天使たちとの能力戦線(七章、フェアの対人術)
フェア「ミィディア~、元気にしてますか?」
ミィディア「フェアか。まぁそれなりには。」
フェア「そうですか。」
ミィディア「今日は何しに来たの?」
フェア「今日はですね、私の対人術をあなたにみっちりとお教えする為に降りてきました!」
ミィディア「・・・対人術?」
フェア「人間と相対する為の技術です。」
ミィディア「なんかどういう技術なのかイメージ出来ないな。」
フェア「もう少し分かり易く表現するならば人間と相対する時にこそ真価を発揮する技術です。」
ミィディア「・・・?」
フェア「まだ分かりませんかぁ?」
ミィディア「・・・うん汗。」
フェア「ならこの表現はどうでしょう?言葉という“人”であれば大多数の者が使用するものだからこそその人間に通用する技術。逆に言うと人間以外にはまったく効果を示さない技術。」
ミィディア「あ、何となく分かってきたよ。対人間に対する技術だから対人術ってことね?」
フェア「そうです。言葉を行使する人間だからこそ通用する技術を今回は教える為に降りてきました。」
ミィディア「成程。ってことは結局会話術を教えに来たってことだろ?」
フェア「違います。会話術ではなく対人術です。」
ミィディア「でも言葉を行使する人間だからこそ通用する技術を教えに来たんだろ?」
フェア「確かに言葉の行使についても教えますが本質はその言葉を行使することによる対人術の習得です。言葉を行使する人間は比喩で出したに過ぎません。」
ミィディア「言葉を行使することによる対人術の習得ってどういうこと?」
フェア「対人術には確かに言葉の行使が大多数を占めますが言葉はあくまで対人術を行う上での手段に過ぎません。」
ミィディア「・・・ってことは対人術っていうのは会話術も含めた総合的な技術ってこと?」
フェア「そうです。なのでミィディアには以前教えた会話術以外の言葉の行使法と言葉以外の対人術というものをお教えしたいと思っています。」
ミィディア「分かった。」
フェア「ではまず使用頻度が多い言葉を用いた対人術からいきます。これは基本話が通じる人間に対して使用することが可能です。」
ミィディア「そりゃそうだ。」
フェア「ですが世の中の六割ほどは言葉を使用することが出来ても使いこなすことが出来ない人間がいます。」
ミィディア「六割もいんの⁉」
フェア「あくまで体感ですが。そして全体の約二割ずつでそもそも言葉が通じない人間たち言葉が通じて使いこなすことも可能な人間たちに分かれています。」
ミィディア「そうなのか。」
フェア「なのでまずは大多数の六割への対処から説明していきます。」
ミィディア「分かった。」
フェア「正直ここが一番対処が難しいです。心して聞いてください。」
ミィディア「何で対処が難しいの?」
フェア「世間一般で言われる大して知恵に弊害のないのにバカと呼ばれる人々がここに分類されるからです。」
ミィディア「成程。」
フェア「半端なので一番加減が難しいです。まぁバカなのは知恵の怠惰なのですが。」
ミィディア「・・・まぁ何となく言ってることは分かる。」
フェア「良かった。ではこの六割の人間たちへの対処法ですがそれは“相手のルールを理解せよ。”です。」
ミィディア「どういうこと?」
フェア「このバカと呼ばれる人間たちの考え方を理解してその考え方に反れない行動をバカの前では取ってください。」
ミィディア「あ・・・相手の見えている世界以上のことは見せるなってことか。」
フェア「そうです。あえて相手と同じ土俵で話をし相手にその世界観以外の世界を感じさせないようにして下さい。バカというのは実力もないのに努力をしようとしません。ですが自分より上と感じられる存在が現れると全力で引きずりおろしにかかったり嫉妬しとても粗悪な存在となります。そしてそうした状態に成ると言葉が通じなくなります。」
ミィディア「それって言葉という意思疎通の道具は持ってるけどまるで使えない状態に成るってこと?」
フェア「はい。この六割に含まれるバカというのは自身より相手が下であれば狡猾に言葉という道具を使い対等な時のみ辛うじて言葉を使うことが出来ます。そして上であれば今度は言葉が通じなくなるというとても危うい存在です。なので私たち天使からすると全体の人間の約八割がまともに意思疎通が出来ない者たちとなります。」
ミィディア「・・・まぁ急に話が通じなくなる時はあるな。」
フェア「ミィディアでもありますか。どんな時でしょう?」
ミィディア「なんか理屈とか理論の話に急に感情を入れてきて黙ったり無視してきたりめちゃくちゃ勝手なんだよな。」
フェア「あーバカの典型ですね。勝手に論点ずらしておかしくなる人間。」
ミィディア「あれがあるから俺人間嫌いなんだよな。なんかそんな自分勝手な相手に敬意を示してるのがばからしい。」
フェア「でも下界は多数決で決りますからね。いくら優秀な二割の人や意思を表出する術を知らない聡明な人間がいたとしても無視されてしまいます。」
ミィディア「・・・天界だったらさ、そうした体の機能的根本的に意思を表出することが出来ない人の意見ってどうなるの?」
フェア「別に地上のように黙殺はされませんよ?以前そうなった天使がいた時はプロイビーやグラントの全知の神力で意思を読み取って表出していましたから問題ありませんでしたし。」
ミィディア「・・・なんか正しい超能力の使い方って感じで少しほっこりするな。」
フェア「ま、神力ですがね。」
ミィディア「その天使って今はどうしてるの?」
フェア「消えてしまいました。」
ミィディア「・・・何で?」
フェア「大逆で・・・といえば分かりますか?」
ミィディア「あ・・・全て察した。」
フェア「ありがとうございます。では話を戻します。この六割バカは話が通じる時もあれば通じない時もあるというこちらのスタンスを狂わす非常にめんどくさい存在であると言えます。なので基本は彼らの相手はしないことをお勧めします。何故なら話にならないからです。」
ミィディア「・・・ボケてる?」
フェア「・・・いえ、結果的にボケになってしまいました汗。」
ミィディア「成程笑。」
フェア「ミィディアはこの分類でいえば確実に話の通じる二割の人間に分類されます。」
ミィディア「なんか照れるな・・・。」
フェア「ですがそうしたミィディアでもこの六割バカと関わると六割バカと同じ人間になってしまいます。」
ミィディア「え、何で⁉」
フェア「この六割バカがこぞって二割の人間を六割の土俵に引きずり落とそうとするからです。今現在バカは六割バカですが本来であればバカはもっと少ないのです。」
ミィディア「・・・というと?」
フェア「大体下界には二割ずつの割合で言葉を使いこなせる人間と使いこなせない人間がいます。そして、この使いこなせない二割を十割とした場合の二割が使いたくても使えぬ人間で構成されています。そして全体の十割に戻った際残った六割はどちらにも分類されない人間で構成されています。しかしこの二割に含まれている言葉を発することが出来るが道具としては使いこなせないバカがこのどちらにも含まれない六割を徐々にバカに染め上げ結果二割バカは六割バカにまで膨れ上がってしまったのです。」
ミィディア「〝・・・めっちゃバカバカ言うやん。〟成程汗。」
フェア「逆に上の二割の人間もある程度は六割のどちらともいえない人間を染め上げています。普通と呼ばれる人間&普通よりちょっと頭がいい人間を生み出し元々の二割の中で更に二割が俗にいう天才と呼ばれその残りが秀才と呼ばれます。」
ミィディア「・・・俺はそれのどこに入るの?」
フェア「真ん中の頭の良い人々に染め上げられた普通と呼ばれる人間&普通よりちょっと頭がいい人間ですかね。」
ミィディア「うわぁ一番つまんねえやつだ。」
フェア「取り立てて他人より優れているところもなければ劣っているところもないというやつですね。」
ミィディア「まぁ実際そうなんだけどさ・・・。」
フェア「ま、今までミィディアは色々な天使から流石とか凄いと言われたと思いますがそれは前置詞に“ごく普通の人間なのに!”が入っていることを覚えておいて下さい。」
ミィディア「・・・何でそんな悲しいことを言うんだよぉ。」
フェア「あなたの為ですよ?」
ミィディア「俺の為?」
フェア「思い上がらない為です。」
ミィディア「それは大丈夫だよ・・・。」
フェア「それはどうでしょう?人間というのはどん底にいる時は確かに惨めなくらい殊勝ですがそれはそれ以上失敗したくないという知恵的な本能が働いているからです。しかし今ミィディアは徐々にそのどん底から離れてきている。こうしたちょっと余裕が出てきたちょっと慣れてきたという時ほど人は傲慢になり自ら失敗を犯し易くなるものです。」
ミィディア「まぁ車の運転も初心者より一年目二年目の方が事故を起こしやすいからな。」
フェア「ええ。そしてそういった時の失敗というものは結構大事になることが多いです。なのでミィディアには驕らず謙虚に強かにを覚えてほしいと思っています。頭ではなく体の方で。」
ミィディア「成程ね・・・。」
フェア「そしてこうしたちょっと慣れた時にする失敗は対人術においてはほぼ確実に命取りになるということも覚えておいてください。」
ミィディア「ほぼ確実に?」
フェア「はい。ほぼ確実に取り返しのきかないタイプの悪手になります。」
ミィディア「え、取り返しがきかないの?」
フェア「ききません。」
ミィディア「何で?」
フェア「相手の思考は変えられないからです。」
ミィディア「・・・変えられないの?」
フェア「ええ。これからこの対人術を実戦で使えば分かるようになっていきますが世間一般で言われている相手の譲歩を引き出すテクニックとか相手を思うがままに操る心理学といったものは盛大なはったりをかました嘘です。正確には嘘ではないのですが本を読めば使えるというものではありません。あれが成り立つのは使用者の技術的センスと使用技術の熟練度。そして対象者に対する精密な理解をする術。この全てを当たり前のように行える者でなければ出来ません。」
ミィディア「それって土台無理じゃん。」
フェア「ですよね笑。下界で心理学という学問が流行っていますがあれはひどい詐欺だと私自身思っています。何故ならそもそもの大前提として心という曖昧な定義のものは分かる人には普通に分かるし分からない人には何をどう頑張っても分からないからです。つまりセンスがその技術の大部分を占める学問なんです。センスがあれば説明書がなくても使えますし逆にセンスがなければ説明書があっても使えない。それが心に関わる全ての技術の特徴です。」
ミィディア「だから詐欺だって言ったのか。」
フェア「ええ。才能が大きく左右する・・・というかほぼ全てである分野を努力で何とかなる!と言うのはあまりにも無責任です。」
ミィディア「無慈悲だよなぁ・・・。」
フェア「はい。例えばイプノが人間の人格を書き換えられるのはご存じですか?」
ミィディア「知ってる。」
フェア「イプノが人間の人格を書き換えることが出来るのは神力というエネルギーによって精神に干渉するからこそ書き換えられるのであって同じ人間に人間の人格を書き換えろと言っても無理な話ですよね?」
ミィディア「人間には神力がないからな。」
フェア「センスのない人間に心に関わる技術が努力で何とかなる!と言うのはそれと同じくらい無理でおかしなことを言っているんですよ。」
ミィディア「そもそも無理だよ?っていうね。」
フェア「頑張れば不死になれます?」
ミィディア「無理です。」
フェア「そういうことです。」
ミィディア「成程。相手の意思を変えられない理由が分かったよ。そもそも相手の支配下にある意思に外部から干渉しても変わるはずがないもんな笑。」
フェア「ええ。心を理解すればするほどこうしたことは分かるようになっていきます・・・ですがミィディアが理解出来た頃に近くにいられないのが少し残念ですけどね。」
ミィディア「俺もだ。」
フェア「今までミィディアはどれだけ心に関わる技術を学んできましたか?」
ミィディア「暗示・洗脳・催眠・言葉・心理・集中・秘密・・・かな?」
フェア「暗示・洗脳・催眠はセイとイプノからですね。」
ミィディア「ああ。」
フェア「言葉は私が教えましたね。」
ミィディア「そうだな。」
フェア「心理は誰から教わりました?」
ミィディア「独学と各天使から“こういう時はこう来る。”ってのを色々と。」
フェア「それでどうですか?今よりは生き易くなりました?」
ミィディア「めちゃくちゃな笑。しかもさ、最近は相手の行動や表情を見ると勝手に相手の気持ちが分かるようになってるんだよ。」
フェア「それはちゃんと確認済みですか?」
ミィディア「確認済みだ。だってことあるごとに“何で分かったの⁉”とか“察しが良い。”って言われてるもん。」
フェア「そしたらミィディアには心の技術のセンスがあるのかもしれませんね。」
ミィディア「そうなのかな?」
フェア「多分そうだと思います。大逆で別れる前のイプノからミィディアと同じ発言を聞いたことがあります。」
ミィディア「同じ発言?」
フェア「相手の行動や表情を見ると勝手に相手の気持ちが分かるようになってると。」
ミィディア「マジで?」
フェア「ええ。そして暫くしてからイプノは読心の神力を獲得していたようでした。」
ミィディア「え、でもそれ大逆より前から分かってたの?」
フェア「ええ。ですが当時殆どの天使はその読心が催眠の神力を使う為の経過成長だとは知りませんでした。私も含めて。知っていたのは精神干渉系の神力を使う天使だけ。」
ミィディア「成程ね・・・。」
フェア「あとちょっと話はずれますが人間が目指している不死についてミィディアはどう思います?」
ミィディア「どう思うって?」
フェア「なりたいですか?不死。」
ミィディア「あー・・・それなら今はなりたくない。」
フェア「今は?」
ミィディア「不老が加わったら考えるかな?」
フェア「成程笑。ちゃんと考えられていますね笑。」
ミィディア「だろ?」
フェア「ええ笑。多くの人間は何故か不死になれると聞いただけで勝手に不老のオプションがついているかのように話を進める。しかし人間の技術で考えてみると不死を実現するだけでも相当大変なはずです。ということはまず不死の理論をちゃんと形にしてから不老を研究するはず。」
ミィディア「じゃないと色々こんがらがるからな。」
フェア「ええ。まぁ逆に不老を先に研究し結果的に成功すれば老けないから老衰で死なないし結果不死だよね。という理論にするのであれば同時でいけるでしょうけどそれが実現するのはいつになるのでしょうかね。」
ミィディア「結構すぐだったりしてな笑。」
フェア「かもしれませんね笑。では対人術の最後に残りの上下二割についても話をさせて頂きます。」
ミィディア「ああ。」
フェア「残りの上下二割は“別に意識しなくていい。”です。」
ミィディア「・・・そうなの?」
フェア「はい。そもそも関わる機会の方が少ないと思いますし関わったとしても上の方々なら上手に話をしてくれます。狡猾に来たとしてもミィディアなら心の技術で上手く撃退出来ます。下とされる方々もとても嫌な言い方になりますが通じないのが当然です。なので通じ合えなくても気を落とす必要もないですしミィディアならこれまた心の技術である程度の意思の確認は出来ます。」
ミィディア「成程。」
フェア「これで対人術の説明は終わりになります。何か聞きたいことはありますか?」
ミィディア「いや心の技術って偉大だな。」
フェア「運が良かったですね♪心の技術はゼロヒャクですから持ちたくても持てない人の前では気を付けて使ってくださいね?」
ミィディア「嫉妬の対象になり易いからだろ?」
フェア「そうです・・・それとこれは対人術とは関係ないのですが少し蛇足としてミィディアに聞いてもいいですか?」
ミィディア「・・・何?」
フェア「集中と秘密は誰に教わりました?」
ミィディア「集中はフォルテに秘密は独学だ。」
フェア「〝・・・成程フォルテから・・・〟極限集中ですか?」
ミィディア「ああ。知ってるの?」
フェア「ええ。大逆で最も長い時間戦ったのがフォルテですからその効果はお墨付きですよ♪」
ミィディア「・・・因みにどれくらい戦ったの?」
フェア「ほぼ最初から最後までですね。」
ミィディア「マジで?」
フェア「マジです。1日で例えると24時間の内23時間は戦ってます。」
ミィディア「凄いを通り越してキモ・・・。」
フェア「笑。秘密の方は独学と言ってましたがその秘密はどう使うんですか?」
ミィディア「マジックみたいなものだよ。根幹となる部分を隠してそれ以外を友好的な形で明かしていく。」
フェア「例えば?」
ミィディア「別に相手に知られてもいい自分にとってはどうでもいい情報を開示し相手の信用を得るってな感じかな。そうすればこっちはノーコストで相手からメリットが得られる。」
フェア「〝・・・セイのまやかしの仕組みをミィディアなりにアレンジして使っているのですね。〟成程。でもそれは信用ならない相手にのみ使うことをお勧めしますよ。」
ミィディア「何故?」
フェア「そうしないと自分自身の中で信用出来る人間と信用出来ない人間の区別がつかなくなってしまいますから♪」
ミィディア「・・・そうか。確かにそうだな。分かった。了解だ。」
フェア「では私はもう上に行きますが何か言いたいこととかはありますか?」
ミィディア「大丈夫でーす。」
そういうとフェアは消えていった。
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