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同等条件世界{終章、御使いの導き}



「あれ・・・?どこだ?ここ・・・。」

俺は昨日までホテルで寝ていたが、気が付いたら何もない平原に放り出されていた。

「マジでどういう状況だよ・・・これ・・・。」

俺は困惑しながらも、とりあえず当てもなく歩き始めた。


~~~~~


「何だ?ここ・・・。」

当てもなく平原を歩いて暫くすると、歴史の教科書に出てきそうな場所に着いた。

「結局、どうすりゃいいんだ・・・。」

終始訳の分からない状況に困惑していると、一人の女性が俺に話しかけてきた。

「あれ、あなた誰?」

「あ、俺はピストアっていいます。エルティピストア。」

「ピストア・・・なんかある神話を思い出させるような名前ね。」

「・・・あなたは、何て言うんですか?」

「あぁ、私は咫瓊狗邇邪那。邇邪那って呼んで♪」

「邇邪那さん。一つ聞いてもいいですか?」

「何?」

「ここで何してるんですか?」

「何してるって・・・住んでいるんだけど?」

「・・・ここに?」

「ここに。」

「(マジか・・・。)」

「そんなに驚くこと?」

「え、ええ・・・。」

「どこから来たの?」

「(どっから・・・あっ!そういう事か!)」

「おーい・・・聞いてる?」

「あ、あぁ汗。聞いてます、聞いてます汗。何処から来たかですよね汗。」

「そう。」

「(・・・なんていうかな。)・・・遠くの村から来たんですよ汗。」

「・・・何か事情があるの?」

「ええ、まぁ・・・ちょっとある事情で村から追い出されちゃって・・・。」

「・・・もしあなたさえ良かったら、うちに来ない?」

「え、良いんですか?」

「勿論。この村はあなたみたいな人の為にあるんだから!」

そう言って邇邪那さんは村のなかに招き入れてくれた。


~~~~~


「あれ、ヨハト君じゃないの?」

「うん。」

「あの子、いっつも何処かにいっちゃうね。」

「そうね。でも良いじゃない。いっつもあのテンションでいられるよりは。」

「そうだね汗。」

「あ、そうだ。今日はまた新しい人がここに来たのよ♪」

「あなたは・・・?」

「エルティピストアです。よろしくお願いします。」

「ピストア君か。よろしく。俺は天御巫別備だ。」

「彼ね、とある事情で村から追い出されちゃったんだって。だから村においてあげて!」

「良いよ♪」

「やった!」

俺はスイスイとこの村に歓迎されるこの状況を少し不思議に思った。

「・・・あの。」

「何だい?」

「どうして、いきなり来たよそ者の俺なんかをこんなにも快く迎えてくれるんですか?」

「それは、俺の・・・いや、俺たちの目的だからね。」

「え、それはどういう・・・。」

「実はね・・・。」

そう言うと別備さんはこの村の成り立ちを話してくれた。


~~~~~


「・・・という事なんだ。」

「・・・そうなんですね。」

別備さんの話によると、別備さんたちが前居た村では神の子を選ぶ儀式が行われていたそうで、その儀式で別備さんは神の子として選ばれてしまったらしい。

どうやら別備さんたちは俺のついたとっさの嘘に共感を覚えこの村に招き入れてくれたようだった。

俺は少し罪悪感に襲われると同時に、ここが神の子神話の時代であることを認識した。

少し前からここが過去だとは前回の世全視さんのこともあり、すぐに察しがついたが、ここがまさか俺の力の先祖の居た時代で、その先祖らしき人が目の前にいるとは夢にも思わなかった。

「だから、君は何時までもここに居ていいんだよ。」

「・・・ありがとうございます。」

複雑な心境の中、俺が別備さんたちといると、突如謎の声が聞こえた。

「別備お兄さん!」

「?」

「ヨハト君!」

「ただいま!」

「あなた・・・今までどこに行ってたの?」

「ちょっと新聞を買いにね。それでさ、帰りがけに読んでたんだけど今世界中大変なことになっているよ!ほら!」

ヨハトと呼ばれる少年が広げる新聞を見てみると、何と新野君が世界的に指名手配されていること。そしてその新野君と一緒に龍一君とニーレイさん、小柄の女性が写っている見出しが目に入った。

「(来て・・・いるのか!)」

「国際指名手配・・・なんか不穏な記事ね・・・。」

「そうだね・・・。」

俺の密かな喜びとは裏腹に、別備さんたちは少し暗い顔をしていた。


~~~~~


「お前たち。そろそろ着くぞ。」

俺たちは三日三晩野宿を繰り返しながら平原を歩き続けた。

「やっとっすか・・・。」

「あ、あそこだ。」

俺たちがもう歩けないと思ったその時、小さな集落らしきものが遠くに見え始めた。

「あれって・・・。」

「知り合いのガキの知り合いが作った農村だ。ここ最近出来たらしくてな。恐らくまだ地図には載っていないだろう。だからこそ、安全を確保するにはうってつけというわけだ。」

そう言ってクルデーレさんはその農村へと俺たちを導いた。


~~~~~


「クルデーレおばさん!」

「元気にしていたか?ヨハト。」

「うん!」

「それと別備、邇邪那。世話になる。」

「は、はい汗。」

「・・・まさか、この時代に来て最初に会うことになるのがあなただとは・・・夢にも思いませんでしたよ汗。」

「ピストアさん。」

「それは・・・俺もだよ。」

「ん?あなたたち知り合い?」

「え、ええ。」

「へぇ・・・。」

「ところで・・・他にも来てるの?」

「・・・来てます。」

「・・・どうすればいいの?」

「・・・正直手詰まりです。」

「一応、打てる手は打ちましたが・・・。」

「あ、だから指名手配?」

「そうっす汗。」

「とりあえず、入口で話していても仕方ないから、村で話そうよ。」

そう言って別備さんは俺たちを村の中へ招き入れた。


~~~~~


「止まれ!貴様ら何者だ!」

「警戒させて済まない。俺は結野先守だ。そしてこの者たちは私の従者だ。」

私たちは今、新野が暴れたソロモン王国に足を運んでいる。

「何用でこの国へと来た!」

「ヨルディエに会いに来た。」

「・・・あのヨルディエ様に?」

「どうやら、まだこの国にいるようだな。」

「貴様、ヨルディエ様に何用だ!」

「少し聞きたいことがあってな。こうして足を運んだ。ヨルディエに伝えてくれないか?結野先守という男が尋ねに来たと。これで駄目ならこの国から大人しく出て行こう。」

「・・・分かった。」

こうして私たちは、ソロモン王国の入り口でそのヨルディエという人を待つことにした。


~~~~~


「先守・・・!」

「ヨルディエ!」

「(え?この人、大人びたニーレイみたい・・・!)」

「クルデーレ様のことで来たのか?」

「それもあるが・・・ここ最近の新たな指名手配犯のことで話があってな。」

「・・・それはこいつか?」

そう言うとヨルディエさんは新野の手配書を取り出した。

「そうだ。そのしんのという人物はこの早苗ちゃんたちの知り合いかもしれないんだ。」

「・・・どういうことだ⁉」

「落ち着いてくれ。何も彼女たちが犯罪者と知り合いというわけじゃない。彼女たちの知り合いがいつの間にか指名手配されていた・・・という話なんだ。」

「・・・戦後の我らのパターンか。」

「ああ。平和な時代に力を持て余す者は存在するなと言わんばかりのあれだ。」

「・・・確かに、あいつはこの時代には似合わない強さだったな。」

「その彼らについて色々と教えてくれないか?」

「・・・まず、あいつは最初我らの国で盗みを働いた。本人は我らに勘違いだと言った旨の主張をしていたが、我らと邂逅するまでに常人成らざる行為をしていた為、すぐさま捕縛し罰を与えようと試みた。しかし、我らを相手に大立ち回りを行い逃げおおせた。」

「・・・ふむ。」

「この時点まではまだ窃盗と逃亡の罪のみであったがその後ビジラ殿の国で大立ち回りを行い、ビジラ殿の提案を断ったことで奴は世界と完全に敵対を行った。」

「ビジラ王はどのような提案をしたんだ?」

「事情を聞いて正しく判断する為話し合いを持ち掛けたそうだ。それを奴は全力で振り払い逃亡を試みたそうだ。」

「・・・成程。で、クルデーレは何で一緒にいたんだ?」

「・・・恐らくだが、修行だと思う。」

「修行?」

「ほら、あの人は強くなる可能性のある人間を見つけると、よく連れ回して遊んでいただろう?まさにあれだ。今回二回目にこの国が襲われたのは、あのしんのとかいう奴を強くする為の経験値として使われた気がするんだ。」

「・・・成程。あの人が考えそうなことだ。」

「それと同時に、この国の脅威としてきたという気もする。」

「・・・平和に浸かり過ぎるなってことか?」

「ああ。油断をするな。常に有事を意識した行動を心掛けよ。・・・昔耳にタコが出来るほど言われた言葉。」

「・・・久々に思い出したが、確かに耳タコだな。強さとは力の高さを言うのではない。心の強さを言うのだと。何をどうしても勝てない。そうした相手に対しても叩き伏せてやるという気持ちを持てるかどうかが重要なのだと。」

「我が師匠ながら、そうした話を思い出すと少し同情してしまう。」

「そうだな・・・で、クルデーレが何処に行ったか分かるか?」

「・・・済まない。分からない。」

「・・・そうか。邪魔したな。」

ということで私たちは、新野がこの時代に来ているという事実だけ確認し、一旦東へと帰ることにした。


~~~~~


「・・・困ったね。」

私たちは、新野と会うのが空振りに終わり、どうしようか考えていた。

「どうしよう・・・。」

「早苗ちゃん・・・。」

「・・・人探しと言えば、以前先守さんが俺たちを見つけた方法って使えないんですか?」

「・・・あ、そう言えばそうだね。すっかり忘れていたよ。」

「どういうことですか?」

「いやね、昔私が智之君を探す為に探偵を雇ったことがあったんだ。だから今回もその手を使えばいいのではないか?という事なんだ。」

「その探偵って誰なんですか?」

「ディクーチェ・オビリオ。」

「(え、その人って・・・。)」

「魔言探偵。言葉で彼女に勝てる者は居ないという噂があってね。どういうわけか知らないが彼女は五神家にいる智之君たちを突き止めたんだ。」

「最初は怖かったですけど、その後先守さんに会えて安心しました汗。」

「悪かったね汗。確実に見つけるにはあれしかなかったんだ。」

「(五神家・・・)あ!」

「ど、どうしたの?」

「あの、そのオビリオという人に新野の捜索を依頼すると同時に、今から言う三人の所在も探してもらう事って出来ますか?」

「・・・その三人って?」

「城堂風太、檜河無水、毘之漿郗です!」

「知り合いなのかい?」

「はい!」

「名前からするにみんな五神家だね。」

「はい!」

「(・・・そっか、未来の知り合いが他にも来ているかもしれないってことだね。)先守さん。俺からもお願いします!」

「・・・ま、探すのは彼女だから私は構わないよ。」

「ありがとう御座います!」

こうして、私たちは、言葉の使い方の著者に新野と風太たちの捜索を依頼することとなったのだ。


~~~~~


「再びのご依頼、ありがとう御座います♪して、本日はどのような内容でしょうか?」

「今回も人探しの依頼だ。数は4人。そのうち1人は今世間を騒がせている人物だ。」

「・・・名前は?」

「しんの。」

「確かに有名ですね。彼は言葉の女神フェアのような言葉を操り、最強神フォールのような立ち回りでソロモン王国の三傑を退け、かのパエチェローゼでは最高神ビランチの力を使ったとされていますから。それに、破壊の女神グラントのような力も使えると噂されていますし。」

「(・・・流石探偵を名乗るだけあって、俺がヨルディエから聞いた未公開情報を調べつくしている。)その有名な彼の所在を突き止めてほしい。」

「承知いたしました。して、残りの三人は?」

「五神家の城堂風太、檜河無水、毘之漿郗という人たちだ。彼らの所在も頼む。」

「今回は捜索人数が予め判明している為、割増料金となりますが・・・よろしいですか?」

「構わない。」

「承知いたしました♪では、早速調査を開始させて頂きますね♪」

「頼むね。」

ということで、私たちはオビリオさんに風太たちと新野の捜索をお願いした。


~~~~~


「・・・大丈夫かな。」

「・・・やっぱ心配よね。」

「大丈夫だよ。今は待つ時なんだ。」

「そうそう。俺の母さんと霜太さん、天露さんが今しんのって奴の情報を集めに行ってる。絶対何か有益な情報を持って帰ってくるさ。」

「・・・だと良いんですけど。」

「・・・ま、気を揉む気持ちはよく分かるよ。」

「いい気分はしないよな。」

坦坑さんと水正さんが俺たちを励ましていると、突如ある女性の声が聞こえた。

「すみませーん!」

「(ん?この声って・・・!)」

「・・・誰でしょうか?」

「・・・念の為、構えておきましょう。」

迅雨ちゃんと颯君が警戒し始めると坦坑さんがそれを制止した。

「まて。俺の聞き間違いじゃなきゃ、多分知ってるやつの声だ。」

「誰よ?」

「・・・どっかの探偵だよ。多分な。」

坦坑さんがそう言うと

「おかしいですねぇ、ここに城堂風太、檜河無水、毘之漿郗という人物がいると思うのですがー!」

と、謎の女性の声がこちらに語り掛けるように扉越しから聞こえた。

「居たらどうだってんだー?」

部屋にいる全員が臨戦態勢の中、坦坑さんが返答に応じると

「如月早苗が探していると言えば分かると伝言を預かってきましたー!」

「!」

俺たちは、扉の奥の女性が早苗と繋がりがあると知り、すかさずこう返事した。

「そしたら、その早苗にこう伝えてくれ!俺たちはここで待っていると!」

そう言うと扉の向こう側の女性は

「承知いたしました!では、失礼させていただきます!」

そう言い、その場を去っていった。

「・・・もしかしてさっきの女性って、あなたの知り合いの使い?」

「多分・・・そうだと思います。」

「・・・ってことは、風太たちの知り合いは先守さんのとこにいるってことか。」

「どういうこと?」

「前に、俺の家に如月の生き残りが転がり込んできたことがあってな。それを匿っている時もさっきの探偵が来たことがあったんだよ。」

「え、如月って生き残りがいたの?」

「・・・まあな。」

「で、何故その女性は先守さんのとこにいるって分かるんだ?」

「如月の頭目と先守さんは親友だったんだとよ。それで先守さんは親友の家族を何としても庇護下に置くために探偵を使ったんだよ。」

「・・・成程。」

「ってことは・・・!」

「思わぬところで、風太くんたちの知り合いと再会できる目処が立ちそうだね。」

「・・・はい!」


~~~~~


「・・・ふぅ。」

「あら、私にしては随分と遅かったじゃない。」

「言ってくれるわ。」

「・・・本当に、未来から来ましたね。」

「じゃ、じゃあ、あのしんのとかいう奴の言ったことは本当だったのか・・・。」

「私は確信したわ。あの子はほんとのことを言っているって。」

「・・・何故ですか?」

「だって、あの子は陰間たちのことをよく知っていたもの。」

「・・・こうなることが分かってたから、判断を待ったんだな?」

「そう。・・・で、何でこんなに遅くなったのよ?」

「分かってるくせに。・・・下界での力の主導権が奪われているから態々宇宙に出て年単位で飛んで宇宙から地球を探って来たのよ。」

「それは・・・ほんとにご苦労様ね。」

「お疲れ様。」

「・・・とりあえずちょっと休ませて。休んだら、今後どうするか話すから。」

「分かったわ。」

「・・・ビランチでも疲れるんだね笑。」

「当たり前でしょ?まったく・・・。」


~~~~~


「・・・さて。」

「あれ、クルデーレさんどこか行くのですか?」

「いや、ちょっと買い出しにな。」

「クルデーレさんには度々この村に足りないものを近くの町まで買いに行ってもらっているんだ。」

「へぇ・・・。」

「な、なんだ?その顔は?」

「いや、クルデーレさんって人に真っ先に買い出しに行かせるような人だと思ってたからちょっと意外でよ笑。」

龍一がそう言うと、クルデーレさんは無言で龍一にゲンコツをかました。

「イデッ!・・・何すんだよ⁉」

「何すんだじゃない!この私でも、人の為になることはするんだ!」

「(この私でも・・・ということは、少なからず自分の性格を自覚してはいるのか・・・。)」

そう言って、クルデーレさんはプンスカのまま買い出しへと出かけた。


~~~~~


「久しぶりです。先守さん。」

「こちらこそ。・・・にしても、早苗ちゃんの知り合いが塵鳳さんたちと一緒にいるとは思わなんだ。」

「それはこっちのセリフだぜ。」

「早苗・・・!」

「風太!それに無水!」

「お、おう・・・。」

「なんて気の抜けた返事してんのよ笑。」

「い、いや、こういう時どんな顔をしていいか分からなくてな・・・汗。」

「三葉!」

「漿郗!」

「まさか・・・あんたと会えるのがこんなにうれしい日が来るなんて夢にも思わなかったわ!」

「それは私もだよ!」

「・・・それで、肝心の新野くんの場所は突き止めたのか?」

「いや。でも、彼らが消えたと噂される場所の近くに謎の小さな集落は見つけたわ。」

「多分、そこに身を隠してると思う。」

「・・・空振りじゃなきゃいいけどね。」

「・・・じゃ、行く?」

「・・・この大人数で?」

「先守さん、智之さん、晴天丸、早苗ちゃん、三葉ちゃん、千君も増えて総勢19人でか?」

「坦坑くん。心配するな。私のツレは私が守る。」

「さっすが、護神の先守さんねぇ笑。」

「だから、それは世襲制だよ汗。」

「ま、そういう事なら彼女たちは彼に任せて、私たちは風太君たちを守りましょ。」

「そうだな。」

「あの!」

「?」

「いざとなったら・・・俺たちも戦っていいですか?」

「・・・いいよ。」

「冷霧⁉いいのか⁉」

「もしもの場合は・・・この子たちが苦境に立たされた時のカギになるかもしれない。相手側がノーマークの存在。これは意外性を生みやすいからね。・・・ま、戦闘への参加は自分の身を守ってからにしてくれるなら、是非参加してほしい。」

「わ、分かりました!」

「じゃ、行きましょうか。」

「ああ。未来ある若者が出会う為に。」

ということで私たちは、新野がいるとされる村に向かうこととなった。


~~~~~


「・・・おいおい。何の冗談だ?これは。」

「何が?」

「戦争屋、剣帝のガキ、不死身の団長。それに各国の兵士&騎士が総出でお出迎えとは・・・。」

「あなたこそ、何の冗談を言っているのかしら?」

「何だと?」

「あなたは指名手配犯なのよ?それも世界的な。それが何時までも呑気に過ごせるなんて本気で思っていたの?」

「指名手配は形だけじゃねーんだぜ?」

「(・・・これは、ここが今生と覚悟せねばなるまいな。)」

「この世界に二人も国際手配はいらない。」

「ということで、あなたたちの時代はここで終わり♪そろそろ世代交代の時よ。」

「それは・・・私に傷一つでも入れてから言うんだな。戦争屋。」

そう言って、クルデーレは五神家派系&使役者三名&一般兵士約6000人を相手に戦いを開始したのだった。


~~~~~


「灯華ちゃん!颯君!」

「別備さん!邇邪那さん!」

「この村って・・・邇邪那さんたちが作った村だったんですね・・・!」

「そうよ♪」

「この人は・・・冷霧さんたちは知ってるわよね。私と颯が旅をしている時に助けてくれた人!」

「助けてくれたって、何かあったんですか?」

「俺たちが、まだ争ってた時に、一人だった灯華と颯を守ってくれた人だよ。」

「いや、そんな大げさな・・・汗。」

「早苗!風太!無水!」

「新野!やっと会えたよ・・・!」

「それに、龍一さんとニーレイさんもいたんですね・・・!」

「おう!」

「あと、俺もいるよ?」

「ピストアさん!」

「あなたも来ていたんですか⁉」

「まぁ・・・最近だけどね汗。」

「これで・・・全員に会えたね!」

「・・・良かったわね。」

「はい!」

「・・・ところで、三人はどうしてここに来たの?」

「それは、クルデーレさんに色々と助けてもらったのだ。」

「ふーん。そうなんだ。」

「・・・そういえば、遅いね。」

「何がだ?」

「ほら、クルデーレさんの買い出しよ。往復だけなら6日あれば戻ってくるのに・・・。」

「何日経っているんだ?」

「7日は経っているね。」

「(・・・もしかして。)」

「もしかしたら、国軍に襲われているのかもね。」

「国軍?」

「ここ最近、私たちの派系や先守さんのとこのヨルディエさん。戦争屋、殺し屋といった戦争時代の経験者や今の世代の実力者たちが新野君を排除するべく動いていたのよ。それとかち会ったんじゃないかしら?」

「それって・・・まずくねぇか?」

「まずいでしょうね。」

「じゃ、じゃあ助けに行かねえと!」

「でも彼女は世界的指名手配犯だよ?」

「それが何だってんだ!俺たちはクルデーレさんに滅茶苦茶助けてもらったんだ!俺はここで見捨てたくねぇ!」

「私もたとえ彼女が犯罪者だとしても、ここで見捨てたら一生後悔します!」

「(・・・クルデーレをこんなにも真っすぐに見てくれる子たちがこの時代にまだいるなんてな・・・)俺は行こうかな。」

「(・・・)そう言えば私たち直系って最近舐められた気がしたわ。」

「(・・・)そうだな。それに、平和をうたいながら一人の人間を大勢で排除しようとしているなら、この世界を生きる大人の一人として黙ってみているわけにはいかないな。」

「これから先、子供に見せても恥ずかしくない時代にするために、行きましょうか。」

「ああ。そうだな。」

ということで、私たちは戦える人たちでクルデーレさんが買い出しに向かったとされる方向へと向かった。


~~~~~


「爆印{連}!」

そう言うと、クルデーレは約6000人の一般兵士の前に目くらましの爆印を一線を引くように放った。

ドドドドドドドドドドドドドドドンンンン!

「前が・・・見えません!」

「全軍!警戒を怠るな!」

「(今のうちに・・・!)」

クルデーレは大群の視界を奪っている隙に近くの森に逃げ込んだ。

「おい!クルデーレは森の中に逃げたぞ!」

「・・・成程。森の中で戦えば視界を遮ることも出来るし、一度に相手にする人数を絞れると踏んでか。」

「なら、全て切り飛ばしてしまえばいい。」

そういうと線雨という女性は水の糸で森の木を全て切った。

「・・・飛ばせ。」

「分かっている。」

そして須羽家派系の男性は線雨という女性の切った木を全て風の力で吹き飛ばし、森は更地同然となった。

「(クソ・・・やはり、取り巻きの派系が一番の厄介者だ。一般兵士を上手くサポートして自分たちは力を温存していやがる!)」

「よし!全軍突撃!」

再び一般兵士たちがクルデーレの元へと進軍を開始したその時、森と平原の境目で有った地点から、再び一線を引くような爆発が起こった。

ドドドドドドドドドドドドドドドンンンン!

「・・・くそっ!」

「(よし、ここからが勝負だ!・・・柔軟印!)」

クルデーレは再び大群の視界を奪った直後、柔軟印によって空高く飛び上がった。

「(強硬印!と、守強硬印{球}(連)!)」

そして、目視出来ない高さまで飛び上がったところで、足場の強硬印を発動し、更に念の為、球体状の守印に強硬印の効果を付与した印紋を死角ゼロで3重に発動した。

「(よし、これでまずは雑魚共を間引けた。次は・・・。)」

「空が飛べる人もいるのを忘れてるんじゃないの?おばさん♪」

一般兵士をとりあえず無効化したクルデーレは能力者同士の戦いへと持ち込んだ。

「(破壊の小娘の攻撃は守印の強度を信用して無視だ。まず最初は・・・。)」

「(空だろうと、撃ち落してやる・・・!)」

イモータは地上から一直線に踏み込みの力だけでクルデーレに突っ込んできた。

「(ソロモンの忠臣イモータ。こいつをギリギリまで引き付けて、地上に送り返してやる。)」

「はっ——。」

「柔軟印!」

クルデーレがそう言うと、イモータは柔軟印の効果で、突っ込んだ威力に落下速度がプラスされ物凄い速さで地上へと落ちていった。

「弱めてくれ!」

「分かった!」

城堂家派系の男性がそう言うと、須羽家派系の男性が風の力でイモータの落下速度をある程度相殺した。

「あとはこっちで受け止める!」

ドサッ!

そう言うと、城堂家派系の男性は砂で空から落ちてきたイモータを受け止めた。

「助かった!」

「(またしても派系か・・・!)」

「イモータのお陰で奴の大体の位置がつかめた。我らも仕掛けるぞ。」

建侯家派系の女性がそう言うと、空から雷が落ち始め、クルデーレの印紋を時折掠めた。

「(・・・まずい。敵に連携が生まれ始めている。)」

「さぁ、我らも出撃だ。」

地上では城堂家派系の男性が作った砂の足場に乗った五神家たちと使役者たちが続々とクルデーレのいる空へと昇り始めた。

「(ここで一旦徹底的に沈めておく必要があるな・・・)攻硬爆印(連雷)!」

そう言うとクルデーレは爆ぜる効果のある雷を出現させる印紋を能力者全員に放った。」

「砂傘。」

そうしたところ、城堂家派系の男性が砂の壁を作り、クルデーレの印紋を全て守り切った。

「水傘。」

そして、続けざまに檜河家派系の男性が水の壁を作った。

「蒸発させろ。」

檜河家派系の男性がそう言うと、毘之家派系の女性が火の力で水の壁を全て水蒸気に変えた。

「飛ばせ。」

毘之家派系の女性がそう言うと、須羽家派系の男性が風の力で水蒸気を全てクルデーレの居る方向へと飛ばした。

「・・・成程。目には見えないが球体状の何かで囲っているな。」

五神家の派系たちはクルデーレの印紋を水蒸気をぶつけることで、間接的に確認した。

「・・・いけるか?」

「ああ。脳天からかち割ってやる。」

そう言うと、建侯家派系の女性が今までで一番強力な雷をクルデーレへと放った。

ドン!

「クハッ・・・!」

クルデーレは何とか球体状の守印で雷を相殺したが、球体状の守印は全て割れ、その時に流れた雷の一部が静電気より強い程度の威力でクルデーレの全身を駆け巡った。

そして、クルデーレは空から地上へと落ちていった。

「(まずい・・・何とか受け身を取らないと・・・!)柔軟印!」

クルデーレは地上に落ちる直前で柔軟印を発動し、何とか直撃だけは免れた。

「(全身が痺れて、言うことを聞かん・・・!)」

「今だ!」

一般兵士約6000人がクルデーレの方へと向かい、絶体絶命かと思われたその時。

「水正。流せ。」

「あいよ!」

突如、一般兵士約6000人の足元から水の波が出現し、その水は兵士たちを後ろに押し流した。

「迅雨!あと頼むぜ!」

「確か、弱く・・・でしたよね?」

「そうだ!」

そして、続けざまにその水に静電気より強い電気が走り、一般兵士たちはほぼ全員がしびれで動けなくなった。

「(・・・これは、何がどうなって・・・。)」

「クルデーレさん!」

「無事か⁉」

「・・・ニーレイ。龍一。」

「良かった・・・何とか生きていたのですね。」

「・・・まあな。」

「さっすが、クルデーレさんだぜ!」

「おだてても何も出ないぞ?それより・・・これはどういうことだ?」

「それは・・・この子たちの人徳ですよ。」

「先守!何故お前まで・・・。」

「・・・何故でしょうね。人の縁とは不思議なものだ。見知らぬ誰かがこうして出会ったことで私はこうしてまたあなたと顔を合わせている。」

「・・・成程。人と人とのつながりがこうしてこの者たちを引き合わせたと。」

「そういう事です。ですからあなたはもう少し力を抜いたほうが良い・・・色々とね。」

「・・・みたいだな。久々にはしゃぎ過ぎた。」

「なら、少し休んでください。若い者たちの力を信じて。」

「・・・そうさせてもらう笑。」

「お前たち!いったいどういうことだ⁉」

「何で犯罪者をかばい立てするんだ!」

「犯罪者?クルデーレのことかしら?」

「そうよ!」

「だったら、俺たちも犯罪者だろう。」

「何?」

「あの時代に人を殺した者がこうして手配されるなら私たちも犯罪者でしょ?」

「それに、お前たちはしんのとかいう犯罪者を追っていたんじゃないのか?」

「そうよ!」

「だったら——。」

「もうよい。ここは戦場だ。勝ったものが正義。互いの主張は力で示せ。」

そう言うと、線雨という女性があの技を俺たち全員に繰り出した。

「糸水。」

「大火炎!」

灯華さんは線雨という女性の細切れ技を火の力で蒸発させた。

直後、その時に発生した水蒸気が何故か俺たちに向かって来た。

「させないわよ。」

蒸雨さんはその水蒸気を一瞬にして吹き飛ばした。

「坦坑。」

「何だ?母さん。」

「足元・・・いける?」

「・・・成程ね。いけるぜ。」

「じゃ、お願い。」

塵鳳さんがそういうと坦坑さんは先ほどの水正さんの水でぬかるんだ足元を支配した。

「炙れ。」

檜河家派系の男性がそう言うと、毘之家派系の女性が土に含まれる水分を火の力で全て飛ばした。

「油断大敵、火が亡々・・・!」

そう言うと、颯君は毘之家派系の女性の出した火を風の力で強めた。

「それを言うなら雨あられ♪」

そう言うと、檜河家派系の女性は物凄い数の霰を降らせてきた。

「だったら、細工は流々仕上げを御覧じろ。」

そう言うと、冷霧さんは霰の主導権を奪い、その霰を毘之家派系の女性の出した火へとぶつけて、全て水蒸気に変えた。

そして、霜太さんがその水蒸気に微弱な雷を通した。

同時に、塵鳳さんが毘之家派系の女性の火の力で乾いた土を操り、派系五神家たちの周囲に漂わせた。

そして、その周囲に漂った砂目掛けて天露さんが雷を放った。

「・・・!」

それにより、五神家の派系たちは身動きの取れないまま、爆発に巻き込まれた。

「・・・。」

戦場に爆煙が立ち込めていると、その中から、使役者の三人が姿を現した。

「龍一!ニーレイさん!」

「おう!」

そう言うと、新野たちはイモータの相手に回った。

「漿郗!無水!」

「はいよ!」

俺たちは、戦争屋の相手をすることになった。


~~~~~


「あの時の俺だと思うなよ・・・クソガキども。」

そう言うと、イモータは俺に向かって突っ込んできた。

「それは私たちも同じだ。」

そう言うと、ニーレイは攻紋を俺とイモータの間に出現させた。

「・・・!」

イモータはニーレイの攻紋に直撃する瞬間、地面を強く蹴り上に飛んで避けた。

「空に逃げたって、意味ねぇぜ?」

龍一は空に飛び上がった イモータの動線に柔軟印を出現させた。

「借りるぞ。」

そう言うと、イモータは空中で体勢を切り替え、柔軟印の力を利用し、再び俺に向かって突っ込んできた。

「・・・!」

俺は咄嗟にモードグラントで念力を使い、イモータの勢いを相殺したがその反動で、後ろに吹き飛んだ。

「クッ・・・!」

それはイモータも同じだった。

「攻爆印。」

ニーレイはイモータが吹っ飛んでいく動線に攻爆印を出現させた。

しかし、イモータはニーレイの印紋にぶつかる直前、地面を蹴ることで僅かに吹っ飛ぶ軌道を変え、印紋を避けた。

「何⁉」

そしてイモータはそのまま体勢を立て直し、ニーレイを狙った。

「守紋!」

イモータがニーレイに切り込む直前、龍一がイモータとニーレイの間に守紋を発動させた。

「・・・。」

龍一が何かしたとにらんだイモータはニーレイに切りかかるのを止め、ニーレイの目の前で踏みとどまり、そこから大きなバク転をしながら龍一の真上まで飛び上がり、空中からの落下速度を利用しそのまま龍一を狙った。

『止まれ。』

俺は、空中でのイモータの身動きを封じる為、神力言語を使った。

「・・・!」

そして、イモータの落下速度をあえて上げる為、空中に瞬間移動し、念力の推進力を利用し落下するイモータに近づき思いっきり地面にめがけで蹴った。

「グッ・・・!」

イモータは地面に思いっきりぶつかった。

俺は地面にぶつかる瞬間、念力でその威力を相殺し、何とか直撃は免れた。

常人ならマンション25階ほどの高さから地面に投げつけられるほどの衝撃が加わり、即死は免れないはずだが、イモータは何とか膝をついて意識を保っている状態だった。


~~~~~


「さぁ、あなたたちはどれくらいやれるのかしら♪」

そう言って、ボンディーレは空から俺たちに向けて念力を放ってきた。

「祓い風!(クソッ・・・空に飛んでるからやりづれぇ・・・!)」

「風太!どうする⁉」

「まずは、地上に降りてきてもらいてぇな。」

「なら、漿郗落とせ。」

「分かったわ!」

「何をするのか知らないけど、そんなんじゃ私には傷一つつけられないわよ?」

「それは・・・どうかな?」

そう言うと無水は龍の形をした水をボンディーレに向けて放った。

「はっ!」

しかし水龍は一瞬にしてボンディーレの念力によって弾け散った。

「まだか⁉」

「もう少し・・・かかるかも。」

「・・・分かった!」

「にしても、あなたたち五神家にしては弱いわね。」

「何だと?」

「だってそうじゃない。まるで連携が取れてないもの。あそこにいる直系とは大違い。」

「・・・風太。」

「・・・分かったよ。この時代じゃ、目立つから暫くやってなかったけど見せてやるか。俺たちの時代にしか使ってなかったあの力を!」

「え⁉」

そう言って俺は空を飛んだ。

そう、俺は空が飛べる。

最初俺は須羽家の人はみんな空を飛べるものだと思っていた。

しかし、昇旋さんたちは勿論、この時代の颯君や派系の人たちでさえ空を飛んでいるところは見たことが無かった。

きっと須羽家が空を飛べるようになるのはこの時代よりも後なのだろう。

ということは俺が空を飛べるということはこの時代では状況打破のきっかけになる。

「空を・・・。」

「飛んでいるな・・・。」

「(成程・・・風の力で・・・ということか。)」

ということで、俺は空を飛んで風の力をぶつけた。

「クッ!」

しかし、それは念力で相殺されてしまった。

「チッ・・・!」

俺の風が念力で相殺された瞬間、空が突如暗くなった。

「風太!」

漿郗がそういうと、封砕さん程ではないにしても、空を覆う巨大な岩が俺とボンディーレに向かって降って来た。

「おい!何だよこれ⁉」

「それなりのものを引っ張って来たから時間かかっちゃった!」

「そうかよ・・・!」

俺はすぐさま地上に降り立った。

一方ボンディーレは

「こんなの・・・どうすればいいの・・・。」

半ば放心状態となっていた。

「(ツィオ!止めなさい!)」

「でも、避けた方が・・・。」

「(避けたら、落ちた時の衝撃波で一般兵士はみんな死ぬわよ!)」

「・・・分かったわよ!」

ボンディーレは何と全力で念力を使い、漿郗の落とした隕石を止めようとした。

「ッ・・・!」

「止めさせない・・・!」

漿郗はボンディーレを隕石で押しつぶそうとした。

しかし、ボンディーレは地上で押しつぶされる直前、隕石を砕くことに成功した。

「・・・噓!」

隕石が砕かれたことで、俺たちはボンディーレからの反撃を想定し構えたが、当の本人は念力の使い過ぎで、フラフラだった。


~~~~~


「ゔおおいいぃぃ!てめえらは皆殺しだぁ!」

「・・・だってよ?」

「何で私を見るの?」

「いや別に?」

「ったく・・・嫌になっちゃうのよね。こうした雑魚って。」

「雑魚だと?クソガキどもがほざくじゃねえか!」

「そう言うお前は幾つだよ?」

「22だぁ!」

「お前の方がクソガキじゃねぇか。俺は25だぞ?」

「あ、因みに俺は23な?」

「じゃあ、お前らは俺を倒せるかぁ?俺は自分より一回りも年上の奴らをなますみたいに切って来たんだぜぇ?」

「・・・嫌な自慢です。」

「自慢じゃねぇ・・・事実だ!」

そう言うと、ヴィータは颯君に切りかかった。

「・・・!」

「颯!」

「大丈夫です!」

颯君はギリギリの力でヴィータの手元を止めた。

「しゃらくせぇ!」

しかしヴィータは颯君の手を振りほどき颯君を蹴飛ばした。

そして、颯君に再び切りかかろうとした。

「鎌風・断。」

しかしヴィータが切りかかろうとした瞬間、颯君はヴィータの剣を持っている方の手首を風の力で切断した。

「・・・!」

ヴィータは一瞬驚いたが、その直後、もう片方の手で剣を持ち直し、さらに再び颯君に切りかかろうとした。

「させません!」

そういうと迅雨ちゃんは的確にヴィータの剣を狙い、雷で弾き飛ばした。

「クソッ・・・!」

「せっかくだから止めてあげるわ。その血。」

灯華さんがそう言うと、颯君が切断したヴィータの手首を火の力で焼き、切断面を滅茶苦茶にした。

「これで、一生剣は使えない。」

「・・・。」

灯華さんたちに追い詰められもう終わると思ったその時。

「ゔゔゔおおおおおおおおいいいいぃぃぃぃ‼」

突如ヴィータはけたたましい雄たけびを上げた。

そして、ふと静まった瞬間。

残ったもう片方の腕で剣を取り、水正さんに向かって切りかかっていった。

「・・・!」

水正さんは咄嗟に水の波でヴィータを押し返そうとしたが、ヴィータは迫れなくなりはするものの、その突進は止まることはなかった。

「迅雨!」

「はい!」

その為、迅雨ちゃんが水正さんの出した水の波に致死量に近い雷を流した。

しかし、それでもヴィータは止まらなかった。

「だったら・・・!」

その為、坦坑さんはヴィータの足場を土の力で崩した。

そうしたところ、ようやくヴィータは水の波に溺れる形で動きを止めた。

「・・・こいつ、人間かよ。」

「まさか、腕を吹っ飛ばされてからあれほど動くなんてな。」

「私、初めてです。人にあんな強い雷ぶつけたの。」

「でも、まだ生きてますよ。この人。」

「・・・やっぱ、雑魚じゃなかったのかも。こいつ。」


~~~~~


「霧雨・凝華。」

冷霧さんがそう言うと、凍傷になりそうなほど冷たい霧が五神家派系たちを襲った。

「火巻。」

毘之家派系の男性がそう言うと、冷霧さんの放った冷たい霧は瞬く間に火の竜巻によって相殺された。

「導風。」

須羽家派系の女性がそう言うと、何故か火の竜巻から帯のようなものが伸び、その帯は全て一直線に冷霧さんたちに向かっていった。

「守印{絶}。」

先守さんがそう言うと、火の竜巻から伸びた火の帯は全て冷霧さんたちに届く前に消えていった。

「ほう・・・これは心強いな。」

「敵にだけは回したくないわねぇ。」

「ここでは・・・最大の褒め言葉ですね。」

「じゃ、今度はこちらから——。」

「爆雷。」

ドン!

霜太さんが五神家派系に仕掛けようとした瞬間、建侯家派系の女性の雷が五神家直系の冷霧さんたち全員を襲った。

「・・・この雷はクルデーレの目に見えぬ力さえ通した。さあ、ここからどうする?」

「・・・どうするも何も、抑々食らっていないよ?」

「何⁉」

先守さんは雷が落ちる瞬間、空に向けて守印を出現させ、雷を防ぎ切った。

「私は守ることに関しては自分で言うのもなんだが得意でね。私の手から命がこぼれたことは、私の目が届く範囲ではないんだよ。」

「・・・。」

「それに、クルデーレは守るより攻めるのが得意な人だ。彼女の守りを崩すのはそんなに難しいことじゃない。逆に私の守りを崩すのは骨が折れるだろう。」

「なら・・・やってみようじゃないか。」

そういうと、五神家派系たちは先守さん一人に向けて集中砲火を始めた。

「抜印。」

先守さんがそういうと、五神家派系たちの猛攻は全て先守さんの体をすり抜けた。

「⁉」

「あ、冷霧さん。申し訳ないが私の師匠をお願いします。」

「君は、大丈夫なのか?」

「はい。こちらは私一人にお任せを。すぐに終わらせて見せましょう。」

そういうと、先守さんは抜印で五神家派系の猛攻を躱しながら、まるで街中を歩くかのように間合いを詰めていった。

「・・・流石、お前の弟子なだけあるな。クルデーレ。」

「・・・。」

「どうしたの?ポカーンとしちゃって。」

「・・・いや。なんやかんやで私の弟子だったんだなと思っただけさ。」

「何それ?変なの。」

クルデーレさんは先守さんが自分より曲者かもしれないと、先守さんの戦う様子を見て、この時初めて思った。


~~~~~


「糸水。」

「爆雷。」

「・・・凄い技だ。」

「(・・・何故当たらん。)畳み掛けろ。」

「天通水。」

「流雷。」

「線針水。」

「鋭岩石。」

「技も豊富だ。」

「(まさか・・・すり抜けているのか⁉)」

「けど、そろそろ飽きてきた。もう終わりにさせてもらうよ。」

「(何をする気だ・・・)お前たち!あいつに技を出させるな!」

そう言って五神家派系の人たちは先守さんを直接捕まえようとした。

しかし、それが悪手であった。

「柔軟印{網}。」

そう言って先守さんは漁業の網のような印紋で五神家派系の人たちを全員捕縛した。


~~~~~


「さぁ、これでも彼女を捕まえる?」

「クッ・・・!」

こうして五神家派系&使役者三名&一般兵士約6000人は何とか退却したのであった。


~~~~~


「クルデーレさん!ご無事でしたか・・・!」

「まあな。」

「間一髪だったよ。もう少し到着が遅れていたら、危なかったかもしれない。」

「そうなんですか?」

「そんなことは・・・ない。」

クルデーレさんがそう言うと、戦場に行った全員が何とも言えない目でクルデーレさんを見つめた。

「・・・済みませんね汗。クルデーレはこうした強がるところがあるんですよ汗。」

「こら!先守!師匠をフォローする弟子があるか!」

「(わりとあると思う・・・。)」

「だが、先守君の言った通り危なかったのは事実だ。」

「寧ろ良く生きてたわねって感じ。」

「私たちの派系と戦争屋、剣帝、不死身兵団長。それに各国の騎士兵士数千人?位いたかしら。それ対1ですもの。流石、手配されるだけあるわねぇ。」

「ふん。お前らとは格が違うんだ。」

クルデーレさんがそう言い、良い気分に浸っていると、先守さんがげんこつをかました。

「痛!先守!師匠を殴るとは何事だ!」

「クルデーレ!これ以上争いの種を増やさないでくれ!」

「うぅ・・・。」

クルデーレさんは先守さんに叱られ、凄くしょんぼりとした。

「・・・ま、無事でよかったんじゃないのか?」

「・・・。」

「・・・何だよ?」

「・・・いや、別に?」

「まぁ、遺恨が無いと言えば嘘になるが、あの時代はお互いがああするしかなかったとも思っている。」

「・・・理解が良いな。」

「当然でしょ。あれは経験した人にしか分からないわ。」

「それはそうだ。」

「私のお父さんも、あなたのことは褒めてたわよ?」

「・・・お父さん?」

「30年くらい前、あなたが雷を当てた水使いを覚えていない?」

「・・・もしかして、体内の水を支配する水使いのことか?」

「ビンゴ♪」

「お前・・・あの時の男の娘だったのか。」

「蒸雨よ。蒸雨。今は平和な時代なんだから、名前を隠さなくてもいいでしょ?」

「・・・やれやれ。これではまた弱くなってしまうな。」

そう言うクルデーレさんの顔は少し笑顔だった。

「それで・・・君たちはこうして会えたわけだが、これからどうするんだ?」

冷霧さんがそう言うと

「未来に帰るんだろ?」

クルデーレさんがさらっと、とんでもないことをばらしてくれた。

「未来・・・?」

「ちょっ、クルデーレさん!」

「そ、そりゃよ・・・汗。」

俺たちが動揺していると

「・・・そうか。成程笑。」

冷霧さんたちは凄く腑に落ちたかのような顔で笑った。

「だから、混血だったのか。」

「・・・は、はは・・・。」

俺たちが苦笑いをしていると

「え、この子たち未来人だったのか?」

「そう言えば先守さんは知らなかったんでしたっけ?」

「智之君は知っていたのか?」

「・・・ええ汗。」

「そうだったんですね・・・。」

迅雨ちゃんたちは凄くうれしそうな顔で俺たちを見つめた。

「・・・あ、ビランチが来た。」

「ビランチ?」

「あ、こいつ天使の使役者なんです汗。」

「ということは、あなたはフェアが見えるんですか?」

そう言ってオビリオは新野に詰め寄った。

「ま、まぁそうなりますね・・・汗。」

「・・・じゃ、そろそろお別れってわけか。」

「早苗ちゃん、三葉ちゃん、千君。未来に帰っても、元気でね。」

「はい!」

「智之さんと晴天丸君もお元気で!」

「うん!」

「じゃ、風太くん、漿郗ちゃん、無水くん。未来でも仲良くやってね!」

「はい!」

「蒸雨さんたちも、お体に気を付けて下さい。」

「ああ。」

「・・・。」

「・・・。」

「・・・初めまして、ですよね?」

「はい。なので私、今とても困惑しています。貴方に何といえば良いのか。」

「・・・なんでもいいっすよ?笑。俺はあなたがどういう人物かよく知ってますから。」

「・・・なら、一つだけ。私たちは、どうでした?」

「・・・とっても、頼りになりました!」

「なら・・・光栄です。」

「クルデーレさんよぉ~最後のお最後でやらかしてくれたな!」

「別に、未来に帰ったらなんやかんやで何とかなるんだろ?」

「何だよ?なんやかんやって。」

「君たち、印紋術を使うのか。」

「はい。」

「どうだ?似ているだろう?」

「・・・ああ。」

「そんなに・・・似ていますか?」

「似ている。少なくとも私は最初ヨルディエかと思った。」

「私も、あいつがまだ私の元に居た時を思い出した。」

「俺も、ソロモン王国にいるヨルディエさんを見たときは、大人版ニーレイかと思ったぜ笑。」

「・・・奇縁だな。」

「ええ。」

「・・・じゃあ、愛弟子たちよ。未来でも健やかにな。」

「おうよ!」

「・・・なんか、皆なんやかんやで共通点があるみたいだけど・・・。」

「俺たちは・・・無いね汗。」

「・・・いえ、ありますよ。」

「?」

「神の子神話。邇邪那さん。あなたが書いた別備さんと同じ力が俺にはあります。」

「え・・・そうなの⁉」

「はい笑。未来ではあなたの話はとても有名です。」

「・・・そっか。」

「俺はあなたたちのお陰で自分の力に気づけました。」

「・・・良かったね。」

「ええ。」

「じゃ、別れる前に先人として一つだけ。先に来るのは思いだよ。思いから全ては生まれる。」

「それは・・・この時代に来て十分過ぎるほど目にしました。」

「そっか・・・そうだね。」

「・・・じゃ、元気でね。」

ということで俺たちは未来の世界へ帰ることとなった。

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