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天使たちとの共同戦線(十章、天使の戦術)



ドラーク「戻ったわ。ビランチ。」


ビランチ「あらお帰り。次のお客が少し前からお待ちですよ?」


?「やっと帰ったか。待ちくたびれたぞ。」


ドラーク「何あんた?やる気満々じゃない笑。」


?「ん?何か悪いか?」


ドラーク「別にー?笑。」


?「ビランチ。俺は今から下界に降りる。」


ビランチ「分かりました。いってらっしゃい。」


フォルテ「随分と重い腰をあげたもんだね。」


ドラーク「フォルテもそう思う?内心ウキウキよ?あいつ。」


ビランチ「いいんじゃないですか?あんな楽しそうなヴェッキは久々に見ました。」


?「遅れたわドラーク。」


ドラーク「プロイビーやっときたわね。次あんたがいくんでしょ?ミィディア思ったより面白いやつだから行って損はないわよ?」


プロイビー「そうなの?フフッ色々覗いちゃお笑。」





〜〜〜〜〜





俺は次に来る天使のヴェッキについて考えていた。


戦神の一人ヴェッキ。


神話では三大戦神の一人として崇められている。


あとの二人の戦神はウナとイアスと呼ばれている。


この三人は数々の逸話がある。


まずはヴェッキ。

この天使は剣を使うらしく神話では一振りで四人を軽く沈めるほどの力があると言われている。


ウナは常人では計り知れないほどの力の持ち主らしく武器こそ使わないものの素手で地球上の地形を変えるほどの戦いをしたとされている。


イアスにしたって尋常ならざる拳の硬さと棒術で戦い、噴火の如く激しい炎を纏い戦うというめちゃくちゃぶりで嘘くさい話ばかりだが天使の存在が真実である今となっては凄いの一言である。


同時にそんな戦神が俺に戦い方を教えてくれるなんて・・・楽しみで仕方がない。


そんなことを思っていたらまた新たな天使が俺の前に姿を現した・・・。


?「お前がミィディアか?聞いたぞ。俺たちの声が聞こえるそうだな。」


ミィディア「・・・ヴェッキか?」


ヴェッキ「いかにも。俺はヴェッキだ。突然で悪いがお前に戦い方を教えにきた。」


ミィディア「あ、ああ。」


ヴェッキ「ん?どうした?嬉しくないのか?」


ミィディア「い、いや、少し緊張してるんだ。だってヴェッキって戦神だろ?そんなすごい存在から戦い方を教わるってなると緊張しちゃって汗。」


ヴェッキ「緊張か。まぁいいだろう。そのうち慣れる。それに俺から戦い方を習えば他の奴から習う必要など無くなるからな。習う手間も省けるぞ?感謝するんだな笑。」


ミィディア「(・・・かなり上機嫌だな。)そいつは助かる。で!何から教えてくれるんだ?」


ヴェッキ「そう早まるな。まずは基本から教えていく。戦いの基本その一、戦おうとするな。」


ミィディア「戦おうとするな?どういうこと?」


ヴェッキ「自分から仕掛けようとするな。相手を挑発し相手から攻めさせろ。そうすることで自分自身の体力も温存できる。それに加えて相手の手の内を一つ一つ確認しながら仕掛けることができる為こちらの攻め方を見破られる可能性が減る。よく覚えておけ。いいな?」


ミィディア「おう。」


ヴェッキ「まぁ最初は難しいだろうがこれを身につければ死ぬことはねぇだろ。」


ミィディア「難しい?なんで?」


ヴェッキ「お前はまだ戦いの経験がないからわからないだろうが素人は・・・というか生き物は本来、攻撃されるとわかっていて受け身でいることをしない。頭では分かっていても体では反撃したくなってしまう。言わば本能だな。これを克服するには沢山の攻撃を経験しどの程度なら受けても平気か・・・体に覚えこませなくてはならない。武術でやる稽古はこれが目的だな。次に基本その二、攻撃を受けようとするな。」


ミィディア「攻撃を受けようとするな?どういうことだ?」


ヴェッキ「相手から来た攻撃全てを守ろうとするな‼ということだ。」


ミィディア「え?守るなって・・・全部避けろってこと?」


ヴェッキ「そうじゃない。殆どの攻撃は躱し受ける攻撃は最小限にしろってことだ。」


ミィディア「なんで?」


ヴェッキ「・・・相手の攻撃は当然だが食らえばダメージが伴う。」


ミィディア「それは知ってるよ。だからガードするんだろ?」


ヴェッキ「そうだ。だがミィディア。相手の攻撃はガードしたとしてもダメージはゼロではないのだ。受けただけの衝撃が威力となって体にダメージを蓄積する。避けられるなら避け、避け切れない攻撃だけを受ける。こうした戦い方をしなければ複数を相手にはできない。」


ミィディア「・・・成程な。」


ヴェッキ「更に贅沢を言えば受ける時も全ての力を受けないのが望ましいな。」


ミィディア「・・そんなこと言ったって受ける瞬間に何ができるんだよ?」


ヴェッキ「やりようはいくらでもある。例えば当たる瞬間体を後ろに引き威力を軽減させたり、相手の攻撃に合わせてこちらも攻撃を仕掛けたりな。」


ミィディア「成程・・・どうせ避けられないなら避けられない状況まだ何ができるか・・・ってことか。」


ヴェッキ「そういうことだ。重要なのは思考を止めないこと。諦めないこと。次に何ができるか冷静であり続けること。皆が熱くなってしまう戦場において一人だけ冷静な奴がいたなら・・・そいつはきっと最後まで立っていられるだろう。」


ミィディア「確かに・・・‼」


ヴェッキ「ま、要は戦いは日頃の積み重ねがものをいうのさ。」


ミィディア「積み重ねの差がそのまま戦いに現れるってことか。」


ヴェッキ「そう。勝敗となってな。どれだけ己を知り己を引き出せるか。これに尽きる。」


ミィディア「そしたら変に緊張してたりしたら負けるね。」


ヴェッキ「いいとこに気づいたな。そう、そこも大切だ。戦いの中でいかに自然体でいられるか。ここも勝敗を分ける。あと付け加えるなら技の熟練度。歩くのから走るのに切り替えるのと同じくらい容易なレベルまで技を昇華できたなら敵はいないだろう。」


ミィディア「その域に達するまでにはもうお爺ちゃんだな笑。」


ヴェッキ「お前ならすぐに出来るようになるさ。なんせ俺が教えるのだからな。」


ミィディア「凄い自信だな。」


ヴェッキ「当然だろ。座天使だからな。これで一通り伝えられることは伝えた。そろそろ帰るぜ。」


ミィディア「ああ。分かった。色々ありがとな‼ヴェッキ‼」


ヴェッキ「おう。」


そういうとヴェッキは姿を消して天界へと帰っていった。

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