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前提条件世界{一章、全知の知らぬこと}


これは、全知の私でも知り得ることが出来なかった未来の話・・・。


「水天様‼」

「智之か。どうだった?」

「ええ、依然変わりありません。」

「そうか。暫くは安心だな。」

「気は抜けませんがね。」

私の率いる如月一族は総勢200名を超える預言者集団である。

その為、その能力を恐れて各方面から我々を亡き者としようとする輩が後を絶たない。

しかし、その襲撃も予知出来る為、防ぐことは何ら難しいことではない。

「あっちの方はどうなっている?」

「・・・影智の件ですか?」

「そうだ。」

「そちらでしたら、水天様の空間知で大凡の場所が分かっているので、その場所を元に再度探知をしたところ、正確な場所が分かりました。」

「済まないな。私の空間知は範囲が広過ぎて、何処を探知しているのか時々分からなくなる。」

「・・・力があり過ぎるのも考えものですね。」

「本当だな笑。・・・で、何処だ?」

「最近、急激に勢力を拡大しているところに御座います。」

「・・・あそこか⁉成程、勢力が大きくなるわけだ。」

「ええ。恐らく、影智が後ろで糸を引いているのでしょう。」

「・・・厄介だな。」

「・・・どうしますか?」

「・・・こちらからは今、何も出来ないな。」

「では、いつも通り・・・。」

「静観だ。立場上、我らは目立つわけにはいかない。預言者集団が表舞台でドンパチなど滑稽この上ない。」

「ですね笑。表の仕事にも影響が出ますし。」

「話は終わりました?」

「おとーさん!あそぼー‼」

「これはこれは、知子さんと晴天丸。お父さんを独り占めしてごめんね。もう終わったよ。」

「ごめんなさいね。大切な話をしていたんでしょうに。いつも邪魔しちゃって。」

「いえいえ、こちらこそ大切な家族の時間を取ってしまって申し訳ない。では水天様私はこれで。」

「ああ。いつもありがとう。」

「ともー、ばいばい‼」

「うん、ばいばい。・・・さて、いったいどうしたものか。」


~~~~~


「いやはや、ここまで我が勢力が大きくなるとは、影智。お前が敵軍の配置を完璧に教えてくれたおかげであるぞ?」

「いえいえ、然程難しいことでもないですから。」

「そうか。これからもわしの為に頼むぞ?影智。」

「御意。」


~~~~~


「どうですか?調子の方は。」

「おぬしの言った通り、影智を引き入れた途端、何もかもがトントン拍子じゃ!」

「クフフフッ、そうですか。それでは暫くそのまま影智を使い、勢力を広げ続けるのです。」

「そうすれば、わしは本当に天下を取れるのか?」

「当然です。私の計画は絶対ですから。では、また・・・。」


~~~~~


「久しぶりだな、水天。」

「急に呼び出して済まないな。先守。」

「構わないさ、俺とお前の中だ。で、何の用だ?」

「・・・お前、自分の能力をどう思う?」

「・・・どう思うって、どうしたんだ?藪から棒に。」

「頼む。真剣に答えてくれ。」

「・・・どう思うとは、具体的に?」

「何で、こんな力があるんだと思う?何時からあると思う?生きていて必要だと思うか?」

「・・・何故あるかは分からん。何時からあるかも。・・・必要でもないだろうな。普通使わない。こんな力。」

「・・・嬉しいよ。」

「・・・何を見たんだ?」

「え?」

「何か見たんだろ?探知法で。お前はいつもそうだった。探知法で何かを知る度にそうした顔をしていた。見てはいけないものを見たような。そんな顔を。」

「・・・俺は、いや、如月一族はもうすぐ滅亡する。」

「・・・‼」

「・・・俺は普段、自分のことや近親者のことは探知法では見ないようにしている。しかし、最近智之の様子がおかしくてな。それで、どうしても気になってつい感情知を使ってしまったんだ。そしたら、とても強い葛藤を見たんだ。それで、もしやと思って、接触知で未来を見たんだ。そしたら、一族の者が建物の瓦礫と共に死に絶えている未来が見えた。」

「・・・知子さんには・・・。」

「まだ伝えていない。智之には伝えた。あいつもその未来を見たそうだ。それで伝えるかどうか相当悩んだらしい。」

「・・・だろうな。」

「・・・智之が見た未来にも同じ光景があったらしい。それに加えて聞きたくなかった予知も一つ付け加えられていた。」

「・・・何だそれは。」

「・・・俺と知子も死ぬ未来だ。」

「・・・。」

「なあ、先守。俺はどうしたらいい⁉こんなこと聞かれても困るのは分かっている。だが、もう頭の中がぐちゃぐちゃなんだ‼智之は“どうしてそうなるのか一緒に調べましょう‼”と言ってくれたが、俺の勘では、調べ終わるより少し前にこの事態が起こると感じている。」

「・・・その予知。確実なんだったよな?」

「・・・何だ今更。そんなことはお前が一番知っているじゃないか。」

「違う、そういうことじゃない。俺が言いたいのは“その予知の中に晴天丸と智之君の死は含まれていないのか?”ということだ。」

「・・・そうか‼」

「どうなんだ?水天。含まれていなければ、俺にもまだ出来ることがある。」

「・・・含まれていない。確実だ。・・・先守、頼みがある。」

「・・・それは、智之くんと晴天丸の保護か?」

「ああ。恐らく如月一族を滅亡に追い込む奴は相当の手練れだ。でなければ、あの壊滅的被害は出ない。そしてそいつは、取りこぼしをしないだろう。必ず、一人残らず殺そうとするだろう。」

「そこで、俺の出番というわけだな。」

「そうだ。お前に守ってもらいたい。」

「水天。俺が守り切れない未来は見えるか?」

「嬉しいくらいに見えない。・・・こうなると、益々死にたくなくなってきた。晴天丸は・・・どんな大人になるんだろうな。」

「さあな。・・・探知法で見ればいいじゃないか。」

「・・・それは死ぬ直前に見る。死ぬ間際なら、神様も許してくれるだろう。」

「・・・そうだな。」

「おい、泣くなよ。お前が死ぬんじゃないんだから汗。」

「・・・だが、今生で会えるのはこれが最後かもしれないんだ。少しくらいは許してくれ。・・・これ程までに時間が惜しいと思ったことはない。」

「心配するな。あの世で知子と待ってるさ。会った時とは逆になってしまったな。」

「・・・そうだな。」

「・・・じゃ、そろそろ行かなきゃならない。」

「・・・。」

「最後に一つ。お前はすぐには来るなよ?晴天丸を頼む。」


~~~~~


「智之。お前には晴天丸と、この書を託す。」

「分かりました。」

「予知のことは俺以外には話していないな?」

「当然です。」

「俺たちが襲われた後は先守に保護してもらえ。」

「分かりました。」


~~~~~


「大分勢力も増えてきましたね。」

「そうじゃの。(・・・いつまで増やせばいいのかの。)」


~~~~~


「ある程度、勢力を増やせましたね。」

「影智のお陰での。」

「では、次の段階に移りましょう。次は、ある預言者集団を滅ぼすのです。」


~~~~~


「水天様‼敵襲でございます‼」

「(・・・ついに来たか。)何人だ‼」

「・・・それが、一人です!」

「何⁉」

「宙に浮き、目に見えぬ力を使う女子にございます‼」

「如何しますか⁉」

「・・・とりあえず、本陣に攻め込まれるまで時間を稼げ‼それと、もっと敵の情報が欲しい。」

「承知しました‼」

「水天さん‼」

「心配するな知子‼晴天丸には指一本触れさせん‼」

「あたしもそのつもりです。」

「(済まないな。知子・・・。)智之‼」

「はい‼晴天丸。今から危ない人が来るから、お兄さんと一緒に離れた場所に行こうね?」

「やだ‼」

「晴天丸・・・。」

「晴天丸。お父さんとお母さんは、今からみんなを守る為に少し行かなきゃいけないんだ。すぐに戻るから、それまで智之兄さんの言うことをしっかり聞いてほしいんだ。」

「お母さん、晴天丸が良い子に待ってくれると嬉しいわ。」

「・・・おかーさん。嬉しいの?わかった‼ぼく、おにーさんと待ってる‼」

「良い子だ。・・・もし、お父さんとお母さんが戻らなくても、お兄さんの言うことは聞くんだよ?お父さんとの約束だ。」

「・・・わかった‼」

「(・・・水天様。)」

「じゃ、行ってくれ。貴之。」

「・・・分かりました‼」

「・・・よし。」

「・・・水天さん。聞きたいことがあるんだけど。」

「何だ?」

「あたしたち、ここで死ぬの?」

「・・・さあな。」

「・・・そう。分かったわ。」

「何がだ?」

「何年一緒にいると思ってるの?だから智之さんに晴天丸を託したんでしょ?」

「・・・済まない。」

「謝ることじゃないわ。私今嬉しいの。晴天丸が生きてる未来があるって想像しただけで死ぬことが怖くないもの。あの子だけは守られる。それだけで十分だわ。」

「・・・強いな。」

「はーい♪お別れは済んだ?」

「お前が、我が一族を壊滅に追い込んでいる女子か。」

「その通り。貴方たちを殺しに来たわ。」

「・・・何故、あたしたちを殺すのですか?」

「何故って~~、生きる為かな。」

「誰かに、雇われたのか?」

「それは、ヒ・ミ・ツ♡」

「あたしたちだけ殺さないってことは・・・。」

「悪いけどそれは出来ないわ。仕事だから。ということで、じゃあね。お二人さん。」


~~~~~


「(ハアハア・・・早く、早く行かなければ・・・‼)」


~~~~~


「終わったわよ~~。」

「おお、ご苦労じゃった。ご苦労じゃった。」

「じゃあ、約束の。」

「約束の・・・?」

「金よ。・・・それとも、命で払う?」

「冗談じゃよ~~~。ほれ、約束の金じゃ‼」

「まいど~~♪じゃ、さようなら~~。」

「・・・ふう。にしても、本当に一晩で壊滅させてしもうたな。」

「流石、破壊神と呼ばれるだけのことはありましたな。」

「ツィオ・ボンディーレ。恐ろしい女子じゃ・・・。」


~~~~~


「夜分遅くに済みません‼」

「・・・どちら様ですか?」

「私、訳あって戻る家をなくした者なのですが、一晩泊めてもらうことは出来ませんか?」

「・・・後ろの子は?」

「・・・この子は、知り合いの子です。」

「・・・お入りください。」

「ありがとうございます。」

「・・・母さん。この人達誰?」

「宿なしの人たちよ。」

「・・・そうなんだ。」

「お邪魔します。」

「何もないですが、ゆっくりしていってください。」

「ありがとうございます。早速ですが、自己紹介をさせてください。私は如月智之と言います。そして、彼は晴天丸。」

「如月って・・・‼」

「ご存じでしたか。」

「そりゃあ、裏の世界じゃ有名だ。“如月に知らぬものなし”と呼ばれる程堅牢な城塞と情報の機密性を誇る預言者集団。」

「はい。その如月でございます。しかし、その雷名も今日まででしょう。」

「・・・何があったんでしょうか?」

「・・・今、如月一族の本陣は異形の力を使う輩に攻め込まれ、壊滅状態にございます。よって、大変不躾ながら、私たちをしばし、匿ってもらいたい。」

「・・・そんな、いきなり過ぎるぜ‼」

「いきなりなのは百も承知‼ですが、ここ以外に私たちが隠れられる場所はないのです‼」

「・・・どうするんだ?母さん。」

「・・・いいでしょう。しばらくここにいることを認めます。」

「母さん‼」

「但し‼ここに至るまでの経緯を洗い浚い話すこと。また、ここでの生活の家事全般を手伝うこと‼これを条件とします。」

「承知しました。では、早速話してもよろしいですか?」

「・・・いえ、今日はもう寝てしまいなさい。晴天丸君がもう限界よ。」

「ああ・・・。」

「それに、この子に聞かせられない話もあるでしょう。」

「ご配慮、感謝します。」

「明日の朝になったら、しっかり聞かせてもらうからな。」

「分かったよ。えっと・・・。」

「坦坑だ。城堂坦坑。」

「私は塵鳳と言います。」

「よろしく。では、これからしばし、世話になります。坦坑君。塵鳳殿。」

こうして、私と晴天丸は、迦流美神社にて、一夜を明かした。


~~~~~


そして、翌日。

「・・・おはようございます。」

「おはようございます。智之さん。」

「智之さんよ。起きるのが遅いぜ?晴天丸が先に起きている。」

「ともー‼この人たち、だれー?」

「えっと、その人たちは・・・。」

「俺たちは、智之さんの知り合いだ。」

「・・・‼」

「とものしりあい?」

「そうよ?それでね、晴天丸君。あたしと智之さんはこれから大切な話があるから、少しお外で遊んでてくれる?」

「うん‼分かった‼」

「じゃ、俺と遊ぼうぜ、晴天丸‼」

「うん‼たんこー兄ちゃんと遊ぶ‼」

「おうよ‼」

「坦坑君‼」

「ん?」

「何があっても、神社の敷地内からは出ないでくれ‼」

「お、おう・・・。」

「いこいこー‼」

「おーい、先行くなよー‼」

「・・・行きましたね。」

「ええ。では先日約束した通り、経緯から話をさせて頂きます。」

「お願いします。」

「昨晩、私たち如月一族の本殿は、ある一人の賊によって襲われました。正体は分かりませんが、特徴は、異形の力を使い、宙に浮かぶ女子。」

「宙に・・・ですか?」

「はい。私は直接見てはいませんが、私があの子を連れ出るまで、生きていた部下によると、宙に浮き、手を一振りするだけで建物を薙ぎ払われた・・・と。」

「・・・成程。それで、あの晴天丸君は誰の子なのですか?」

「如月水天。我が頭目の子にございます。」

「・・・‼」

「我が頭目は近いうちに、我ら如月が壊滅することを予知していました。その為、晴天丸を私と共に本殿から逃がし、頭目の知り合いの方の家まで逃がす算段を立てました。それが昨晩のことに御座います。しかし、それでは彼は守れない。」

「・・・どうして?」

「敵方に同じ如月がいるからです。」

「・・・どういうこと?」

「・・・今、勢力を急拡大しているところがあることはご存じですね?」

「・・・ええ。」

「そこには我が一族の裏切り者の如月影智という者がいて後ろで糸を引いています。」

「・・・あなたたち如月一族は、どうやって予知をしているの?それが分からなければ、話の全容が見えないわ。」

「・・・そうですよね。お話します。私たちには主に三つの予知の形式があります。一つ。空間知。これは、ある一定範囲内の人の動きが手に取るように分かる予知に御座います。」

「・・・手に取るように?」

「ええ。この能力を戦で使えば、効率的に人員を割くことが出来、戦では負けなしでしょう。次が接触知。これは過去と未来を予知する力に御座います。」

「・・・でも、そんなこと知ってどうするの?」

「・・・今このように、晴天丸を匿ったりすることが出来ます。」

「・・・あ、成程。」

「しかし、接触知は私たちとしても手に余る力。何故なら、接触知で予知した出来事は絶対なのです。」

「・・・絶対って?」

「変えられないのです。・・・例えば、我が頭目水天様が死ぬ未来を私が見てしまったとしましょう。その時点で水天様が死ぬという事実は変えられないのです。」

「・・・どう死ぬか分かっていても、避けられないものなの?」

「はい。残念ながら。予知とはその出来事が起こるまでに私たちがどのような行動を取るかも織り込み済みなので、どのような対策を取っても、必ずその予知の通りになってしまう。」

「・・・酷な能力ね。」

「ええ。私もそう思います。最後が感情知。これは相手の魂の状態を見る力に御座います。常人には見えない心の動き、魂の衰弱。これを使うことで、若くして死する人がなぜ死んでしまったのか。知ることが出来るのです。」

「・・・如月一族は全員この力を持っているの?」

「いえ。この三つを持っているのは水天様のみで御座います。」

「どういうこと?」

「確かに、如月一族はこの三つの予知によって堅牢なる預言者集団の名を連ねてきました。しかし、この能力。一族全員が発現するとは限らないのです。中には一生発現せずに生涯を終える者も少なくない。現に、晴天丸は未覚醒ですし、水天様の奥様も未覚醒でした。」

「・・・あなたはどうなの?」

「私は、接触知と空間知が使えます。」

「・・・水天さんの例え話。例えじゃないわよね?」

「流石、女性なだけあって鋭い。そうです。最初は私が予知しました。私は如月の未来を定期的に予知していました。それで、水天様が死ぬ未来を私は予知してしまった。水天様は私の葛藤を感情知で感じ取り、もしやと思い接触知を使ったそうです。」

「・・・水天さんはどうしてあなたの葛藤だけで如月の未来に関することだって分かったのかしらね。」

「・・・それは、水天様が“お前がそこまで葛藤するのは、自分以外の如月の身を案じる他にはない。”と仰っていました。」

「良い信頼関係ね。」

「ありがとうございます。」

「・・・あなたたちの力について色々合点がいったわ。そりゃ最強だわ。未来と過去が見えて、相手の心が見えて、何処にいるか分かるなんて、戦いで有利に立つには便利過ぎる能力だわ。今までの話を整理すると、あなたが予知して、水天さんも予知して、実際に事が起こってしまい、ここに至るわけね?」

「その通りです。」

「成程ね。水天さんが感情知であなたを見るのも予知の中に織り込み済みみたいね。でも、一つ疑問が残るんだけど。」

「何でしょう?」

「もし、智之さんの敵方に同じ力を持つ如月・・・影智だったかしら?その人が居るなら、どこに逃げても意味ないんじゃないの?」

「いえ。そんなことはありません。」

「何故?」

「ここは如月の予知が及ばぬ土地に御座いますので。」

「予知が及ばぬ土地?」

「はい。先程話した影智。奴は空間知を有しています。」

「それは、さっきの話の内容で分かってるわ。空間知で戦を有利に進めてきたのでしょうね。」

「ええ。しかし、その空間知。その力が及ばぬ場所があるのです。」

「それが、この迦流美神社なの?」

「はい。如月一族は世界の事象を知り得るといっても過言でもない程の情報を有しています。この迦流美神社は何故か分からないですが、空間知が封じられる場所なのです。」

「じゃあ・・・。」

「ええ。奴の空間知は封じられ、我々の所在は分からない。」

「だから、敷地内からは出るなって、坦坑に言ったのね?」

「ええ。今影智は血眼になって我々を探しているでしょう。ですがこの迦流美神社であれば何とか身を隠せる。」

「・・・成程。あなた方の事情は分かりました。」

「それでは・・・‼」

「ええ。改めて、ようこそ。城堂家へ。」

「ありがとうございます‼」

「いえいえ。」

「母さん‼もう話し終わった?」

「終わったわよ。」

「じゃあ、そろそろ、買い物行こうぜ。」

「そうね。じゃあ智之さんと晴天丸君。うちで待っててくれる?」

「分かりました。」

「え?でも、家事を手伝わせるんじゃ・・・。」

「坦坑。あなたが手伝って。買い出しの道中で智之さんの経緯を話すから。」

「分かったよ。」

「じゃ、お願いね。」

「はい。」


~~~~~


「(・・・智之君と晴天丸が来ない。)おい、誰かいるか?」

「お呼びでしょうか?」

「やはり、例の彼女に依頼を出す必要が出てきた。頼むぞ‼」

「承知。」


~~~~~


「敵襲ーー‼敵襲ー‼」

「我が軍、壊滅的被害です‼」

「なんじゃと⁉影智‼敵は何処におる‼」

「真っすぐこっちに向かっています‼」

「どこの勢力じゃ⁉」

「・・・分かりません‼ですが・・・一人です!」

「一人じゃと⁉なら何故、こうも攻め込まれるのじゃ⁉」

「お二人とも、お逃げ・・・グフッ‼」

「ゔゔおおおぃぃ‼取りこぼしはなしだぁ‼」

「なっ・・・‼、もうここまで来ておるのか‼」

「天下の如月も大したことねぇな‼一人の賊に壊滅とはよぉ‼」

「如月じゃと⁉わし等は如月ではないぞ?」

「白切っても無駄だぁ。そこのジジイ。お前が黒幕だろぉ。」

「何?」

「お前が、こいつらを先導して侵略したんだぁ。だが、その栄華もここまでだぁ。」

「や、やめてくれ‼頼――。」

「・・・カスどもが。」


~~~~~


「戻りましたよ。」

「お帰りなさい。塵鳳殿。・・・どうでした?」

「・・・やっぱり、如月一族は壊滅したみたいね。町中で大騒ぎよ。」

「そうですか・・・。」

「・・・ごめんね。大した情報もなくて。」

「いえいえ、こちらこそ。ここ一か月、お世話になりっぱなしで・・・。」

「いいのよ。それは。智之さん思ってたよりも料理が上手いから、いつも助かってるわ。」

「それなら・・・良かったです。」

「あとね、最近、如月に関することで妙な噂が立ってるのよね。」

「妙な噂?」

「あの勢力が壊滅した・・・という噂よ。」

「何ですって?」

「それも、一人の剣士によって。20歳前後の青年だそうよ。」

「・・・暗殺者ですかね。」

「にしたって、こんな大規模なものは聞いたことがないわ。」

「・・・私も聞いたことがないですね。ん?壊滅・・・まさか‼」

「まさかって?」

「壊滅ということは影智も死んだのでは?」

「・・・だとしても、今外を出るのは危険よ。」

「何故です?」

「あなた達如月だって、巷で壊滅したって言われてても、ここにいるでしょ?もし、もうここを出ようと思っているなら早計よ。最低でも1か月は様子を見た方がいいわ。」

「でも・・・。」

「すぐにでも確認したいのは分かるわ。でも、あなたがここから出て空間知で感知しようとしてるように、向こうも感知しようとしてるかもしれない。相手には捨てるものはないけど、こっちには晴天丸君もいるでしょ?それに一度、この付近を感知されれば、ここの秘密も何れ知られてしまう。そうしたら、もうここも隠れ蓑には出来なくなるわ。・・・今は耐える時よ。」

「・・・はい。済みません。頭に血が上ってました。」

「・・・気持ちは分かるわ。身内が殺される怒りは私も知ってるから。」


~~~~~


「初めまして。ディクーチェ・オビリオと申します。」

「結野先守だ。よろしく頼む。」

「では、早速依頼内容をお聞きしたいのですが。」

「如月一族について調べてほしい。」

「如月ですか?確か巷では滅亡したと聞いていますが・・・。」

「ああ。それは事実だ。だが、生き残りがいるはずなんだ。」

「・・・では、依頼内容は如月一族のその後。そして、生き残りがいた場合。その所在の特定。ということでよろしいですか?」

「ああ。頼む。」


~~~~~


「やれやれ・・・まさか、影智が取りこぼすとは・・・。おかげで私の計画に狂いが生じました。さっさと智之と晴天丸を始末したいところですが、五神の一角を担う城堂家に匿われているとは少々厄介です。もう少し、時を待ちましょう。」


~~~~~


「ん~~このあたりのはずなんですけどね。」

「(何がですか?)」

「如月一族の生き残りが隠れているであろう土地ですよ。」

「(どうして、そう思うのですか?)」

「如月一族は他国までその雷名を轟かせる程権威を持った預言者集団です。ですが一般人は殆どと言っていい程その存在を知りません。それは何故か。それは彼らが徹底して情報統制をしているからでしょう。自身の予知の力によって。きっと彼らは自分自身の未来も予知出来るのでしょう。」

「(でも、そんな如月も滅亡してしまったじゃないですか。)」

「・・・それは、最近耳にするもう一つの噂が関係していると思います。」

「(それは・・・第二の如月一族滅亡事件ですか?)」

「ええ。20歳前後の青年が一人で壊滅させた事件です。私の推理ではこの第二の如月一族滅亡事件。必ずしも如月が関わっていないと言い切れないと思うのです。」

「(というと?)」

「第二の如月一族滅亡事件。最低一人は如月がいたのではないでしょうか?でなければこの滅亡事件に如月の名がつくことはないはずです。恐らく、如月の力を感じさせる何かがこの滅亡した勢力にあった為、第二の如月と呼ばれるようになった。」

「(でも、それで何が分かるんですか?)」

「二つの如月が存在したということです。つまり、本家と分家の如月家が存在し、先に本家が分家に滅亡させられた。これが第一の如月一族滅亡事件。その場所には宙に舞う女性が目撃されています。」

「(ああ。あの戦争屋ですね。)」

「ええ。ツィオ・ボンディーレ。人間爆撃機、破壊神の異名をもつ超能力者です。そして、ボンディーレにより、如月本家が壊滅。その後、理由は分かりませんがスパード・ヴィータによって、如月分家が壊滅させられています。」

「(あの殺し屋剣士ですか。)」

「ええ。命をさらう剣と呼ばれる世界最高の剣士です。」

「(・・・で、その事実から何故、生き残りが隠れ蓑にしている土地がここだと?)」

「それはですね・・・勘です!」

「(・・・はい?)」

「私の勘が告げているのです!この土地には必ず何かあると‼これから、どんどん目ぼしい人に声をかけていきますよー‼すみませーん‼」

「(まったく、この子は・・・汗)」


~~~~~


「お帰り・・・って、坦坑君だけかい?」

「・・・智之さん。今な、如月一族の生き残りを探してる怪しい奴が来てんだけどな、母さんが対応してる。あんたと知り合いだって言うんだが・・・どうも怪しい。だから遠目に確認して、知らなかったら俺に教えてくれ。俺から母さんに伝える。」

「・・・分かった。(誰だ・・・⁉)」


~~~~~


「・・・どうだ?」

「・・・いや、知らない。」

「分かった。念の為、荷造りを。」

「・・・ああ。分かった。」

「ですから、一目智之さんに会わせて欲しいんですよ。」

「何度も言うように、会わせることは出来ません。」

「分からない人ですねぇ。本人に言ってもらえればすぐ分かります。」

「・・・母さん。ゴニョゴニョ・・・。」

「・・・了解。やっぱり知らないそうです。お帰りください。」

「そんなぁ。じゃ、そうしま―。」

「その前に。ここのことは他言無用でお願いします。出来なければ、あなたの首が飛ぶことになるので。」

「・・・それは分かってます。」

「じゃあ、次も生きて会えることを楽しみにしてるわ。」

「私も楽しみにしています。ではまた。」

「・・・ふう。」

「大丈夫?母さん。」

「久々に、争いの匂いがするわ・・・。」


~~~~~


「やっぱり、ダメでしたねぇ。」

「(それはそうですよ。にしても、知り合いでもないのに、よくもまあ、あんな出まかせが次から次へと出てきますね。)」

「口だけは達者なもので。ですがあの人たちのお陰で如月の生き残りがいること。その名前が智之さんということ。また、子供も匿っていることが分かりました。」

「(子供が?何故そこまで分かるんですか?)」

「女性があそこまで本気になるのは、子供の為だけですから。」


~~~~~


「・・・あなたが城堂塵鳳さんかな?」

「・・・何方かしら?」

「私は結野先守。以前あなたのもとに、眼鏡をかけた女性が来なかったか?」

「・・・あなたの差し金か‼」

「待て、そう殺気立たずに話を聞いてほしい。俺は如月智之と晴天丸の知り合いだ。」


~~~~~


「先守さん‼」

「智之君‼晴天丸‼やっと見つけたぞ‼」

「・・・この方が、智之さんのお頭さんの知り合いの・・・。」

「結野先守です。先日は失礼しました。あの女性は探偵です。」

「探偵?」

「ええ。名前はディクーチェ・オビリオ。世界に名を連ねる調査のプロ。」

「・・・先守さんは何故、探偵を雇ったりしたんですか?」

「坦坑君。私には如月一族のような人探しの力はない。」

「・・・あ。」

「そう。この広い世界で何の当てもなく人探しなど、砂漠で一粒の砂を見つけるようなものだ。」

「・・・だから、彼女を雇ったのですね。」

「ああ。こうしたことは専門の人に任せるのが回り回って一番早い。・・・にしても、これ程心強い方たちに匿ってもらっていたとは思わなんだ。」

「え?それはどういう・・・。」

「彼女が言っていた。“あそこまで用心深い人たちなら命を張ってでも守っているだろう。”と。」

「それは・・・普通するでしょう‼」

「それについても言っていた。“普通の人ならあそこまで警戒しない。あの警戒の仕方はある意味、戦いのプロです。・・・なので、早く行かなければ、逃げられてしまうかもしれません。”とな笑。」

「(・・・まあ、ある意味プロだけどな。少し前まで、殺し合いしてたから・・・汗)」

「まあでも、そのお陰で智之君と晴天丸はこうして無事だったんだ。改めて、礼を言う。」

「い、いえいえ!」

「では、早速なんだが・・・。」

「いや、ちょっと待て。」

「ん?何だい?」

「会ったばかりで言いにくいんだが・・・先守さん。あんた一人で智之さんと晴天丸を守れるのか?」

「守れるよ。」

「何でそう言い切れる?」

「予知されているからだ。」

「予知?」

「ああ。俺は水天に死ぬ前一度会っている。そして、智之君と晴天丸が死ぬ予知はされていない。この意味が分かるかな?」

「・・・接触知ですか?」

「そうだ。接触知で見た未来は確実。現に水天は死んでいる。逆説的に言うと、彼らが生き延びるのも確実なんだ。」

「でも、もし狙われたら守れるんですか?」

「それは、君たちも同じじゃないのかな?」

「・・・お言葉ですが、同じではないと思います。」

「・・・何故?」

「こちらを、ご覧ください。」

「・・・これは、砂が勝手に・・・‼」

「私たちは、智之さんたちと会う少し前まで、一族同士で殺し合いをしていました。なので、戦いには多少覚えがあります。あの探偵さんは世界に名を連ねる名探偵なだけあって流石の洞察力。私たちの本質を見抜いていらっしゃる。そう、あの探偵さんの言う通り、私たちは戦いのプロ。もう殺し合いはやめましたが、それでも技術はそこらの殺し屋にも引けを取らない。」

「・・・成程。しかし、俺もただ人ではない。」

「どういうことですか?」

「コホン!自分で言うのは恥ずかしいが・・・護神の先守。これに聞き覚えは?」

「俺はないですね。母さんは?」

「・・・それは、この土地一帯を古来より災厄から守ってきた陰陽師の・・・。」

「そう。まあ、名前は世襲制だがね。」

「そんなに凄いのか?」

「私たちを含む五神家の神社の配置を決めたのも、その先守様よ。」

「そして、この神社に特別な結界を張ったのも私の先祖だと言われている。」

「そうか!だから、探知法が使えないのか。」

「そうだ。」

「・・・成程。私たちが出過ぎた抵抗をしたこと、良く分かりました。」

「いや、そう畏まらないでくれ汗。こちらこそ、彼らを守らんとする意思。しかと受け取った。これからは、私にその任を引き継がせて欲しい。」

「是非、お願い致します。」

「・・・まとまったね。では早速、行こう。日が暮れるまでには帰りたい。」

「・・・塵鳳殿、坦坑君。今まで、お世話になりました‼」

「・・・偶には、遊びに来てね?」

「ええ‼必ず‼」

こうして私と晴天丸は先守様の家へと向かうこととなった。


~~~~~


「・・・君がうちに来るのは水天が生きていた以来だね・・・。」

「・・・そうですね。」

「晴天丸君は?」

「眠っています。きっと長い旅に行っているとでも思っているのでしょう。」

「・・・まあ、そうだろうな。それより、ゆっくりしてくれ。久々に知っている土地に戻ってきたんだ。」

「そうですね・・・と言いたいところなんですが、聞きたいことがあります。」

「何だい?」

「影智はどうなりました?」

「彼は・・・殺されたよ。他国の青年剣士に。」

「そうですか・・・。」

「ああ。俺も幾つか聞きたいことがある。」

「何でしょう?」

「何故、俺のところに最初に逃げてこなかった?」

「それは、影智が空間知を使うからです。」

「彼が・・・⁉そうか、だから迦流美神社に逃げたのか。」

「ええ。あそこは探知法の及ばぬ地に御座いますので。」

「そのことなんだが、よく知っていたな。俺はこのことを知っているのは水天だけかと思っていた。」

「いや、偶然知ったんですよ。子供の頃に。」

「・・・どうやって知ったんだ?」

「子供の頃・・・今の晴天丸より少し大きい頃ですね。私は偶々、あそこで道に迷ったことがあるんです。それで、いつもみたいに空間知で自分の位置を把握しようとした時、使えなかったんです。子供だったんで凄い動揺しまして笑。影智が敵になった時から、もしかしたら使えるかもしれない・・・と忘れないよう覚えていたんです。」

「・・・流石、水天が信を置くだけあるな。」

「恐縮です。」

「さて、堅い話もここまでにして、今日はもう休みなさい。」

「・・・では、お言葉に甘えて、休ませて頂きます。」

「晴天丸は任せろ。」

「はい。」

こうして私と晴天丸は久しぶりにゆっくりと夜を明かした。


~~~~~


翌日。

「おはようございます。」

「おはよう。」

「晴天丸は?」

「うちの一門の者と戯れている。」

「そうですか。」

「突然なんだが、水天は・・・誰に殺されたんだ?」

「・・・名前は分かりませんが、宙に浮く女子でございます。」

「宙に浮く女子?」

「ええ。直接は見ていないのですが、晴天丸を連れ出す前に生きていた部下から聞いたのですが、宙に舞い、腕を一振りするだけで建物を薙ぎ払う力を有しているとのことです。」

「それはまた・・・規格外な女子だな。」

「ええ。・・・影智をやった青年はどのような名前なのですか?」

「名前は分からん。ただ、如月一族を滅ぼした女子のようにその青年は一人で、かの勢力を壊滅させたらしい。」

「・・・一人で。」

「規格外だよな。しかし、こうした話を聞くと少し懐かしく感じてしまうんだ。」

「懐かしく?」

「ああ。師匠を思い出す。」

「師匠?先守様にもいるのですか?」

「ああ。うちの一門が代々お世話になっている一族にな。」

「どんなお師匠様なのですか?」

「お師匠様と呼べる程、大層なものじゃない。ただ、強い。なんせ強過ぎて各国から指名手配されているからな笑。」

「・・・悪人なのですか?」

「いや笑、子供みたいな人だ。あの人が指名手配されているのは各国の体裁を守る為だ。」

「はい?どういうことでしょうか?」

「あの人は冗談でも過大評価でもなく、一国を滅ぼせるだけの力がある。余裕でな。国が一個人より弱いなど他国にお笑いだろ?だから体裁として指名手配されているのだ。」

「・・・よく分からないですが、とにかく凄いお方なんですね。」

「まあな。・・・ところでこれからお前たちはどうするんだ?」

「え?」

「俺はいつまででも、ここにいていいと思っているが、お前はそうは思わないのだろう?」

「・・・そうですね。暫くは先守様に助けて頂くことになると思います。しかし何れは出て行かねばと思っています。」

「・・・まあ、智之君の意志は尊重するが、無理だけはするなよ?」

「はい。」

「いざという時、結野一門は如月一族をいつでも歓迎する。」

「・・・ありがとうございます。他にも、塵鳳殿のところもありますしね。」

「だな笑。あの人たちは心強い。そう簡単にはやられないだろう。」

「ですね笑。」

こうして私と先守様は、他にも生前の水天様の話に花を咲かせ、久しぶりに楽しい時間を過ごした。


~~~~~


そして、数日後。

「・・・行くのかい?」

「ええ。やはり、如月家は独立して生きていかなければ‼」

「・・・頑張れよ。」

「はい‼」

「じゃ、また会おうな。」

「 はい、必ずまた生きて会いましょう。」

こうして私と晴天丸は如月が如月として独立して存続出来るようあえて、厳しい道を選んだ。


~~~~~


そしてその少し後・・・。

「クフフフッ。やっと見つけました。ここが如月の生き残りが隠れ蓑にしている結野一門ですか。」

「(そこまでして、如月一族を根絶やしにすることに意味なんてあるのかい?)」

「ありますよ。私の野望の実現には未来が視える彼らが邪魔だ。」

「(君の野望って・・・?)」

「この醜い世界を、彼らの血で真っ赤に染めることです。その血にて、穢れた世界を清めます。彼らが穢した世界だ。彼らに清めてもらいましょう。」

「(圧倒的な憎悪だね。)」

「あなたでも拒絶しますか?」

「(いいや?むしろ清々しいよ。君は振り切ってて面白い。他の人間も、もう少し振り切るべきだと、僕は思うね♪)」

「周囲の顔色を窺っていないでね。」

「(・・・やっぱり、僕たち気が合うね♪)」

「そうですね。では、行きま—。」

「君はここで何をしているのかな?」

「‼」

「そして、誰かな?」

「・・・誰でしょうね。(イプノ。力を貸して下さい。)」

「(了解。何から使う?)」

「(瞬間移動です。)」

「・・・‼」

「終わりです。(・・・念力‼)」

「(何か分からんが・・・まずいな‼)守印‼」

そう言うと、先守は謎の少年の居る方向に印紋を繰り出した。

「・・・ほう。今のを防ぎますか‼」

「(・・・今の衝撃波は何だ?まったく見えなかったが、確実に攻撃されている。)」

「次々行きますよ・・・‼」

そう言うと謎の少年は連続で目に見えない衝撃波を放った。

先守は守印を展開し続け、話をし始めた。

「クッ・・・‼君の目的は何かな?」

「・・・如月を私に引き渡してもらいたい。」

「・・・‼(・・・こいつは智之君たちを追っているのか。ならば・・・‼)・・・それは無理な相談だな。」

「ならば、力ずくでも引き渡してもらうまで・・・‼」

「・・・抜印。」

「(・・・攻撃が・・・すり抜ける⁉)」

「もう少し、話をしようか。今君が使う力。それは何処かで習えるものなのかな?」

「・・・どうでしょうね。」

「答える気はないか。至極当然。ならばこちらから一方的に話をさせてもらう。君の使う力。恐らく、如月を滅亡に追いやった宙に浮く女子と同系統の力とみている。」

「(・・・鋭いね彼。)」

「(・・・そうですね。)」

「わたしもね、この力はある人に習ったんだよ。」

「・・・誰ですか?」

「クルデーレ。」

「・・・‼」

「・・・知っているということはやはり、裏の人間か。」

「裏でなくてもその名前は誰でも知っている。一国を散歩感覚で滅ぼすと言われている危険人物だ。」

「あの人は“降りかかる火の粉は元から断つ”と言っていたがな笑。」

「(・・・今回は、分が悪過ぎますね。)」

「さて、そろそろ君には捕まってもらう。網印{糸}。」

「クッ・・・‼(イプノ、瞬間移動です!)」

「(了解。)」

「君には、知っている情報を洗い浚い話して——消えた。逃げたか。」


~~~~~


「・・・ふう。」

「(思ったより強かったね。先守。)」

「・・・認めたくはありませんがね。」

「(にしても、君が退くなんて珍しいね。)」

「・・・なに、先守は倒せないことはありませんでしたよ?ですが、私は目立つわけにはいかない。・・・それと、如月はもういいです。どうせ生きていても、もう害はないでしょう。」

「(・・・後ろにいるクルデーレかい?)」

「ええ。彼女には一対一では勝てない。」

「(君が勝てないって言うなんて・・・そんなに強いのかい?)」

「勘違いしないでください。絶対に勝てないわけではありません。例えばツィオとヴィータがクルデーレを襲うよう仕向け、その隙を突けば勝てるでしょう。」

「(・・・相変わらずだね。君。)」

「何とでも言いなさい。勝つ為には当然です。」

こうして、如月一族は滅亡の危機に晒されながらも、何とか命を繋ぐことに成功する。

彼らの子孫が新たに活躍するのは、また別のお話・・・。

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