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天使たちとの能力戦線(六章、シェンスの思考術)



シェンス「ミィディア~、元気~?」

ミィディア「お、シェンス!まぁまぁかな。」

シェンス「そう~。」

ミィディア「今日は何しに来たの?」

シェンス「今日はね、あなたに考え方を教えに来たのよ。」

ミィディア「考え方?」

シェンス「ええ。」

ミィディア「それって何に対する考え方なの?」

シェンス「あらゆる物事に対しての考え方。要するに考えるという行為に対するお勉強をあなたに課しに来たの。」

ミィディア「えぇ~・・・。」

シェンス「そんな顔をしないの。これはあなたの今後の人生に必要なことなの。」

ミィディア「それは分かってるけどさぁ・・・。」

 シェンス「めんどくさいのは分かるけど考え方は早いうちに学べばそれだけその後の人生は豊かになるし考え方を教えておけば私たち天使がいなくてもあなた一人で判断出来ることも増えるからウィンウィンなのよ。」

ミィディア「成程ね。」

シェンス「ま、退屈はさせないわよ。」

ミィディア「頼むよ・・・。」

シェンス「じゃ今までの経験を事例にして説明していきましょっかね。」

ミィディア「了解。」

シェンス「まずは過去の経験を今に生かす為の考え方から。ミィディアは自分の経験の中で心に残っていることはある?」

ミィディア「それってどんなことでもいいの?」

シェンス「どんなことでもいいわよ?些細なことから大きなことまで。生まれてから今現在に至るまでのことならなんでも。」

ミィディア「そしたら・・・今までの俺の人生ってちゃんと出来ていたのかな?」

シェンス「ちゃんと出来ていたってもう少し具体的に出来そう?」

ミィディア「・・・なんかどっかだらけてたんじゃないかな?って思って。」

シェンス「だらけるのはいけないことなの?」

ミィディア「いけなくはないんだけど・・・もしちゃんとやれば変わるところでだらけてたらすっごい嫌だなって思ってるんだ。」

シェンス「成程ねぇ。じゃまずあなたが今までの人生ちゃんと出来てたかどうかだけど人間の中では上位5%とまでは言わないけど確実に半分よりは上に入るくらいはちゃんと出来てるわね。」

ミィディア「半分より上・・・かぁ・・・。」

シェンス「上位5%って言ってほしかったんでしょ?」

ミィディア「うん・・・。」

シェンス「人間は多いからね。自分ではかなり上だと思ってもあなた以上にちゃんと出来てる人間は普通にごろごろいるわよ。」

ミィディア「まぁ分かってたけどさ・・・。」

シェンス「それに上位5%なんて普通の人間じゃないから。もう別の生き物と思ってもいいくらい。」

ミィディア「そうなんだ。」

シェンス「ええ。じゃどうしてあなたの人生がそこそこに出来ていたか説明するわね?」

ミィディア「うん。」

シェンス「まず幼少期から。この時期は広く見ると大前提として生まれてくることすら出来ない人間や例え生まれてきても満足に衣食住が与えられず死んでしまう人間。さらには親に殺される人間がどこの土地においても一定数いるのが事実。その中で衣食住が与えられ五体満足で生まれてこれたのは幸せと取るべきね。」

ミィディア「まぁそうだけど・・・こんな感じで分析していくの?」

シェンス「思考の勉強といったでしょ?じゃ続けるわね。その後ミィディアは暫く物理的には安定な時期を過ごすわね。」

ミィディア「小学校に上がるまではな。」

シェンス「ま、裏ではもう自己破産をしてるから仮初めの安定だったんだろうけどね。そしてあなたが小学校に上がった頃からその仮初めの安定も崩れ始める。けどこれって今の地上を見るとそんなに絶望とも取れないのよね。」

ミィディア「何で?」

シェンス「まずあなたたちの人類史で見ると今の時代って言うのかしら?まぁ時期でいいわ。今の時期は生きていけるのが当たり前になってる。けど昔は生きていけないのが当たり前。生きることが出来ればそれは神の加護。こうした目線で見ると確かに弊害はあるけど死には直結しないからそこまで不幸ではないよねって考え方が一つ。次が今の時期にミィディアと同じ状態になっている人間が比較的少なくないことからミィディアの状況は決して稀有な状況ではなくそれなりの確率で起こることだからそれに関係しない人間から見れば運が悪かったね程度に捉えられてしまうという考え方が一つ。」

ミィディア「でも運が悪いのって不幸じゃないのか?」

シェンス「けど絶対的に逃げられない訳ではないでしょ?っていう考えも出来るのよ。」

ミィディア「何で?」

シェンス「だって嫌ならその家から逃げてしまえばいいでしょ?住む場所は何処でもいいんだし食べ物だって山や川に行けば沢山ある。」

ミィディア「そんな旧石器時代のような考え方持ち出されても・・・。」

シェンス「まぁあくまで考え方だから。でも今あなたの生きている時期だとそれが封じられているのよね。人間の作ったルールや縛りによって。」

ミィディア「そうだけど・・・便利な面の方が多いから。」

シェンス「あなたたちの薬か毒かみたいなものね。」

ミィディア「ああ。」

シェンス「ま、そんな訳であなたはそこそこに不幸なまま成長しついに高校生になった時父親の魂を四割飛ばす。」

ミィディア「・・・あのさ、今ふと疑問に思ったんだけど罪と罰の仕組みってどういうものなの?」

シェンス「どういうものってどういうことよ?」

ミィディア「どういう考えの元成り立ってるのかな?ってこと。」

シェンス「あー・・・まずね、あなたは父親の魂を意図して飛ばしたでしょ?」

ミィディア「うん。」

シェンス「意図して他人を脅かすという行為が罪なの。そしてそれに課されるのが罰という責任。だからあなたの意図して魂を飛ばすという罪に対して不幸の数が増えるという罰ってのが罪と罰の仕組みね。」

ミィディア「じゃあ意図せず脅かしても罪にはならないの?」

シェンス「ならないわね。」

ミィディア「えー・・・。」

シェンス「ま、気持ちは分からんでもないけどその気持ちで罰を課される方の身にもなってみなさいよ。たまったもんじゃないわ。」

ミィディア「・・・確かにお前気に食わないから死刑なんて勘弁してほしいな。」

シェンス「でしょ?でも人間の課す判断には情状酌量があるから混乱してるんだろうけどね。」

ミィディア「まぁ中途半端にあるくらいならまったくない方がかえっていい場合があるからな。」

シェンス「ええ。絶対的に課されるならもう少し罪に対して人間も重く考えるかもって思うけどこれも考え方の一つに過ぎないわ。」

ミィディア「まあね。」

シェンス「じゃ、続けるわね?その後暫く物理的には貧しくても精神的には少し恵まれた生活を送り、今に至る。」

ミィディア「それで何で真ん中より上なんだ?」

シェンス「精神的な豊かさって今の時期得られている人間の方が少ないのよね。意外と貴重なの。他の面では普通と呼ばれる水準より下なんだけどその面を考慮すると上になるのよ。」

ミィディア「成程・・・。」

シェンス「で、これは元の子もないんだけど今まで振り返った過去は感慨にひたる以外特に役に立つことはないから自然と思い出す以外で積極的に思い出す必要はないわ。」

ミィディア「じゃあ今までのは何だったんだ・・・。」

シェンス「あくまで確認よ。ミィディアの場合はないだけで他の人間は以外とあったりするの。」

ミィディア「どういう風に?」

シェンス「前々から気づいていた悪癖を自覚するとかどこで失敗をしたのか把握する為だったりとか。あなたの場合は常に石橋を叩きながら渡らないと生きていけないような人生だったから今更気づいたところで変えられない事象にしか気づけないのよ。」

ミィディア「変えられない事象って?」

シェンス「出生だったり家庭環境よ。外部からの助けもないのに今更どうこう言ってもしょうがないでしょ?」

ミィディア「もう過ぎたことだしな。」

シェンス「ええ。逆に小学生の頃から直そうと思えば直せる悪癖とか自分はいつもこのあたりで失敗するって何度も経験してるのに気を付けないのとかは振り返ることで自覚出来るでしょ?過去を振り返るというのはそういう時にするものなの。」

ミィディア「成程ね。」

シェンス「あ、因みに分かってるとは思うけど直したくても直せない或いは気づきたくても気づけない人間は今話しているケースからは除くからね?」

ミィディア「それは分かってるよ笑。」

シェンス「じゃ次。今現在の事象に対しての考え方ね。ミィディア。あなたが今置かれている状況ってあなた自身どう思う?」

ミィディア「まぁ幸せでもないけど滅茶苦茶不幸でもないな。」

シェンス「どうしてそう思うの?」

ミィディア「そりゃ昔に比べれば幾分か生活は安定してるから・・・。」

シェンス「つまり昔と比べて今は幸せだけど普通の人間と比べるとまだ幸せではないってことよね?」

ミィディア「まぁそうなるかな。」

シェンス「今現在の事象を考える上で気を付けることはずばり比較よ。」

ミィディア「比較?」

シェンス「ええ。現在進行形の変化し続ける事象を判断する時人間は必ずその他の事象や過去起きたことなど比較対象を持ち出して考えるわ。これは裏を返すと比較対象を持ち出さなければ現在の事象が良いのか悪いのか判断が出来ないことを示すわ。」

ミィディア「それって過去の事象もそうじゃない?」

シェンス「まあね。それと比較によって判断がなされるということはその判断に利用される基準は絶対的ではないということも示されているわ。」

ミィディア「基準が絶対じゃないってどういうこと?」

シェンス「幸せかどうかはその人自身って言えば分かり易い?」

ミィディア「あ、成程・・・。」

シェンス「人によって幸せかどうかは違う。ということはミィディアの状況を圧倒的に不幸と取る人間もいればとても幸せなことだと取る人間もいるということ。そしてそうした判断というのは確実性からはかけ離れたもの。ということはその基準によって決められたものも確実な判断ではないということ。」

ミィディア「だからそんな不確実なものを愚直に信じて落ち込むのがおかしいってこと?」

シェンス「いやおかしくはないわ。抑々論点が違うわ。この世の中にはそうした曖昧なものの方が大半を占めるって話。まぁその話の派生でそうした不確実なものを愚直に信じて落ち込んでたら心が持たないよねって話は出来るけど今回の終着点はそこじゃないわ。世の中には曖昧なものが大半を占めるからそれを頭の中に入れておこうねって話。」

ミィディア「それはまぁ理解してる。」

シェンス「で、そこから考えるの。曖昧なものが大半を占める世界でどう考えればいいか。」

ミィディア「どう考えるの?」

シェンス「まずは一々考えてもしょうがないからまったく考えない。自分に関係すること以外は考えない。思考リソースが無駄だから。が一つ。次がその曖昧を考えることこそが重要って考えが一つ。」

ミィディア「曖昧を考えることこそが重要って意味分かんないんだけど?」

シェンス「白と黒との間の灰色に留まってこそ重要みたいな考え。その曖昧の中で葛藤することが大切だみたいな。」

ミィディア「あー・・・人の道的な?」

シェンス「そ、次がその曖昧を無理やりはっきりさせるという考え。」

ミィディア「それって自分はこう生きていくってやつ?」

シェンス「ええ。これの前に話した灰色思考に疲れた人間が大抵落ち着く思考がここね。思考が深くなったと多くの人間が勘違いする段階でもあるわね。」

ミィディア「辛辣な・・・。」

シェンス「で、その他には今現在まで私たち天使が持っている曖昧なのは分かってるけど別にそれが大した弊害にもならないしはっきりさせるのは必要な時だけでいいでしょ?という考え方。これは最初に話した思考リソースに近いけどそれと違う点は曖昧な部分について考える時は普通に考えるということ。つまりそこそこ無視してそこそこ注目するって考え方。」

ミィディア「その考えって丁度良いよな。」

シェンス「今のところはね~。そしてこうした考えが出る中で今現在に何かするとしたら目の前のことに集中すること。これだけよ。」

ミィディア「え、それだけ?」

シェンス「ええ。だって人間に思考しながら未来を計画的になんてそんなこと出来ないからね。」

ミィディア「でも未来を意識して生きていかなきゃいけない時もあるじゃん。」

シェンス「そういう時はこの言葉がぴったりね。“未来は常に仮止めで!”」

ミィディア「未来は常に仮止めで?」

シェンス「説明するわね?ミィディアは予定とか立てたりする?」

ミィディア「そりゃ立てたりするよ。」

シェンス「それはどんな時に?」

ミィディア「友達と旅行に行く時とか遠いところに遊びに行く時。」

シェンス「じゃその一緒に旅行に行く友達が熱を出してしまいました!ってなったら事前に立てた予定はどうする?」

ミィディア「変更せざる負えないよな。」

シェンス「そうよね。無理やり友達を連れて行くわけにもいかないものね。」

ミィディア「熱が出た友達を旅行に連れていくって何の拷問だよ・・・。」

シェンス「笑。つまり未来とは現在に至るまでに変わる可能性があるということ。だから未来に対する考え方としては常に仮決定に留めてその仮決定した未来が現在に至るまで変更出来るようにしておくというのが基本的な考え方よ。」

ミィディア「成程。」

シェンス「そして最後は思考そのものについて説明していくわ。」

ミィディア「思考そのもの?」

シェンス「思考とは何か。考えるとは何かについて。正直ここが一番理解が難しいから心して聞くのよ?」

ミィディア「分かった。」

シェンス「思考とはズバリ“知恵”よ。」

ミィディア「知恵?それって・・・そのまんまじゃない?」

シェンス「そのまんまなんだけど・・・もう少し分かり易く言うと知恵という規定があり思考という行為が言葉によって存在する為思考とは知恵であるってところかしら。」

ミィディア「・・・まだ分かんねぇな。」

シェンス「もっとかみ砕くわよ?今私たちが話を出来るのは何故?」

ミィディア「・・・声が出るから?」

シェンス「違うわ。言葉が存在するからよ。」

ミィディア「?」

シェンス「言葉によって“話す”という行為が定められているから“声を交し合うという行為”という言葉が“話す”という行為に置き換えることが出来るの。」

ミィディア「・・・成程。言葉というものが誕生したことによってこの世の様々な事象や現象、将又存在が言葉で表現出来るようになりそして共通した認識を持つことが出来るようにもなり始めたということか。」

シェンス「そう。そしてその言葉で規定された知恵というものは生物に大類され人間に細類される者が行使することが出来るものでありその知恵の細類には思考という行為が含まれる。といった感じよ。」

ミィディア「うわぁ・・・なんかお堅いな・・・。」

シェンス「でもよく理解出来たわね。この言い回しを理解出来る人間はそうはいないわ。」

ミィディア「だろうな・・・。」

シェンス「じゃこの調子で思考を進めていくわよ?人間は知恵というものにより様々な思考を行う。その思考は俗に“考える”とされ人間の性質と強く結びついている。この“考える”とは行為である。この行為により人間は様々な行動や予測を可能としてきた。そしてそれにより他の生物には当てはまらない問題に数々直面してきた。」

ミィディア「それは感情、精神、心理、情緒などといった視認することが出来ない問題である・・・ってもう普通に話してもいい?」

シェンス「いいわよ笑。じゃこっからは普通に考えていきましょうか。他の生物と違い人間だけが抱えている問題って何だか分かる?」

ミィディア「知恵を介する行為に対する弊害の問題。」

シェンス「もう少し具体的に言うと?」

ミィディア「第一に感情の問題。喜怒哀楽の問題。楽しいとか、むかつくとか、悲しいとか感じることの弊害。」

シェンス「そうね。これは思考を持つが故の問題と言えるわね。」

ミィディア「第二にそうした弊害を感じたことによって生じる弊害。」

シェンス「お前は人でなしだ!とかあなたに人の心はないの⁉とかいうやつね。」

ミィディア「ああ。理屈で話している時にこれを持ち出す人が意外と多い。」

シェンス「そうして理屈前提で話している時に感情前提の意見を混ぜてしまうと一気に話が拗れて何が何だか分からなくなるのよね。」

ミィディア「こうした場面を見ると人間ってつくづくバカだなぁ・・・って思うよ。」

シェンス「同じ人間なのに?」

ミィディア「ああ笑。」

シェンス「そう笑。でもこの問題って地上では人間しか経験しないのよ?」

ミィディア「・・・それは知恵を持っているのが人間だけだから?」

シェンス「ええ。じゃ精神的には関係してて物理的には何ら関係ない話を例に出して説明しましょうかね。ミィディア。あなたの父方の家庭の話はしても大丈夫?」

ミィディア「ああ平気だ。」

シェンス「じゃするわね?あなたの毒父の家庭は父親の父親・・・つまりあなたで言うと父方のおじいさんね。このおじいさんがそれなりに土地を持っていて裕福でした。そしてあなたの毒父は兄と姉と弟を持つ四人兄弟でした。しかしある出来事からその裕福な家庭が崩れていきます。その出来事とはおじいさんとそのおじいさんの弟のいざこざのようなものからです。おじいさんの弟は当時生活に困っていました。なので少しの間でも助けてもらう為にあなたのおじいさんの元へ訪ねていきます。」

ミィディア「裕福だったからだな?」

シェンス「ええ。ですがおじいさんはその弟を助けずに追い返しました。その後少ししてその弟は自殺してしまいました。」

ミィディア「・・・。」

シェンス「そこからその弟の呪いか今度はおじいさんの家庭も段々とおかしくなっていきました。裕福だったおじいさんの家庭はみるみる没落していき毒父の兄弟は偶然か将又必然か同じ弟が自殺をしてしまいます。そして時は流れ今現在兄は毒父と同じように家族に見放され姉は婚約者のお金を全て使い果たす浪費家のヒモ状態に成りはて捨てられ肝心のおじいさんは蒸発してしまうというお世辞にも誰一人として幸せとは言えない人生を歩んでいます。」

ミィディア「これを母さんから聞かされた時はぞっとしたよ。」

シェンス「・・・呪われた一族だっけ?」

ミィディア「ああ。正にそう思う。同時に俺は絶対妹を見捨てないようにしようと思った。」

シェンス「それはあなたの為?」

ミィディア「お互いの為だ。俺の為でもあるし妹の為でもある。それに本当に関係ないかもしれないけど弔いになればと思って。」

シェンス「弔い?」

ミィディア「もしその弟の人が毒祖父の血を受け継ぐ人間を許せないのだとしたら確かにそれで恨まれるのはたまったもんじゃないけど少しでも報われればいいなって思った。」

シェンス「・・・成程。」

ミィディア「で、この話がどう繋がるの?」

シェンス「もう少し続くわよ?この話。」

ミィディア「そうなの?」

シェンス「ええ。でもあとちょっとだけど。こうした境遇にある毒父に対してあなたは魂を飛ばすという行為を行いました。さてあなたと毒父。どちらが不幸でしょう?」

ミィディア「・・・贔屓目に見ても毒父・・・だな・・・。」

シェンス「精神的に見ればね。でも物理的に見たら?」

ミィディア「・・・分かんねぇ。」

シェンス「対して差はないわ。」

ミィディア「・・・何で?」

シェンス「まずあなたの境遇から見ていくわね?ただ生きていくだけならあなたのような子供に必要なのは生命を脅かす存在から身を守る盾(親)と食事と休息。あなたの場合はこれらは保証されている。」

ミィディア「うん。」

シェンス「それに毒父の方もそれらは保証されている。山で一か月放置とかされていないからね。」

ミィディア「うん。」

シェンス「じゃあ何が毒父を不幸にしているのか。」

ミィディア「・・・知恵?」

シェンス「そう。知恵による反応が毒父を不幸にし死を意識させている。けど人間以外の動物はそんなことは起こりえない。」

ミィディア「知恵がないからか・・・。」

シェンス「ええ。知恵がないからそもそもの考えや思考もないし考えや思考がないならそれによって生まれる感情もない。よって幸せ不幸せで悩むこともない。ただ生物の仕組みとして生まれそして生物の消費期限が過ぎれば死んでいくのみ。そこにはただ事実の連続が連綿と続くのみ。」

ミィディア「・・・。」

シェンス「知恵とは人間の体に対して薬にもなるし毒にもなる。だから人間の体に対して薬にし続けたいなら一旦は服用をやめて様子を見るのも手。」

ミィディア「思考を止めるってこと?」

シェンス「ええ。あくまで一時的だけどね。どんなに頭のいい人だって考えていない時間はあるから。機械や車のエンジンに置き換えてもいいかも。少し冷やす期間がないと上手く動いてくれない。休むのは怠惰でなく必要なのよ。」

ミィディア「成程・・・。」

シェンス「どう?少しは考えるという行為がどんなものか分かった?」

ミィディア「・・・分かったような・・・分からないような。」

シェンス「笑。今はその程度でいいわよ。知恵は後からついてくるから。」

ミィディア「そういうものなのか。」

シェンス「そういうものよ。じゃ私の思考術はここで終わり。もう上に行くから最後に何か言いたいことはある?」

ミィディア「まぁとりあえず疲れた・・・。」

シェンス「そ笑。じゃもう行くわね。」

ミィディア「ああ。」

そういうとシェンスは消えていった。

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