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天使たちとの能力戦線(十章、リスパリオの戦略術)



リスパリオ「やぁお前がミィディアで間違いないか?」


ミィディア「・・・あんたは誰?」


リスパリオ「俺はリスパリオだ。よろしく頼む。」


ミィディア「お、おう。」


リスパリオ「最近色々な天使にあらゆる技術を教わっているようだな。」


ミィディア「ま、まぁお陰様で・・・。」


リスパリオ「うむ!関心関心!」


ミィディア「〝・・・何だ?〟」


リスパリオ「喜べ!今回は俺がミィディアに戦略術というものを教えてやる!」


ミィディア「戦略術?」


リスパリオ「平たく言えば特定の目標達成の為の自身の立ち回り方を決める為の術のことだ。つまりこれから先お前が何度も使う可能性がある技術を俺が教えてやろうというのだ!」


ミィディア「・・・そうなんだ。」


リスパリオ「ん?何だ?嬉しくないのか?」


ミィディア「いや嬉しくないっていうより・・・役に立つのかな?って。」


リスパリオ「失敬な。俺は天界で参謀も務めたこともある天使だ。そこら辺の天使に学ぶのとはわけが違うぞ?」


ミィディア「参謀?それって・・・。」


リスパリオ「大逆でだがな。」


ミィディア「え、じゃあ天界の戦い方を考えたのはリスパリオってこと?」


リスパリオ「そういうことになるな。まぁビランチに意見を仰がれた程度と言ってしまえばそれまでだがそれでもまったく役に立たないということはないだろう。」


ミィディア「・・・。」


リスパリオ「信じてもらえるか?」


ミィディア「ああ。」


リスパリオ「良かった。では早速戦略術の考え方をお前に教えていこうと思う。今の世界に存在する三つの大きな天使勢力を例にして。」


ミィディア「三つの大きな天使勢力?」


リスパリオ「まずは天使長ビランチ率いる王道天使勢力。次が無所属天使ネニア勢力。最後がイプノ率いる堕天使勢力。いいか。戦略を考える上で重要になるのは各勢力のスタンス把握だ。」


ミィディア「スタンス把握?」


リスパリオ「何故このようなスタンスを相手は取るのか。相手がこのようなスタンスを取るならこちらは何をすべきなのか。これを考えるのが戦略では重要となる。ビランチ勢から見ていくぞ?ここは天界勢力の中でも最大の勢力を誇る。」


ミィディア「そりゃそうだ。王道なんだから。」


リスパリオ「つまり下界で言えば大企業がそれにあたるな。このビランチ勢のスタンスになってこれから考えてみてくれ。多くの天使を統制するにはどうすればいい?」


ミィディア「・・・ある程度役割を与えて言い方は悪いが天使を縛るな。」


リスパリオ「まぁそうだろうな。その考え方はそんなにズレていない。実際今のビランチ勢は部門によって多くの天使を縛り統制している。」


ミィディア「・・・昔はどうだったの?」


リスパリオ「昔は皆個人単位で動いていた。しかし大逆をきっかけに天界は一時期統制力を完全に失った。しかしビランチはその直後部門という天使を役割ごとに大別しある程度の融通性をその部門に持たせることで統制を図った。」


ミィディア「流石天使長。」


リスパリオ「その結果多くの天使を縛り過ぎず自由にさせ過ぎずといった絶妙なバランスで天界を統制したのだ。さてここからはビランチの立場に立って自身の組織について色々と考えを挙げてもらおう。」


ミィディア「・・・例えば?」


リスパリオ「各組織の総評。部門は幾つあるか知っているか?」


ミィディア「・・・確か五部門あるんだよな。」


リスパリオ「そうだ。良く知っていたな。」


ミィディア「スパツから聞いた。」


リスパリオ「そうか。まずこの五部門それぞれの評価をするとしたら?」


ミィディア「・・・その五部門にどの天使がいるのか分かんないから分からない。」


リスパリオ「なら俺が実際に評価をしてみよう。ちゃんと聞いておいてくれ。これがビランチの視座に立った考え方の参考になる。」


ミィディア「分かった。」


リスパリオ「まず部門はビランチ自身が所属しているものも含め全部で五つ。判断、奇跡、道示し、力、堕天使狩り。」


ミィディア「ビランチも部門に所属してるの?」


リスパリオ「ああ。」


ミィディア「どういうこと?」


リスパリオ「天使長ということで熾天使も含めた絶対的命令権は保有しているが自身も一天使ということで部門に所属している。」


ミィディア「成程。」


リスパリオ「では始める。最初はビランチ自身も所属する判断部門。ここは天界でのあらゆる処遇を決める部門。地上で言う司法立法機関だな。ここにはビランチの他にフォルテやデーチなど公正さを持つ天使が多く所属している。そして評価だがかなりの英断を行っていると思う。」


ミィディア「・・・それはどうして?」


リスパリオ「まず今の世界での天使同士のバランスをとっているのは実質この部門の判断だ。この部門がなければ地上は更地になっていてもおかしくない。何故なら堕天使を生かさず殺さずにしているからだ。」


ミィディア「それが英断なの?」


リスパリオ「ああ。」


ミィディア「何で?」


リスパリオ「大逆を考えてみろ。あれほど戦力において圧倒的だったにも関わらず堕天使を全滅させることには至っていない。この事実から何が分かる?」


ミィディア「・・・確実に殲滅させるには大逆以上の犠牲が必要になる可能性が大いにある・・・ってこと?」


リスパリオ「そうだ。確かに戦力では圧倒的に有利。しかしそれで全滅させることが出来ていないということは堕天使は恐らく想定よりも手強いと予想出来る。それにビランチ勢の天使たちの繋がりの弱さも気になる点だ。」


ミィディア「繋がりの弱さ?」


リスパリオ「ビランチ勢は外から見れば強大な一つの組織のように見えるだろう。しかし実際は五つに分かれた小さな組織が緩くつながっている状態に過ぎない。もし仮にこの状態から更に反逆されれば部門単位で起こるのが予想出来る。そしてそれの対処は迅速だがこれは同時に弱みでもある。」


ミィディア「まぁその部門と堕天使が繋がってしまったら更に厄介だしな。」


リスパリオ「それに情報を意図的に天使だけで留めることも部門だとし易くなっている。」


ミィディア「ある程度権限を委任しているから?」


リスパリオ「そうだ。まぁ幸いなことに反逆の意思がある部門は今のところないがな。」


ミィディア「そうなんだ。」


リスパリオ「そこはビランチの采配がものを言っている。さっき言った縛り過ぎず自由にさせ過ぎずがビランチは上手い。」


ミィディア「仮に下手だとどうなるの?」


リスパリオ「縛り過ぎれば不満が出て自由にさせ過ぎれば秩序がなくなる。」


ミィディア「成程。」


リスパリオ「次は奇跡部門だな。ここはドラーク、グラント、プロイビー、フェアといった上天使の所属する部門だ。」


ミィディア「〝うわ・・・色々と濃いな。〟」


リスパリオ「ここは・・・通称やらかし部門と揶揄されている。」


ミィディア「・・・何で?」


リスパリオ「まずグラントの地上破壊騒動。」


ミィディア「あ・・・。」


リスパリオ「次にフェアの言葉を分けた件。」


ミィディア「それは何とか良い感じで語り継がれてるよ笑。」


リスパリオ「フッ運がいいな笑。まぁとにかく上天使ともあろう者が二人もやらかしている部門だ。しかし部門自体の功績は然程少なくない。」


ミィディア「というと?」


リスパリオ「まずドラークが空を作っている。それに地上に季節を作ったヴォルティと下界の道繋ぎを行った天使たちが三人も在籍している。」


ミィディア「つまり上の粗相を下が尻拭いをしたって構図か。」


リスパリオ「そうなるな。次が道示し。ここは少し組織体制が特殊だ。」


ミィディア「どんな風に?」


リスパリオ「奇跡部門は基本上天使なら誰でも決定権があるという融通性を持たせて活動しているが道示しは智天使であるシェンスが部門長を務めるという中々に珍しいスタンスを取っている。」


ミィディア「・・・智天使が?熾天使はいないの?」


リスパリオ「オルゴとノーヴェがいる。」


ミィディア「じゃあ何で?」


リスパリオ「適材適所という奴だ。オルゴもノーヴェも指揮より現場で動く方が性に合っているし向いている。だからシェンスが指揮を行っているんだ。」


ミィディア「・・・成程。」


リスパリオ「この部門は人間に知恵を持つ者として向かうべき道を出来るだけ多く示すという役割を持っている。そして功績とすると大きいのが善悪という考え方と覚悟だろうな。」


ミィディア「・・・覚悟ね。」


リスパリオ「覚悟は概ね正しく伝わったが善悪は概念が複雑なせいもあって上手く伝わらなかったようだがな。」


ミィディア「あれは人間には難しいよ。」


リスパリオ「そのようだ。次が力部門だな。この部門は地上の人間の中で人類の成長に大きな影響を与える者に一時的に力を付与することを目的とした部門だ・・・ここはかなり真面目な部門だが力を与えた結果人間同士の争いを長引かせてしまうといったことがままあった。」


ミィディア「・・・ソロモンとか?」


リスパリオ「他にも色々だ。最後が堕天使狩り。この部門は文字通り堕天使専門部門。目的はセイとイプノ以外の堕天使の捕縛または抹殺。」


ミィディア「え、セイとイプノ以外の?」


リスパリオ「彼らを相手取ると地球崩壊の恐れがあるからな。」


ミィディア「あ・・・成程。」


リスパリオ「この部門にはフォールとブッピラしか上天使はいないが働きはかなりのものだ。」


ミィディア「地球、まだあるもんな。」


リスパリオ「ああ。実際判断に次ぐ功労者たちの集まりといってもいい。それにグラントの失敗の後始末もやっていたしな。」


ミィディア「というと?」


リスパリオ「山を吹き飛ばした後、彼女を連れ戻したのは彼らだと聞いている。」


ミィディア「マジでご苦労さんだな・・・汗。」


リスパリオ「今度会った時聞いてみるといい。さてこれでビランチ視点での思考はこれで終わりだ。どうだ?感想は?」


ミィディア「・・・今は落ち着いてるみたいだからそんなに苦労はないけどここに至るまでが大変だな。」


リスパリオ「どう大変に感じた?」


ミィディア「大逆で秩序がなくなって急いで統制。それで出来たかと思えば奇跡部門が色々とやらかして気苦労が絶えないなって思って。」

リスパリオ「確かにな笑。」


ミィディア「それにイプノたちの動向も気を付けないといけないしネニアは何を考えているか分かんないしどうしたもんかな?って。」


リスパリオ「いい感じだな。まぁ今はイプノたちも何か大きなことをするつもりもないだろうしネニアも敵に回ることはないから大丈夫か。みたいな感じだろう。」


ミィディア「そうなのかな?」


リスパリオ「多分だがな。さて次はネニア勢力のスタンスからビランチ勢とイプノ勢を見ていこう。まずネニア勢のスタンスはどの勢力とも持ちつ持たれつというのが特徴だ。」


ミィディア「え、それって堕天使とも?」


リスパリオ「ああ。無所属天使たちの彼女らは部門所属をしている天使たちと違って仕事をする必要もないし堕天使との接触を特に禁止されているわけでもない。」


ミィディア「・・・何で?」


リスパリオ「理由は天使たちの権利を尊重する為だ。確かに天使でありながら堕天使と接触するなどはたから見れば言語道断なのだがビランチはたとえ天使が堕天使と接しようと実際に行動に移すまでは関与すべきではないと考えている。それはさっき言った天使自身の権利を尊重するのと共に堕天使自身の権利も尊重しているからでもある。」


ミィディア「・・・それってビランチの統制の匙加減ってことだよね?」


リスパリオ「その通りだ。それに堕天使も全てが悪いとは言えないのが現状だ。」


ミィディア「まぁ言っていることはおかしくないからな。」


リスパリオ「ああ。人間でもこの事実を知ったら完璧に作り直してほしかったと思う者もいるだろう。しかし取った行動が良くなかった。だからビランチは堕天使に対して取った行動の責任として天界からの永久追放という罰を与えた。それで天界の騒動は新たに堕天使が行動に移さない限り放任にしたんだ。」


ミィディア「でも理不尽に被害を受けた天使たちは納得出来ないよな。」


リスパリオ「まぁその結果堕天使が生まれ天使として存在しながらも部門に所属しないことを選択した天使もいるからな。」


ミィディア「・・・部門所属って強制じゃないの?」


リスパリオ「自主性に重きを置いたものだから強制ではない。」


ミィディア「そっか・・・強制にするとまた新たな火種を生むかもしれないからな。」


リスパリオ「ああ。しかしそうすると今度はその無所属天使たちの居場所がなくなってしまう。だからネニアはそんな天使たちの受け皿になっているんだ。」


ミィディア「じゃあネニア勢っていうのはそうしたこぼれた天使たちの集まりってこと?」


リスパリオ「そうだ。スタンス上は天使と呼ばれながらも天使でも堕天使でもない曖昧な者たち。それがネニア勢だ。それに彼女は受け皿にはもってこいの実力を持っている。」


ミィディア「それは天使長候補だったからだろ?」


リスパリオ「ああ。実際天界で一番神力を有しているのはネニアだ。」


ミィディア「でも降りちゃったんだよね。自らその座を。」


リスパリオ「本人は“こまごましたことは出来ない。”という理由で降りたらしいがな笑。」


ミィディア「え、そんな理由で?」


リスパリオ「はたから見たらそんな理由だろうが彼女にとっては大きな理由なのだろう。しかし彼女や彼女たちの勢力は決して天界や地上のことを考えていないわけではない。」


ミィディア「まぁ災厄を弱めてくれたみたいだしな・・・。」


リスパリオ「彼女には彼女なりの覚悟があるようだ。以前天界についてどう考えているか聞いた時もしビランチが天使の使命を誤った場合は自分がビランチを消すと言っていた。これを聞いた時俺は彼女も真剣に天界の行く末について考え続けていると感じた。」


ミィディア「・・・そっか。ビランチを消せるとしたらそれより強いネニアしかいないか。」


リスパリオ「そうだ。」


ミィディア「・・・ネニアの立場だったら堕天使と天使の間を取り持つような存在が丁度良いよな。」


リスパリオ「例えばどんな感じだ?」


ミィディア「例えば天界の中でも堕天使と話したい天使とか表立って動けないけど無所属なら動けるじゃん。それを見守る立ち位置的な感じ?」


リスパリオ「そうだな。実際無所属にいるニエンテという天使は堕天使達に意外と人気があるようだしな。」


ミィディア「そうなんだ。」


リスパリオ「何事もバランスだな。では最後はイプノ勢のスタンスだ。彼らは天界に背くという大きなリスクを取りながらも存在することが出来ているというかなり稀有な存在だ。そして大きなリスクを取っているが決して損得勘定が出来ないというわけではない。寧ろ的確にメリットデメリットを見極め存在を確保している・・・俺の言っていることがどういうことか分かるか?」


ミィディア「・・・天界に背くってことは天界に居られなくなる可能性もある。だから人間界という新たな存在場所を決めた上で同時にその人間界を人質に取ることで天界での戦いを有利に進めるという実に合理的な考えをしているってことだろ?」


リスパリオ「ああ。それに加え敵方の天使というスタンスを逆に利用して自身の存在する場所を安全にするということもしている。」


ミィディア「天使は人間界を壊すことが出来ないからだな。」


リスパリオ「そうだ。そしてそれは二つの意味で出来ない。一つ。人間という存在に危害を与えてしまう為出来ない。二つ。単純に創造したばかりで途中経過である為壊せない。」

ミィディア「そう考えるとかなり計画された出来事だったんだね。大逆って。」


リスパリオ「ま、少数精鋭だからな。彼らは。」


ミィディア「今のイプノの立ち位置だとスパイを見逃してるのってただイプノが気づいてないってだけじゃなさそうだよね。」


リスパリオ「なら他にどんなことが考えられる?」


ミィディア「一つが天界からの情報を得る為。」


リスパリオ「その通りだ。イプノたちは天界から永久追放されている。よって天界の情報を得られるスパイの存在は彼らにとっても貴重だ。」


ミィディア「もう一つが単純に寂しいからとかかな?いくらスパイといってもかつては仲間だったわけだし。」


リスパリオ「まぁ天使と言えど関係性ははっきりと分けられるものではないからな。オッソがまったくイプノに共感していないとは言えないな。」


ミィディア「そういえばリスパリオって大逆で参謀を務めたんだよね?」


リスパリオ「そうだが?」


ミィディア「そしたらさ、その時の考え方を教えてよ。」


リスパリオ「そっちの方が参考になるか?」


ミィディア「いや今のも参考になったんだけどそっちも聞いてみたい。」


リスパリオ「成程な。じゃ話そう。」


ミィディア「やった!」


リスパリオ「まず俺はビランチに呼ばれ“セイとイプノを迎え撃つ為の作戦を考えてほしい。”と言われた為戦う前に準備してほしいことを伝えた。」


ミィディア「戦う前に準備してほしいこと?」


リスパリオ「天界として堕天使と事を構える為にすることだ。」


ミィディア「・・・それって何なの?」


リスパリオ「地上と下神域に出来るだけ多くの中天使・天使を配置することだ。」


ミィディア「何でそれが事を構える前にすることなの?」


リスパリオ「ミィディア。イプノたちは何処から天界に戦いを仕掛けた?」


ミィディア「それは地上・・・あ、そういうことか!」


リスパリオ「理解したか?天界に背くということは天界を相手にするということ。そして天界を相手にするならその計画や話は基本天界内ではしない。ましてや上神域や中神域など天界の中心などでは絶対にしない。ならば何処でする?」


ミィディア「・・・ビランチたちから物理的になるべく離れた地上や下神域か。」


リスパリオ「そうだ。そこになるべく多くの天使を配置しておけば情報が手に入りやすい。それに人間をもし人質にするとしたら?こう仮定してもこの配置は有効になる。何故なら地上に最も近い下神域に天使を配置しておけばすぐに人間を守りに行ける。イプノたちは戦力的に確実に不利だ。ということはなるべく戦力は温存した状態で天界の戦力を削ぎたいはず。」


ミィディア「だから堕天使達で人間を狙うことによって効率的に戦力を削ごうとしたのか。」

リスパリオ「そうだ。戦いとは攻めるより守る方が難しい。しかも逃げることが出来ない戦いとなれば戦力の分散は必須。多くの位の低い堕天使達が地上を攻めている中本体は一気にビランチの元を目指す。こうした流れであれば各神域ごとに防波堤を置きこちらも相手の戦力を削いだ方が良い。」


ミィディア「下手に早く倒そうとして大損害でも出したらたまったものじゃないからな。」


リスパリオ「ああ。だから俺は座天使三人と熾天使一人その他多くの中天使・天使たちを置き大幅に戦力を削ぐという形にした。」


ミィディア「その後は?」


リスパリオ「その後は中神域に熾天使一人とまやかしを扱う天使を一人配置し熾天使以外の足止めを狙った。俺としては中神域で全堕天使の捕縛または抹殺が理想だったがそれが叶わなかった場合に備え上神域に天使長とその他熾天使二人を置いた。」


ミィディア「・・・そうか。」


リスパリオ「結果は知っているよな?」


ミィディア「ああ・・・にしてもそれだけ立てても失敗するんだな。」


リスパリオ「失敗する時はするさ。それにあの時はイレギュラーなことが色々とあった。まず無所属天使を戦力としてカウントしてもいいのか問題。当時は部門がなかったがそれでも雰囲気としてビランチの言うことを聞かない天使たちは分かっていた。だからその天使たちを戦力としてカウントしていいのか考えた結果カウントしないことにした。」


ミィディア「不確定要素だからか?」


リスパリオ「そうだな。敵になるのか味方になるのか分からなかったし例え味方だと思っていても直前で裏切られる可能性も考えておかないと想定から外れてしまいパニックになる。裏切らないならそれに越したことはないと考えカウントはしなかった。」


ミィディア「そっか。それで熾天使の数もある程度温存していたのか。」


リスパリオ「〝ほう・・・そこに気づくか。〟まぁそうだ。それに参加出来ない熾天使もちらほらだがいた。」


ミィディア「え、どういうこと?」


リスパリオ「グラントは体調的に万全ではなかったので参加出来なかったしヌーラは作戦の都合上配置に少し難があった。グラントは大逆の真意をイプノから直接確認する為戦闘を行いとても心が揺らいでいた。ヌーラは“指示する前にちゃんと確認していれば。”と同じ熾天使の前では気丈に振舞っていたが俺やアルジェントの前では相当気に病んでいた。その姿を見たディストルの関係からもし参加して天界側につくヌーラを見た時の心情を考え公には参加していない。」


ミィディア「戦略を考えるとなるとそういうことまで考えなきゃならないのか。」


リスパリオ「パット見、全然関係なさそうなことでも重要なこともある。もし不安定な状態でグラントが参加していればイプノに消されていたかもしれないしそのイプノも時が経った時後悔するかもしれない。ヌーラが参加していればディストルは永遠に心を失っていたのかもしれない。出来ればこうした未来は避けたいからな。」


ミィディア「・・・だな。」


リスパリオ「これで大逆の話は終わりになる。どうだ?少しは俺の戦略について理解が出来たか?」


ミィディア「大分。特に感情面を考えるのがどういうことか知れたのは大きい。」

リスパリオ「そうか。それなら良かった。」


ミィディア「にしてもそんなことがあったなんてな。」


リスパリオ「まぁ色々あるのさ。」


ミィディア「グラントは昔イプノが人間の精神を病みやすいように変えたから堕天使になったとか言ってたけどあれって嘘だったんだな・・・。」


リスパリオ「自分が泣いたことをそう簡単に人には言えないだろう。」


ミィディア「そりゃ・・・な。」

リスパリオ「では俺は上に行く。何か最後に質問とかはあるか?」

ミィディア「いやない。」

リスパリオ「そうか・・・頑張れよ。ミィディア。」

そういうとリスパリオは消えていった。

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