?という問いに迷いなく、あそこまでしなければ返さなかっただろう。と返した。その後浄煌はそんなことはないと言い、デチーレはそんなことある。とまったく聞き入れようとしなかった。次第に浄煌はそんなデチーレの態度に我を忘れ、今回の強行に至るというわけだ。)」

「・・・困ったわね。」

「何が困ったんだい?」

「・・・エ、ナ、何デ・・・?」

「お前・・・死んだんじゃなかったのか⁉」

「ああ、死んだよ?」

「じゃ、じゃあ、何で生きてんのよ⁉」

「さあね。気づいたら山の中で横たわっていたよ。」

「・・・まさか、生き返ったとでも言うんですか?」

「かもね。」

「かもねって・・・流石に無茶苦茶過ぎませんかー?」

「でも、今生きているんだから生き返ったんだろうね。僕は。」

「・・・フォール!これはどういうことですか⁉」

「(・・・済まん、俺も今混乱しているところだ。)」

「・・・天使でも想定外があるのか。」

「(悪いが、少し待っていてくれるか?原因を探る。)」

「りょ、了解・・・。」


~~~~~


「(・・・どういうことだ。確かにデチーレはあの時浄煌に焼き殺されたはず・・・そもそも、天使の使役者に生き返りの能力などない。其々使役出来る天使の特性を引き継ぐくらい・・・まさか、あれを引き継いだのか・・・⁉いや、まさか・・・でも、そうでないと、今回の出来事は説明が・・・とにかく、他の奴らの考えを聞こう。じゃないと分からない。)」


~~~~~


「さて、今回の件だが・・・。」

「驚愕ですね・・・。」

「ああ。まさかデチーレが生き返るとはね。」

「・・・あれって生き返ったの?実はぎりぎりで生きてたとかはない?」

「火に焼かれて灰にまでなったのよ?あれで生きてるなんて考えられないわ。」

「・・・フォール。ずっと黙っているが、何か思い当たることでもあるのか?」

「あるにはあるんだが・・・いや、ありえない。」

「・・・とりあえずその思い当たることを話してみない?」

「そうよ。このまま煮詰まるよりは・・・ねえ?」

「分かった。話そう。・・・おそらく今回、あいつが生き返ったのは・・・俺とアプリオリ様だけしか使えないあの力ではないかと・・・思う。」

「まさか、常時覚悟が決まっている者だけが使えるってやつかい⁉」

「ああ。常時覚悟が決まっている者だけが使える妙技。地球時間で24時間に一度、使用出来るチート技だ。」

「確か、塵一つ残らない状態から完全に復活出来る力だったわよね・・・。」

「ああ。この俺が72人の魔王を倒せたのもこの力だ。」

「・・・確かに普通は考えられませんね。」

「だろ?だが、この力でないと、今回のことは説明がつかない・・・。」

「でも、もしそれだったとしたら、人間でありながら彼は化け者ね。」

「・・・以前あいつは自分のことを生き物としての出来が他の人間と違うと言っていた。」

「それって・・・覚悟のことだったのか。」

「だろうなぁ・・・。」

「・・・とりあえず、使役者たちに報告してきなさい。」

「・・・了解だ。」


~~~~~


「(・・・ということだ。)」

「・・・マジか。」

「(恐らく・・・マジだ。)」

「{・・・人間辞めてるナ。}」

「だから言っただろ?僕とそれ以外の人間は同じじゃないって。」

「・・・私たちも大概、化け者だと自負してたつもりだけど、あんたと比べると可愛いものだって気づかされたわ。」

「・・・何といっていいのやら。」

「ほんと、デチーレって人間辞めてますよねー。」

「辞めてないよ。」

「とりあえず、今日は一旦解散させてくれ。力の返納はまた後日で頼む。」

「分かったよ。」


~~~~~


「・・・。」

「(・・・大丈夫ですか?)」

「いえ、大丈夫ではありませんね。混乱の極致です。」

「(・・・そうですよね。)」

「あ、ヴァティーラさん!」

「・・・響さん。」

「あの、力の返納っていつ頃になりそうですか?」

「あぁ・・・それはですね・・・済みません。ちょっと今は答えられないですね・・・。」

「何でですか?」

「{・・・頭が上手く回らない。}何でもです。それでは。」

「え?行っちゃうんですか?」

「駄目ですか?」

「あ、いや・・・今回ここを通ったのって・・・。」

「偶々なんです。では。」

「{・・・。}」


~~~~~


「・・・感じ悪くありませんか?」

「確かに、あのヴァティーラが何でもって言うのは雑な扱いだよな。」

「ですよね!それに、私たちが抑地さんに色々言われたのも元はといえば彼女らのせいじゃないですか!」

「そうだな。・・・じゃあ、少しいたずらをしないか?」

「いたずらって・・・俺たちの力でそれはまずくないか?」

「大丈夫だ。いたずらといっても虎仮威しで済ませるさ。」


~~~~~


「・・・はあ。」

「(ヴァティーラ。大丈夫ですか?)」

「・・・混乱は収まりました。」

「(なら良かったです。)」

「にしても、未だに信じられませんけどね・・・。」

「(デチーレの件ですよね・・・。)」

「ええ。」

「(それについては、私たち天使も同じです。特にフォールはありえないと連呼していました。)」

「まあ、普通ありえませんからね。」

「(ええ。)」

「・・・では——。」

ドン!

「(・・・雷⁉)」

「大丈夫か⁉」

「世全視!それに禊護!どうしてここに?」

「如月の予知でお前と雷が見えたと報告があってな。」

「おい、何処かに隠れているんだろ?」

「・・・来るの早過ぎだろ。」

「まったく、どういうつもりだ?」

「お前らは唯一中立だったろ?」

「今のはそんな大層なものじゃない。」

「ちょっとした嫌がらせのつもりで・・・。」

「嫌がらせ?」

「だってヴァティーラさん、昨日感じ悪かったです!」

「あ、それは・・・。」

「それに、最近抑地に色々文句を言われた。」

「それはルチークとデチーレの時のですよね?」

「そうだ!それにいつ力の返納が行われるんだ?」

「私たち自然神付与者はもう暫く争ってないって聞いてますよ?」

「それについてはもう少し待ってくれないか?」

「今度はこっちが色々と混乱している。だから待ってくれ。」

「(・・・まだ待つのかよ。)」

「じゃあ今日はもう帰れってことですか?」

「まあ、そういうことになる。」

「・・・分かったよ。」


~~~~~


「結局、止められちゃいましたね。」

「それなんだがよ・・・早過ぎないか?」

「止めるのが・・・ってことですか?」

「そうだよ。」

「それについては如月の予知だろう。」

「・・・成程、全知の力か・・・。」

「ああ。」

「それに、彼ら何か隠してますよね。」

「もしかしてよ、密かに俺達自然神付与者を潰す計画でも立ててんじゃねえのか?」

「それは流石に、飛躍し過ぎではないでしょうか?」

「しかし、私たち以外の付与者は徒党を組んでいる。」

「まあ、言い方はあれだが実際そうだよな。俺たちが問題を起こす度に如月が予知をして、使役者と付与者が動く。」

「・・・これを、他の自然神付与者はどう思うんですかね。」

「今のところ、まだ気づいてないみたいだが、気づいたらただじゃ済まねえだろうな・・・。」


~~~~~


「さて、無事デチーレも戻ってきたし改めて色々整理するぞ。」

「そうね。なんか色々吹っ飛んじゃったし。」

「それって僕のせいだって言ってるのかい?」

「十中八九そうですよねー。実際、力の返納報告中断されちゃいましたしー。」

「その前にサ、改めて私たちの意思を確認した方が良くないカ?」

「そうですね。ここで改めて結束を固めておいた方がいいですし。確認しときますか。皆さん。力の返納についてどう考えています?」

「僕はなんだかんだ言って返すのは無理な気がしますー。」

「何故です?」

「だって、いつもあと一歩ってところで無理になるじゃないですかー。」

「まあそれはそうだけど、実際返そうとしないと返せないよ?」

「それはそうなんですけどー。」

「他の方はどう考えています?」

「僕は今後も返す為に動くつもりだ。」

「私も返す為に動きはするけど・・・デチーレみたいに命の危機に関わりそうな時は普通に引くからね。」

「ま、普通命は一つだからな。」

「ええ。」

「俺も勿論、今まで通り返納に際して出来る限りのことはするつもりだ。」

「陰間はどうです?」

「私モ、勿論返すつもりだゾ?でも・・・。」

「でも、何だ?」

「ビュージュと同じデ、命を危険に晒してまでハ、御免だゾ。」

「まあ、あなたの場合そういったことはないと思いますが・・・。」

「それより、ヴァティーラはどうなんですー?」

「私は勿論返納に尽力致します。」

「・・・つまり全員返納には一応肯定的というわけだ。」

「そうですね。」

しかしこうした彼らの想いとは裏腹に、力の返納はどんどんと遠ざかっていくのだった・・・。

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