見出し画像

天使たちとの能力戦線(十一章、ラーナの虚言術)



ラーナ「お久しぶりですー。ミィディア。」

ミィディア「ラーナ。」

ラーナ「調子はどうですかー?」

ミィディア「結構良い感じかな。」


ラーナ「それは良かったですー。今日はそんなミィディアに僕の虚言術を教えに来ましたー。」


ミィディア「・・・虚言術?」


ラーナ「分かり易く言えば嘘のつき方ですね。」


ミィディア「・・・それ教えても大丈夫なの?」


ラーナ「どういうことですかー?」


ミィディア「嘘のつき方って要するに相手を騙す為の技術だろ?それを教えるのって天使的にどうなのかなー・・・?ってこと。」


ラーナ「あー・・・それなら大丈夫ですよー。嘘とは確かに相手を騙す技術ではありますが相手を騙す行為は必ずしも悪い行為ではありませんからー。」


ミィディア「そうなの⁉」


ラーナ「ええ。地上では悪い行為として考えられていますが天界ではそうではないんですよー?」

ミィディア「・・・そうなんだ。」


ラーナ「他にも善悪や勝ち負けなど正確に考え方が伝わっていないものが地上には多くありますけどあれはそういう概念であるということというのを示しているのであって何もそれが本質そのものを表しているわけではないんですよー?」


ミィディア「・・・どういうこと?」


ラーナ「例えば善悪ですがあれは善い悪いという相反する状態を示した概念であって善いからどうだとか悪いからなんだとかはまた別の概念が必要になるということですよー。しかし人間は何故か一つの概念で全体を判断しようとしますー。ミィディアはそういった人間と同じにならないことをお願いしたいですー。」


ミィディア「・・・分かった。」


ラーナ「なので相手を騙すという行為も一概に悪いとは言えないのですー。」


ミィディア「・・・状況によって変わるってことだよな?」


ラーナ「そうですー。では早速嘘とは何か?について説明がてら虚言術の概念に入っていきたいと思いますー。良いですかー?」


ミィディア「頼む。」


ラーナ「まず嘘とは意図的に真実とは違うことを示す行為ですー。そして嘘とは先程もお話ししましたが必ずしも悪い行為ではありませんー。何故だか分かりますかー?」


ミィディア「状況によって必要になる場合があるから?」


ラーナ「情緒面を意識した優しい嘘というものですねー?まぁ外してはいませんが虚言術での考え方は違いますー。」


ミィディア「じゃあどういう考えで悪くないと思うんだ?」


ラーナ「虚言術では真実をちゃんと伝えれば全員が理解出来るとは必ずしも言えない。という考え方ですー。天界では知恵の差こそありませんでしたが大逆という大きな争いがありましたー。知恵の差のない天使でも理解しあえないことがあるんですー。差のある人間なら尚更でしょうー。地上でははっきりとは口にしないですが人間には優劣があり真実を理解出来ない人間がいるのは事実としてありますー。ですがそうした人間に対してそもそも根本から理解出来ないものを理解させようとするのは無理な話ですー。」


ミィディア「まぁ天使と人間を同じ土俵で勝負させるようなものか。」


ラーナ「ええー。虚言術とはこうした人間の優劣によって生まれる様々な弊害をなるべく感じさせないようにする技術なんですー。頭の悪い人間。身体的に不自由な人間。精神的に不自由な人間。頭だけが良い人間。情緒だけが良い人間。様々な人間の様々な問題を隠し適度な距離を保ち共存する為の技術ですー。」

ミィディア「成程・・・今聞いてる限りだと嘘って言葉と同じくらい必要になる技術だな。」


ラーナ「そうでしょう?あと下界で良く耳にするんですが“嘘をつく人って嫌い。”という言葉。この言葉には様々な情報が含まれていますー。」


ミィディア「様々な情報?」


ラーナ「例えば頭の良さですー。まず嘘というのは好きだろうが嫌いだろうが相手にとってみればどうでもいいんですよねー。重要なのは騙せるか騙せないか。それなのに好き嫌いで話してるなんてバカなのかな?って思ってしまいますー。」


ミィディア「知性の低さが露見するのか。」


ラーナ「それと相手の視点に立って考えることが出来ないという点も露見しますー。」


ミィディア「でもそれが露見すると何かまずいのか?」


ラーナ「露見する側からしたら非常にまずいですー。」


ミィディア「何で?」


ラーナ「詐欺師に向かって騙して下さいって言っているようなものなのでー。好きとか嫌いって主観じゃないですかー?つまり自分視点でしか物事を見ることが出来ない人ということなんですよー。こういう存在ってその主観を利用するのにもってこいなんですー。ミィディア。下界でのサリーとアン課題というのを知っていますかー?」


ミィディア「ああ。授業で習った。」


ラーナ「暗示、催眠、洗脳、偽りの技術というのはこの課題を間違える者には扱えませんー。」


ミィディア「・・・つまり他者視点に立って物事を考えることが出来ないような奴にはそもそも技術を使う土俵にも立てないってことか?」


ラーナ「そうですー。相手を騙すには他者視点に立ちつつ同時に自分視点にも立ちその相互作用を利用する必要があるので他者視点に立てない時点で色々と話にならないし終わっているしそもそも始まりもしないんですねー。」


ミィディア「容赦ないな・・・。」


ラーナ「そしてこれは心の技術も同様にして言えますー。相手に対して扱う技術は他者視点に立てなければ使い熟すことは不可能ですー。確か下界では嘘が人間の成長の指標の一つにもなっていたはずですー。」


ミィディア「あ、子供が嘘をつき始めたら心が成長してるってこと?」


ラーナ「そうですー。つまり嘘とはある程度知恵が発達した頭の良い人間にしか使い熟せないとっても会得難易度の高い技術なんですねー。」


ミィディア「〝・・・。〟」


ラーナ「そしてこの嘘にはとってもばれる可能性の低いつき方があるんですねー。」

ミィディア「それってどんな方法なの?」


ラーナ「方法というかこの心得を元に嘘をついて下さいー。“嘘をつく時だけは嘘だと思わない。”」


ミィディア「嘘をつく時だけは嘘だと思わない?」


ラーナ「説明しますねー?ミィディア。嘘はどうして嘘だとばれますかー?」


ミィディア「・・・嘘をつくのが下手だから?」


ラーナ「ですねー。では具体的にどう下手なのでしょうー?」


ミィディア「・・・いつもと違って不自然だったり言ってることがちぐはぐだったりかな?」


ラーナ「その通りですー。そして何故人は嘘が嘘だとばれてしまうのか。これを総括すると気張って嘘をつくからばれるんですー。」


ミィディア「どういうこと?」


ラーナ「つまりですね“よし今から嘘をつくぞ!”と体が無意識に気張っているからその不自然さが目に留まりばれてしまうんですねー。」


ミィディア「成程な・・・。」


ラーナ「冷静に考えれば嘘をつく時ほどいつも通りにしているのが重要なんですけどー、それを意識してしまい返って不自然になってしまうんですねー。」


ミィディア「・・・でも嘘をつく時って罪悪感とか不自然じゃないか気になっていつも通りなんて意識して出来なくね?」


ラーナ「だからこそのさっきの心得が重要になるんですねー。」


ミィディア「・・・嘘をつく時だけは嘘だと思わない。」


ラーナ「嘘を見破ることが出来る人は嘘をつく人の微かな情緒の変化や挙動に注目していますー。ですが嘘をついている本人が嘘だと思っていない場合は客観的なデータでもない限り嘘だと確信を持てないんですねー。」


ミィディア「・・・そしたら後は辻褄合わせに注力出来るわけだ。」


ラーナ「そうですー。ですので嘘をつくので重要なのはコミュニケーションの技術などではなく白々しさですー。嘘がばれてもいいやと思える程の心持ちでいて下さいー。」


ミィディア「分かった。」


ラーナ「何でも答えがあると思っている。たった一つの正解があると思っている。正解が与えられると思っている頭の悪い人間たちを振り回せる技術を是非。身に着けて下さいねー?」


ミィディア「凄い言い草だな・・・。」


ラーナ「そんなことないと思いますよー?理不尽が当たり前の世界で理不尽に文句を言って何もしない人間たちに勝手に嫉妬されない為に頑張って下さいー。ミィディアならきっと辿り着けますー。僕たちと同じ領域に。」


ミィディア「そうなのかなー・・・。」


ラーナ「辿り着ければきっと分かりますよー。今僕が言ったことが言葉に棘はあれど至極当然な事実であるということがー。」


ミィディア「・・・それって理不尽に文句を言って何もしない人間たちのこと?」


ラーナ「そうですー。まぁ正確には何もしないんじゃなくて何も出来ないんでしょうけどねー。努力出来るかは才能ですからー。」


ミィディア「・・・そこまで分かってるのに愚痴は止められないの?」


ラーナ「止められないですねー。僕ら天使とて完璧ではありませんからー。」

ミィディア「・・・成程。」


ラーナ「人間の存在は天使にとっては試練みたいなものですからねー。」


ミィディア「どういうこと?」


ラーナ「自分たちと同じ姿をしながらも明らかに劣った存在を見てそれでも自分たちは完璧だと言い張れるのか。シェンスは人間の創造をビランチにお願いし実際に作ってもらうことでそれを天使たちに投げかけているんですよー。」


ミィディア「・・・成程。自分たちと同じ姿をしながらも明らかに劣った存在を作ることでその存在を各天使たちが抱く自身の理想像に無理やり投影させそれでも完璧だと言えるのか。って問いかけるような構図を作ったってことか。」


ラーナ「ええー。僕たち天使は人間が創られる前何をするにも俺たちは完璧だ私たちは全能だと驕りまくってましたー。シェンスはそんな天使の姿に滅茶苦茶イラついていたんですねー。なのでシェンスはその天使たち全員に皮肉として“劣ったバージョンの自分達を見ても完全無欠でいられるなら認めてあげる。”と言って人間の創造をビランチにお願いしましたー。そしてその皮肉の効果は覿面でしたー。人間を作った後驕りまくっていた天使たちは見事に黙りそして常にイライラし始めましたー。シェンスは裏で“ほらね?”と言っていましたー。」


ミィディア「“ほらね?やっぱり完璧じゃなかったでしょ?”ってこと?」


ラーナ「はいー。完璧というのは欠けている部分がないから完璧なんですねー。僕たち天使は地上で完璧と言われていますが実はそうではないんですねー。」


ミィディア「物理的な面では全能だけど精神的な面では欠けまくっていると。」


ラーナ「そうですー。驕るなんてその最たるものですー。本当に完璧ならば一々驕る必要なんてないんですよー。一々完璧だなんて主張する必要なんてないんですー。」

ミィディア「それを態々主張するっていうのは主張している本人が周囲からそう思われていないと思っているからするんだろうな・・・。」


ラーナ「でしょうねー。自分で自分が完璧ではないと分かっているから俺たちは完璧なんだと主張しますしそしてそれを主張するのは自信の無さが現れていますねー。」


ミィディア「・・・自信がないから声高に主張し主張することで何とか自我を保っていると。」


ラーナ「まぁうるさい奴ほど中身は空っぽだったりしますからー。本当に完璧であればとっくに気づいているはずですー。自分たちは何時まで経っても如何に無能で如何に無知なのか。天使は物理的に恵まれているだけで根本的には人間と何ら変わらない存在であるということを。」


ミィディア「・・・神力のお陰で優位に立てているに過ぎないってこと?」


ラーナ「そうですー。ミィディアだって天使と対話出来るという点を除けば何の取り柄もない一人間。もし災害や天災で犠牲になったとしても周囲の人間は気にも留めない。寧ろ自分じゃなくて本当に良かった。と思われる存在に過ぎないんですー。僕たち天使もそう。ビランチは天使長という肩書きがなければ一天使に過ぎませんし熾天使という肩書きがなければ全天使への命令権なんて発動出来ない。神力が使えなければ不死でなければ人間世界で不自由に生きていく存在と何ら変わりはないんですー。」


ミィディア「確かにな・・・。」


ラーナ「それに空しくありません?自分は完璧なんだ!何でも出来る!と主張するのは。」

ミィディア「だから何なんだよ・・・って自分に対して思っちゃうよな。」


ラーナ「完璧なのに完璧なはずなのにどうして心はこんなにも不自由なのだろう・・・そう思うはずですー。天使は人間を見ることで不完全を自覚しましたが人間はどうやって自覚するんでしょうねー。」


ミィディア「・・・同じ人間の中でも自身より劣った存在で自覚するのかな?」


ラーナ「シェンス的な考え方ならそうなるんでしょうけど今の地上を見ている限りそれは難しそうですねー。」


ミィディア「・・・まぁいじめや虐待があるからな。」


ラーナ「心の弱さを克服出来ない人間たちが自分以外の者を攻撃することによって心の弱さから目を背けようとしているから起きる問題ですねー。まぁ昨今ではそうした存在を守ろうとする動きも人間の中では見せているのでまったく可能性がないというわけではないんでしょうけどねー。」


ミィディア「でもさ、そうした存在って必ずしも守らなきゃいけないって空気は危険だと思うんだけど・・・。」


ラーナ「どうしてそう思うんですかー?」


ミィディア「確かに自分達より劣っているから守るというのは理屈としては正しいよ?でも守られる側とすると劣っているから守られているって再認識させられるから精神的に何かクるものがあるだろうしそれに守る側の思考も劣っているから必ず守らなきゃ!って妄信的になってるのは押しつけとか過干渉になって危険だろ?」


ラーナ「そうですねー。大体そうした妄信状態に成った人間というのは考え方捉え方が酷く歪みますからー。」


ミィディア「・・・なんかそういう人たちってさっきシェンスがイラついてた自信がない天使たちとダブるよな・・・。」


ラーナ「ダブるというというより根本は同じですよー。自信がないからこそ他者と比べたくなるし他者と関わらずにはいられない。そして他者と関わることで弱く脆い自分から目を背けることが出来る。」


ミィディア「そう考えるといじめてる人間とか虐待をする人間って場合によってはされる側より不幸だよな。」


ラーナ「される側は全力で逃げて傷を癒せば良いという目標が明確ですがしてる側って自覚してても向き合えないですからねー。それに殆どは自覚さえしていないですからー。下界ではミィディアの住む島国以外では比較的この問題に気づいていますよねー。」


ミィディア「被害者より加害者にアプローチが必要なんじゃないか?ってこと?」


ラーナ「ええー。本当に救うべきは被害者ではなく加害者ではないのか?ってことですねー。」


ミィディア「でもいじめられている側からするとそれってなんかもやもやするな。」


ラーナ「こっちを助けてよ!ってことですかー?」


ミィディア「まあな。」


ラーナ「勿論そっちも助けるべきなんですが総評で見るとボロボロなのは大体加害者の方ですー。」


ミィディア「・・・どういうこと?」


ラーナ「まずいじめられている側は核となる部分は安全なんですが外殻がボロボロにされるんですよー。いじめられることによって。」


ミィディア「ああ。」


ラーナ「今回はいじめられる側の家庭環境等は除きますー。そしていじめられ続けることによって核まで汚染されるということはありますがいじめが解消されれば後は治癒に専念出来ますー。」


ミィディア「まぁ治癒出来ない場合もあるけどな。」


ラーナ「取り返しのつかない場合ですねー?それも今回の説明には邪魔になるので除きますー。話に戻って次がいじめる側ですが彼らは最初から核の方が汚染されているのでいくら外殻で封じ込めていたとしてもいつか必ず漏れ出てしまいますー。そして漏れ出た時にはすでに核はとても見れたものではない状態に成っていますー。」


ミィディア「・・・そうか。いじめ始めた状態で両者を比べるといじめられた側は外殻が軽く破壊され始めた状態に対しいじめる側はもう核がボロボロでそれを封じ込めていた外殻もボロボロで歯止めが効かなくなっている状態なのか。」


ラーナ「流石の理解ですー。ミィディア。そう確かに物理的構図としてはいじめられる側がボロボロに見えるんですが精神的な構図でみると寧ろボロボロになのはいじめている側なんですねー。」


ミィディア「そう考えると・・・醜いな。」


ラーナ「まぁいじめられている側からすればそう簡単に許容出来る話ではないですよねー。」


ミィディア「まあな。でもその考えを聞いて少しすっきりとした。」


ラーナ「何故ですー?」


ミィディア「いや良い考え方じゃないんだけど俺をいじめた奴にとっては良い報いだなって思って。」


ラーナ「成程ですー。ですがミィディア。哀れに思えど同情してはいけませんよー?」


ミィディア「どういうこと?」


ラーナ「下界ではそうした心がボロボロになった人間たちが共通して持つ特徴があるんですー。」


ミィディア「それって何?」


ラーナ「救世主妄想。ご存じですかー?」


ミィディア「あ、メサイアコンプレックス?」


ラーナ「知っていたんですねー。」


ミィディア「まぁ他人の善意ウゼーって思っていた時にそうした病気とかなんかないのかなー?って調べてたら出てきた。」


ラーナ「成程ー。その他人の善意ウゼーというのはどうしてそう思ったんですか?」


ミィディア「んー・・・どうしてって言われてもな・・・。」


ラーナ「そう思うきっかけとかって何かありますー?」


ミィディア「あーそれなら腐るほどある。まずあなたの為を思ってやったのに!ってこれを聞くと凄いイライラするんだよな。」


ラーナ「何でですかー?」


ミィディア「だってそれってただの押し付けじゃん!頼んでねぇし本当に俺の為を思ってるならやる前に聞けば済む話だろ。」


ラーナ「まぁそうですねー。」


ミィディア「これの厄介なところってやられた時点でもう止められないんだよな。しかも余計なことしないで。って言うとさも俺が悪いかのようにうつるからスゲー不利なんだよ。」


ラーナ「善意という強力な盾がありますからねー。」


ミィディア「良いことしてる私を否定するなんて人間として終わってるでしょ!みたいな空気出されるのがめっちゃ嫌なんだよね。」


ラーナ「確かにそれをされるととても気分が悪いですよねー。」


ミィディア「だろ?」


ラーナ「ええー。ですがミィディア。これからはそうした善意の押しつけに悩む心配はなくなりますよー?」


ミィディア「何で?」


ラーナ「その救世主妄想を抱く人々はさっき話したいじめっ子の状態と同じなので思いっきり憐れんであげてくださいー。そうすれば彼らの方から離れていきますー。」

ミィディア「精神攻撃・・・ってことか。」


ラーナ「はいー。あとそれでも君を罵倒してくる人間がいた場合に備えて効果的な一言を伝授しましょうー。」


ミィディア「何それ?」


ラーナ「まず大前提として君に対し罵倒をしたり誹謗中傷をする人間は必ずしも頭の悪い人間だけではありませんー。」


ミィディア「・・・どういうこと?」


ラーナ「勿論頭の悪い人間が君の言っていることが理解出来ないから罵倒するというのもありますがその他に頭の良い人間が状況的に君を罵倒し評価を下げるのが得だと考えた場合にも君は罵倒されますー。」


ミィディア「・・・成程。自身の立場を上げる為に利用される場合か。」


ラーナ「ええ。ですが罵倒されている側からすればそれは非常に見抜きづらいですー。」


ミィディア「当事者だしな。」


ラーナ「それだけではないですよー?単純な情報格差もありますー。」


ミィディア「情報格差?」


ラーナ「考えてみてくださいー。利用を考える者と利用されることに気づけなかった者の相互作用を。」


ミィディア「・・・相手を利用しようと考えるってことは状況を把握する為の情報量に差があるってことか。」


ラーナ「そうですー。なのでもしミィディアがそうした頭の良い人間に罵倒されたらこの言葉を言ってください。“それは自分に対して言っているんですか?”」


ミィディア「・・・何で?」


ラーナ「説明しますねー?まず嘘とは頭の良い人間にしか使えないという話をしましたねー?」


ミィディア「ああ。」


ラーナ「この言葉は相手の頭の良さを逆手にとって精神を揺さぶる手法を端的に示したものですー。フェア曰く“いくら頭が良かろうと悪かろうと相手を罵倒するのにはまず自分を棚に上げる必要があります。なので『それはあなたがあなた自身に向けて言っている言葉ですか?』というニュアンスでこの言葉を相手に向けて発してみてください。そうすることで相手が上げた棚を元に戻しましょう。頭の悪い者であれば『それは私に向かって言っている言葉ですか?』と額面通りに受け取りそうだ!と怒り狂うだけですが意図して罵倒している頭の良い者ならば一瞬ドキッとします。そうした場合は畳み掛けるように『おかしいですねぇ意味が伝わりませんでしたか?その○○という言葉はあなたがあなた自身に向けて言っている言葉ですか?』や『この状況だとどっちが○○でしょう?』と言い周囲を巻き込んで混沌させましょう。そうすれば貶められる可能性はかなり下がるでしょう。”とのことですー。」


ミィディア「流石言葉を司る天使なだけあるな・・・。」


ラーナ「僕はこれを聞いた当初滅茶苦茶搦め手だなーと思いましたが今の地上を見てると使うこともあるかもなーと思ってますー。」

ミィディア「相手の言葉を利用して自分の状況を好転させるってところが凄ぇな。」


ラーナ「まぁ理屈では分かっていてもそれを現実に落とし込めるレベルまでに昇華出来るかは別ですからねー。」


ミィディア「こうしたことを聞くと時々怖く感じるよ。」


ラーナ「何でですかー?」


ミィディア「絶対的な何かを感じさせるからだよ。」


ラーナ「成程ー。とりあえず僕がミィディアに教えられることはこれくらいですねー。僕は天界に戻ろうと思ってるんですが何か聞きたいこととかってあったりしますかー?」


ミィディア「いや参考になったよ。ありがとう。」


ラーナ「どうもですー。」


そう言うとラーナは消えていった。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?